新生児学入門 第4版

もっと見る

看護学生、助産学生はもとより、臨床看護師、助産師、専門医に広く親しまれてきた本書は、新生児医療に携わる際の基本的な考えをまとめたサブテキスト。今回の改訂では全体に情報を刷新し、「産科医療補償制度」や「早期からの積極的栄養法」「骨形成と骨代謝」など、新しい項目を追加した。新生児を愛してやまない著者のその思想とともに、新生児学の奥深さをお届けする。
仁志田 博司
発行 2012年03月判型:B5頁:464
ISBN 978-4-260-01433-5
定価 6,380円 (本体5,800円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次

開く

第4版 序

 第3版を終えた時,小児科全体に匹敵する広がりにまでなった新生児学を1人でカバーすることは無理になったとの思いから,改訂はこれが最後と心に決めていた。夢のシルクロードの旅も奈良東大寺にゴールし,2008年に東京女子医科大学を定年退職すると同時に飛び乗った飛鳥II号で101日間の世界1周も終えた。そしてこれまでの戦場のような忙しい生活の中で,気になりながらも十分に考える時間がなく,澱のように心に溜まっていた諸々の事柄を,時間にとらわれずユックリと反芻するのを残された人生の楽しみにと心に描いていた。
 そのような冬眠モードに入っていた私を再びこの改訂第4版に向かわせたのは,旅先で非業の死を遂げたNICUでリハビリテーションに携わっていた若い学徒の遺品の中に『新生児学入門』があったという,担当の教員からの1通のメールであった。この『新生児学入門』は,臨床の現場で傍においてすぐ役立つ本ではなく,また受験勉強に役立つ教科書でもない。新生児医療とは,を考える糸口になる内容を中心にしており,私は冗談のように,寝る前に読む副読本のようなものだから,と言っていた。亡くなられた新生児医療を志した若い学徒が,旅の友として『新生児学入門』を持って行ってくれた,という思いは,生きている限りこの本に命をつぎ込まなければ亡くなられた方に申し訳が立たないと,私の心を熱くしたのである。
 しかし当然のことながら,日進月歩の新生児学にup-to-dateに追い付いて書くことは,70歳になってチョモランマ登頂を目指すようなものと思い知り,総論や倫理など自分の得意なところ以外を分担執筆としようか,と何度心が折れそうになったことか。何とか弱気の心の誘惑に負けず,本書の良さは仁志田個人の人生観などが出ているところだ,と褒められているのか揶揄されているのかわからない新生児仲間の叱咤激励から,今回も1人で全章をカバーすることを心掛けた。
 しかし退職して数年経つと,各分野の最先端の新生児医療に触れていない不安が湧き上がるところから,その分野で自他ともに最先端を走っている下記の7人の新進気鋭の若手新生児医療仲間に援助をお願いした。

   栄養(第10章):水野克己(昭和大学)
   内分泌・代謝(第12章):河井昌彦(京都大学)
   呼吸器(第13章):長谷川久弥(東京女子医科大学)
   循環器(第14章):豊島勝昭(神奈川県立こども医療センター)
   血液(第16章):高橋幸博(奈良県立医科大学)
   感染免疫(第17章):高橋尚人(自治医科大学)
   中枢神経(第18章):早川昌弘(名古屋大学)

 各先生には,小生の無理難題に快く応じてくださったことに,心からの感謝を申し述べ
たい。上記の諸子の適切なアドバイスと資料提供がなければ,本書は画竜点睛を欠くところであった。
 お蔭で全章にわたって最新の情報を盛り込むことができたと自負しているが,唯一心残りなことは,未曾有の東日本大震災と津波,さらに原発事故と歴史的な出来事に遭遇したところから,「災害時の新生児管理」および「母子に及ぼす放射能の影響」の項を立てようと思ったが叶わなかったことである。手に入り得る資料に当たったが,まだ不十分・不確実な内容のものがほとんどで,書物に書き得るレベルに纏めるには至らなかった,というのが言い訳である。この2つの項目に関しては資料を収集し思索を続け,もし第5版を上梓する機会が得られるなら,この経験を活かせるものを後輩に残すのが,その時代に生きた者の責務と心している。
 繰り返すようだが,本書は‘scientific basis of neonatal practice’という英文名を自分勝手に付けているように,今行われている新生児医療の背景となる学問的理由を解き明かすことを主眼としているところから,ベッドサイドで役に立つマニュアルや最新の学問的項目が含まれる教科書とは趣を異にしており,読むとジワジワ役に立つ本を目標としている。
 幸いにも,日本新生児看護学会の創立者である広島大学大学院保健学研究科横尾京子教授から,看護実習の理論的背景を説明するのに有用である,とのコメントをいただき,わが意を得たりの心境である。ぜひ時間のある時に,読み物のような感覚で本書を手にして,「フーン,そんなわけか!」と読み取っていただければ幸いである。
 最後に,整理整頓がまったく不得意なうえに秘書のない身分となり,引用文献などの整合性に右往左往している筆者に,辛抱強くお付き合いいただいた医学書院の竹内亜祐子,和田耕作両氏に深謝する。

   「あたたかき 心の絆 育まん 地震〈ナエ〉満つ国の 新生児〈コ〉らの未来に」

 2012年 早春
 東日本大震災の犠牲となられた同胞(はらから)に思いを馳せながら
 仁志田 博司

開く

1 新生児学総論
 A.わが国の新生児学の過去・現在・未来
 B.新生児医療に関する用語
 C.新生児の医学的特徴
 D.新生児医療の特徴
 E.新生児医療の原則とルチーン
 F.新生児医療に必要な産科学的知識
2 発育・発達とその評価
 A.胎児・新生児の発育
 B.胎児・新生児の発達
 C.在胎週数推測(未熟度・成熟度の評価法)
 D.在胎期間別出生時体格基準曲線とその利用法
3 新生児診断学
 A.新生児の診察法
 B.新生児に特徴的な所見
 C.主要な異常所見とその診断学的アプローチ
 D.検査結果の読み方
 E.母体・胎児情報の読み方
4 新生児の養護と管理
 A.分娩室からの管理
 B.正常新生児の管理
 C.ハイリスク新生児の管理
 D.NICU入院児の管理
 E.新生児モニタリング
5 母子関係と家族の支援
 A.母子相互作用の科学的背景
 B.母子関係確立のステップ
 C.母子関係確立のための臨床
 D.母子関係の破綻に基づく臨床的問題
 E.出産前小児保健指導
 F.母親への保健指導
 G.病児の家族への援助
 H.児を失った家族への援助
6 新生児医療とあたたかい心
 A.子育てと環境
 B.あたたかい心を育む医療
 C.個別的発達促進ケア(ディベロプメンタルケア)
7 新生児医療における生命倫理
 A.新生児医療における倫理問題の特徴
 B.倫理的観点からの医療方針決定
 C.倫理的観点から医療方針決定がなされた事例
 D.成(生)育限界をめぐる倫理
 E.医の倫理の基本的な考え方
8 医療事故と医原性疾患
 A.新生児における医原性疾患
 B.医療事故の原因と背景
 C.医療事故の原因による分類と予防
 D.医療事故が起こったときの対応
 E.医療事故と訴訟
9 体温調節と保温
 A.新生児の体温調節
 B.保温とその目的
 C.保温の臨床
 D.体温の異常
10 栄養の基礎と臨床
 A.新生児の栄養に関する特徴と問題点
 B.栄養と発育・発達
 C.新生児に必要な栄養量
 D.正常新生児における栄養法
 E.低出生体重児における栄養法
 F.母乳栄養法
11 水-電解質バランス
 A.新生児における水-電解質バランスの特徴
 B.新生児腎機能の発達と特徴
 C.水-電解質管理の実際
 D.カルシウムとリンのバランス
12 内分泌系・代謝系の基礎と臨床
 A.新生児の内分泌機能と異常
 B.新生児の糖代謝と血糖管理
 C.母体糖尿病児
 D.先天性代謝異常による疾患
 E.新生児にみられる先天性代謝異常
 F.新生児における薬物代謝
13 呼吸器系の基礎と臨床
 A.出生直後の適応生理と蘇生
 B.新生児の呼吸生理と特徴
 C.肺サーファクタントと呼吸窮迫症候群(RDS)
 D.肺水の動態と一過性多呼吸症
 E.子宮内環境が影響する新生児呼吸障害
 F.新生児の慢性肺疾患の病態
 G.新生児呼吸障害の一般的管理
 H.補助呼吸法の進歩
14 循環器系の基礎と臨床
 A.新生児の循環生理
 B.新生児にみられる心疾患の病態生理
15 黄疸の基礎と臨床
 A.黄疸の基礎
 B.黄疸の病態
 C.黄疸の臨床
16 血液系の病態と臨床
 A.新生児の血液系の特徴
 B.血液系の発達生理
 C.多血症
 D.貧血
 E.新生児メレナとビタミンK
 F.血小板減少症
 G.易出血性疾患
 H.新生児における輸血
 I.血液に関与するサイトカイン療法
17 免疫系と感染の基礎と臨床
 A.新生児の免疫の特徴
 B.新生児感染症の特徴
 C.感染経路とその特徴
 D.新生児の敗血症・髄膜炎の病態
 E.サイトカインの役割とそれがもたらす疾患
 F.その他の新生児に特有な感染症
18 中枢神経系の基礎と臨床
 A.新生児の神経学的障害の概要
 B.中枢神経系障害の発達生理学的背景
 C.未熟児の脳室内出血
 D.低酸素性虚血性脳症
 E.脳室周囲白質軟化症
 F.新生児けいれん
 G.発達障害児
19 先天異常と遺伝
 A.遺伝学の基本的知識
 B.分子生物学の基礎的知識
 C.遺伝相談
 D.奇形と奇形症候群
 E.奇形発生を理解するための発生学
20 主要疾患の病態と管理
 A.未熟網膜症
 B.新生児壊死性腸炎
 C.超低出生体重児
 D.胎内発育遅延児
 E.乳幼児突然死症候群

索引
 和文索引
 欧文索引
 人名索引

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。