病院早わかり読本 第4版

もっと見る

患者さんが安心して受けられる医療の提供には、何よりも医療のしくみの正しい理解が求められる。その実践の過程から「医療における信頼の創造」を実現するために、医療に携わるすべての新人スタッフがまず知っておくべきことを、コンパクトかつすぐに理解できるようまとめ大好評であり続けたベストセラー最新改訂第4版。近年さらに変化の激しい医療制度改革に対応し全面的に内容を刷新。
編著 飯田 修平
発行 2011年03月判型:B5頁:276
ISBN 978-4-260-01238-6
定価 2,420円 (本体2,200円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次

開く

第4版 序

 “変化・Change”という単語を,聞き飽きた,耳にタコ,口先だけと言いたくなる最近の風潮です。それにもかかわらず,“変化”する社会情勢に対応しなければなりません。
 “構造改革”“医療制度改革”と呼ばれる,“医療壊滅策”が急速かつ大規模に進行し,“医療崩壊”“病院崩壊”と呼ばれる状況に陥りました。大部分の医療従事者が,カッコ抜きの,構造改革・医療制度改革の策定とその実施を要望していると考えます。しかし,改革を待っていても実現しません。棚ボタはありません。私たち医療従事者が自ら行動し,その成果を出さなければなりません。それぞれの立場で役割を果たすことが求められており,関係者の参画が求められています。“医療崩壊”“病院崩壊”と呼ばれる今こそ,構造改革・医療制度改革の好機と捉えるべきです。他組織や他人ではなく,自らが変わること,意識改革することが必要です。そして,組織を挙げた継続的な質向上の努力が必要です。
 本書の主題は,「医療は特殊ではない,一般企業と同じ部分の方が多い」と考える「病院職員および患者や国民の意識改革」と,継続的質向上の実践を通した「医療における信頼の創造」です。
 本書出版の経緯を振り返ってみます。“なぜ「今」意識改革が必要かを認識することが重要である”という趣旨で『病院職員のための病院早わかり読本』を出版し(平成7年),“大きな変化と時間が経過した現在,意識改革した後にどのように行動し,行動により何が変わったか,その成果はどうかが問われている,議論したり,考えている段階ではない,行動・実践あるのみである”という趣旨で,『病院早わかり読本』を出版しました(平成11年)。その後も社会情勢の変化や,頻繁に行なわれる医療制度改正等に対応して,毎年のように改訂・増補を行なっています。平成18年の第5次医療法改正を受けて“社会の変化に対応し,むしろ,新しい変革の流れを作ることに少しでも寄与するように”と,第3版として全面改訂しました(平成19年)。その後も,医療を取り巻く環境が激変し,医療界はかつてない荒波に翻弄され,医療崩壊,病院崩壊と呼ばれる状況が急速に進みました。平成20年10月16日読売新聞朝刊の「医療構造改革・読売提言特集」は医療従事者の意欲低下を食い止め,平成22年の診療報酬改定と健康保険法改正は約10年間の医療費削減の流れを止めた点で,極めて大きな意義がありました。しかし,これらが,流れを変える転換点だったのか,あるいは,流れを一時的に遅くしただけなのかは,歴史の評価を受けるしかありません。少なくとも,流れを良い方向に変える努力を継続することが必要です。今回の第4版においても,本書に一貫して流れる趣旨を引き継ぎつつ,最新の動向を踏まえて,“予測不可能な社会の変化に対応するためには,原理原則に基づいて,現場で現物を現実に実践することが必要である。自らが変わらなければならない”という趣旨で,全面改訂しました。
 医療従事者も安心して医療を提供し,患者さんが安心して医療を受けるためには,医療の仕組みを正しく理解し,相互の理解を深める努力が必要です。その実践の過程から,「医療における信頼の創造」が実現できると確信します。
 信頼とは安心です。安心の基本は安全の確保です。事故はけしからぬ,事故を起こすべきではない,犯人は誰だ,誰の責任か等という考え方では解決できません。安全の確保には,質の向上,とくに,医療機関の「職員の質」とともに「組織としての経営の質」の向上が必須です。
 先行きが不透明で,意思決定が困難な時期にこそ,基本に立ち返って考えることが必要です。基本に据えるべきは質の向上であり,質管理の手法が参考になります。質を機軸にした経営であり,総合的質経営(TQM:Total Quality Management)が必要です。近年,品質管理関係者との連携が大きく進展し,いくつかの具体的なプロジェクトが成果を挙げています。
 本書の特徴は,第1部「医療の仕組み」で,医療とは何かから説き起こし,医療制度(医療提供のしくみ)と医療保険制度(医療費の報酬と支払いのしくみ)を,第2部「医療の質向上を目指して」で,質とは何か,医療の質とは何か,質重視の経営を解説していることです。他にはない構成です。
 「早わかり」とはいいながら,複雑かつ難解な医療制度や質管理を,できるだけ正確かつわかりやすく伝えたいという二律背反に,あえて挑戦しています。欄外の用語解説による補足がその一つです。今回も,本文だけではなく,用語解説も大幅に改訂しました。執筆者の意見を参考にして,飯田が書き改めたことをお断りいたします。
 医療制度を考え,また,質を向上させるための参考書として活用し,医療従事者と患者さんを含め多くの方々との相互理解に役立てていただければ幸いです。
 本書を,傘寿を迎えられた恩師・都築俊治先生に捧げます。外科医として,常に患者のそばにおられ,誰よりも患者の状態を把握し,諸外国および他分野の文献を実験等で検証し,未開の肝臓外科の新しい分野を切り開き,内外に論文を発表し,若い外科医を指導されました。すなわち,原理・原則に基づいて,現場で現物を現実に実践するという,本書に流れる精神である,5ゲン主義を,身を以て教授していただきました。
 ご示唆をいただいた医学書院の大橋尚彦さんに感謝申し上げます。今回も,本書の意図を汲んだ絵を描いてくださったかとうゆみこさんに感謝申し上げます。

 平成23年2月
 飯田修平

開く

第1部 医療の仕組み
 第1章 時代背景
 第2章 医療とは
 第3章 社会保障制度としての医療制度・医療保険制度の成立
 第4章 病院とは
 第5章 特殊な医療の問題
 第6章 医療保険制度
 第7章 高齢者医療制度
 第8章 診療報酬制度
 第9章 (公的)介護保険制度
 第10章 病院業務の流れ
 第11章 病院の組織
 第12章 人事
 第13章 病院管理と財務
 第14章 施設・設備管理
 第15章 医療廃棄物・感染管理・環境保全

第2部 医療の質向上を目指して
 第1章 質とは何か
 第2章 良質な医療
 第3章 質管理
 第4章 医療の質管理
 第5章 医療の質向上活動
 第6章 医療機能評価
 第7章 医療の標準化
 第8章 情報技術の活用
 第9章 安全確保
 第10章 組織としての問題への対応
 第11章 職業人としての心得
 第12章 苦情は改善のための情報源である
 第13章 患者の権利
 第14章 信頼の創造

おわりに
参考図書
用語一覧
索引

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。