活動性を高める授業づくり
協同学習のすすめ
現場で活躍する看護師を育てる授業のあり方とは
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学生をグループに分けて話し合いをさせるだけでは協同学習は成立しない。学生が主体的、積極的に授業に参加するためには仕掛けが必要。本書は、協同学習の定義や基本のみならず、従来の講義式授業に協同学習の要素を取り入れる方法についても説明、さらには協同学習で看護技術の授業を展開する過程を丁寧に解説している。膨大な知識を注ぎ込む授業のあり方に疑問を感じている教師の皆様に読んでいただきたい。
著 | 安永 悟 |
---|---|
発行 | 2012年02月判型:B5頁:160 |
ISBN | 978-4-260-01486-1 |
定価 | 2,640円 (本体2,400円+税) |
更新情報
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
まえがき
私たち教育者にとってもっとも大きな使命は学生の変化成長を促すことです。学生生活のあらゆる場面,あらゆる機会を活かし,「いま」と「いまから」のより豊かな人生を実現するために,学びの場を創造・実践し,学生の変化成長を保証することです。
とくに,学生生活の基盤となる日々の授業がもっとも大切な教育の場であり,教育の機会となります。授業の質が学生の変化成長と直結します。本書では看護教育を念頭に,協同学習の理論と技法を手がかりとしながら「協同による活動性の高い授業づくり」について検討します。
対象となる授業
本書では大学や専門学校での授業を検討対象としています*1。そこには人文社会学系の授業も自然科学系の授業も含まれます。むろん看護教育のすべての授業が対象となります。また,授業形式も講義だけでなく演習や実習も検討の対象となります。大学や専門学校で開講されているすべての授業に本書で紹介する活動性の高い授業づくりの考え方と方法が使えます*2。
本書では受講生50名程度のクラスを想定しています。協同による授業づくりは30名ほどの少人数クラスを対象とするのが理想的です。しかし,これまでの経験から,100名ほどの多人数クラスでも十分に活用でき,期待にかなう成果がえられています1)。
本書の構成
本書は,2010年4月から12回にわたり雑誌『看護教育』に連載した「活動性を高める授業づくり:協同学習のすすめ」2)の内容を組み替え,加筆修正したものです。
今回の書籍化にあたり,協同による授業づくりを初めて学ばれる方にとってもわかりやすく,授業で試したくなるような構成を試みました。一般論ですが,協同学習をご存じない先生の授業は,教師中心の一方向的な授業になりがちです。そのような授業では,どうしても学生の活動性が低くなり,期待する成果をえることが難しくなります。そこで本書では活動性の高い授業を演出する具体的な方法を,それもその気になれば次の授業からでも使える簡単な工夫を提案することから始めることにしました。それらの工夫を知っていただくことにより,本書が提案する協同による授業づくりのイメージを皆さんと共有したいと思います。そのうえで,活動性の高い授業づくりの背後にある協同学習の考え方を説明することにしました。このような構成にすることにより,現在の自分の授業をふり返りながら,少しずつ協同学習の世界に皆さんを誘うことができればと考えました。そこで本書では次に示す序章とそれに続く7つの章を準備しました。
まず序章では,本書の目的と願いを述べます。序章で本書の理念を理解していただいたのち,1章では教師中心の一方向的な授業を活性化する具体的な工夫を紹介します。2章では,その具体的な工夫の背後にある協同学習の技法を,また3章では,活動性の高い授業づくりのポイントを解説します。そして4章で,協同による活動性の高い授業づくりを根底から支える協同学習の考え方(理論)を紹介します。この序章から4章までが,本書における基礎基本となります。
次の5章では,基礎看護技術の授業を取り上げます。4章までの基礎基本をもとに,看護技術も仲間と学び合うことができることを,具体例を交えながら紹介します。
さらに6章では,小グループをもちいた定評のある学習方略を,活動性の高い授業づくりの観点から検討します。取り上げる学習方略はLTD話し合い学習法,プロジェクト型学習法,PBLテュートリアルの3つです。
最後の7章では,活動性の高い授業づくりに本格的に取り組むために,どうしても避けて通れない教育パラダイムと教育観について検討します。また,教師に求められる役割とスキル,さらには同僚との授業づくりにも言及します。
本書はどこから読んでいただいても構いませんが,序章からお読みいただければ,本書の意図するところを,より深くご理解いただけると思います。
なお,巻末には,私の授業でもちいている小道具を資料としてあげておきました。授業づくりの参考にしてください。また,本書で紹介した協同による活動性の高い授業を実際に体験した看護師や看護学生の皆さんの意見や感想も載せておきました。本書で紹介する授業づくりを知る一助になればと思っています。
執筆スタイル
「授業づくり」をテーマとする本書では,できるかぎり私が実践している授業スタイルを紙上で再現したいという希望があります。そうすることで具体的な授業場面をイメージしやすくなり,授業づくりの参考になるのではないかという期待をもっています。そこで本書の執筆にあたっては以下の4点を意識しました。
(1)語り口調 少しでも臨場感を醸し出したいという思いから,筆者の「私」から読者の「皆さん」に語りかけるスタイルにしました。
(2)イラスト 授業を具体的にイメージしてもらうために,適宜,授業場面のイラストを加えました。
(3)スライド 私が授業で多用している自作のスライドをできるだけ多く掲載することにしました。スライドでは授業内容を要約したり,活動内容を指示しています。これが私の授業の特徴にもなっています。
(4)コラム 本書にコラム欄を設けました。これは,連載当時,読者との対話を深める目的で「連載通信*3」というページを設けていました。そこでは,読者からの意見や質問に私が答えるという形式をとっていました。今回の書籍化にあたり,その内容を「読者の声」と「Q&A」というコラムとして掲載することにしました。
むろん私の授業は完成品ではありません。協同学習の考え方や方法を取り入れながら,試行錯誤をくり返しているのが現状です。あくまでも協同による授業づくりの一例としてご理解ください。
読者へのアドバイス
最近,協同学習への関心が急速に高まっています。小・中学校や高校のみならず,大学や専門学校などの高等教育機関においても同様に注目を集めています3)。それにともない,協同学習の専門書や解説書の出版も増えています4)5)。なかには協同学習の技法を活用しながら学ぶことを前提とした心理学の概論書6)も出版されています。主な書籍は本書の巻末にある文献リストを参照してください。
また,協同学習に関連する学会や研究会や研修会に参加される方も多くなってきました。代表的な学会として日本協同教育学会(通称,JASCE)*4があります。この学会には小・中学校の先生のみならず,高校の先生も,さらには多くの大学の先生も,専門科目や専門領域の枠を越えて参加されています。むろん看護師や看護教師の皆さんも数多く参加されています。JASCEが主催している全国大会や「協同学習ワークショップ」への参加者も増えています。また,各地で協同学習に関連した研究会*5も開かれており,協同学習に関心をもつ多くの皆さんが参加し,交流を深めています。
初学者の皆さんへ このように協同学習への関心は高まっていますが,協同学習を本格的に学ばれた方や実践されている方は,まだ少ないのが現状です。今回,本書で初めて協同学習について学ばれている方も多いかと思います。そんな初学者の皆さんには,本書で紹介する協同学習の基本的な考え方や簡単な方法,さらには協同による授業づくりのポイントを,実際の授業でぜひ試してもらいたいと思っています。きっと,真剣に学び合う学生の姿と出会い,少なからず感動されると思います。真剣に学び合う学生の姿は,教師にとっては何物にも代えがたい喜びとなります。この学生の姿を励みに協同学習についての学びと実践を,一歩ずつ深めていただければと思います。
経験者の皆さんへ 協同学習をすでに実践されている経験者の皆さんにとっては,本書が授業改善のヒントとなり,ご自身の実践をふり返る機会になればと期待しています。その際,単なるグループ学習と協同学習の違い,協同学習の成果を説明する基礎理論,さらには協同学習の基盤となる教育パラダイムや教育観などについて,再度,吟味されることをお勧めします。これらの理論的な考察を深め,実際の授業経験と関連づけることにより,協同学習の理解が一段と深まります。その結果,自他の授業の見方が変わり,授業実践の質が変わります。授業づくりは実に奥深いものです。実践を積み重ねるごとに新しい発見があります。
自分のことばへの翻訳 私の専門は心理学です。心理学のなかでも教授学習の基礎理論を長らく研究対象としてきました。そのために,授業を考える際,どうしても,理屈っぽくなり,難解なことば遣いになってしまうという癖があります。
この点に留意され,本書の内容を理解する際,皆さんがつね日頃お使いになっていることばで,自分の世界に翻訳しながら読み進めてください。自分の世界と関連づけながら読まれると,理解しやすく,長く記憶にも残ります。できれば,協同学習に関心のある同僚の皆さんと一緒に,協力しながら学んでいただければ,理解は一層深まります。
本書が,皆さんの活動性の高い授業づくりに少しでも参考になれば幸いです。
2012年2月
安永 悟
*1 以後,大学や専門学校などの高等教育機関を代表して「学校」と表記します。
*2 本書の内容は小・中学校や高校でも使えます。「協同による活動性の高い授業づくり」は教育の「不易」といえます。教育の不易とは,時代が変わっても,対象が変わっても変化しない,教育の本質を表すことばです。反対語が「流行」です。
*3 本書のコラム欄は,授業場面に置き換えれば,本書1章(p. 11)で紹介する「授業通信」の役割を果たしています。「授業通信」は学生と教師の対話の場として活用しています。本書のコラム欄で,授業通信の一端を味わっていただければと思っています。
*4 詳しくは学会ホームページ http://jasce.jp/ をご覧ください。
*5 日本協同教育学会九州支部が主催している研究会として「授業づくり研究会」があります。詳しくは安永研究室のホームページ http://www.std.mii.kurume-u.ac.jp/~yasunaga/ をご覧ください。
私たち教育者にとってもっとも大きな使命は学生の変化成長を促すことです。学生生活のあらゆる場面,あらゆる機会を活かし,「いま」と「いまから」のより豊かな人生を実現するために,学びの場を創造・実践し,学生の変化成長を保証することです。
とくに,学生生活の基盤となる日々の授業がもっとも大切な教育の場であり,教育の機会となります。授業の質が学生の変化成長と直結します。本書では看護教育を念頭に,協同学習の理論と技法を手がかりとしながら「協同による活動性の高い授業づくり」について検討します。
対象となる授業
本書では大学や専門学校での授業を検討対象としています*1。そこには人文社会学系の授業も自然科学系の授業も含まれます。むろん看護教育のすべての授業が対象となります。また,授業形式も講義だけでなく演習や実習も検討の対象となります。大学や専門学校で開講されているすべての授業に本書で紹介する活動性の高い授業づくりの考え方と方法が使えます*2。
本書では受講生50名程度のクラスを想定しています。協同による授業づくりは30名ほどの少人数クラスを対象とするのが理想的です。しかし,これまでの経験から,100名ほどの多人数クラスでも十分に活用でき,期待にかなう成果がえられています1)。
本書の構成
本書は,2010年4月から12回にわたり雑誌『看護教育』に連載した「活動性を高める授業づくり:協同学習のすすめ」2)の内容を組み替え,加筆修正したものです。
今回の書籍化にあたり,協同による授業づくりを初めて学ばれる方にとってもわかりやすく,授業で試したくなるような構成を試みました。一般論ですが,協同学習をご存じない先生の授業は,教師中心の一方向的な授業になりがちです。そのような授業では,どうしても学生の活動性が低くなり,期待する成果をえることが難しくなります。そこで本書では活動性の高い授業を演出する具体的な方法を,それもその気になれば次の授業からでも使える簡単な工夫を提案することから始めることにしました。それらの工夫を知っていただくことにより,本書が提案する協同による授業づくりのイメージを皆さんと共有したいと思います。そのうえで,活動性の高い授業づくりの背後にある協同学習の考え方を説明することにしました。このような構成にすることにより,現在の自分の授業をふり返りながら,少しずつ協同学習の世界に皆さんを誘うことができればと考えました。そこで本書では次に示す序章とそれに続く7つの章を準備しました。
まず序章では,本書の目的と願いを述べます。序章で本書の理念を理解していただいたのち,1章では教師中心の一方向的な授業を活性化する具体的な工夫を紹介します。2章では,その具体的な工夫の背後にある協同学習の技法を,また3章では,活動性の高い授業づくりのポイントを解説します。そして4章で,協同による活動性の高い授業づくりを根底から支える協同学習の考え方(理論)を紹介します。この序章から4章までが,本書における基礎基本となります。
次の5章では,基礎看護技術の授業を取り上げます。4章までの基礎基本をもとに,看護技術も仲間と学び合うことができることを,具体例を交えながら紹介します。
さらに6章では,小グループをもちいた定評のある学習方略を,活動性の高い授業づくりの観点から検討します。取り上げる学習方略はLTD話し合い学習法,プロジェクト型学習法,PBLテュートリアルの3つです。
最後の7章では,活動性の高い授業づくりに本格的に取り組むために,どうしても避けて通れない教育パラダイムと教育観について検討します。また,教師に求められる役割とスキル,さらには同僚との授業づくりにも言及します。
本書はどこから読んでいただいても構いませんが,序章からお読みいただければ,本書の意図するところを,より深くご理解いただけると思います。
なお,巻末には,私の授業でもちいている小道具を資料としてあげておきました。授業づくりの参考にしてください。また,本書で紹介した協同による活動性の高い授業を実際に体験した看護師や看護学生の皆さんの意見や感想も載せておきました。本書で紹介する授業づくりを知る一助になればと思っています。
執筆スタイル
「授業づくり」をテーマとする本書では,できるかぎり私が実践している授業スタイルを紙上で再現したいという希望があります。そうすることで具体的な授業場面をイメージしやすくなり,授業づくりの参考になるのではないかという期待をもっています。そこで本書の執筆にあたっては以下の4点を意識しました。
(1)語り口調 少しでも臨場感を醸し出したいという思いから,筆者の「私」から読者の「皆さん」に語りかけるスタイルにしました。
(2)イラスト 授業を具体的にイメージしてもらうために,適宜,授業場面のイラストを加えました。
(3)スライド 私が授業で多用している自作のスライドをできるだけ多く掲載することにしました。スライドでは授業内容を要約したり,活動内容を指示しています。これが私の授業の特徴にもなっています。
(4)コラム 本書にコラム欄を設けました。これは,連載当時,読者との対話を深める目的で「連載通信*3」というページを設けていました。そこでは,読者からの意見や質問に私が答えるという形式をとっていました。今回の書籍化にあたり,その内容を「読者の声」と「Q&A」というコラムとして掲載することにしました。
むろん私の授業は完成品ではありません。協同学習の考え方や方法を取り入れながら,試行錯誤をくり返しているのが現状です。あくまでも協同による授業づくりの一例としてご理解ください。
読者へのアドバイス
最近,協同学習への関心が急速に高まっています。小・中学校や高校のみならず,大学や専門学校などの高等教育機関においても同様に注目を集めています3)。それにともない,協同学習の専門書や解説書の出版も増えています4)5)。なかには協同学習の技法を活用しながら学ぶことを前提とした心理学の概論書6)も出版されています。主な書籍は本書の巻末にある文献リストを参照してください。
また,協同学習に関連する学会や研究会や研修会に参加される方も多くなってきました。代表的な学会として日本協同教育学会(通称,JASCE)*4があります。この学会には小・中学校の先生のみならず,高校の先生も,さらには多くの大学の先生も,専門科目や専門領域の枠を越えて参加されています。むろん看護師や看護教師の皆さんも数多く参加されています。JASCEが主催している全国大会や「協同学習ワークショップ」への参加者も増えています。また,各地で協同学習に関連した研究会*5も開かれており,協同学習に関心をもつ多くの皆さんが参加し,交流を深めています。
初学者の皆さんへ このように協同学習への関心は高まっていますが,協同学習を本格的に学ばれた方や実践されている方は,まだ少ないのが現状です。今回,本書で初めて協同学習について学ばれている方も多いかと思います。そんな初学者の皆さんには,本書で紹介する協同学習の基本的な考え方や簡単な方法,さらには協同による授業づくりのポイントを,実際の授業でぜひ試してもらいたいと思っています。きっと,真剣に学び合う学生の姿と出会い,少なからず感動されると思います。真剣に学び合う学生の姿は,教師にとっては何物にも代えがたい喜びとなります。この学生の姿を励みに協同学習についての学びと実践を,一歩ずつ深めていただければと思います。
経験者の皆さんへ 協同学習をすでに実践されている経験者の皆さんにとっては,本書が授業改善のヒントとなり,ご自身の実践をふり返る機会になればと期待しています。その際,単なるグループ学習と協同学習の違い,協同学習の成果を説明する基礎理論,さらには協同学習の基盤となる教育パラダイムや教育観などについて,再度,吟味されることをお勧めします。これらの理論的な考察を深め,実際の授業経験と関連づけることにより,協同学習の理解が一段と深まります。その結果,自他の授業の見方が変わり,授業実践の質が変わります。授業づくりは実に奥深いものです。実践を積み重ねるごとに新しい発見があります。
自分のことばへの翻訳 私の専門は心理学です。心理学のなかでも教授学習の基礎理論を長らく研究対象としてきました。そのために,授業を考える際,どうしても,理屈っぽくなり,難解なことば遣いになってしまうという癖があります。
この点に留意され,本書の内容を理解する際,皆さんがつね日頃お使いになっていることばで,自分の世界に翻訳しながら読み進めてください。自分の世界と関連づけながら読まれると,理解しやすく,長く記憶にも残ります。できれば,協同学習に関心のある同僚の皆さんと一緒に,協力しながら学んでいただければ,理解は一層深まります。
本書が,皆さんの活動性の高い授業づくりに少しでも参考になれば幸いです。
2012年2月
安永 悟
*1 以後,大学や専門学校などの高等教育機関を代表して「学校」と表記します。
*2 本書の内容は小・中学校や高校でも使えます。「協同による活動性の高い授業づくり」は教育の「不易」といえます。教育の不易とは,時代が変わっても,対象が変わっても変化しない,教育の本質を表すことばです。反対語が「流行」です。
*3 本書のコラム欄は,授業場面に置き換えれば,本書1章(p. 11)で紹介する「授業通信」の役割を果たしています。「授業通信」は学生と教師の対話の場として活用しています。本書のコラム欄で,授業通信の一端を味わっていただければと思っています。
*4 詳しくは学会ホームページ http://jasce.jp/ をご覧ください。
*5 日本協同教育学会九州支部が主催している研究会として「授業づくり研究会」があります。詳しくは安永研究室のホームページ http://www.std.mii.kurume-u.ac.jp/~yasunaga/ をご覧ください。
目次
開く
まえがき
謝辞
序章 めざす授業を共有する
A 本書の目的と願い
教育目的は「現場で活躍できる看護師の育成」
B 学生を成長させ,満足させる教育
看護教育の現状
学校で成功する3つの鉄則
協同学習のすすめ
1章 学生の参加を促す
A 授業のふり返り
B 活動時間の確保
授業記録紙の活用
活動性を高める工夫
C 授業通信のすすめ
授業通信の編集意図と効果
学生と共につくる授業通信
ポートフォリオ資料としての授業通信
D 小グループの活用
学生をつなぐ
異質なグループの編成
手軽なグループの編成方法
E 学び合える仲間づくり
自己紹介の目的と方法
F 活動のふり返りと種明かし
傾聴とミラーリング
理解の定着を促す確認タイム
2章 授業を構造化する
A 教授学習ユニット
教授学習ユニットの段階
課題明示とグループのコントロール
教授学習ユニットに対する誤解
教授学習ユニットでめざすもの
B 対話中心授業の実際
C 授業のアレンジ
D 基本的な学び合いの技法
ラウンド=ロビン
シンク=ペア=シェア
技法のアレンジ
特派員
ジグソー学習法
3章 授業づくりのポイントをつかむ
A 育てたい学生像の明確化
B 逆算思考による教育目的の具体化
C 授業の見通し
短期の見通し:授業1コマの流れ
中期の見通し:授業科目の展開
長期の見通し:授業科目の位置づけ
D 授業の規範づくり
受講にあたっての注意事項
オンとオフの明確化
E 授業づくりの視点
学ぶ価値の発見
協同を促す課題
自己効力感を高める授業
存在感を高める授業
F 授業成果の評価方法
4章 協同学習を知る
A 協同学習の定義
B 協同の精神
C 協同学習の基本要素
ジョンソン兄弟の5要素
ケーガンの4要素
D 協同学習とグループ学習の異同
支持的風土
E 協同学習の効果
5章 看護技術を協同で学ぶ
A 看護技術教育でめざすもの
B 観察遂行による看護技術教育
教師中心授業の弊害
C 協同による技術教育の工夫
実践例
D ジグソー学習法による看護技術教育
ジグソー学習法の実践例
ジグソー学習法のアレンジ
6章 グループ活動中心の授業づくりを知る
A LTD話し合い学習法
LTD過程プランの説明
LTD実践上の留意点
LTDの効果
B プロジェクト型学習法
プロジェクト=ベース学習法(PB学習法)
グループ=インベスティゲーション(GI)
プロジェクト型学習法実施の留意点
C PBLテュートリアル
PBLテュートリアルの定義
PBLの構成要素と進め方
PBLの効果
PBLの問題点と対処法
D グループ活動中心の授業づくりと協同学習
7章 活動性の高い授業づくりをめざす
A 再考「協同の意義」
B 教師に求められる認識の変更
教育パラダイムにそった判断
C 教師に求められる役割とスキル
教師のとるべき役割
実践に必要な3つのスキル
D 同僚との授業づくり
研究的実践とは
研究的実践の位置づけと働き
実践的FD
文献
資料
索引
謝辞
序章 めざす授業を共有する
A 本書の目的と願い
教育目的は「現場で活躍できる看護師の育成」
B 学生を成長させ,満足させる教育
看護教育の現状
学校で成功する3つの鉄則
協同学習のすすめ
1章 学生の参加を促す
A 授業のふり返り
B 活動時間の確保
授業記録紙の活用
活動性を高める工夫
C 授業通信のすすめ
授業通信の編集意図と効果
学生と共につくる授業通信
ポートフォリオ資料としての授業通信
D 小グループの活用
学生をつなぐ
異質なグループの編成
手軽なグループの編成方法
E 学び合える仲間づくり
自己紹介の目的と方法
F 活動のふり返りと種明かし
傾聴とミラーリング
理解の定着を促す確認タイム
2章 授業を構造化する
A 教授学習ユニット
教授学習ユニットの段階
課題明示とグループのコントロール
教授学習ユニットに対する誤解
教授学習ユニットでめざすもの
B 対話中心授業の実際
C 授業のアレンジ
D 基本的な学び合いの技法
ラウンド=ロビン
シンク=ペア=シェア
技法のアレンジ
特派員
ジグソー学習法
3章 授業づくりのポイントをつかむ
A 育てたい学生像の明確化
B 逆算思考による教育目的の具体化
C 授業の見通し
短期の見通し:授業1コマの流れ
中期の見通し:授業科目の展開
長期の見通し:授業科目の位置づけ
D 授業の規範づくり
受講にあたっての注意事項
オンとオフの明確化
E 授業づくりの視点
学ぶ価値の発見
協同を促す課題
自己効力感を高める授業
存在感を高める授業
F 授業成果の評価方法
4章 協同学習を知る
A 協同学習の定義
B 協同の精神
C 協同学習の基本要素
ジョンソン兄弟の5要素
ケーガンの4要素
D 協同学習とグループ学習の異同
支持的風土
E 協同学習の効果
5章 看護技術を協同で学ぶ
A 看護技術教育でめざすもの
B 観察遂行による看護技術教育
教師中心授業の弊害
C 協同による技術教育の工夫
実践例
D ジグソー学習法による看護技術教育
ジグソー学習法の実践例
ジグソー学習法のアレンジ
6章 グループ活動中心の授業づくりを知る
A LTD話し合い学習法
LTD過程プランの説明
LTD実践上の留意点
LTDの効果
B プロジェクト型学習法
プロジェクト=ベース学習法(PB学習法)
グループ=インベスティゲーション(GI)
プロジェクト型学習法実施の留意点
C PBLテュートリアル
PBLテュートリアルの定義
PBLの構成要素と進め方
PBLの効果
PBLの問題点と対処法
D グループ活動中心の授業づくりと協同学習
7章 活動性の高い授業づくりをめざす
A 再考「協同の意義」
B 教師に求められる認識の変更
教育パラダイムにそった判断
C 教師に求められる役割とスキル
教師のとるべき役割
実践に必要な3つのスキル
D 同僚との授業づくり
研究的実践とは
研究的実践の位置づけと働き
実践的FD
文献
資料
索引
書評
開く
学び合う学生の姿に感動を味わいたい方は試みて (雑誌『看護教育』より)
書評者: 近藤 麻理 (東邦大学看護学部教授)
私が教育学の本を初めて開いたときに目に入った挿絵には,長いムチを持って教壇に立つ教師の恐ろしい姿があり,18世紀頃に至るまで子どもは「小さな大人」であると認識され,ムチによる教育が当たり前だったとの文言に驚いたものだ。現在でも,子どもへの体罰は是か非かなどの議論が巻き起こるのだから,教育にかかわることは常に挑戦者であり続けることなのだと思う。看護教育者にとって,「こんな看護職になってほしい」との願いがあっても,ではどんな教育をすれば理想とする看護職が育つのか,まだ世界的なゴールデンスタンダードは示されていない。
私自身は試行錯誤の授業方法を模索するなかで,この本に出会って幸せな気持ちになれた。焦っていた自分に,もっと大切な「教育とは何か」を見つめ直す機会をくれたからだ。近年の教育においては,競争原理に基づいた競争パラダイムが重視され,教え込むことで理解や暗記を促すという方法が多用されてきた。しかし,本書で述べられている協同パラダイムでは,知識を得るためには他者との対話が重要であり,仲間や教師との積極的な対話を通して,学生の無限の可能性を引き出すような授業展開が教育者に求められている。
著者は,「教師は,自分自身の教育に対する考え方(教育観)をもっと自覚すべきです」,そして「自分の教育観は授業づくりに直接影響します」,さらに「より望ましい授業実践を求めて日々研鑚することが教師の務めといえます」と容赦なくズシンと響く言葉を投げかける。「教育観は何だ」と突然問われたら,即答は難しいのだと言い訳したくなるし,看護観はしっかりもっているつもりだから許してほしいと言いたくもなる。そんなとき著者は,「学生の成長を願って先生方が努力している姿は学生に伝わります」とホッとする言葉もかけてくれるのだ。
本書で学ぶと,グループ学習がそのまま協同パラダイムの実践ではなく,活動性の高い授業づくりに取り組む具体的な方法や考え方を理解してこそ,グループ活動が活かされることに気づかされる。第1章では学生の参加を促す,第3章では授業づくりのポイントをつかむ,さらに第5章では看護技術を協同で学ぶ,のように最後の7章まで知りたいことが満載である。しかも,著者の声が聞こえてきそうなほど心地よい話し言葉で書かれている。
学生が学ぶことの意味を見出すことで,学びが自分の成長の糧になり,人生を豊かにするとわかれば,学生は主体的にしかも貪欲に学び始めると著者は言う。だから,本書で協同学習の実践的な授業方法を学び,実際の授業で試し,学び合う学生の姿に感動を味わいたい方は試みてほしいのだと。私も,ぜひ感動したいと思う。
(『看護教育』2012年6月号掲載)
書評者: 近藤 麻理 (東邦大学看護学部教授)
私が教育学の本を初めて開いたときに目に入った挿絵には,長いムチを持って教壇に立つ教師の恐ろしい姿があり,18世紀頃に至るまで子どもは「小さな大人」であると認識され,ムチによる教育が当たり前だったとの文言に驚いたものだ。現在でも,子どもへの体罰は是か非かなどの議論が巻き起こるのだから,教育にかかわることは常に挑戦者であり続けることなのだと思う。看護教育者にとって,「こんな看護職になってほしい」との願いがあっても,ではどんな教育をすれば理想とする看護職が育つのか,まだ世界的なゴールデンスタンダードは示されていない。
私自身は試行錯誤の授業方法を模索するなかで,この本に出会って幸せな気持ちになれた。焦っていた自分に,もっと大切な「教育とは何か」を見つめ直す機会をくれたからだ。近年の教育においては,競争原理に基づいた競争パラダイムが重視され,教え込むことで理解や暗記を促すという方法が多用されてきた。しかし,本書で述べられている協同パラダイムでは,知識を得るためには他者との対話が重要であり,仲間や教師との積極的な対話を通して,学生の無限の可能性を引き出すような授業展開が教育者に求められている。
著者は,「教師は,自分自身の教育に対する考え方(教育観)をもっと自覚すべきです」,そして「自分の教育観は授業づくりに直接影響します」,さらに「より望ましい授業実践を求めて日々研鑚することが教師の務めといえます」と容赦なくズシンと響く言葉を投げかける。「教育観は何だ」と突然問われたら,即答は難しいのだと言い訳したくなるし,看護観はしっかりもっているつもりだから許してほしいと言いたくもなる。そんなとき著者は,「学生の成長を願って先生方が努力している姿は学生に伝わります」とホッとする言葉もかけてくれるのだ。
本書で学ぶと,グループ学習がそのまま協同パラダイムの実践ではなく,活動性の高い授業づくりに取り組む具体的な方法や考え方を理解してこそ,グループ活動が活かされることに気づかされる。第1章では学生の参加を促す,第3章では授業づくりのポイントをつかむ,さらに第5章では看護技術を協同で学ぶ,のように最後の7章まで知りたいことが満載である。しかも,著者の声が聞こえてきそうなほど心地よい話し言葉で書かれている。
学生が学ぶことの意味を見出すことで,学びが自分の成長の糧になり,人生を豊かにするとわかれば,学生は主体的にしかも貪欲に学び始めると著者は言う。だから,本書で協同学習の実践的な授業方法を学び,実際の授業で試し,学び合う学生の姿に感動を味わいたい方は試みてほしいのだと。私も,ぜひ感動したいと思う。
(『看護教育』2012年6月号掲載)
更新情報
-
更新情報はありません。
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