解剖学カラーアトラス　第7版

第7版 序（J. W. Rohen，横地千仭，E. Lütjen-Drecoll）／日本語版について（横地千仭）

第7版 序
　この新しい版でも，以下のように様々な点で改訂を行い，いろいろと新しい趣向もこらした．まず，各章の冒頭にその章の概要を簡潔に紹介するページを設けた．本書全体の導入となる第1章「総論」では内容の配列を改め，それぞれに解説をつけた．これによって読者は複雑な肉眼解剖の世界をよりよく理解できるようになった．分量が多くなった第2章「頭部および頸部」は5つの細かい副章に分け，それぞれに導入のページを設けた．さらに図版については多くの章でよりよいものに差し替え，さらなる統一性の取れたタッチとなっている．ほとんどの章で，新たに解剖された標本を用いて撮影された写真が付け加えられた．
　このアトラスの全体的な構成は変わっていない．局所解剖の章は，解剖構造の系統的な記述に続いて置かれている．そこで読者は，例えば四肢の解剖に先立って，骨，関節，筋肉，神経や血管の系統解剖を学ぶことができる．また標本の写真で学習するにあたっては，拡大鏡を用いると役に立つ．拡大して写真を見てみると，そのずば抜けた精緻な再現性に驚かされるであろう．
　臨床に入る前の学生にとってたいへん重要となるCT，MRIといった画像の写真も本改訂版の多くの場所に新たに加えられている．われわれはこれらの写真を提供していただいたProf. Heuck（Munich）に心より御礼を申し上げたい．また今回の第7版では，人体の体表解剖の写真が再び取り入れられた．
　改訂にあたって多くの追加や修正があったにもかかわらず，全体のボリュームは増加していないので，臨床前でも臨床研修中でも，本アトラスを容易に持ち運ぶことができるだろう．
　改訂版の作成にあたって，われわれは人体というものがいかに精密に，美しくまた素晴らしく構成されているかということに改めて気づかされた．もし本書が，人体の組織や器官の解剖学的構造の圧倒されるような美しさを，学生や医師が認識する助けとなるならば，その目的は達せられたといえよう．解剖学的構造に深い興味を持ち，その精緻さに感歎することは“人間への愛”をはぐくむことであり，このことは日常の医業においても最も基本的かつ重要なことと思われる．
　われわれはこの本のために素晴らしい作業を提供し，協力してくれたすべての方々に対し深い感謝を表したい．これらの人々の協力なくしてはこのアトラスの改訂は不可能であった．また，Schattauer GmbH（Stuttgart, Germany），Lippincott Williams & Wilkins（Baltimore, Maryland, U.S.A.），および医学書院（東京，日本）が常にわれわれの要望を聞き入れ，本書の改訂に多大の努力を払ってくれたことを心から感謝するものである．
　2010年3月
　J. W. Rohen
　横地千仭
　E. Lütjen-Drecoll

日本語版について
　本書に使用された和名は，原則として日本解剖学会によって制定された用語に依っている．
　本書は英文版に準拠しているが，日本語版では必要に応じて解説を付け加え，理解を容易にするように努めた．限られたスペースのなかで，和英両用語を併記することにしたために，ところによってはかなり混雑した文字組みとなり多少読みにくいところもあると思うが，ご容赦願いたい．
　巻尾の付録は，日本語版のみのもので，これにより無味乾燥になりがちな解剖学について少しでも興味を持っていただければ幸いである．
　最後に日本語版の作成について多大の協力をいただいた医学書院・大橋尚彦氏その他の方々に心から感謝するものである．
　2012年1月
　横地千仭

1　総論
　　人体の構造－3つの原則／内臓，触診点，定位線の位置／体の面と方向／骨／
　　関節／筋／肩関節／循環系／リンパ系／神経系
2　頭部および頸部
　2.1　頭蓋および頭部の筋
　　頭蓋骨／頭蓋冠／頭蓋底／新生児の頭蓋／頭蓋の正中断面／顔面骨／
　　口蓋骨，上顎骨／口蓋骨，前頭骨／鼻骨，涙骨（眼窩）／顎骨，歯／顎関節／
　　咀嚼筋／顔面筋（表情筋）／舌骨上筋，舌骨下筋／頭部の前頭断面，口蓋筋／
　　顎動脈
　2.2　脳神経
　　脳神経／三叉神経／顔面神経／舌咽神経，迷走神経，舌下神経／眼窩内の神経／
　　頭蓋の神経／頭部の表層／下顎後部／三叉神経，顎動脈
　2.3　脳・感覚器
　　頭皮，髄膜／脳硬膜，静脈洞／脳膜／脳の正中断面／大脳の動脈／大脳，小脳／
　　視床下部／大脳核／脳室系／脳幹／脳の断面／頭部の水平断面／平衡聴覚器／
　　視覚器／視覚伝導路／眼窩／涙器，眼瞼
　2.4　口腔・鼻腔
　　鼻腔，副鼻腔／口腔
　2.5　頸部とその器官
　　頸部の筋／喉頭／咽頭／頭頸部の動脈，血管／頭頸部のリンパ管／前頸部／
　　外側頸三角部／側頸部／頸神経叢，腕神経叢
3　体幹
　　骨格／椎骨／胸郭，脊柱，肋骨／体の前壁の体表解剖／胸・腹壁／鼡径部／
　　背部の筋／背部の神経支配／脊髄／項部／頸部と背部
4　胸部内臓
　　胸部内臓の位置／呼吸器系／肺／気管支肺区域／心臓／心筋／心臓の弁／
　　心臓の血管／胸部の局所解剖／心臓と胸部内臓／心膜／縦隔／横隔膜／
　　胸部の断面／胎児の循環／乳腺
5　腹部内臓
　　腹部内臓の位置／前腹壁／胃／膵臓，胆管／肝臓／脾臓／腹部内臓の血管／
　　上腹部の内臓／網嚢／腹腔動脈／腸間膜，腹膜／腹部の断面
6　尿生殖器系，腹膜後器官
　　泌尿器の位置／腎臓／腹膜後臓器／リンパ管，自律神経系／男性尿生殖器／
　　男性外生殖器／男性内生殖器／男性の骨盤部／腹大動脈／
　　尿生殖隔膜，骨盤隔膜（男性）／尿生殖部，肛門部（男性）／女性尿生殖器／
　　女性内生殖器／女性外生殖器／女性尿生殖隔膜／女性の骨盤部
7　上肢
　　骨／関節，靭帯／筋／動脈／静脈／神経／体表解剖／頸部，肩／腋窩部，肩と腕／
　　肘部／前腕，手／手掌／上肢の断面
8　下肢
　　骨／骨盤，関節，靭帯／筋／動脈／静脈／腰仙骨神経叢／脊柱管，脊髄／
　　体表解剖／大腿前面／殿部／大腿後面／膝，膝窩／下腿／下腿，足／下肢の断面／
　　足背／足底

索引
欧文索引／和文索引

付録1　3D STEREO ATLAS／2　解剖学用語の語源