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精神医学入門
まるで小説? いや芸術? 類を見ない「読んでも・見ても」楽しい精神医学テキスト
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原書は英国でRichard Asher Prizeという優れた医学教科書に与えられる賞を受賞。オールカラーで精神疾患に関連する図や写真を随所に盛り込みながら、精神医学の歴史から個別の疾患の概念や疫学、鑑別疾患などまでを網羅的に解説する。シェークスピアをはじめ著名な作家の言い回しを引用するなど、読み物としての楽しさも追求している。精神医学の入門書として最適。
原著 | Neel Burton |
---|---|
監訳 | 朝田 隆 |
発行 | 2015年12月判型:B5頁:272 |
ISBN | 978-4-260-02029-9 |
定価 | 4,620円 (本体4,200円+税) |
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序文
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監訳者の序(朝田 隆)/原書第2版の序(ニール・バートン)/原書まえがき(ロバート・ホワード)
監訳者の序
精神医学の面白さの一つは診断のプロセスにある.近年は,DSMシリーズに代表される操作的診断が主流だが,これは明確な診断基準に沿ってフローチャート的に診断するものである.精神医学に長年親しんだ者にはこれは確かに科学的だが,味わいにも面白さにも欠ける.これに対するのが,主観に流れやすいと非難されてきた従来診断である.まず外因性,次に内因性を疑い,それらでなければいわゆる神経症圏という順番で診断をつけてゆく.今日では廃れつつあるこの流れだが,精神医学を大づかみにして使いこなすには,この伝統的な診断法はとても役に立つ.
本書の最大の特徴は,この操作的診断と従来診断の考え方がほどよく調和され,ときに読み物のように記述されていることである.そのために絶妙の工夫がなされている.つまり,原著者の深い素養をバックに,精神医学の歴史,それに関わる文学や伝記といったものがコラムやショートショートの形式で配置されている.だから小説でも読むかのように,ついつい引き込まれてしまうし,なんだか元気をもらう気にさせる.そんなユニークな教科書である.これまでの少なくとも日本の精神医学系の教科書ではまず類書はなかっただけに,ぜひとも若い学生や専門職の方々にご高読をいただきたい.本書の魅力を十分楽しんだ訳者一同がそう願っている.
2015年10月
朝田 隆
原書第2版の序
「精神医学」の第2版は,英国および英語圏の学生と教員から寄せられた様々なフィードバックの産物です.第2版では無数の修正と加筆を施した一方で,初版で好評を博した点,すなわち,明晰な文体とわかりやすい説明,広さと深さのほどよいバランス,際立った「個性」は残すように試みました.
本書では初版に続き,精神医学の学びの一助となるよう,芸術と人文科学分野の書物の断片を少なからず引用しています.こうした引用には,人間の感情,行動,考えについての理解を深め,精神疾患とその患者についての一般的な見方に疑問を呈するという狙いもあります.ここは重要なポイントです.なぜならば,第一に学生(そして最終的に医療の専門職につかれた方)が,精神疾患のある方に対してスティグマを付与していることが少なくなく,第二にスティグマが精神医学と精神科医にまで蔓延し,精神科医の人材募集にも悪影響を及ぼしているからです.
医学の領域の中でも精神医学は群を抜いて興味深く挑戦し甲斐がある分野です.また,幸福こそを人生の目的とし,頭で考え心で感じる我々人間にとって,精神医学は当然ながら最も近しい存在です.本書は眠りを忘れさせると学生から再三言われますが,そうであれば,それは私のなせる技ではなく,精神医学,すなわち人生の奥深さゆえによるものです.
ニール・バートン
2009年8月 オックスフォードにて
原書まえがき
ニール・バートンによる味わい深く見事な本書の世界へようこそ.そして何よりも精神医学の世界へようこそ.おそらく,みなさまは精神科医療の現場でコミュニケーション・スキルやラポート(信頼関係)について学んだことを実践し,神経科学で学んだ感情や思考が現実の世界ではどうかを知るチャンスとして,日々,胸躍らせ熱心に取り組まれていることと思います.あるいは,精神科の世界を恐れておられるかもしれません.精神科の患者は恐ろしくて危険でしょうか? 精神科医は少しましなだけでしょうか?
本書にざっと目を通して一番興味を抱いた箇所をお読み頂ければ,精神医学への道しるべを手に入れることになるでしょう.特定の診断をなされた患者さんに出会われた経験がおありの場合は,本書の関連する箇所に目を通してみてください.また,本書の中にはないことを患者さんから学んだことがないか自問してみてください.というのも,教科書で学んだ知識の断片には収まりきらない人や状況にまで理解の領域を拡げる,それこそが,まさに精神医学だからです.わたし自身は,生涯にわたる興味深い学びと発見を精神医学に見いだし,患者さんの物語は観劇にまさると気付きました.
そして,あなたが,一般診療医としての道を希望しておられるなら,4分間という規則にしばられることなく,患者さんと向き合い何時間も費やして,その人生にかかわる精神医学を,専門領域として検討してください.神経学者を志しているのであれば,患者さんの回復をみる現場であり,神経科学の進歩が最大の影響を与える分野である精神科の医者を,生涯のキャリアのひとつとして考えてみてください.精神科医を志しておられる方は,初志貫徹されますよう.医学の最高領域のメンバーとなる素晴らしい機会を手にされたのです.おもしろさ,見返り,やり甲斐が必ずや伴うキャリアです.
ロイヤル・カレッジ精神医学分野 学部長
教授 ロバート・ホワード
監訳者の序
精神医学の面白さの一つは診断のプロセスにある.近年は,DSMシリーズに代表される操作的診断が主流だが,これは明確な診断基準に沿ってフローチャート的に診断するものである.精神医学に長年親しんだ者にはこれは確かに科学的だが,味わいにも面白さにも欠ける.これに対するのが,主観に流れやすいと非難されてきた従来診断である.まず外因性,次に内因性を疑い,それらでなければいわゆる神経症圏という順番で診断をつけてゆく.今日では廃れつつあるこの流れだが,精神医学を大づかみにして使いこなすには,この伝統的な診断法はとても役に立つ.
本書の最大の特徴は,この操作的診断と従来診断の考え方がほどよく調和され,ときに読み物のように記述されていることである.そのために絶妙の工夫がなされている.つまり,原著者の深い素養をバックに,精神医学の歴史,それに関わる文学や伝記といったものがコラムやショートショートの形式で配置されている.だから小説でも読むかのように,ついつい引き込まれてしまうし,なんだか元気をもらう気にさせる.そんなユニークな教科書である.これまでの少なくとも日本の精神医学系の教科書ではまず類書はなかっただけに,ぜひとも若い学生や専門職の方々にご高読をいただきたい.本書の魅力を十分楽しんだ訳者一同がそう願っている.
2015年10月
朝田 隆
原書第2版の序
「精神医学」の第2版は,英国および英語圏の学生と教員から寄せられた様々なフィードバックの産物です.第2版では無数の修正と加筆を施した一方で,初版で好評を博した点,すなわち,明晰な文体とわかりやすい説明,広さと深さのほどよいバランス,際立った「個性」は残すように試みました.
本書では初版に続き,精神医学の学びの一助となるよう,芸術と人文科学分野の書物の断片を少なからず引用しています.こうした引用には,人間の感情,行動,考えについての理解を深め,精神疾患とその患者についての一般的な見方に疑問を呈するという狙いもあります.ここは重要なポイントです.なぜならば,第一に学生(そして最終的に医療の専門職につかれた方)が,精神疾患のある方に対してスティグマを付与していることが少なくなく,第二にスティグマが精神医学と精神科医にまで蔓延し,精神科医の人材募集にも悪影響を及ぼしているからです.
医学の領域の中でも精神医学は群を抜いて興味深く挑戦し甲斐がある分野です.また,幸福こそを人生の目的とし,頭で考え心で感じる我々人間にとって,精神医学は当然ながら最も近しい存在です.本書は眠りを忘れさせると学生から再三言われますが,そうであれば,それは私のなせる技ではなく,精神医学,すなわち人生の奥深さゆえによるものです.
ニール・バートン
2009年8月 オックスフォードにて
原書まえがき
ニール・バートンによる味わい深く見事な本書の世界へようこそ.そして何よりも精神医学の世界へようこそ.おそらく,みなさまは精神科医療の現場でコミュニケーション・スキルやラポート(信頼関係)について学んだことを実践し,神経科学で学んだ感情や思考が現実の世界ではどうかを知るチャンスとして,日々,胸躍らせ熱心に取り組まれていることと思います.あるいは,精神科の世界を恐れておられるかもしれません.精神科の患者は恐ろしくて危険でしょうか? 精神科医は少しましなだけでしょうか?
本書にざっと目を通して一番興味を抱いた箇所をお読み頂ければ,精神医学への道しるべを手に入れることになるでしょう.特定の診断をなされた患者さんに出会われた経験がおありの場合は,本書の関連する箇所に目を通してみてください.また,本書の中にはないことを患者さんから学んだことがないか自問してみてください.というのも,教科書で学んだ知識の断片には収まりきらない人や状況にまで理解の領域を拡げる,それこそが,まさに精神医学だからです.わたし自身は,生涯にわたる興味深い学びと発見を精神医学に見いだし,患者さんの物語は観劇にまさると気付きました.
そして,あなたが,一般診療医としての道を希望しておられるなら,4分間という規則にしばられることなく,患者さんと向き合い何時間も費やして,その人生にかかわる精神医学を,専門領域として検討してください.神経学者を志しているのであれば,患者さんの回復をみる現場であり,神経科学の進歩が最大の影響を与える分野である精神科の医者を,生涯のキャリアのひとつとして考えてみてください.精神科医を志しておられる方は,初志貫徹されますよう.医学の最高領域のメンバーとなる素晴らしい機会を手にされたのです.おもしろさ,見返り,やり甲斐が必ずや伴うキャリアです.
ロイヤル・カレッジ精神医学分野 学部長
教授 ロバート・ホワード
目次
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Part 1
第1章 精神医学小史
1 古代ギリシャ:精神医学の誕生
2 ローマ帝国
3 中世
4 ルネッサンス
5 啓蒙主義運動
6 現代
7 フロイト入門
8 ユング入門
第2章 患者の評価
1 記述的精神病理学
2 患者の評価への導入
3 精神医学的病歴
4 精神状態の診察
5 フォーミュレーション
6 精神障害の分類
第3章 精神保健の提供
1 序論:コミュニティ(地域)ケアの発展
2 精神保健サービスの組織
3 ケアプログラム・アプローチ
4 倫理と法
5 精神保健法
6 心理学的あるいは「談話による」治療法入門
Part 2
第4章 統合失調症と他の精神病疾患
1 統合失調症小史
2 疫学
3 病因
4 臨床的特徴
5 診断と病型
6 鑑別診断
7 検査
8 マネジメント
9 経過と予後
10 他の精神病性疾患
第5章 気分障害
1 分類
うつ病
1 疫学
2 病因
3 臨床的特徴
4 診断
5 鑑別診断
6 マネジメント
7 経過と予後
8 産褥期の障害
躁病と双極性感情障害
1 疫学
2 病因
3 躁病の臨床的特徴
4 診断
5 鑑別診断
6 マネジメント
7 経過と予後
第6章 自殺と故意の自傷行為
1 序論
2 自殺の倫理
3 疫学
4 危険因子
5 リスク評価
6 マネジメント
7 故意の自傷行為
第7章 神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害(不安障害)
1 序論
2 不安の症状
3 疫学
4 病因
5 不安障害
6 重症(重度)のストレスと適応障害
7 強迫性障害
8 解離性障害(転換性障害)
9 身体表現性障害
10 慢性疲労症候群
第8章 パーソナリティ障害
1 パーソナリティ障害の小史
2 序論
3 分類
4 疫学
5 病因
6 臨床的特徴
7 自己防衛機制
8 鑑別診断
9 治療,経過,そして予後
10 司法精神医学
第9章 器質性精神障害(せん妄と認知症)
1 序論
せん妄
1 定義
2 分類
3 病因
4 臨床的特徴
5 鑑別診断
6 検査
7 治療と予後
認知症
1 定義
2 診断
3 臨床症状
4 タイプ分類
5 鑑別診断
6 検査
7 治療
第10章 精神遅滞(学習/習得の機能障害)
1 定義と分類
2 疫学
3 病因
4 臨床的特徴
5 評価
6 管理
第11章 物質乱用
1 分類と診断
アルコール
1 疫学
2 病因論
3 臨床上の特徴と合併症
4 治療と予後
違法薬物
1 違法薬物の歴史
2 疫学
3 病因論
4 臨床的特徴と管理
第12章 摂食障害,睡眠障害,性障害
摂食障害
1 神経性無食欲症
2 神経性大食症
睡眠障害
1 序論と分類
2 睡眠異常
3 睡眠・覚醒スケジュール障害
4 睡眠時随伴症
性障害
1 性機能不全
2 性嗜好異常(パラフィリア)
第13章 児童・思春期精神障害
1 序論
2 発達
3 発達障害
4 行動障害
5 注意欠如・多動性障害(ADHD)
6 情緒障害
7 チック障害
■なぜ精神医学を仕事に選ぶか?
■自己評価拡張型組合せ選択問題(extended matching question:EMQ)
■セルフアセスメントの答え
■EMQの答え
■付録:精神医学的質問票および評価尺度
索引
第1章 精神医学小史
1 古代ギリシャ:精神医学の誕生
2 ローマ帝国
3 中世
4 ルネッサンス
5 啓蒙主義運動
6 現代
7 フロイト入門
8 ユング入門
第2章 患者の評価
1 記述的精神病理学
2 患者の評価への導入
3 精神医学的病歴
4 精神状態の診察
5 フォーミュレーション
6 精神障害の分類
第3章 精神保健の提供
1 序論:コミュニティ(地域)ケアの発展
2 精神保健サービスの組織
3 ケアプログラム・アプローチ
4 倫理と法
5 精神保健法
6 心理学的あるいは「談話による」治療法入門
Part 2
第4章 統合失調症と他の精神病疾患
1 統合失調症小史
2 疫学
3 病因
4 臨床的特徴
5 診断と病型
6 鑑別診断
7 検査
8 マネジメント
9 経過と予後
10 他の精神病性疾患
第5章 気分障害
1 分類
うつ病
1 疫学
2 病因
3 臨床的特徴
4 診断
5 鑑別診断
6 マネジメント
7 経過と予後
8 産褥期の障害
躁病と双極性感情障害
1 疫学
2 病因
3 躁病の臨床的特徴
4 診断
5 鑑別診断
6 マネジメント
7 経過と予後
第6章 自殺と故意の自傷行為
1 序論
2 自殺の倫理
3 疫学
4 危険因子
5 リスク評価
6 マネジメント
7 故意の自傷行為
第7章 神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害(不安障害)
1 序論
2 不安の症状
3 疫学
4 病因
5 不安障害
6 重症(重度)のストレスと適応障害
7 強迫性障害
8 解離性障害(転換性障害)
9 身体表現性障害
10 慢性疲労症候群
第8章 パーソナリティ障害
1 パーソナリティ障害の小史
2 序論
3 分類
4 疫学
5 病因
6 臨床的特徴
7 自己防衛機制
8 鑑別診断
9 治療,経過,そして予後
10 司法精神医学
第9章 器質性精神障害(せん妄と認知症)
1 序論
せん妄
1 定義
2 分類
3 病因
4 臨床的特徴
5 鑑別診断
6 検査
7 治療と予後
認知症
1 定義
2 診断
3 臨床症状
4 タイプ分類
5 鑑別診断
6 検査
7 治療
第10章 精神遅滞(学習/習得の機能障害)
1 定義と分類
2 疫学
3 病因
4 臨床的特徴
5 評価
6 管理
第11章 物質乱用
1 分類と診断
アルコール
1 疫学
2 病因論
3 臨床上の特徴と合併症
4 治療と予後
違法薬物
1 違法薬物の歴史
2 疫学
3 病因論
4 臨床的特徴と管理
第12章 摂食障害,睡眠障害,性障害
摂食障害
1 神経性無食欲症
2 神経性大食症
睡眠障害
1 序論と分類
2 睡眠異常
3 睡眠・覚醒スケジュール障害
4 睡眠時随伴症
性障害
1 性機能不全
2 性嗜好異常(パラフィリア)
第13章 児童・思春期精神障害
1 序論
2 発達
3 発達障害
4 行動障害
5 注意欠如・多動性障害(ADHD)
6 情緒障害
7 チック障害
■なぜ精神医学を仕事に選ぶか?
■自己評価拡張型組合せ選択問題(extended matching question:EMQ)
■セルフアセスメントの答え
■EMQの答え
■付録:精神医学的質問票および評価尺度
索引