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ティアニー先生の診断入門 第2版

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「診断の達人」「鑑別診断の神様」と呼ばれる、米国を代表する内科医、ローレンス・ティアニー氏による「診断入門」の第2版。「診断の原則と実際の進め方」をわかりやすく示すことで絶賛された初版に、大幅な加筆を加え、さらに内容を充実させた。まさに「診断入門書の決定版」であり、これを読まずして「診断」を語ることはできない。
ローレンス・ティアニー / 松村 正巳
発行 2011年10月判型:A5頁:208
ISBN 978-4-260-01440-3
定価 3,300円 (本体3,000円+税)

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推薦のことば(青木 眞)/(ローレンス・ティアニー,松村正巳)

推薦のことば
 「エベレストのように見えた」
 これは,本書の共著者である松村正巳先生がローレンス・ティアニー先生に初対面したときの印象であり,19年間の親交を許されている自分が彼に抱き続けている心象でもある.エベレストの高みに到達することは,特別の才能や機会に恵まれ,余人が想像もできない努力を続けた人だけに許されることだと思うが,内科臨床医としてのティアニー先生は,そのような高みにおられる方である.
 彼に出会った内科医は,その途方もない記憶力,知識に支えられた診断能力に圧倒されるが,同時に日々彼が教える箴言に触れ続けたいと思わされてしまう.「床頭台にあるお見舞いの手紙は,患者が安定した家族・社会関係をもつことを教えている」と本書に書いている彼は,豊かな感性をもつ非常に繊細な人でもある.
 彼は周囲の医師を,それぞれの才能や努力に応じてではあるが,間違いなくよりよい臨床医に変えていく.「診断のプロセスの本質は,臨床における経験が教えるのであり,理論で学ぶことはできない」と信じる彼の信念が本書には症例検討の形で提示され,珠玉の短編小説のように読者の目を引きつけて離さない.あちらこちらに散りばめられた「閑話」「Column」「Memo」もよいスパイスとしてさらに読みやすい本となっている.
 ティアニー先生による臨床診断学の醍醐味が,松村正巳先生によりコンパクトにまとめられ,好評のうちに第2版を重ねた本書が,さらに多くの医師の目にとまり,診断技術として世代や地域を越えて受け継がれていくことを切望している.

 2011年9月
 サクラ精機(株)顧問
 感染症コンサルタント,米国感染症内科専門医
 青木 眞



 この本で意図したのは,学生,研修医,医療従事者の方々に,患者が抱える問題へのアプローチの体系を示すことです.私たちが知る限り,この本のなかで語られることの多くは,今までの医学雑誌や教科書には書かれていません.これらは何十年もの臨床での経験,注意深い患者への観察に基づいているのです.つまり,医学における真の教師は,私たちがケアしている患者なのです.だから,私たちは,この本で書かれた内容が,患者のために役立つことを心から願っています.

 また,私たちはケーススタディが臨床医学を学ぶための最適の方法であると信じています.読者は,本書のひとつひとつのケースがもつ臨床上の問題を解析することを通して,さまざまな所見やデータから決定的な鑑別診断を導く方法を身につけ,患者のケアをより実践的で効果的なものにすることができます.

 もちろん,このプロセスはやさしいものではありません.本書で扱ったすべてのケースへの考察は,実際の時間的経過に沿って,適切に記述され,編集されています.このような過程を学ぶことが,「医師はどう考え,どう問題解決を図るべきか」という原則を身につけるための,最良の訓練になると私たちは感じています.おそらく,私たち医療従事者には,どこか探偵的で,シャーロック・ホームズ的なところがあるのです.本書では,普段の診療で遭遇する患者よりも明らかに複雑なケースをとりあげています.しかし,どんなに軽症にみえる患者であっても,症状をもつすべての患者には同様に,注意深く,十分な診療を行う必要があるのだということを,肝に銘じてください.

 私たちには,私たちの患者に加え,さらに多くの教師がいます.特に,ともに働いている同僚たちです.彼らに深く感謝しています.そして最後に,本書の執筆ばかりでなく,私たちが可能な限りよき臨床医,教師であるために,長い間いつも支え,耐えてくれた家族,愛する人たちへの感謝を忘れません.

 この本のなかでは,すべての医療従事者にとって楽しめ,また人生における大切な宝石とも思えるパールについても触れました.私たちはこの本の内容を楽しんでいただけることを心から願っています.


The purpose of this volume is to provide a framework for students in the health care professions, residents, and practicing caregivers by which they can approach clinical problems. To our knowledge, many of the ideas contained in this book have not previously appeared in journals or chapters. They arise from many decades of clinical experience, and from careful observation of patients. After all, the true teachers of medicine are the people for whom we care, and we hope they will profit from what we write here.

We believe that the case study format is well-suited to learning medicine, and that by analysis of these individual clinical problems, the reader will develop a method to integrate and synthesize observations and data into a useful differential diagnosis, and thus make patient care more practical and efficient.

Of course this is not an easy process. The consideration of all of the cases was recorded in real time, transcribed, and edited. We felt this best simulated how physicians think and solve problems. Perhaps there is a little of the detective in all of us in the medical profession, much in the fashion of Sherlock Holmes. Obviously, the cases herein are more complex than what is encountered in every day practice, but it is to be remembered that all patients with any symptom, no matter how minor it may seem, deserve full consideration and thoughtfulness.

In addition to our patients, we have had many other teachers, especially our colleagues with whom we work every day. We are deeply grateful to them as well. And finally, our families and loved ones must tolerate the long hours of effort necessary not only to write, but to be the best physicians and teachers possible.

We mention many “pearls” in our book, something all practitioners enjoy ; but those closest to us are the real gems in life. We hope you enjoy what we have written for you.

 2011年9月
 September, 2011

 ローレンス・ティアニー
 Lawrence M. Tierney Jr., MD
 松村正巳
 Masami Matsumura, MD



 ティアニー先生と共著で本を出版できたこと,さらに版を重ねることができたことは,私にとって大きな喜びです.
 ティアニー先生との出会いは,2002年に京都で開催された国際内科学会議にさかのぼります.プログラムのなかでティアニー先生が指定討論者(discussant)となり,症例をどのように診断してゆくか,そのプロセスを学ぶセッションが3日間ありました.当時の私は自分の臨床医としてのスキルが,満足できるところにきていると思っておりました.しかし,このセッションに出席し,大きなショックを受けました.私は思い違いをしていたのだと思います.患者の情報を事前に何も知らず,病歴のみから,可能性のあるすべての鑑別診断を挙げ,どの疾患の可能性が最も高いかを,ときにユーモアをもって話されたティアニー先生の臨床医としてのレベルが,エベレストのように見えたものです.
 私はすぐに,ティアニー先生を教育のためにお招きしたいと思いました.幸運にも当時私が勤めていた病院に青木眞先生が診療に来られており,親友であるティアニー先生をご紹介いただき,以来,毎年金沢にお招きしています.ケーススタディを中心に,よき臨床教育ができたと思っています.
 ティアニー先生の教育スタイルは,ひとりひとりの患者を大切にされ,病歴,身体所見からすべての鑑別診断を挙げ,検査は診断の確認に用いる程度です.事前の打ち合わせは一切ない呈示に対して,どのようにアプローチしてゆくか,わかりやすい単語を選びながら,ユーモアをもって話されます.内容は奥深く,魅了されながらサイエンスとアートを学べます.また,難しいときの一発診断にも,いつもながら感心させられます.今までにティアニー先生の前で40人あまりの症例呈示を行いましたが,鑑別診断を外されたことはありません.ティアニー先生のレベルに到達することを目標にしていますが,先は,遥かかなたです.
 本書では,ティアニー先生に第1部として,診断のプロセスの基本を書いてもらいました.第2部では,14ケースの診断過程を,ティアニー先生の教えを基に書いています.この第2版では初版に2つのケースを加えると同時に,大幅な加筆を行いました.そして,さらに読者の理解を深めるために,ティアニー先生との対談を追加しました.この本は,よき臨床医になることを志す若い方々にとって,スキルアップの一助になると確信しています.若い方々に診断のプロセスの醍醐味をお伝えできれば,これに勝る喜びはありません.
 最後に,本書の出版のきっかけとなった「medicina」誌へのケーススタディの連載執筆を勧めていただいた,あおばメンタルクリニックの市村公一先生,的確なアドバイスをいただいた医学書院の滝沢英行氏,かつて私を指導してくれた津川喜憲先生,佐藤隆先生,私を刺激してくれる医学生・研修医の方たち,そして私を日々支えてくれている家族に心から感謝します.

 2011年9月
 松村正巳

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第1部 診断入門
 診断のプロセス
 病歴,身体観察,仮説,鑑別診断
 観察
 最初の数秒の観察
 最初の数語
 病歴,病歴,病歴
 得るものが多いか,少ないか
 得るものが少ない
 病歴の出発点
 症状をよく語る
 現病歴
 患者の伝記
 身体診察のアート
 11のカテゴリー
 オッカムのかみそりとヒッカムの格言
 偶発腫瘍
 経過観察
 パールとEBM
 私のトップ10パール
 再び基本
 付録 システムレビュー(Review of Systems;ROS)

第2部 診断へのプロセス―ケーススタディ
 Case Study 1  2つの入り口
 Case Study 2  レッド・フラッグサイン
 Case Study 3  理論的思考
 Case Study 4  診断を語る
 Case Study 5  47年前のエピソード
 Case Study 6  悩ましきもの
 Case Study 7  伏兵
 Case Study 8  アルコールのせい?
 Case Study 9  稀な典型例
 Case Study 10  優先
 Case Study 11  意外な関係
 Case Study 12  身体は語る
 Case Study 13  手は口ほどにものを言う
 Case Study 14  似て非なるもの


第3部 ティアニー先生,“history”を語る
 私が総合内科医になった理由
 幅広く,複雑なものへの関心
 「どの専門を選べばよいか?」
 恩師
 よき教師であり,卓越した臨床医
 どれがhigh yield(得るものが多い)で,どれがlow yield(得るものが少ない)か
 医師として,日々心がけていること
 ティアニー先生がいつも用いる11のカテゴリー
 新しい視点で考える
 鑑別診断を考える能力をどう鍛えるか?
 患者の物語を聴く
 研修病院の選び方
 なぜ海外で臨床教育を行うのか?
 日本の医学生・研修医へのメッセージ

索引

column
 陽性所見,陰性所見
 体温の日内変動
 感度,特異度
 身体診察のTIPS:リンパ節の触診
 身体診察のTIPS:徒手筋力テストにおける下肢近位筋の評価
 身体診察のTIPS:吸気時の細かい断続音
 研修医へのアドバイス:肋膜を患った
 陽性尤度比
 研修医へのアドバイス:後医は名医
 Na-Clの意味
 身体診察のTIPS:手の観察(1)手掌紅斑
 研修医へのアドバイス:意識障害患者への対応
 研修医へのアドバイス:検査室へ足を運ぶ
 Four killer chest painの覚え方
 身体診察のTIPS:手の観察(2)ばち指
 ショックの分類の覚え方
 肺胞気─動脈血酸素分圧較差(A-a較差)の求め方
 身体診察のTIPS:手の観察(3)爪上皮出血点
 身体診察のTIPS:内頸静脈波形の観察のコツ
 奇脈の評価法,心タンポナーデで奇脈が観察される機序について
 心電図で低電位を認めたときに考慮すべき疾患の覚え方
 身体診察のTIPS:S2の幅広い分裂
 研修医へのアドバイス:体温の解釈における注意

閑話
 その1 家庭人
 その2 一発診断 “Slam Dunk Diagnosis”
 その3 日本でのリフレッシュ
 その4 観察力
 その5 後日談
 その6 調和 “harmony”
 その7 ナンバープレート
 その8 原則 “principle”

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大切なことは後から,わかる。
書評者: 佐藤 泰吾 (諏訪中央病院・内科総合診療部)
 私は2000年から2004年までの4年間に何度かティアニー先生とともに過ごす幸せに恵まれた。松村理司先生(現・洛和会音羽病院院長)が中心となって運営されていた,舞鶴市民病院での「大リーガー医」招聘プログラムでの経験だ。

 『ティアニー先生の診断入門 第2版』を読了した時,松村理司先生の声がよみがえってきた。「大リーガー医がホームランを打っているときに,何をボーっとしとるんや!」と,いら立ちとともに発せられた声である。

 舞鶴市民病院における,ある日のケースカンファレンス。2年先輩が,ティアニー先生に症例提示。高齢男性で,細菌性髄膜炎の症例であった。症例のポイントは髄液から2種類のグラム陰性桿菌が検出されている点であった。「Great case! strongyloidiasis!」とティアニー先生はにこにこしながら答えられた。その瞬間のティアニー先生のしぐさは,しっかりと私の中に残っている。しかし卒後間もない私には,2種類のグラム陰性桿菌が髄液中に検出されることが,なぜ問題になりうるのか理解できなかった。正直に言うと,「strongyloidiasis」が何を意味するのかさえ知らなかった。私にはほとんど何もわからないまま,カンファレンスは終了した。ティアニー先生が部屋を出たあと,松村理司先生の前記発言。

 『ティアニー先生の診断入門 第2版』はとてもわかりやすい文章と構成で記述されている。ケーススタディーもティアニー先生の思考を丁寧になぞることができるように作り上げられている。もちろん,長年にわたりティアニー先生とディスカッションを積み重ねてこられた,松村正巳先生の配慮が行き届いているが故。思考の補助線になるcolumnも魅力的だ。閑話からはティアニー先生のお人柄がとてもよくうかがえる。

 「Great case! strongyloidiasis!」から,10年以上の時がたった。臨床の時間を積み重ねる中で,わからないことを抱え続けることの大切さを教えられた。その場ですべてを理解できなくても,その時の風景,言葉,しぐさを記憶にとどめおくことが大事なのだ。結果として,いつも大切なことは後から,わかる。

 今の私には,2種類のグラム陰性桿菌が髄液から検出されているときに,なぜ「糞線虫症」を考えなければいけないのか,理解できる。そのために,何を患者から聞き出し,どのような背景を考慮すべきなのかも知っている。

 『ティアニー先生の診断入門 第2版』は通読も容易だ。しかし,ここに記されている大切なことを,本当に理解できる日は,さらなる時を経た後であることも感じさせられる。

 そのことを確認するためにも,数年後に再読したいと思わせる魅力に満ちた書籍である。
カンファレンスに参加しているように診断学の世界に引き込まれる
書評者: 平岡 栄治 (神戸大病院総合内科)
 本書の著者は,おそらくその名前を知らない内科医,研修医,学生はいないと思われるカリフォルニア大学のローレンス・ティアニー先生とそのご友人であり自身もご高名な総合内科医である金沢大学の松村正巳先生である。

 3部から構成されており,第1部はティアニー先生の診断哲学がまとめられている。病歴をとる際の患者観察の重要性,病歴の中には収穫の多い病歴と収穫の少ない病歴がありそれを見極めることの重要性などなどが具体例をもって説明されている。さらにどの本にも書かれていない診断に役立つクリニカルパールが書かれている。「多発性骨髄腫の3つのNoは発熱なし,アルカリフォスファターゼの上昇なし,脾腫なし」といった具合である。

 第2部は金沢大学で実際行われたティアニー先生とのケースカンファレンスを合計14例出され,ティアニー先生の思考過程が詳述されている。一貫していることは病歴からかなり診断が絞られることである。11のカテゴリーでもれなく鑑別疾患を挙げ,病歴が終わるころにはかなり鑑別が絞られる方法は見事である。さらにコラムにて松村先生が身体所見や病気に関する解説をされている。ケースからその患者の診断までの過程を学ぶと同時に疾患についても学べるように構成されていて非常に勉強になる。

 第3部では,ティアニー先生へ松村先生がインタビューされ会話形式でティアニー先生の個人史やいい医者になるための読者へのアドバイスが書かれている。

 ティアニー先生は皆様ご存じのとおり診断の神様と呼ばれ,米国内のみならず世界各地へケースカンファレンスをされ“診断学”を教育されている。本書を読むとケースカンファレンスに参加したことがない人もまさしくカンファレンスに参加しているようにティアニー先生の診断学の世界に引き込まれるだろう。学生,研修医のみならず内科医,指導医にも一読を勧める。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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