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消化器外科のエビデンス 第2版
気になる30誌から

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外科医が日常臨床で直面する様々な問題について、最新の知見を確認するためのエビデンス集。国際的な一流30誌(外科学、腫瘍学、消化器病学、臨床医学)から消化器外科に関連する論文を広く集め、「手術手技」「術後経過」「予後因子」など30のカテゴリーに分類。質の高い7,256編の論文のデータをパーセントやリスク比で紹介する。手術はもとより術前検査や術後管理、がん検診や緩和ケアなども含み、消化器外科に関する事象を網羅。
安達 洋祐
発行 2011年07月判型:B5頁:532
ISBN 978-4-260-01376-5
定価 10,450円 (本体9,500円+税)

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第2版 序

 8年前に上梓した『消化器外科のエビデンス-気になるテーマ30』は,「エビデンスに基づく医療」(EBM)に取り組んだ「四人組勉強会」の集大成であり,外科医ならだれもが関心をもつ30の臨床問題について,海外の文献を収集して解説したエビデンス集であった.
 当時は学会で診療ガイドラインが作成されはじめた時期であり,類書が出版されていなかったこともあり,おかげさまでご好評をいただき,医学書院からは改訂を迫られるようになり,このたびまったく新しい本に生まれ変わって,全国の外科医に再会する日を迎えられた.
 マニュアルやガイドラインがあっても,「文献に学ぶ」という態度は大切であり,「なぜか」「ほんとうか」と問いかける姿勢は必要である.論文を読む余裕がない多忙な外科医の日常診療や生涯教育に役立つように,8年間の論文を細大漏らさず収集できたと自負している.
 医療は専門化・細分化し,臨床判断や意思決定は総合的・多角的に行わないといけない.本書は「エビデンスを示すが,判断するのはあなた」という考えに従い,結論・解釈・評価はあえて行わなかった.興味があれば論文を読み,疑問があれば自分で調べてほしい.
 最後に,4年前に九州に戻った筆者を優しく迎えてくださった先輩,メールや手紙や飲食で励ましてくれた友人,地域医療で貢献するのを支えてくれた楠病院のスタッフに感謝し,医学書院の林 裕さんに謝意を表しながら,昨年逝った父(元新聞記者)に本書を捧げたい.

 平成23年4月1日
 安達 洋祐

 本書の印税は全額,東日本大震災の復旧や復興に携わるNPOや,被災者を支える東北地方の病院に寄付いたします.

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I 食道胃外科
 1 手術手技
  (1)食道手術 (2)胃手術 (3)腹腔鏡下胃切除 (4)減量手術  文献
 2 術後経過
  (1)食道術後合併症 (2)胃術後合併症  文献
 3 補助療法
  (1)食道化学療法 (2)胃化学療法  文献
 4 予後因子
  (1)食道リンパ節 (2)食道がん (3)胃リンパ節 (4)胃がん  文献
 5 食道疾患
  (1)胃食道逆流症 (2)食道破裂  文献
 6 胃疾患
  (1)消化性潰瘍 (2)非上皮性腫瘍  文献
II 大腸外科
 1 手術手技
  (1)直腸手術 (2)腹腔鏡下大腸切除 (3)大腸緊急手術  文献
 2 術後経過
  (1)創感染 (2)吻合不全 (3)排便障害  文献
 3 補助療法
  (1)大腸化学療法 (2)肝動注療法 (3)直腸照射療法  文献
 4 予後因子
  (1)病理所見 (2)リンパ節 (3)微小転移 (4)直腸断端  文献
 5 小腸疾患
  (1)虫垂炎 (2)腸閉塞  文献
 6 大腸疾患
  (1)炎症性腸疾患 (2)過敏性腸症候群 (3)大腸憩室  文献
III 肝胆膵外科
 1 手術手技
  (1)肝臓手術 (2)胆嚢手術 (3)膵臓手術 (4)肝移植  文献
 2 術後経過
  (1)胆汁漏 (2)膵液漏 (3)胆管損傷  文献
 3 補助療法
  (1)肝臓焼灼療法 (2)肝臓化学療法 (3)膵臓化学療法  文献
 4 予後因子
  (1)肝臓がん (2)胆道がん (3)膵臓がん  文献
 5 肝胆疾患
  (1)慢性肝炎 (2)肝硬変症 (3)胆石症  文献
 6 膵疾患
  (1)急性膵炎 (2)粘液性膵腫瘍  文献
IV 手術患者
 1 術前管理
  (1)食道胃患者 (2)大腸患者 (3)肝胆膵患者 (4)一般検査  文献
 2 術後管理
  (1)スコア法 (2)肺塞栓症 (3)心臓手術
  (4)経口摂取 (5)ドレーン  文献
 3 薬剤投与
  (1)抗菌薬 (2)インスリン (3)ステロイド
  (4)β遮断薬 (5)ドパミン  文献
 4 血液製剤
  (1)輸血 (2)アルブミン (3)救命処置  文献
 5 保存療法
  (1)遅延手術 (2)内科療法 (3)経過観察 (4)ヘルニア  文献
 6 病院規模
  (1)大きな病院 (2)食道胃手術 (3)大腸手術 (4)肝胆膵手術
  (5)手術経験 (6)病院環境  文献
V がん患者
 1 早期発見
  (1)がん検診 (2)動脈瘤検診 (3)術後検診 (4)がん生還者  文献
 2 大腸検診
  (1)便潜血 (2)S状結腸鏡 (3)大腸内視鏡 (4)CT大腸画像  文献
 3 局所進行
  (1)食道胃がん (2)大腸がん (3)肝胆膵がん  文献
 4 遠隔転移
  (1)予後因子 (2)手術療法 (3)化学療法 (4)肺転移  文献
 5 緩和医療
  (1)手術療法 (2)薬物療法 (3)心理療法 (4)代替療法  文献
 6 末期患者
  (1)がん告知 (2)余命予測 (3)臨死ケア (4)自殺企図  文献

 略語一覧
 索引

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最新文献を読み解きわかりやすく再構築した,臨床に役立つ良書
書評者: 森 正樹 (阪大大学院教授・消化器外科学)
 安達洋祐先生はこれまでにいくつかの消化器外科学,あるいは医学教育に関する書籍を著してきました。それらはこれまでの本とは異なり,全く新しい視点から書かれたもので,それが多くの消化器外科医の心をつかみ,そして,この分野としては異例の増刷が繰り返されていると聞いています。

 今回,彼は国際的に認知されている一流の30誌を選び,そこに発表された論文の中から,消化器外科に関連した7,200余りの論文を抽出し,読破し,項目別に整理し,そしてまとめ上げました。そしてこの本が出版される運びとなりました。

 本書は大,中,小の項目から成っています。大項目は「食道胃外科」「大腸外科」「肝胆膵外科」「手術患者」「がん患者」の5項目であり,それぞれは6つの中項目で構成されています。そしてその中項目はさらに2~6つの小項目から成っています。

 「手術患者」という大項目は珍しいため少し紹介させていただくと,「術前管理」「術後管理」「薬剤投与」「血液製剤」「保存療法」「病院規模」という6つの中項目から構成されています。6番目の「病院規模」を例にとってみると,(1)大きな病院,(2)食道胃手術,(3)大腸手術,(4)肝胆膵手術,(5)手術経験,(6)病院環境,という小項目から成っています。

 さらに「(5)手術経験」の項目を細かくみると,「外科医の手術経験と手術成績」「心臓手術経験と手術成績」「がん手術経験と手術成績」「若い外科医の手術成績」「年輩外科医の手術成績」「外科医の臨床判断」「患者への説明や助言」「医師の外見や白衣」「医師の内面や心得」といった項目が並んでいます。いずれの小項目も興味深く知りたいことばかりですが,通常はまとめるのに苦労しそうなポイントを上手にまとめて,わかりやすくしているのはさすがです。例えば,年輩外科医の手術成績は本人が思っているほどには良くはなく,頭脳と体力が乖離する傾向にあるようで,自戒させられます。

 本書には至る所に著者の細やかな心遣いがみられます。7,200余りの引用論文には筆頭著者名の後に国名が記されており,どの国からの論文かがわかるようになっています。最近のグローバル化に伴い,筆頭著者名だけでは施設の所属国がわかりにくい場合が多々あるため助かります。これにより国の勢いをみることもできます。また,日本からの論文はアメリカに次いで多いため,今までに論文を発表してきた読者(消化器外科医)は自分の論文が引用されているか,調べる楽しみもあると思います。もしも今回引用されていなければ,次回の第3版出版の際には引用されるような論文を発表したい,と思わずにはいられないでしょう。

 また,「偉大な先人」と「研究のヒント」というコーナーを設けており,本書にさわやかな風を運んでいるようです。前者は消化器外科の発展をみる際,欠かすことのできない10人の日本人と20人の外国人を紹介するもので,胃カメラの宇治達郎,橋本病の橋本策,直腸癌分類のデュークス,麻酔のモートンなどが簡潔に紹介されています。消化器外科医たるもの,ぜひ知っておきたい先人ばかりです。また,後者は著者自身の英語論文30編について短く紹介したものです。私はある時期,著者と一緒に机を囲んだことがあります。その際,彼が学問的好奇心にあふれ,見るもの,聞くもの,何か新しいものはないかという視点で物事を見ること,そしてわき起こる疑問を真摯に調べ,まとめ,発表していく姿勢を垣間見てきました。このような中から英語論文として彼が発表してきたものを紹介しています。彼自身の,あいまいなものを明確にしたい,わかっていないことを明らかにしたい,との強い思いから生まれた論文であり,これから羽ばたく若い消化器外科医にはぜひ考え方を参考にしてほしいと思います。

 今回の本は著者の学問に対する真摯な姿勢によって,最新文献がくまなく読み解かれ,咀嚼され,そしてわかりやすく再構築されたものです。消化器外科医にとって真に必要な内容を含んでおり,日常の臨床に間違いなく役立つと確信しています。

 最後に本書の印税はすべて東日本大震災関係に寄附されるとのことです。あらためて犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
考える外科医を育てる上でうってつけの楽しい「読み物」
書評者: 渡邊 昌彦 (北里大教授・外科学)
 私は,外科に入局して1年目に長野県の小さな市立病院に出張した。生まれて初めて本格的な手術の手ほどきをしてくれた外科部長から,胃切除後や結腸切除でドレーンは不要,胃管は手術翌日に抜けと教わった。翌年,大都市の基幹病院に出張した私は,ドレーンは5日以上留置,胃管は排ガスがあるまで置くようにしつけられた。当時の私は疑うことを知らず「どちらも理屈は通っている」と自分を納得させ,しばらく,いや長年にわたって郷に入ったらそのまま郷に従ってきた。

 8年前現在の職に就いた。ところが新しい職場での術後管理の常識は,胃管,ドレーン,抗生剤,包交(驚くなかれ,毎日毎日ドレーンや創のガーゼを交換していたのである)にはじまって,あらゆることが自分にとっての非常識であったのだ。こうなったら自分の常識を押し付け,近代化する以外に道はない。しかし若手に経験則を押し付けるだけでよいのだろうか。指導者として「彼らを理論的に納得させる義務がある」のである。しかし,「いちいち些細なことで文献など調べてはいられない」と自問自答を繰り返していた。

 ちょうどその頃,安達先生から本書の第1版をいただいた。ページをめくるごとに幾枚もの鱗が私の目からボロボロ落ちるではないか。回診時,「ネタ」を明かすことなく,術後管理はもとより治療法について,医局員を前に滔々と本書のエビデンスを唱えて歩いた。そのうちに,本書は考える外科医を育てる上でうってつけの楽しい「読み物」だということに気が付いた。日常診療の「なぜだろう…,なぜかしら」が研究,とりわけ臨床研究の萌芽である。ある日,私は正直にネタばらしをして,教室員に本書から興味ある話題を選び,その参考文献を実際に読むよう促した。

 第2版では第1版より内容が充実し,消化器外科の最新の知見が盛り込まれている。古くて新しい術前術後の素朴な疑問,さらには緩和医療や末期患者の心のケア,自殺企図に至るまで外科臨床の話題満載である。目次をめくるだけで安達ファンはワクワクすること請け合いである。

 本書のすごいところは癌告知や臨死ケアの現実についても,感情を抑えエビデンスに基づき淡々と記されていることである。ここに安達先生の科学者としての真髄がみてとれる。そればかりではない。今回加えられた「偉大な先人:私が選んだ30人」と「研究のヒント:私が書いた30編」は先生の先人への敬意,医学に対する情熱,そして学問から得られる悦びも知ることができる。

 安達先生の科学に向き合う真摯な態度,優れた教育者の資質,臨床家としての苦悩と優しさが随所に表れている本書は,外科学のみならず医学全般に対する限りない好奇心を読者にわき立たせる。

 今回,私のネタ本である本書を押し付けられた教室員は,後々私に感謝するに違いない。これも安達先生のおかげであり,この場をお借りして先生に感謝したい。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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