アセスメント力を高める!
バイタルサイン

もっと見る

バイタルサインを詳しく知れば、こんなことまでわかるんです! ナースには近年ますますアセスメント力が求められています。本書ではバイタルサインの正しい測定方法、臨床でのいかし方をオールカラーの豊富なビジュアルでわかりやすく解説していきます。 看護学生や新人ナースの臨床への橋渡し、現場ナースの実践力のアップに最適な1冊。医学書院ADBOX
シリーズ JJNスペシャル
徳田 安春
発行 2011年10月判型:AB頁:136
ISBN 978-4-260-01310-9
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次
  • 書評

開く

本書を読まれるみなさんへ

 脈拍、呼吸、体温、血圧などの「バイタルサイン」は「生命徴候」とも訳される、生命活動そのものを示すダイナミックなサインです。実は、バイタルサインはもともと看護学領域の先駆的なナースが提唱した概念です。この重要性に注目し「バイタルサイン」と名付けたことは看護学の歴史的偉業といえます。その後、医学にも取り入れられて、世界標準の診療における必須項目となりました。
 昨今、ナースにはアセスメント能力がますます求められており、なかでもフィジカルアセスメントは、バイタルサインをきちんと測ることが基本です。バイタルサインに積極的にかかわり、現場で活用することがエキスパートナースになる鍵といえるでしょう。

 バイタルサインは、特に患者の生死にかかわる急性期医療で非常に重要な情報であり、患者の状態を把握するためにとても重要です。
 まず、バイタルサインの評価は臨床診断に役立ちます。
 例えば、命にかかわる重篤な疾患である急性大動脈解離では、突然発症の胸背部痛で上肢血圧の左右差がみられるかどうかが早期発見のヒントになります。
 最近の医師は、画像と検査で診断を行う傾向があり、初期的な画像や検査で見つからないような疾患では診断エラーをしばしば起こします。血圧を測定することが皆無となった医師たちが診察をする前に、ナースが、この「上肢血圧の左右差」を見つけ、指摘することによって患者さんの予後は大きく変わってくるでしょう。
 また、バイタルサインは重症度を判断するのに役立ちます。
 肺炎の重症度評価にはCRPなどの血液検査結果よりも、呼吸数や脈拍数の増加、血圧の低下などのほうが有用です。入院患者急変時のドクターコールの基準もバイタルサインの評価に基づいて行われます。
 呼吸状態の悪化の早期アセスメントには、SpO2(パルスオキシメーターによる経皮的動脈血酸素飽和度)の低下の前に、呼吸数の増加を認めることがほとんどです。SpO2が低下したときにはすでに危険な状態となっているのです。
 これらのように、バイタルサインを正しく測り、的確に活用することができれば一刻を争う急変時や、日常のケアの場面でも大いにあなたの力になるでしょう。

 今回、ナースに向けて「バイタルサイン」の企画が医学書院の石塚純一さんから相談がありました。私はこれまで、日野原重明先生や道場信孝先生、宮城征四郎先生をはじめとした諸先輩の先生方からご指導を受けてきましたので、それをこれからのナースにも届けたいと考えました。
 本書は、できるだけビジュアル的に見やすく、理解しやすくなるように工夫しています。臨床のナースのみならず、看護学生、医学生、研修医や、救急救命士、臨床検査技師ほか、コメディカルを目指す学生のみなさんに読まれ、臨床現場のケアの質がアップすることにつながることを望みます。

 平成23年8月吉日 水戸にて
 徳田安春

開く

 本書を読まれるみなさんへ

総論 バイタルサインとは
 バイタルサインとはどのようなものか
 バイタルサインの重要性

第1章 脈拍
 脈拍とは
 脈拍の測定
 脈の触れる動脈
 脈拍数と脈のリズム
 頻脈と徐脈
 脈拍欠損
 脈の性状

第2章 呼吸
 呼吸のしくみ
 呼吸のはたらき
 呼吸のアセスメント
 呼吸数・呼吸のリズムの異常
 PICK UP SpO2

第3章 体温
 体温調節のしくみ
 体温の測定
 発熱をきたす疾患

第4章 血圧
 血圧の測定
 血圧の対称性
 血圧の評価
 ショック患者への対応

第5章 静脈圧
 静脈圧とその異常
 静脈圧の測定
 静脈圧測定の応用
 静脈の波形とその意義

第6章 意識
 意識障害患者のアセスメント
 バイタルサインの把握と初期アセスメント
 瞳孔径と対光反射の観察
 意識障害患者への対応
 PICK UP 尿量

 参考文献
 索引

開く

机上の知識を臨床の知につなげられる一書 (雑誌『看護教育』より)
書評者: 藤田 京子 (蕨戸田市医師会看護専門学校副校長 )
 看護師には,臨床のケアの質をあげることにつながり,看護学生には,医学的基礎知識として絶対に必要なバイタルサインの知識と,フィジカルアセスメント能力を高めるための知識をもたらす,すばらしい書である。豊富な写真,図解入りで丁寧に解説してあり,静脈圧と意識についても言及され,よりバイタルサインの理解が深まるようになっている。看護の初学者の教育に携わる教員にも是非一読してもらいたい。今まであいまいだった根拠を示し,自信をもって講義,実習指導に活かせること請けあいである。

 この書の特徴について簡単に記す。看護学生が最も重宝する知識として,臨地実習で判断基準となるものがあげられる。すなわち,バイタルサインにおける病態の具体的な変化を表わす数値である。測定数値の示す意味を知らずして,臨地実習の学習は進めていけない。医師の臨床診断にも用いられている知識を解剖生理から解説し,バイタルサインの正確な測定方法とともに数値的意味をわかりやすく解説しているのが,良書とする第一点である。

 第二点は,病態と合わせてバイタルサインの数値をみていくとき,臨床的に問題がある,または重篤な状態と判断できる症例を上げて,観察のポイントからその判断まで思考過程を踏まえながら理解できるようになっているところである。医療行為の一部を担う「特定看護師」の導入が話題になっているが,このような基本的な医学知識をしっかり得たうえで思考する能力を高めることが,未来の臨床看護師としての基礎を身につけることになるのではないかと考える。

 図書室の一角でわいわいしている学生の集団があった。何かと首を突っ込んでみると,なんとこの書について話していた。学生からは,「わぁ,この図がいいね!」「写真や図が多くて,とにかくわかりやすい」「解剖生理から,測定方法,正常・異常と流れがあって,頭にスーッと入ってくる」「事例があってよい」「みっちり書いてないから,見やすい」「実習が始まる前にこの本と出会いたかった」など,率直な意見が次々と発せられていた。いずれにしても,学生に大変人気があり,内容的にも充実している。欲を言えば,値段がもう少し安くならないものかという学生たちの嘆きもあったのだが……。

 臨床判断の究極は,バイタルサインの経過分析と病態との関連におけるアセスメントであり,その先に看護ケアが考えられていくものであるが,その土台はバイタルサインの正しい測定と的確な活用である。そのことを改めて教えてくれる大切な一書である。

(『看護教育』2012年1月号掲載)

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。