ソローニュの森
ケアの感触、曖昧な日常
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本書の舞台は、思想家フェリックス・ガタリが終生関わったことで知られるラ・ボルド精神病院。写真家・田村尚子氏の震える眼は、この伝説の病院に流れる「緩やかな時間と曖昧な日常」を掬い出します。 医療と生活の境界を大胆に横断して注目を集める「シリーズ ケアをひらく」は、今回、田村氏の視線に注目しました。ルポやドキュメンタリーとは一線を画した、ページをめくる喜びに満ちた刮目の写真集です。
シリーズ | シリーズ ケアをひらく |
---|---|
著 | 田村 尚子 |
発行 | 2012年08月判型:B5変頁:132 |
ISBN | 978-4-260-01662-9 |
定価 | 2,860円 (本体2,600円+税) |
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●『シリーズ ケアをひらく』が第73回毎日出版文化賞(企画部門)受賞!
第73回毎日出版文化賞(主催:毎日新聞社)が2019年11月3日に発表となり、『シリーズ ケアをひらく』が「企画部門」に選出されました。同賞は1947年に創設され、毎年優れた著作物や出版活動を顕彰するもので、「文学・芸術部門」「人文・社会部門」「自然科学部門」「企画部門」の4部門ごとに選出されます。同賞の詳細情報はこちら(毎日新聞社ウェブサイトへ)。
●著者の田村尚子氏からのメッセージ
ジャン・ウリ院長との京都での出会いがきっかけで、フランスのラ・ボルド病院にときおり出掛けては、患者さんと過ごしていました。そこで見つめてきた時間の流れを、写真と短い文章に凝縮させることができたように思います。長く丁寧なやりとりを経て出来上がったこの写真集の存在そのものが、病院の中で行われている様々なやりとりと「場の空気感」を具現化できる、もうひとつの扉になったら嬉しいです。
序文
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出会い
遠くから、背後から、好奇心と軽蔑、そして無関心な眼を感じる。木々に囲まれたシャトーの天井はとても高く、光が溢れていた。そのままホールに入って昼食をともにする。
2005年の夏、講演会のために来日したジャン・ウリ先生と出会った。蒸し暑い真夏の京都で、龍安寺、知恩院などを一緒に巡りながら、ポートレイトを撮っていた。80歳を超えている背の高い紳士は、相手を包み込むような優しい笑顔、力強く小さな声で話しはじめる。
湖南病院の夏祭りに出かけた帰り道、その前の年に出た私の写真集を見終わったあと、「瞑想的な……潜在の豊かさ」とつぶやいた。
「フランスに来る機会があれば、一度訪ねていらっしゃい」
半年後、訪問の機会と滞在の許可を得て、私はラ・ボルドに足を運ぶことになった。
(p. 01より)
目次
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ソローニュの森
イブ
フランシスコ
食事の愉しみ
ウリ先生
ウリ先生への手紙
レミ
2度目のピクニック
イブ(パート2)
クレール
ジャン=リュック
アトリエ
カメラと悪夢
逃亡
上映会
再度の上映会
ルカ
ブリベット
生命体
ジャン=リュック(パート2)
境界と余白
書評
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●木村敏氏(京都大学名誉教授・精神病理学)からのメッセージ
これはすばらしい写真集だと思います。われわれの中に巣くっている「知りたがり」の悪習をいっさい絶ちきって、ひたすら感じること、それも生命の源のところで他人といっしょに共感すること、その見事な結晶を見せていただいたという印象です。なによりもまず、医学書院がこのような本を出版なさったことに、心からの敬意を表したいと思います。私の机の上に置いておいて、思索に疲れたらあちこちのページを彷徨いたい、そう思っています。
●新聞で紹介されました
《そんな生きることの本質が、ラ・ボルドのようなケアの現場では、そこここに、ふっ、ふっと浮かび上がる。》――保坂健二朗(東京国立近代美術館)
(『朝日新聞』2012年8月12日 書評欄より)
《精神科病院を写真に撮ることは難しいことだろう。普通はそのように思える。しかし、ここにはこれだけの写真が撮られている。なぜ可能なのだろうか。……「写真家」がそのまま来ても何も撮れないと言っておこう。》――三脇康生(精神科医・美術批評)
(『図書新聞』2012年9月22日より)
《「仏精神医療の現場撮る 患者との垣根ないラ・ボルド病院の豊かな時間」……初めて訪問した時は、緊張でくたくたに疲れた。それなのにパリに戻った私は、逆に社会の檻の中に戻ってしまったように感じた。ラ・ボルドに流れていたあの時間は何だったのだろう。異境のルポではなく、あの独自の時の流れを写真にとらえたいと思った。》――田村尚子(本書著者)
(『日本経済新聞』2012年8月22日 文化欄より)
《「みな仲がいいとか、とにかく自由だとか、そんなんじゃない。でもそこには何十年にもわたって考え続けてこられた、人が共に生きるための仕組みがあって、その理念が場の空気となって漂っている。それが撮れたとしたらうれしい」》
(共同通信配信「明日のかたち⑦ 写真家の田村尚子さん」より)
●雑誌で紹介されました
《「写真家が感じ、とらえた精神病棟のゆるやかな時間」……ラ・ボルドの特異性でもあり特長でもある、田村が感じたところの「余白」をありのままに伝えてくれる。》
(『芸術新潮』2012年10月号より)
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