総合医療論 第3版
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- ・これから看護を学ぶ学生の方に、看護や医療の全体像を幅広く概観してもらえるように構成しています。
- ・医療や看護のしくみ、これまでの医療の流れ、健康や病気とはなにか、現代医療の課題とそれに対する新しい視点といったように、大きな流れに沿って看護教育で必要とされる基礎的な知識や考え方を学ぶことができます。
- ・今回の改訂では、時代背景や制度の変化に対応できるよう内容を刷新するとともに、学生の理解を助けるイラストや図表を追加しました。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | 系統看護学講座-別巻 |
---|---|
著 | 小泉 俊三 / 平尾 智広 / 有吉 浩美 |
発行 | 2013年01月判型:B5頁:208 |
ISBN | 978-4-260-01578-3 |
定価 | 2,200円 (本体2,000円+税) |
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- 序文
- 目次
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序文
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はしがき
看護教育改革と新しいカリキュラムについて
国民の求める医療や期待される医療人像は,社会のあり方や人々の意識を反映して時代とともに変遷する。したがって,医療人の育成にあたってもその教育理念とカリキュラムにはつねに改革が求められ,看護教育も例外ではない。たとえば大学教育について2011(平成23)年に公表された「看護学基礎カリキュラム」では,広く豊かな教養や判断力を持ち,専門職として自己研鑽を続けることのできる質の高い看護専門職者の基盤作りを目ざすとされ,20項目にわたる看護師としての基本実践能力(コンピテンシー)が以下の5群に大別され取り上げられている。
I群:ヒューマンケアの基本に関する実践能力
II群:根拠に基づき看護を計画的に展開する実践能力
III群:特定の健康課題に対応する実践能力
IV群:ケア環境とチーム体制整備に関する実践能力
V群:専門職者として研鑽し続ける基本能力
これらは大学教育だけに限られるものではなく,広くすべての看護職に求められるものである。
系統看護学講座は,社会的ニーズやカリキュラムなどに対応した内容で構成されているが,看護学の各教科を学ぶに先だって,まずは現代医療や介護の全体像を把握するために,あるいは教科全体の構成のなかで各教科の意義を再確認するために,現代医療を全般的に見渡した入門書が必要であろうと考えた。本書では,このことに留意して,これまでのいわゆる「医学概論」の形式にとらわれることなく,医療や看護の原点から説きおこし,現代医療の実像と新しい展開について概説するとともに,その背景にある時代精神にもふれ,医療をめぐる今日の活発な議論の核心を平易な言葉で解説することを心がけた。
学習にあたって
本書では,読者が医療・看護の問題をより深く理解できるよう,病と健康に関する多くの学問が相互につながっていること,生物学的医学は実は医学の一部にすぎないことを強調するとともに,保健・医療の現場で問われている今日的な課題を取り上げ,これらの課題についてのさまざまな論点や新しい学問領域をわかりやすい言葉で紹介するように心がけた。このような議論の一端を知ることは,これから看護学を学ぼうとする読者が,幅広い視野を持ち,新時代に求められる看護師像についてじっくり自分の頭で考える習慣をつけるきっかけとなるだろう。とくに移植医療や遺伝子診断などの先端医療技術がもたらした新しいジレンマについての議論は,1人ひとりの人間観そのものをも問うている。
また,わが国では過去に,看護職について医師の補助者としての役割がことさら強調され,看護師自身も自立した職業人としての自覚に乏しかった時期が長く続いた。近年の医療の高度化・専門化にともなって,臓器別専門医の関心は,ますます人体の生物科学的理解に向かっているが,本来の看護技術とは,医師が力点を置く生物学的なものの見方とは一線を画し,ケアを通じて育まれる人間への関心を軸とした独自の哲学に支えられていることを理解してほしい。
さらに1つ付け加えるなら,看護が自立した専門職である以上,看護師には,よい看護とはどのような看護か,よい看護師にはどのような資質が必要か,など,つねにみずからを振り返る姿勢が求められている。専門職を特徴づけるあり方として「省察的実践家」という言葉があるが,読者の皆さんも,看護学を学ぶにあたって,看護職とは医療技術の進歩と新しい社会規範に即応しつつも,人間心理の深い理解に裏打ちされた専門職であることを自覚し,みずからの経験について繰り返し振り返ることを通じて職業人として成長してほしいと願っている。
また,本書は,教科書として用いるだけでなく,医療現場で悩むことがあったときや,看護の原点に戻って基本的なことについてじっくりと考えたいときにも参照していただければ幸いである。
改訂にあたって
初版の発行からすでに15年,部分的な改訂にとどまった第2版から数えても12年が経過した。この十数年の間に,社会の急速な高齢化,格差の拡大,医療技術の高度化・複雑化とともに,医療事故の社会問題化と医療安全への関心の高まり,医師需給のアンバランスや医療費の高騰,危機に瀕する地域医療など,わが国の医療界は困難な課題をかかえながら大きくかわりつつある。初版以来の本書の記述は,これらの問題点を指摘しつつ,医療変革の流れを先取りするものであったと自負しているが,時代の流れに応じて多くの個所で記述を改める必要を感じていたところ,今回,著者として公衆衛生学と看護学の教育現場で活躍中の気鋭の専門家に参画していただき,新しい看護教育理念とカリキュラムを念頭においた大幅な改訂を行うことができた。広く看護教育の現場で本書が引きつづき活用されることを願っている。
2012年12月
著者を代表して
小泉俊三
看護教育改革と新しいカリキュラムについて
国民の求める医療や期待される医療人像は,社会のあり方や人々の意識を反映して時代とともに変遷する。したがって,医療人の育成にあたってもその教育理念とカリキュラムにはつねに改革が求められ,看護教育も例外ではない。たとえば大学教育について2011(平成23)年に公表された「看護学基礎カリキュラム」では,広く豊かな教養や判断力を持ち,専門職として自己研鑽を続けることのできる質の高い看護専門職者の基盤作りを目ざすとされ,20項目にわたる看護師としての基本実践能力(コンピテンシー)が以下の5群に大別され取り上げられている。
I群:ヒューマンケアの基本に関する実践能力
II群:根拠に基づき看護を計画的に展開する実践能力
III群:特定の健康課題に対応する実践能力
IV群:ケア環境とチーム体制整備に関する実践能力
V群:専門職者として研鑽し続ける基本能力
これらは大学教育だけに限られるものではなく,広くすべての看護職に求められるものである。
系統看護学講座は,社会的ニーズやカリキュラムなどに対応した内容で構成されているが,看護学の各教科を学ぶに先だって,まずは現代医療や介護の全体像を把握するために,あるいは教科全体の構成のなかで各教科の意義を再確認するために,現代医療を全般的に見渡した入門書が必要であろうと考えた。本書では,このことに留意して,これまでのいわゆる「医学概論」の形式にとらわれることなく,医療や看護の原点から説きおこし,現代医療の実像と新しい展開について概説するとともに,その背景にある時代精神にもふれ,医療をめぐる今日の活発な議論の核心を平易な言葉で解説することを心がけた。
学習にあたって
本書では,読者が医療・看護の問題をより深く理解できるよう,病と健康に関する多くの学問が相互につながっていること,生物学的医学は実は医学の一部にすぎないことを強調するとともに,保健・医療の現場で問われている今日的な課題を取り上げ,これらの課題についてのさまざまな論点や新しい学問領域をわかりやすい言葉で紹介するように心がけた。このような議論の一端を知ることは,これから看護学を学ぼうとする読者が,幅広い視野を持ち,新時代に求められる看護師像についてじっくり自分の頭で考える習慣をつけるきっかけとなるだろう。とくに移植医療や遺伝子診断などの先端医療技術がもたらした新しいジレンマについての議論は,1人ひとりの人間観そのものをも問うている。
また,わが国では過去に,看護職について医師の補助者としての役割がことさら強調され,看護師自身も自立した職業人としての自覚に乏しかった時期が長く続いた。近年の医療の高度化・専門化にともなって,臓器別専門医の関心は,ますます人体の生物科学的理解に向かっているが,本来の看護技術とは,医師が力点を置く生物学的なものの見方とは一線を画し,ケアを通じて育まれる人間への関心を軸とした独自の哲学に支えられていることを理解してほしい。
さらに1つ付け加えるなら,看護が自立した専門職である以上,看護師には,よい看護とはどのような看護か,よい看護師にはどのような資質が必要か,など,つねにみずからを振り返る姿勢が求められている。専門職を特徴づけるあり方として「省察的実践家」という言葉があるが,読者の皆さんも,看護学を学ぶにあたって,看護職とは医療技術の進歩と新しい社会規範に即応しつつも,人間心理の深い理解に裏打ちされた専門職であることを自覚し,みずからの経験について繰り返し振り返ることを通じて職業人として成長してほしいと願っている。
また,本書は,教科書として用いるだけでなく,医療現場で悩むことがあったときや,看護の原点に戻って基本的なことについてじっくりと考えたいときにも参照していただければ幸いである。
改訂にあたって
初版の発行からすでに15年,部分的な改訂にとどまった第2版から数えても12年が経過した。この十数年の間に,社会の急速な高齢化,格差の拡大,医療技術の高度化・複雑化とともに,医療事故の社会問題化と医療安全への関心の高まり,医師需給のアンバランスや医療費の高騰,危機に瀕する地域医療など,わが国の医療界は困難な課題をかかえながら大きくかわりつつある。初版以来の本書の記述は,これらの問題点を指摘しつつ,医療変革の流れを先取りするものであったと自負しているが,時代の流れに応じて多くの個所で記述を改める必要を感じていたところ,今回,著者として公衆衛生学と看護学の教育現場で活躍中の気鋭の専門家に参画していただき,新しい看護教育理念とカリキュラムを念頭においた大幅な改訂を行うことができた。広く看護教育の現場で本書が引きつづき活用されることを願っている。
2012年12月
著者を代表して
小泉俊三
目次
開く
序章 医療コミュニケーションの原点にさかのぼる
A 看護の「心」-援助と共感
B 専門職としての医師と看護師
C 援助される者と援助する者-共感的な人間関係
D 病める者の自立への援助-パターナリズムについて考える
第1章 医療と看護の原点-病と癒し
A 命について考える
B 健康とは
C 病の体験
D 癒しの行為と癒しの知
E チーム医療とマネジメント
第2章 医療の歩みと医療観の変遷
A 現代医学の起源-古代から近代へ
B わが国の医療がたどってきた道
C 20世紀の医療
D 医療観のうつりかわり
第3章 私たちの生活と健康
A もしも私たちが病気やけがをしたら
B 私たちの生活と環境衛生,保健・福祉行政
C 疾病の一次予防と健康増進
D 少子高齢化社会と世代間のきずな
E 障害者のノーマライゼーションと社会的包摂(インクルージョン)
F 心の健康と精神医療
第4章 科学技術の進歩と現代医療の最前線
A 科学技術の進歩と社会・生活の変化
B 現代医学と先端医療技術の最前線
第5章 現代医療の新たな課題
A 薬の副作用と手術偶発症
B 医原病という考え方とケアの実践
C 先端医療技術がもたらす倫理上のジレンマ
D 生命倫理学と臨床倫理学の展開
E 産業社会の発展と地球環境問題
F 医療不信から「賢い患者」へ
G インフォームドコンセントと医療情報の開示
H 医療情報の開示と診療録(カルテ)
第6章 医療を見つめ直す新しい視点
A 臨床疫学-医療における合理的判断
B 患者の安全
C 医療の管理と評価
D これからの先端医療開発
E 情報化社会と医療
第7章 保健・医療・福祉の潮流
A 医療変革の波とともに始まった21世紀
B 新時代の保健・医療の担い手
C プライマリケアの新たな展開-総合医への期待
D 医療におけるケアの視点
E 保健・医療の国際化
F 地域包括医療システムの新しい展開
G 保健・医療・福祉システムと地域住民の役割
H 地球時代におけるケア
巻末資料
索引
A 看護の「心」-援助と共感
B 専門職としての医師と看護師
C 援助される者と援助する者-共感的な人間関係
D 病める者の自立への援助-パターナリズムについて考える
第1章 医療と看護の原点-病と癒し
A 命について考える
B 健康とは
C 病の体験
D 癒しの行為と癒しの知
E チーム医療とマネジメント
第2章 医療の歩みと医療観の変遷
A 現代医学の起源-古代から近代へ
B わが国の医療がたどってきた道
C 20世紀の医療
D 医療観のうつりかわり
第3章 私たちの生活と健康
A もしも私たちが病気やけがをしたら
B 私たちの生活と環境衛生,保健・福祉行政
C 疾病の一次予防と健康増進
D 少子高齢化社会と世代間のきずな
E 障害者のノーマライゼーションと社会的包摂(インクルージョン)
F 心の健康と精神医療
第4章 科学技術の進歩と現代医療の最前線
A 科学技術の進歩と社会・生活の変化
B 現代医学と先端医療技術の最前線
第5章 現代医療の新たな課題
A 薬の副作用と手術偶発症
B 医原病という考え方とケアの実践
C 先端医療技術がもたらす倫理上のジレンマ
D 生命倫理学と臨床倫理学の展開
E 産業社会の発展と地球環境問題
F 医療不信から「賢い患者」へ
G インフォームドコンセントと医療情報の開示
H 医療情報の開示と診療録(カルテ)
第6章 医療を見つめ直す新しい視点
A 臨床疫学-医療における合理的判断
B 患者の安全
C 医療の管理と評価
D これからの先端医療開発
E 情報化社会と医療
第7章 保健・医療・福祉の潮流
A 医療変革の波とともに始まった21世紀
B 新時代の保健・医療の担い手
C プライマリケアの新たな展開-総合医への期待
D 医療におけるケアの視点
E 保健・医療の国際化
F 地域包括医療システムの新しい展開
G 保健・医療・福祉システムと地域住民の役割
H 地球時代におけるケア
巻末資料
索引
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。