解剖実習カラーテキスト
解剖実習書の新しいスタンダード
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日本における解剖実習の標準的手技を、コンパクトかつビジュアルにまとめた。全ページを見開き構成とし、多様な授業時間数に対応可能。解剖手順にそった美麗かつ詳細なオリジナルイラストは秀逸。適宜「Clinial View」「Lecture」などの項目が設けられ、実習とともに解剖学の理解を深めることができる。
著 | 坂井 建雄 |
---|---|
発行 | 2013年03月判型:B5頁:384 |
ISBN | 978-4-260-01702-2 |
定価 | 7,040円 (本体6,400円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
- 正誤表
序文
開く
序
大学を卒業して解剖学教室で教職に就いて以来,毎年のように人体解剖実習を指導している.
学生には自分で解剖実習書を開いて予習することを強く求めているが,近年の学生たちは解剖実習書をあまり読まずに実習をしているようだ.実習書の本文をまったく読まずに,図だけを見て解剖をしているのではないかと思われる学生たちも少なくない.学生の気質が時代とともに変わってきたのだろうが,それだけでなく,われわれが慣れ親しんできた解剖実習書にも原因があるのではないかと思うようになった.
最近の新しい教科書は,カラーのイラストを多用し,まとめの表やコラムをふんだんに配置し,見開き構成にするなど,読みやすく理解しやすくするための工夫がなされている.そのような新しい時代にふさわしい解剖実習書が必要だと考えるようになったときに,医学書院から解剖実習書を出版するという提案をいただいた.解剖実習書に不可欠のカラーのイラストも,東京藝術大学卒の芸術家で順天堂大学解剖学講座の大学院生である阿久津裕彦氏が引き受けてくれることになった.こうして解剖実習書を新たに作るために必要な条件がことごとく揃ったのは,奇跡と言いたくなるほど幸運なことであった.
新しい解剖実習書を書くために,日本だけでなく諸外国の代表的な解剖実習書を参考にした.本書のスタイルとして,それぞれの項目を小さくして見開きの中におさめること,カラーのイラストを多用すること,文章を長々と連ねるのではなく簡潔な箇条書きにするという方針を採用した.また1つの項目で扱うテーマを整理し,わかりやすい表題をつけて,行うべき手技や学ぶべき内容を明確に示した.
解剖の流れは,日本の標準的な解剖手技を基本とすることにしたが,これまでの解剖実習の経験を踏まえていくつかの変更を加えることにした.大きなところでは,筋の切断は筋腹で行わず起始あるいは停止の近くで行うこと,肩甲骨の内側縁を深層の筋から切り離して上肢を遊離すること,外耳と中耳の解剖を上方から行うことなど,その他細かな工夫や手技の改善があちらこちらに見つかるはずである.
本書は,多くの方々の協力があって実現することができた.私と一緒に長年にわたり解剖実習を担当してくれた教室員の諸君,とくに工藤宏幸准教授は解剖の手技についてともに考え,有益な助言を与えてくれた.阿久津裕彦氏は本書の生命線ともいえる精細な解剖図を短期間に多数描いてくれた.最後に,解剖実習書という難易度の高い企画を立ち上げていただいた医学書院,とりわけ実現までの困難な道のりを一気呵成に進めてくれた金井真由子さんに謝意を表したい.
この新しい解剖学書によって,日本中の人体解剖実習が楽しく充実したものになることを願っている.
2013年2月 八王子にて
坂井建雄
大学を卒業して解剖学教室で教職に就いて以来,毎年のように人体解剖実習を指導している.
学生には自分で解剖実習書を開いて予習することを強く求めているが,近年の学生たちは解剖実習書をあまり読まずに実習をしているようだ.実習書の本文をまったく読まずに,図だけを見て解剖をしているのではないかと思われる学生たちも少なくない.学生の気質が時代とともに変わってきたのだろうが,それだけでなく,われわれが慣れ親しんできた解剖実習書にも原因があるのではないかと思うようになった.
最近の新しい教科書は,カラーのイラストを多用し,まとめの表やコラムをふんだんに配置し,見開き構成にするなど,読みやすく理解しやすくするための工夫がなされている.そのような新しい時代にふさわしい解剖実習書が必要だと考えるようになったときに,医学書院から解剖実習書を出版するという提案をいただいた.解剖実習書に不可欠のカラーのイラストも,東京藝術大学卒の芸術家で順天堂大学解剖学講座の大学院生である阿久津裕彦氏が引き受けてくれることになった.こうして解剖実習書を新たに作るために必要な条件がことごとく揃ったのは,奇跡と言いたくなるほど幸運なことであった.
新しい解剖実習書を書くために,日本だけでなく諸外国の代表的な解剖実習書を参考にした.本書のスタイルとして,それぞれの項目を小さくして見開きの中におさめること,カラーのイラストを多用すること,文章を長々と連ねるのではなく簡潔な箇条書きにするという方針を採用した.また1つの項目で扱うテーマを整理し,わかりやすい表題をつけて,行うべき手技や学ぶべき内容を明確に示した.
解剖の流れは,日本の標準的な解剖手技を基本とすることにしたが,これまでの解剖実習の経験を踏まえていくつかの変更を加えることにした.大きなところでは,筋の切断は筋腹で行わず起始あるいは停止の近くで行うこと,肩甲骨の内側縁を深層の筋から切り離して上肢を遊離すること,外耳と中耳の解剖を上方から行うことなど,その他細かな工夫や手技の改善があちらこちらに見つかるはずである.
本書は,多くの方々の協力があって実現することができた.私と一緒に長年にわたり解剖実習を担当してくれた教室員の諸君,とくに工藤宏幸准教授は解剖の手技についてともに考え,有益な助言を与えてくれた.阿久津裕彦氏は本書の生命線ともいえる精細な解剖図を短期間に多数描いてくれた.最後に,解剖実習書という難易度の高い企画を立ち上げていただいた医学書院,とりわけ実現までの困難な道のりを一気呵成に進めてくれた金井真由子さんに謝意を表したい.
この新しい解剖学書によって,日本中の人体解剖実習が楽しく充実したものになることを願っている.
2013年2月 八王子にて
坂井建雄
目次
開く
第1章 頸・体幹浅層
第1節 体幹の前面で体表を観察する
第2節 体幹の前面で皮膚を切り取る
第3節 女性の乳房,頸部の皮下組織を解剖する
第4節 胸腹部で皮静脈と皮神経を解剖する
第5節 大胸筋と外腹斜筋を観察する
第6節 頸部の皮静脈と皮神経を解剖する
第7節 胸鎖乳突筋を解剖する
第8節 背部の皮膚を切り取る
第9節 背部の皮下組織を解剖する
第10節 僧帽筋と広背筋を解剖する
第11節 胸鎖乳突筋を上方にひるがえす
第12節 舌骨下筋群と頸神経ワナを解剖する
第13節 総頸動脈と内頸静脈を解剖する
第14節 頸根部で斜角筋群と横隔神経を観察する
第15節 大胸筋の深層を解剖する
第16節 腋窩を解剖する
第17節 鎖骨を切断して深層を解剖する
第2章 上肢
第1節 上肢の皮膚を切り取る
第2節 腕神経叢を解剖する
第3節 三角筋と上腕の屈筋を解剖する
第4節 上腕前面の神経と血管を解剖する
第5節 肩甲骨の前面の筋を解剖する
第6節 上肢を体幹から遊離する
第7節 上腕の伸筋を解剖する
第8節 肩甲骨周辺を後ろから解剖する
第9節 手背の皮膚を切り取る
第10節 前腕伸側の浅層と伸筋支帯を解剖する
第11節 前腕伸側の深層を解剖する
第12節 手掌の皮膚を切り取る
第13節 前腕屈側の浅層を解剖する
第14節 手の母指球と小指球を解剖する
第15節 手の浅層を解剖する
第16節 前腕屈側の深層を解剖する
第17節 手の深層を解剖する
第18節 肩関節を解剖する
第19節 肘関節を解剖する
第20節 上腕骨の内部を解剖する
第21節 手首の関節を解剖する
第22節 手内の関節を解剖する
第3章 体壁
第1節 背部の浅層を解剖する
第2節 固有背筋を解剖する
第3節 後頭下を解剖する
第4節 脊柱管を開く
第5節 脊柱管の内容を観察する
第6節 取り出した脊髄を観察する
第7節 胸壁を解剖する
第8節 下腹部の皮膚を切り取る
第9節 腹壁外側部の筋を解剖する
第10節 腹直筋を解剖する
第11節 前腹壁を切り開く
第12節 前腹壁下部の内面を観察する
第13節 腹部内臓の表層を観察する
第4章 胸腔
第1節 胸郭を切除する
第2節 胸部内臓を原位置で観察する
第3節 胸膜腔を解剖する
第4節 肺を解剖する
第5節 頸根部を解剖する
第6節 上縦隔で大血管を観察する
第7節 心膜腔を切り開く
第8節 心臓を切り出す
第9節 心臓壁の血管を解剖する
第10節 心臓の解剖(1) 心房と心室を分離する
第11節 心臓の解剖(2) 心臓の部屋を切り開く
第12節 上縦隔を解剖する
第13節 後縦隔を解剖する
第5章 腹腔
第1節 腹部内臓を原位置で観察する
第2節 胃の周辺の間膜を観察する
第3節 網嚢を観察する
第4節 間膜と腹膜腔を観察する
第5節 胃の周辺の動脈を解剖する
第6節 小腸と大腸前半の動脈を解剖する
第7節 大腸後半の動脈を解剖する
第8節 門脈とその周辺を解剖する
第9節 腸管を切り出す
第10節 切り出した腸管を観察する
第11節 胃を取り出して解剖する
第12節 肝臓を取り出す
第13節 取り出した肝臓を解剖する
第14節 十二指腸,膵臓,脾臓を取り出して解剖する
第15節 腎臓と副腎を解剖する
第16節 体幹後壁の動脈を観察する
第17節 体幹後壁の静脈を観察する
第18節 交感神経幹を観察する
第19節 横隔膜を解剖する
第20節 後腹壁で筋と腰神経叢を解剖する
第21節 腰椎で体幹を分断する
第6章 下肢
第1節 下肢の皮膚を切り取る
第2節 下肢の皮下を解剖する
第3節 大腿前面で大腿三角を開放する
第4節 大腿前面で大腿三角を解剖する
第5節 大腿前面の伸筋と内転筋管を解剖する
第6節 大腿内側の内転筋群を解剖する
第7節 殿筋群を解剖する
第8節 殿部の深層を解剖する
第9節 大腿後面の屈筋群を解剖する
第10節 膝窩を解剖する
第11節 下腿後面の浅い屈筋を解剖する
第12節 下腿外側面と前面を解剖する
第13節 下腿前面と足背で血管と神経を解剖する
第14節 下腿後面の深層を解剖する
第15節 足底の浅層を解剖する
第16節 足底の深層を解剖する
第17節 股関節を剖出する
第18節 股関節を解剖する
第19節 膝関節を剖出し開放する
第20節 膝関節を解剖する
第21節 距腿関節を解剖する
第22節 足の関節を解剖する
第7章 骨盤
第1節 骨盤の内面を観察する
第2節 [男性] 陰嚢と精索を解剖する [女性] 外陰部を観察する
第3節 [男性] 精巣と精巣上体を解剖する
第4節 [男性] 会陰部の浅層を解剖する [女性] 会陰部の浅層を解剖する
第5節 [男性] 陰茎の浅層を解剖する [女性] 前庭球と陰核を解剖する
第6節 [男性] 陰茎の海綿体を解剖する
第7節 尿生殖隔膜を解剖する
第8節 骨盤隔膜を解剖する
第9節 骨盤壁を切半し取り外す
第10節 骨盤の動脈を解剖する
第11節 骨盤の神経を解剖する
第12節 [男性] 骨盤内臓を観察し取り出す [女性] 骨盤内臓を原位置で観察する
第13節 [男性] 膀胱,前立腺,尿道を解剖する [女性] 骨盤内臓を取り出す
第14節 [女性] 卵巣と卵管を観察する
第15節 [女性] 子宮と腟を解剖する
第16節 直腸と肛門を解剖する
第8章 頭部
第1節 頸部で血管と脳神経を確認する
第2節 顔面筋を解剖する
第3節 顔の血管・神経を解剖する
第4節 舌骨上筋群を解剖する
第5節 脳を取り出す
第6節 頭蓋腔で硬膜静脈洞を解剖する
第7節 頭部を切り離す準備をする
第8節 頭部を体幹から切り離す
第9節 咽頭壁と頸動脈鞘周辺を解剖する
第10節 咽頭を切り開いて内面を観察する
第11節 喉頭,気管,甲状腺を取り出して観察する
第12節 喉頭を外面から解剖する
第13節 喉頭の内部を解剖する
第14節 内頭蓋底で脳神経を解剖する
第15節 頭部を切半する
第16節 口腔を観察する
第17節 鼻腔,咽頭鼻部,口峡を観察する
第18節 側頭部を解剖する
第19節 側頭下窩を解剖する
第20節 顎関節と口腔底を解剖する
第21節 舌を取り出し,口蓋を解剖する
第22節 副鼻腔と翼口蓋神経節を解剖する
第23節 眼瞼と涙器を解剖する
第24節 眼窩上壁を開き,眼窩上部を解剖する
第25節 上方から眼窩深部を解剖する
第26節 前方から眼窩を解剖し,眼球を取り出す
第27節 外耳を解剖する
第28節 中耳を解剖する
第29節 内耳を解剖する
付録 骨学実習
第1節 全身の骨格を観察する
第2節 脊柱と胸郭を観察する
第3節 上肢の骨を観察する
第4節 骨盤・下肢の骨を観察する
第5節 頭蓋の骨を観察する
和文索引
欧文索引
第1節 体幹の前面で体表を観察する
第2節 体幹の前面で皮膚を切り取る
第3節 女性の乳房,頸部の皮下組織を解剖する
第4節 胸腹部で皮静脈と皮神経を解剖する
第5節 大胸筋と外腹斜筋を観察する
第6節 頸部の皮静脈と皮神経を解剖する
第7節 胸鎖乳突筋を解剖する
第8節 背部の皮膚を切り取る
第9節 背部の皮下組織を解剖する
第10節 僧帽筋と広背筋を解剖する
第11節 胸鎖乳突筋を上方にひるがえす
第12節 舌骨下筋群と頸神経ワナを解剖する
第13節 総頸動脈と内頸静脈を解剖する
第14節 頸根部で斜角筋群と横隔神経を観察する
第15節 大胸筋の深層を解剖する
第16節 腋窩を解剖する
第17節 鎖骨を切断して深層を解剖する
第2章 上肢
第1節 上肢の皮膚を切り取る
第2節 腕神経叢を解剖する
第3節 三角筋と上腕の屈筋を解剖する
第4節 上腕前面の神経と血管を解剖する
第5節 肩甲骨の前面の筋を解剖する
第6節 上肢を体幹から遊離する
第7節 上腕の伸筋を解剖する
第8節 肩甲骨周辺を後ろから解剖する
第9節 手背の皮膚を切り取る
第10節 前腕伸側の浅層と伸筋支帯を解剖する
第11節 前腕伸側の深層を解剖する
第12節 手掌の皮膚を切り取る
第13節 前腕屈側の浅層を解剖する
第14節 手の母指球と小指球を解剖する
第15節 手の浅層を解剖する
第16節 前腕屈側の深層を解剖する
第17節 手の深層を解剖する
第18節 肩関節を解剖する
第19節 肘関節を解剖する
第20節 上腕骨の内部を解剖する
第21節 手首の関節を解剖する
第22節 手内の関節を解剖する
第3章 体壁
第1節 背部の浅層を解剖する
第2節 固有背筋を解剖する
第3節 後頭下を解剖する
第4節 脊柱管を開く
第5節 脊柱管の内容を観察する
第6節 取り出した脊髄を観察する
第7節 胸壁を解剖する
第8節 下腹部の皮膚を切り取る
第9節 腹壁外側部の筋を解剖する
第10節 腹直筋を解剖する
第11節 前腹壁を切り開く
第12節 前腹壁下部の内面を観察する
第13節 腹部内臓の表層を観察する
第4章 胸腔
第1節 胸郭を切除する
第2節 胸部内臓を原位置で観察する
第3節 胸膜腔を解剖する
第4節 肺を解剖する
第5節 頸根部を解剖する
第6節 上縦隔で大血管を観察する
第7節 心膜腔を切り開く
第8節 心臓を切り出す
第9節 心臓壁の血管を解剖する
第10節 心臓の解剖(1) 心房と心室を分離する
第11節 心臓の解剖(2) 心臓の部屋を切り開く
第12節 上縦隔を解剖する
第13節 後縦隔を解剖する
第5章 腹腔
第1節 腹部内臓を原位置で観察する
第2節 胃の周辺の間膜を観察する
第3節 網嚢を観察する
第4節 間膜と腹膜腔を観察する
第5節 胃の周辺の動脈を解剖する
第6節 小腸と大腸前半の動脈を解剖する
第7節 大腸後半の動脈を解剖する
第8節 門脈とその周辺を解剖する
第9節 腸管を切り出す
第10節 切り出した腸管を観察する
第11節 胃を取り出して解剖する
第12節 肝臓を取り出す
第13節 取り出した肝臓を解剖する
第14節 十二指腸,膵臓,脾臓を取り出して解剖する
第15節 腎臓と副腎を解剖する
第16節 体幹後壁の動脈を観察する
第17節 体幹後壁の静脈を観察する
第18節 交感神経幹を観察する
第19節 横隔膜を解剖する
第20節 後腹壁で筋と腰神経叢を解剖する
第21節 腰椎で体幹を分断する
第6章 下肢
第1節 下肢の皮膚を切り取る
第2節 下肢の皮下を解剖する
第3節 大腿前面で大腿三角を開放する
第4節 大腿前面で大腿三角を解剖する
第5節 大腿前面の伸筋と内転筋管を解剖する
第6節 大腿内側の内転筋群を解剖する
第7節 殿筋群を解剖する
第8節 殿部の深層を解剖する
第9節 大腿後面の屈筋群を解剖する
第10節 膝窩を解剖する
第11節 下腿後面の浅い屈筋を解剖する
第12節 下腿外側面と前面を解剖する
第13節 下腿前面と足背で血管と神経を解剖する
第14節 下腿後面の深層を解剖する
第15節 足底の浅層を解剖する
第16節 足底の深層を解剖する
第17節 股関節を剖出する
第18節 股関節を解剖する
第19節 膝関節を剖出し開放する
第20節 膝関節を解剖する
第21節 距腿関節を解剖する
第22節 足の関節を解剖する
第7章 骨盤
第1節 骨盤の内面を観察する
第2節 [男性] 陰嚢と精索を解剖する [女性] 外陰部を観察する
第3節 [男性] 精巣と精巣上体を解剖する
第4節 [男性] 会陰部の浅層を解剖する [女性] 会陰部の浅層を解剖する
第5節 [男性] 陰茎の浅層を解剖する [女性] 前庭球と陰核を解剖する
第6節 [男性] 陰茎の海綿体を解剖する
第7節 尿生殖隔膜を解剖する
第8節 骨盤隔膜を解剖する
第9節 骨盤壁を切半し取り外す
第10節 骨盤の動脈を解剖する
第11節 骨盤の神経を解剖する
第12節 [男性] 骨盤内臓を観察し取り出す [女性] 骨盤内臓を原位置で観察する
第13節 [男性] 膀胱,前立腺,尿道を解剖する [女性] 骨盤内臓を取り出す
第14節 [女性] 卵巣と卵管を観察する
第15節 [女性] 子宮と腟を解剖する
第16節 直腸と肛門を解剖する
第8章 頭部
第1節 頸部で血管と脳神経を確認する
第2節 顔面筋を解剖する
第3節 顔の血管・神経を解剖する
第4節 舌骨上筋群を解剖する
第5節 脳を取り出す
第6節 頭蓋腔で硬膜静脈洞を解剖する
第7節 頭部を切り離す準備をする
第8節 頭部を体幹から切り離す
第9節 咽頭壁と頸動脈鞘周辺を解剖する
第10節 咽頭を切り開いて内面を観察する
第11節 喉頭,気管,甲状腺を取り出して観察する
第12節 喉頭を外面から解剖する
第13節 喉頭の内部を解剖する
第14節 内頭蓋底で脳神経を解剖する
第15節 頭部を切半する
第16節 口腔を観察する
第17節 鼻腔,咽頭鼻部,口峡を観察する
第18節 側頭部を解剖する
第19節 側頭下窩を解剖する
第20節 顎関節と口腔底を解剖する
第21節 舌を取り出し,口蓋を解剖する
第22節 副鼻腔と翼口蓋神経節を解剖する
第23節 眼瞼と涙器を解剖する
第24節 眼窩上壁を開き,眼窩上部を解剖する
第25節 上方から眼窩深部を解剖する
第26節 前方から眼窩を解剖し,眼球を取り出す
第27節 外耳を解剖する
第28節 中耳を解剖する
第29節 内耳を解剖する
付録 骨学実習
第1節 全身の骨格を観察する
第2節 脊柱と胸郭を観察する
第3節 上肢の骨を観察する
第4節 骨盤・下肢の骨を観察する
第5節 頭蓋の骨を観察する
和文索引
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書評
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実習担当者にも薦めたい視覚に訴える実習書
書評者: 松村 讓兒 (杏林大学教授・解剖学)
人体解剖学実習は,医学部・歯学部の教員であっても,これにかかわることのない方にとっては「別世界の話」であり,その認識は「解剖学実習はどこの大学でも同じ」というものであろう。しかし,実際の実習の進め方はそれぞれの大学・教室によって異なる。これについては,近年のカリキュラム改変による実習時間の削減や,学生定員増に伴う教員不足などによる影響もあるが,それ以上に歴代の解剖学実習担当者による創意・工夫が大きな理由である。
このような解剖学実習のバリエーションに対し,従来,数多くの実習書が出版されてきた。いずれも著者によるさまざまな工夫が凝らされており,解剖学実習への思いが感じられる名著である。しかしながら,実際の実習で使用するとなると,必ずしも使いやすいとは言えない面があることも事実である。大学ごとの解剖手技やアプローチの違い,実習回数の違いなどにより,実習内容が振り分けしにくいためである。
本書は,長年にわたって解剖学実習を検討されてきた著者が,標準的な解剖手技をもとに,多くの大学が考案した工夫を加えるかたちで上梓されたものである。全8章(頸・体幹浅層/上肢/体壁/胸腔/腹腔/下肢/骨盤/頭部)は基本的には局所解剖の体裁を採っているが,最大の特徴は「視覚に訴える実習書」となっている点である。全ページ見開き構成となっており,精細なイラストレーション,実習手順の簡潔な記載,コラム形式の「Clinical View」「Lecture」など,短時間で実習への導入を促す工夫がなされている。「学生たちは図だけを見て解剖している?」という危惧に対して著者が提示した解決案と見てとれる。
本書で採用している解剖手順は,標準的解剖手技をベースに全国の大学で考案された工夫を加えたものである。著者が「序」に記されているように,筋を筋腹で切断する原則の見直し,肩甲骨を含めた上肢の離断法の採用など,既存の方法にかたくなになることなく,実際に即した手技を提唱している点は,実習の合理化に頭を痛ませている多くの解剖学教室で検討するに値するものであろう。
なお,いかなる実習書であっても,実習に使用する場合,担当者は「実習回数に即した振り分け」を行うことになる。その視点で本書をみると,掲載されている153節の実習項目は領域ごとに表層から深層に向かって配列されており,20~25回(頸・体幹浅層:2~3回/上肢:2~3回/体壁:2回/胸腔:3回/腹腔:3回/下肢:3~4回/骨盤:2~3回/頭部:3~4回)で修了できるように想定されている。本書の内容が細かく153節に分けられているのは,各大学における「振り分け」の多様性を最大限に考慮した上での方針であろう。
以上,本書には,解剖実習のあり方に対する著者の姿勢が提示されている。本書が学生のみならず,実習担当者にとっても力強い道標となることを確信している。
実習内容が単元ごとにまとまったわかりやすい実習書
書評者: 石田 肇 (琉球大学大学院医学研究科教授・人体解剖学講座)
山形大学の学生時代に,浦良治先生の『人体解剖学実習』を用いて勉強させていただいたことを,今も鮮明に覚えている。ラテン語の世界に触れた最初の感動があった。長崎大学に奉職した折には,浦先生の実習書を使った。その後,札幌医科大学では,大学独自の実習書で指導に当たった。1998年に琉球大学に赴任してからは,定番である寺田春水先生・藤田恒夫先生の『解剖実習の手びき』を用いてきた。それぞれに素晴らしい実習書であった。最近では,2013年に,『Gray’s Clinical Photographic Dissector of the Human Body』が出版されたので,これも取り寄せてみた。
しかしこれらの実習書を使う医学生から,「楔形に切り取る」の「楔形」がわからない,「あばた状に」の「あばた」がわからないといった声をきくことが多くなった。他の大学医学部の教授に聞いても,同じような状況で,いろいろ模索しておられるようだ。
このたび,2013年3月に坂井建雄先生の『解剖実習カラーテキスト』が出版された。そこで,琉球大学では,この実習書を採用することにした。実は,2012年の春に,坂井建雄先生から実習書の出版計画をお聞きし,草稿の資料をいただき,4年生の臨床解剖実習で使ってみた。私もほぼ1か月毎日参加した。
まず,実習内容が図とともに,見開き2ページにまとめてあり,とてもわかりやすい。解剖の手順が,箇条書きで述べてある点も素晴らしい。
本書に示されている実習の手順を少し紹介する。背部等の筋の解剖は,学生にはわかりにくいところである。本書では,筋を起始か停止,もしくはその両方で切断するが,支配神経は残す方法が採られている。これは,肉眼解剖学の基本であり,学生にもわかりやすい。骨盤部の解剖,特に会陰部の解剖手技は簡潔明瞭である。さらに,中耳の解剖は,いつも至難の業であるが,内頭蓋底から入る方法はかなり良いのではないかと思われる。頭部と体幹との切り離しも困難を極めるが,後頭骨を広く開放することにより解決している。これで,迷走神経,交感神経幹,さらには舌咽神経が保存できる。まだまだ良い点はいくつもあるが,紙面の都合上省略する。4年生の評判も上々であった。
実際に本書を見てみると,“Lecture”と“Clinical View”がほぼ毎節についていて,学生の理解を深めると思われる。実習内容が単元ごとにコンパクトにまとめられているため,各大学の実際に合わせた使い方もできるものと思う。この秋からの解剖実習が楽しみである。
以上,実際に『解剖実習カラーテキスト』を用いて,解剖実習を行った者として,この実習書を強くお薦めしたい。
書評者: 松村 讓兒 (杏林大学教授・解剖学)
人体解剖学実習は,医学部・歯学部の教員であっても,これにかかわることのない方にとっては「別世界の話」であり,その認識は「解剖学実習はどこの大学でも同じ」というものであろう。しかし,実際の実習の進め方はそれぞれの大学・教室によって異なる。これについては,近年のカリキュラム改変による実習時間の削減や,学生定員増に伴う教員不足などによる影響もあるが,それ以上に歴代の解剖学実習担当者による創意・工夫が大きな理由である。
このような解剖学実習のバリエーションに対し,従来,数多くの実習書が出版されてきた。いずれも著者によるさまざまな工夫が凝らされており,解剖学実習への思いが感じられる名著である。しかしながら,実際の実習で使用するとなると,必ずしも使いやすいとは言えない面があることも事実である。大学ごとの解剖手技やアプローチの違い,実習回数の違いなどにより,実習内容が振り分けしにくいためである。
本書は,長年にわたって解剖学実習を検討されてきた著者が,標準的な解剖手技をもとに,多くの大学が考案した工夫を加えるかたちで上梓されたものである。全8章(頸・体幹浅層/上肢/体壁/胸腔/腹腔/下肢/骨盤/頭部)は基本的には局所解剖の体裁を採っているが,最大の特徴は「視覚に訴える実習書」となっている点である。全ページ見開き構成となっており,精細なイラストレーション,実習手順の簡潔な記載,コラム形式の「Clinical View」「Lecture」など,短時間で実習への導入を促す工夫がなされている。「学生たちは図だけを見て解剖している?」という危惧に対して著者が提示した解決案と見てとれる。
本書で採用している解剖手順は,標準的解剖手技をベースに全国の大学で考案された工夫を加えたものである。著者が「序」に記されているように,筋を筋腹で切断する原則の見直し,肩甲骨を含めた上肢の離断法の採用など,既存の方法にかたくなになることなく,実際に即した手技を提唱している点は,実習の合理化に頭を痛ませている多くの解剖学教室で検討するに値するものであろう。
なお,いかなる実習書であっても,実習に使用する場合,担当者は「実習回数に即した振り分け」を行うことになる。その視点で本書をみると,掲載されている153節の実習項目は領域ごとに表層から深層に向かって配列されており,20~25回(頸・体幹浅層:2~3回/上肢:2~3回/体壁:2回/胸腔:3回/腹腔:3回/下肢:3~4回/骨盤:2~3回/頭部:3~4回)で修了できるように想定されている。本書の内容が細かく153節に分けられているのは,各大学における「振り分け」の多様性を最大限に考慮した上での方針であろう。
以上,本書には,解剖実習のあり方に対する著者の姿勢が提示されている。本書が学生のみならず,実習担当者にとっても力強い道標となることを確信している。
実習内容が単元ごとにまとまったわかりやすい実習書
書評者: 石田 肇 (琉球大学大学院医学研究科教授・人体解剖学講座)
山形大学の学生時代に,浦良治先生の『人体解剖学実習』を用いて勉強させていただいたことを,今も鮮明に覚えている。ラテン語の世界に触れた最初の感動があった。長崎大学に奉職した折には,浦先生の実習書を使った。その後,札幌医科大学では,大学独自の実習書で指導に当たった。1998年に琉球大学に赴任してからは,定番である寺田春水先生・藤田恒夫先生の『解剖実習の手びき』を用いてきた。それぞれに素晴らしい実習書であった。最近では,2013年に,『Gray’s Clinical Photographic Dissector of the Human Body』が出版されたので,これも取り寄せてみた。
しかしこれらの実習書を使う医学生から,「楔形に切り取る」の「楔形」がわからない,「あばた状に」の「あばた」がわからないといった声をきくことが多くなった。他の大学医学部の教授に聞いても,同じような状況で,いろいろ模索しておられるようだ。
このたび,2013年3月に坂井建雄先生の『解剖実習カラーテキスト』が出版された。そこで,琉球大学では,この実習書を採用することにした。実は,2012年の春に,坂井建雄先生から実習書の出版計画をお聞きし,草稿の資料をいただき,4年生の臨床解剖実習で使ってみた。私もほぼ1か月毎日参加した。
まず,実習内容が図とともに,見開き2ページにまとめてあり,とてもわかりやすい。解剖の手順が,箇条書きで述べてある点も素晴らしい。
本書に示されている実習の手順を少し紹介する。背部等の筋の解剖は,学生にはわかりにくいところである。本書では,筋を起始か停止,もしくはその両方で切断するが,支配神経は残す方法が採られている。これは,肉眼解剖学の基本であり,学生にもわかりやすい。骨盤部の解剖,特に会陰部の解剖手技は簡潔明瞭である。さらに,中耳の解剖は,いつも至難の業であるが,内頭蓋底から入る方法はかなり良いのではないかと思われる。頭部と体幹との切り離しも困難を極めるが,後頭骨を広く開放することにより解決している。これで,迷走神経,交感神経幹,さらには舌咽神経が保存できる。まだまだ良い点はいくつもあるが,紙面の都合上省略する。4年生の評判も上々であった。
実際に本書を見てみると,“Lecture”と“Clinical View”がほぼ毎節についていて,学生の理解を深めると思われる。実習内容が単元ごとにコンパクトにまとめられているため,各大学の実際に合わせた使い方もできるものと思う。この秋からの解剖実習が楽しみである。
以上,実際に『解剖実習カラーテキスト』を用いて,解剖実習を行った者として,この実習書を強くお薦めしたい。
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。