変形性関節症の診かたと治療 第2版
OAの疾患背景から診断・治療に至るまで幅広く解説したトータルマネジメント実践書
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整形外科を中心に日常診療で最も頻繁に遭遇する疾患である変形性関節症(OA)。近年、その頻度が急速に増加している現状を踏まえ、本書ではOAの最新の知見や話題を存分に取り入れながら、基礎的な疾患背景、病理・病態から診断・治療に至る全体的な診療の流れを図や写真を豊富に用いてわかりやすく解説している。OAの患者をどのように扱い、管理するか、正しい理解へと導き、実践へとつなげられるテキスト、待望の改訂版。
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
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はじめに-改訂にあたって
本書の初版が変形性関節症(OA)の疾患背景やその自然経過から,診断・治療に至る総括的な概略を通覧することを目的として,1994年に刊行されてから20年弱が過ぎた。初版は読者対象を整形外科医ならびに一般医,研修医,コメディカルとし,岡山大学整形外科学教室で積み重ねてきた関節軟骨・滑膜をはじめとしたOAの病態解析と,教室でのグループ別診療体制に基づく身体各部位におけるOA治療の各論をまとめた形で出版した。教室の総力を結集して編集・執筆したが,当時こういった試みはほとんどみられなかったこともあり,多くの方々に手にとっていただけることとなり,一定の評価をいただいた。
その後この分野の研究発展も著しく,21世紀を迎えて情報伝達も早く広いものとなり,海外からのものも含めて多くの情報が溢れているが,真偽の定かでないものも多い。また,民間療法やサプリメントの有効性を謳ったものも多く,社会的影響も大きくなっている。OAは高齢化社会においてさらに頻度が増し,国民病の1つとまでいわれるようになった。最近では遺伝子や病態レベルでの新しい知見も多い。医療においては,特に臨床的・組織学的評価基準の改訂,診断基準,医療・工業技術の進歩による高解像度画像診断技術や新しい手術方法の開発など,OAへの対応も大きく進歩してきている。他方,いまだOAは原因不明の疾患であり,治療標的も多岐にわたることから,関節リウマチに対する生物学的製剤のような画期的な疾患修飾性治療薬の開発には至っていない。このような背景から,医療関係者に繁用されるまとまった最新の医学書のニーズが高まってきている。
本書の改訂にあたっても教室挙げての作業となったが,執筆にあたっては初版のコンセプトに則って,重要事項は残しながら最新の情報を織り込むこと,初学者の入門書としてなるべく多くの図表や写真を用いて解説することとした。また,薬物療法,手術療法についても,教室独自の治療成績の詳細にはなるべく言及せず,エビデンスレベルの高いものを中立的立場から幅広く解説している。結果として各項目ともに読み応えのある内容となり,初学者の域をやや超えているところもあるかもしれない。しかし,OAのトータルマネジメントのための専門書として,最新の知識を整理していくうえで,より多くの方々に参考にしていただければ幸いである。
最後になったが,本書第2版の刊行に多大なご理解をいただいた医学書院,ならびに企画の段階からご尽力いただいた医学書籍編集部 北條立人氏に深謝申し上げる。
2012年7月
西田圭一郎,尾崎敏文,井上 一
本書の初版が変形性関節症(OA)の疾患背景やその自然経過から,診断・治療に至る総括的な概略を通覧することを目的として,1994年に刊行されてから20年弱が過ぎた。初版は読者対象を整形外科医ならびに一般医,研修医,コメディカルとし,岡山大学整形外科学教室で積み重ねてきた関節軟骨・滑膜をはじめとしたOAの病態解析と,教室でのグループ別診療体制に基づく身体各部位におけるOA治療の各論をまとめた形で出版した。教室の総力を結集して編集・執筆したが,当時こういった試みはほとんどみられなかったこともあり,多くの方々に手にとっていただけることとなり,一定の評価をいただいた。
その後この分野の研究発展も著しく,21世紀を迎えて情報伝達も早く広いものとなり,海外からのものも含めて多くの情報が溢れているが,真偽の定かでないものも多い。また,民間療法やサプリメントの有効性を謳ったものも多く,社会的影響も大きくなっている。OAは高齢化社会においてさらに頻度が増し,国民病の1つとまでいわれるようになった。最近では遺伝子や病態レベルでの新しい知見も多い。医療においては,特に臨床的・組織学的評価基準の改訂,診断基準,医療・工業技術の進歩による高解像度画像診断技術や新しい手術方法の開発など,OAへの対応も大きく進歩してきている。他方,いまだOAは原因不明の疾患であり,治療標的も多岐にわたることから,関節リウマチに対する生物学的製剤のような画期的な疾患修飾性治療薬の開発には至っていない。このような背景から,医療関係者に繁用されるまとまった最新の医学書のニーズが高まってきている。
本書の改訂にあたっても教室挙げての作業となったが,執筆にあたっては初版のコンセプトに則って,重要事項は残しながら最新の情報を織り込むこと,初学者の入門書としてなるべく多くの図表や写真を用いて解説することとした。また,薬物療法,手術療法についても,教室独自の治療成績の詳細にはなるべく言及せず,エビデンスレベルの高いものを中立的立場から幅広く解説している。結果として各項目ともに読み応えのある内容となり,初学者の域をやや超えているところもあるかもしれない。しかし,OAのトータルマネジメントのための専門書として,最新の知識を整理していくうえで,より多くの方々に参考にしていただければ幸いである。
最後になったが,本書第2版の刊行に多大なご理解をいただいた医学書院,ならびに企画の段階からご尽力いただいた医学書籍編集部 北條立人氏に深謝申し上げる。
2012年7月
西田圭一郎,尾崎敏文,井上 一
目次
開く
I 変形性関節症(OA)治療の歴史
II 分類と診断基準
1 分類
1.一次性(特発性)OA
2.二次性(続発性)OA
2 診断基準
III 疫学
1.ヨーロッパの疫学調査
2.わが国の疫学調査
IV 病態・病理
1 変形性関節症における関節軟骨破壊と軟骨下骨の変化
1.関節軟骨の構造
2.変形性関節症における関節軟骨・軟骨下骨の病理・生化学的変化
2 変形性関節症における滑膜組織の変化
1.関節滑膜の生理的機能
2.OAにおける二次性滑膜炎
V 診断学
A 画像診断
1 単純X線
1.診断と病期分類
2.関節裂隙の評価と撮影法
2 MRI
B 超音波診断
1.超音波用検査機
2.超音波所見
3.関節の観察方法
4.超音波評価
C 関節マーカー
1.軟骨破壊の関節マーカー
2.軟骨合成の関節マーカー
3.その他の関節マーカー
D 臨床評価法
1.QOL・関節機能評価
E 組織学的評価法
1.HHGS
2.OARSI
F 鑑別診断
1.偽痛風
2.特発性骨壊死
3.滑膜骨軟骨腫症
4.神経病性関節症
5.色素性絨毛結節性滑膜炎
6.感染性関節炎
VI 治療
A 保存的療法
1 薬物療法
1.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
2.オピオイド
2 リハビリテーション
1.評価
2.理学療法
3.作業療法
4.装具療法
5.クリニカルパスによる周術期リハビリテーション
6.リハビリテーション同意書
7.運動器不安定症とロコモティブシンドローム
3 関節内注入療法
1.関節穿刺法・関節内注入法
2.関節内ヒアルロン酸注入療法
3.関節内ステロイド注入療法
4 サプリメントの功罪
1.位置付け
2.報告
3.代表的サプリメント
B 身体各部の変形性関節症と外科的治療
1 上肢の変形性関節症
1.肩の変形性関節症
2.肘の変形性関節症
3.手の変形性関節症
2 下肢の変形性関節症
1.股の変形性関節症
2.膝の変形性関節症
3.足の変形性関節症
4.足趾の変形性関節症
3 脊椎の変形性関節症
1.頚椎の変形性関節症
2.腰椎の変形性関節症
4 スポーツと変形性関節症
1.肩のスポーツ外傷・障害と変形性肩関節症
2.肘のスポーツ外傷・障害と変形性肘関節症
3.膝のスポーツ外傷・障害と変形性膝関節症
4.足のスポーツ外傷・障害と変形性足関節症
5 外傷と変形性関節症
1.関節内骨折による関節面不整,軟骨損傷
2.骨折後のアライメント変形
3.変形癒合,PTOAの治療
変形性関節症の診断と治療の今後
索引
column
遺伝子変異マウスと疾患の病態解明
変形性関節症の病態究明-ゲノム解析による疾患感受性遺伝子の探索
メカニカルストレスと軟骨細胞
II 分類と診断基準
1 分類
1.一次性(特発性)OA
2.二次性(続発性)OA
2 診断基準
III 疫学
1.ヨーロッパの疫学調査
2.わが国の疫学調査
IV 病態・病理
1 変形性関節症における関節軟骨破壊と軟骨下骨の変化
1.関節軟骨の構造
2.変形性関節症における関節軟骨・軟骨下骨の病理・生化学的変化
2 変形性関節症における滑膜組織の変化
1.関節滑膜の生理的機能
2.OAにおける二次性滑膜炎
V 診断学
A 画像診断
1 単純X線
1.診断と病期分類
2.関節裂隙の評価と撮影法
2 MRI
B 超音波診断
1.超音波用検査機
2.超音波所見
3.関節の観察方法
4.超音波評価
C 関節マーカー
1.軟骨破壊の関節マーカー
2.軟骨合成の関節マーカー
3.その他の関節マーカー
D 臨床評価法
1.QOL・関節機能評価
E 組織学的評価法
1.HHGS
2.OARSI
F 鑑別診断
1.偽痛風
2.特発性骨壊死
3.滑膜骨軟骨腫症
4.神経病性関節症
5.色素性絨毛結節性滑膜炎
6.感染性関節炎
VI 治療
A 保存的療法
1 薬物療法
1.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
2.オピオイド
2 リハビリテーション
1.評価
2.理学療法
3.作業療法
4.装具療法
5.クリニカルパスによる周術期リハビリテーション
6.リハビリテーション同意書
7.運動器不安定症とロコモティブシンドローム
3 関節内注入療法
1.関節穿刺法・関節内注入法
2.関節内ヒアルロン酸注入療法
3.関節内ステロイド注入療法
4 サプリメントの功罪
1.位置付け
2.報告
3.代表的サプリメント
B 身体各部の変形性関節症と外科的治療
1 上肢の変形性関節症
1.肩の変形性関節症
2.肘の変形性関節症
3.手の変形性関節症
2 下肢の変形性関節症
1.股の変形性関節症
2.膝の変形性関節症
3.足の変形性関節症
4.足趾の変形性関節症
3 脊椎の変形性関節症
1.頚椎の変形性関節症
2.腰椎の変形性関節症
4 スポーツと変形性関節症
1.肩のスポーツ外傷・障害と変形性肩関節症
2.肘のスポーツ外傷・障害と変形性肘関節症
3.膝のスポーツ外傷・障害と変形性膝関節症
4.足のスポーツ外傷・障害と変形性足関節症
5 外傷と変形性関節症
1.関節内骨折による関節面不整,軟骨損傷
2.骨折後のアライメント変形
3.変形癒合,PTOAの治療
変形性関節症の診断と治療の今後
索引
column
遺伝子変異マウスと疾患の病態解明
変形性関節症の病態究明-ゲノム解析による疾患感受性遺伝子の探索
メカニカルストレスと軟骨細胞
書評
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OAに関するスタンダードな知識や最新の情報を網羅
書評者: 田中 栄 (東大大学院教授・整形外科学)
本書の「初版の序」において井上一氏は,恐竜やネアンデルタール人の化石においても変形性関節症(osteoarthritis, OA)の所見が認められるという興味深い研究成果を紹介しておられる。恐竜も膝関節痛に苦しんでいたのであろうか?
このようにOAは古くから認められている病態でありながら,現在の高齢社会において,ますますその重要性が増している疾患でもある。岡山大学整形外科の先生方が中心となって編まれた『変形性関節症の診かたと治療』が今回18年ぶりに改訂された。改訂第2版は,この間のOAの診断学や治療学の進歩を幅広く網羅した内容になっている。中でも臨床的,組織学的評価基準の改定,診断基準の策定,さまざまな画像診断の進歩やこれを利用したコンピュータ支援手術,そして膝のみならず肩や股関節においてもスタンダードな手技となった関節鏡テクニックの進歩など,新しく追加された項目を一望するだけでもこの分野の急速な進歩をうかがい知ることができる。また「column」として,遺伝子改変マウスを用いた研究によって得られた知見や,疾患感受遺伝子に関する情報,メカニカルストレスの基礎研究の成果といった最新のトピックスがまとめられているのもうれしい。
このように本書はOAに関するスタンダードな知識や最新の情報がコンパクトに網羅されており,これから関節外科を学ぼうとする医師のみならず,現在一線で活躍されている方々にとっても,OAに関する知識をアップデートするための必読の教科書となるであろう。
本書末尾で尾崎敏文教授が記されているように,OA患者の増加は高齢者人口の増加と正比例している。現時点で2,500万人とも言われ,さらに増え続けるであろうOA患者,そしてOAという疾患そのものにどのように対応していくかは,整形外科医にとって大きなチャレンジである。疾患の成立に長い時間を要するため,OA研究にはサイエンスが入りにくいという難点が指摘されている。特に治療薬の開発やエビデンスレベルの高い臨床研究を行うことが困難である。今後このような問題をどう解決するかがこの分野における大きな課題である。
書評者: 田中 栄 (東大大学院教授・整形外科学)
本書の「初版の序」において井上一氏は,恐竜やネアンデルタール人の化石においても変形性関節症(osteoarthritis, OA)の所見が認められるという興味深い研究成果を紹介しておられる。恐竜も膝関節痛に苦しんでいたのであろうか?
このようにOAは古くから認められている病態でありながら,現在の高齢社会において,ますますその重要性が増している疾患でもある。岡山大学整形外科の先生方が中心となって編まれた『変形性関節症の診かたと治療』が今回18年ぶりに改訂された。改訂第2版は,この間のOAの診断学や治療学の進歩を幅広く網羅した内容になっている。中でも臨床的,組織学的評価基準の改定,診断基準の策定,さまざまな画像診断の進歩やこれを利用したコンピュータ支援手術,そして膝のみならず肩や股関節においてもスタンダードな手技となった関節鏡テクニックの進歩など,新しく追加された項目を一望するだけでもこの分野の急速な進歩をうかがい知ることができる。また「column」として,遺伝子改変マウスを用いた研究によって得られた知見や,疾患感受遺伝子に関する情報,メカニカルストレスの基礎研究の成果といった最新のトピックスがまとめられているのもうれしい。
このように本書はOAに関するスタンダードな知識や最新の情報がコンパクトに網羅されており,これから関節外科を学ぼうとする医師のみならず,現在一線で活躍されている方々にとっても,OAに関する知識をアップデートするための必読の教科書となるであろう。
本書末尾で尾崎敏文教授が記されているように,OA患者の増加は高齢者人口の増加と正比例している。現時点で2,500万人とも言われ,さらに増え続けるであろうOA患者,そしてOAという疾患そのものにどのように対応していくかは,整形外科医にとって大きなチャレンジである。疾患の成立に長い時間を要するため,OA研究にはサイエンスが入りにくいという難点が指摘されている。特に治療薬の開発やエビデンスレベルの高い臨床研究を行うことが困難である。今後このような問題をどう解決するかがこの分野における大きな課題である。
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