解剖を実践に生かす
図解 前立腺全摘術

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前立腺全摘術の新アトラス誕生! 手術に役立つ臨床解剖と、ロボット支援(ダ・ヴィンチ)・腹腔鏡・小切開手術の各アプローチを、著者自身が手掛けたおよそ900枚の豊富かつ美麗なイラストで解説。付録として、各手技のポイント部分の手術映像をオンラインで配信する。本書を読み、実際の動画を観ることで、より一層理解を深めることができる。前著「図解 泌尿器科手術」とともに、泌尿器科医に贈る著者渾身の第2弾。 付録 オンライン動画

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執筆 影山 幸雄
執筆協力 吉岡 邦彦 / 近藤 幸尋 / 蜂矢 隆彦
発行 2013年04月判型:A4頁:320
ISBN 978-4-260-01752-7
定価 15,400円 (本体14,000円+税)

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推薦の序(山田拓己)/はじめに(影山幸雄)

推薦の序
 本書『解剖を実践に生かす 図解 前立腺全摘術』を読んでの第一印象は,簡潔かつ明快で大変わかりやすいことである.必要十分に簡素化された図を多用し,解説にはここ数年の臨床解剖学的検討が手際よく集約され,まとめられている.手術を正しく進めるためには,目的臓器に対する解剖学的指標を正確に定め,周囲の構造物との関係を把握しながら,正しい剥離面を得る必要がある.そのためには膜構造の理解が重要であるが,前立腺周囲ではこの膜構造が多重であり複雑になっている.本書では,第1章「手術に役立つ臨床解剖」の「膀胱下腹筋膜と関連筋膜」「Denonvillier筋膜」「恥骨前立腺靱帯と肛門挙筋筋膜」「デトルーザーエプロンと尿道後壁補強」の項で,前立腺周囲の膜構造が丁寧に述べられている.初学者は,丁寧に図解されたこの章を熟読することで,前立腺周囲の絵図面をしっかりとしたイメージとして獲得することができ,習熟者においてもすでにもっているイメージを再確認・修正できるものと思われる.
 本書は続いて「第2章 ダ・ヴィンチを用いたロボット支援前立腺全摘術」「第3章 腹腔鏡下前立腺全摘術」「第4章 小切開順行性前立腺全摘術」へと実践的な手術の解説に展開していくが,簡素化された共通の図が用いられているためか,同種の手術の延長を見ているような錯覚さえ覚える.誤解を恐れずに言えば,別の視点から行う別種の方法による手術でも,術者の描く解剖学的イメージは共通しているのかもしれない.図と解説は,細かな場面ごとに書き分けられ,対称で同一である左右の手技も重複して記載されている.一見すると冗長な感を受けるが,全手術工程に沿った画像イメージを,なぞるかのように図が進行するので違和感はない.画像イメージの解説を復習することで,読者の理解が深まるように配置されていると考えれば,筆者の意図するところかもしれない.
 さらに本書の大きな特徴として,各手技のポイント部分については,短時間の動画がオンラインで配信される.これによって,わが国を代表するエキスパートが行う実際の手術の場面を何回でも閲覧できることになる.読者が,自分の手術の記録映像と何度も見比べながら学習できることも大きな利点であろう.本書が読者によりよく使いこなされ,それがさらに優れた手術の改良につながることも期待できる.
 前立腺全摘術を行う医師および手術スタッフは,ぜひ本書を読まれることをお薦めする.細かく描き分けられパターン化された多くの図を読み進めるだけで,手術に必要な前立腺の解剖がすべて理解できるように作られている.近年,腹腔鏡を用いたさまざまなタイプの鏡視下手術が行われるようになり,手術現場ではスタッフ全員での術野の共有化が大きなメリットとしてあげられるようになっている.しかし,それにはスタッフ全員に共通の解剖学的理解が求められる.本書は,以上にあげた優れた特色から,前立腺全摘術にかかわるすべての人たちに大変役立つものと確信する.

 2013年3月
 埼玉医科大学総合医療センター泌尿器科教授
 山田拓己


はじめに
 熟練した外科医の手術は,流れがスムーズで,無駄がなく,安定しており,見ていて疲れません.出血や癒着などがあってもたじろぐことなく,的確に処理し淡々と必要な操作を進めていきます.その秘訣はなんでしょうか.
 ベテランはまず手術の目的を確認し,手術が終了したときの状態を思い描きます.それに合わせて目的臓器と隣接臓器との関係,血管走行など術野全体の解剖学的イメージをあらかじめ頭の中で構築します.そして術野から得られる視覚情報などに照らし合わせてそのイメージを逐次描き変えていきます.こうしてあたかも頭の中でもう1つの手術が同時進行しているかのような感覚で手術を進めます.操作を加えている部分に集中しつつ,全体像に気を配ることも忘れません.手術操作により術野の構造物の相対的な関係は刻々と変化していきます.その変化を見逃さず新たな情報をもとに頭の中の全体像を塗り替えていきます.また自分がどの場所に手術操作を加えているのかを教えてくれる指標を見逃しません.
 これは自動車の運転に通じるところがあります.ベテランのドライバーはまず出発点から目的地への最適なルートをイメージします.それに合わせて頭の中に地図を描き,自分が今どこを走り,どこへ向かっているのかを的確に把握します.そして周囲の景色の変化に合わせて自分の現在位置をもとにしたイメージ図を描き変えていきます.道しるべとなる街角のちょっとした景色の特徴を見逃しません.進んでいく方向に集中しながらも,飛び出してくる子どもや自転車などに気を配り,安全に十分な注意を払います.渋滞に遭遇しても慌てることなく,迂回路を探し,その状況に合わせて最もよい経路をたどります.
 前著『解剖を実践に生かす 図解 泌尿器科手術』では,泌尿器科手術に携わる先生方が自分自身の解剖学的イメージを頭の中に構築する参考にしていただきたいとの思いから,私自身が手術の際に描く解剖学的イメージをオリジナルのイラストを用いて紹介しました.今回はそれをさらに一歩進めて,泌尿器科の手術の中でも最も難しいものの1つである前立腺全摘術に焦点をあて,解剖学的なイメージに基づいた手術の流れをご紹介することにしました.
 しかしながら,前立腺全摘術は最新技術の導入などにより大きく発展しつつあり,自分1人ではそのすべてを語りつくすことは困難です.そこで私が親しくしていただいているベテランの先生方3名に協力をお願いし,ロボット支援手術,腹腔鏡下手術,小切開手術という3つの異なる手術の観点から術式全体のイメージ図を描くことにしました.各先生方に代わって,私が手術全体のイメージイラストを描き,それを確認していただくという手法をとりました.本書では私自身の手術(小切開逆行性手術)の全体図は用意してありませんが,第1章で私自身が実践している手技の工夫を解剖学的な視点から最新の知見を取り入れてまとめて紹介しています.本書に盛り込んだエキスパートの技と考え方を参考にして読者の皆さん自身が工夫を重ね,患者さんによりよい手術を提供していただけることを願っています.

 2013年3月
 影山幸雄

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1 手術に役立つ臨床解剖
 1 背静脈群
 2 前立腺周辺動脈
 3 海綿体神経
 4 膀胱下腹筋膜と関連筋膜
  膜構造の処理
   神経非温存
   通常の神経温存
   神経温存(veil technique)
  膜構造の液性剥離
   神経非温存
   神経温存
  鼠径ヘルニア予防
 5 Denonvillier筋膜
  順行性アプローチ
  側方アプローチ
  神経温存
  拡大手術
 6 恥骨前立腺靱帯と肛門挙筋筋膜
   パターン(1) 恥骨前立腺靱帯切断,内骨盤筋膜切開
   パターン(2) 恥骨前立腺靱帯切断,内骨盤筋膜切開なし
   パターン(3) 恥骨前立腺靱帯温存,内骨盤筋膜切開
   パターン(4) 恥骨前立腺靱帯温存,内骨盤筋膜切開なし
  パターン(4)の変法
  恥骨前立腺靭帯再建
 7 デトルーザーエプロンと尿道後壁補強
  Rocco stitch

2 ダ・ヴィンチを用いたロボット支援前立腺全摘術
  留意点と心構え
   準備
   ポートの設置
   骨盤後腹膜腔の展開
   前立腺側方の展開
   膀胱-前立腺間の処理(側方アプローチ)
   直腸-前立腺間剥離
   前立腺側方血管処理(神経非温存)
   背静脈群の処理
   尿道切断
   神経血管束断端の縫合止血
   リンパ節郭清
   尿道後壁補強(Rocco stitch)
   膀胱-尿道吻合・尿道前壁補強
   閉創
   Variation(1)
   前立腺側方血管処理(神経温存)
   Variation(2)
   膀胱-前立腺間の処理(正中アプローチ)

3 腹腔鏡下前立腺全摘術
  留意点と心構え
   準備
   ポートの設置
   精管・精嚢の処理
   前立腺前面の展開
   前立腺側方の展開(肛門挙筋筋膜温存)
   膀胱-前立腺間剥離
   直腸-前立腺間剥離
   前立腺側方血管処理(右片側神経温存)
   背静脈群の処理~尿道切断
   膀胱-尿道吻合
   閉創
   Variation リンパ節郭清

4 小切開順行性前立腺全摘術
  留意点と心構え
   準備
   皮膚切開と骨盤展開
   右側方展開と閉鎖リンパ節郭清
   左側方展開と閉鎖リンパ節郭清
   尿道-前立腺背側静脈群のbunching
   膀胱-前立腺間剥離
   精管・精嚢処理
   膀胱頸部everting
   Retrotrigonal zone展開
   直腸-前立腺間剥離~前立腺側方処理
   尖部処理~前立腺摘出
   止血
   膀胱-尿道吻合~閉創
   Variation
   前立腺側方血管処理(神経温存)

あとがき
索引

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小切開・腹腔鏡・ロボット支援の各手術のコツをエキスパートが披露。真の前立腺外科解剖が示された一冊
書評者: 武中 篤 (鳥取大教授・腎泌尿器学)
 著者・影山幸雄先生は,これまで数々の講演で見事なオリジナルスライドを用いて前立腺全摘,特に小切開手術の詳細な術式を解説されてきた。いつか書物として刊行されれば,前立腺全摘を行う多くの泌尿器科医にとって有用な手術書となるのに,と考えていたのは,私だけではないだろう。

 著者も述べておられるように,手術はよく自動車の運転にたとえられる。快適かつ安全な運転のためには「ロードマップの更新」と「ドライビングテクニック」,この双方が必要である。「ロードマップ」とは,現在では「カーナビゲーション」と言ってもよいかもしれないが,これはとりもなおさず「外科解剖」に相当すると考える。「カーナビゲーション」は2年も経つと現状にそぐわなくなり更新が必要となるが,外科解剖においても術式の進歩に伴った「更新」の必要性は高いと考えている。特に,ロボット支援手術の登場により,「ドライビングテクニック」の多くは手術用ロボットが補完できるようになり,「ロードマップ」の重要性はますます高まっている。

 本書は,タイムリーにも,サブタイトル「解剖を実践に生かす」のごとく,外科解剖に大きな焦点が当てられている。そして,小切開手術,腹腔鏡手術,ロボット支援手術,それぞれに必要な外科解剖を詳細に提示している。第1章では各術式に共通する外科解剖が示され,そして各術式を解説した第2~4章には個別の解剖学的所見がちりばめられている。まさに「ロードマップの更新」を実感できる手術書である。しかし,これだけ詳細な外科解剖を目の前にすると,著者の真意は別のものではなかったと勘繰りたくなる。すなわち,著者は各種術式の完成度を向上させていく中で,真の前立腺外科解剖を明らかにすることをむしろ最終目的としていたのではないだろうか。

 国内で,前立腺全摘に関し,小切開手術,腹腔鏡手術,ロボット支援手術の3術式すべてに精通している泌尿器科医はおそらく存在しない。ある術式に精通している術者は,逆に他の術式に懐疑的なコメントを述べることも多い。その中で,本書の特徴は3術式すべてを肯定的に掲載している点である。各術式のエキスパートが惜しげもなくそのコツを披露し,執筆に協力されている。著者のお人柄に加え,「3術式を通し前立腺外科解剖を明らかにしたい」という強い思いに,各エキスパートが心を動かされたからに違いない。
若手・中堅泌尿器科医に勧めたい前立腺癌外科治療を航海するための海図
書評者: 松山 豪泰 (山口大大学院教授・泌尿器科学)
 本書はこれまでの手術書とは全く異なる前立腺癌外科治療のためのチャート(海図)である。本書の付録として,手術の重要な部分の動画をオンラインで視聴できるが,書籍では動画収録部分はもちろん,動画に収められていない部分についても美麗なイラストで明示されており,ともすればビデオ動画のみではよくわからない操作手順やコツが初心者にもわかりやすく解説されている。しかもビデオ動画でもわからない血管神経の走行もイラストに描かれているため,剥離や切開の際,注意すべき局所解剖が理解できるようになっている。

 著者が小切開前立腺全摘術のエキスパートであることは,多くの読者がご存じのことと思うが,自己の術式にこだわらず,腹腔鏡下およびロボット支援前立腺全摘の術式も詳細な解説図とともに掲載しているところも,本書の特筆すべき点であろう。ビデオ動画を見る限り,他の術式に比べロボット支援前立腺全摘術に一部の利があるようにも見えるが,本書の意図するところは単なる術式の優劣の比較ではなく,読者がいずれの術式を選択した場合にも役立つ汎用性を追求していることは明らかである。また本書の第1章「手術に役立つ臨床解剖」では,前立腺癌外科治療の究極の目標であるtrifecta(癌根治,尿禁制,男性機能温存)を達成するために必要な,エキスパートによる神経解剖や恥骨前立腺靱帯に対するさまざまなアプローチ法が詳細に解説されている。本書は,これから前立腺全摘術を開始する若手泌尿器科医やさらなる技術の向上を目指す中堅泌尿器科医が,前立腺癌外科治療という暗礁の多い海を航海するためのチャート(海図)となることであろう。

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