看護教員のための学校経営と管理
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近年の医療水準や医学の高度化,隣接科学の進展,高学歴化,グローバル化など,社会の様相の激変は,以前にも増して看護職に対して,高い判断力や技術力を要求するようになっている。看護系大学の急増,国立大学の法人化が,看護教育のシステムとパラダイムの転換を促し,これまでの主な職業教育の場であった看護学校に,いっそうのレベルアップと自律を求めるようになった。
東京都の看護師養成は,戦前に病院付属の養成所として出発したが,戦後は病院から独立した一事業所として位置づき,今日まで継承されてきた。1977年には専修学校となった。1989年には,高度医療に対応できる人材を育成する必要性から都立医療技術短期大学が設立され,保健科学大学から首都大学東京へと発展しつつ現在に至っている。
一方,都内の看護の質を均衡のとれた適切なものにするために,2000(平成12)年の“衛生局アクションプラン”で,都立看護専門学校(以下,都立看学)の再編整備計画が実行に移され,都立の看護学校のうち3年課程校のみを存続させ,11校が7校に,養成総数4桁から3桁の560人定数へと大幅な縮小を図った。
2001(平成13)年には,都立看学を所管する保健福祉局医療政策部看護課が医療人材課へと組織が再編され,医療政策部長が医師から事務職に交替した。このときを境に都立看学校長会は学校経営責任者として,本庁と一体的にかかわるという共通認識が定着した。
量的な再編整備が着実に進行する中で,質的課題は未検討であることに強い危機感を抱き,それを解決するために,当時豊島看護専門学校長であった松原定雄校長会幹事のリーダーシップによって編み出されたのが,校長会プロジェクトチームである。東京都全体の直近の課題であるIT導入を都立看学でも円滑に行うために,同年9月から「IT化推進」と,開始して間もなかった社会人入試の課題を整理する「社会人入試中間評価」の2つのプロジェクトチームを発足させた。
その後,「看護学校のあり方」「看護学校評価全体会」
「看護教員の資質向上」「障がいをもつ学生指導」の各プロジェクトチームが生まれた。IT化,社会人入試など「医療安全教育」役割を終えたものもあるが,さらに国のカリキュラム改正を見越して,「看護教育内容標準化」プロジェクトチームを発足させた。法律の制定や改正の影響,近未来に必然性が高まると予測される課題や,顕在化もしくは潜在化している都立看学の問題点を分析し,その形や意味を洗い直し,考え方や思想を問いながら,新たな時代にふさわしい都立看学を創り直す作業を繰り返してきた。
校長会は毎月1回,医療人材課長が召集して都庁で開催される。校長会プロジェクトチームは,校長会幹事が,年度当初に存廃を決定し,事案ごとに事務職の校長もしくは看護職の校長がリーダーとなり,学校を横断して副校長や教務係長(教務主任)や係長クラスのベテラン教員,もしくは相談担当係長の代表者,本庁医療人材課看護担当副参事や学校係職員など,10名程度で構成した。ディスカッションを通して叡智を集め,各種調査を行い,法的解釈や文献収集などを重ね,科学的,客観的な検証をもとに新しい方法論を提案し合意を得るという形態で行った。結論が得られたものは,本庁で要綱などの行政上の手続きをとって機能していく。年度末には年間活動結果の報告書を必ず作成し,医療政策部長に説明することが慣例となっている。
これらの組織的な活動により,都立看学の運営の透明性,健全性,遵法性を高め,本庁はもとより医療機関,学生や保護者に対して説明責任を果たし,情報開示を積極的に行うことで,内部統制の確立および校長の管理者責任の明確化が図られた。と同時に,教育の結果平等に資することともなった。これこそ学校統治(ガバナンス)の思想と合致し,総合的な都立看学の学校力の向上をもたらしたと思料される。
しかし,組織も生き物である。アクティビティの高い良質な組織を維持するためには,校長以下,教職員の情熱とさらなる切磋琢磨が必須である。
この間,教員の研究成果は,学会発表を義務づけているものは当然であるが,それ以外についても積極的に公表することを推奨してきた。
本書は,看護学校の経営・管理論に関する本が今まで刊行されなかったことから,その視点を切り口として雑誌『看護教育』の2008年4月号より7回にわたって連載した内容に大幅な加筆修正を加えたものである。網野は現役を退いたものの,後輩の3名の看護職の校長(遠藤由美子,林慶子,齊藤茂子)とともにこれまでの成果を著すことができた。異動で看護学校を離れ少子社会対策部にいた前述の松原定雄は,幸い今年の7月に北多摩看護専門学校長に異動し,執筆に加わった。
ここで紹介している図表や資料などは東京都立看護専門学校校長会を中心に作成したものである。適切におおいに活用していただけることを望んでいる。本書が少しでも全国の看護専門学校の管理者や教員の皆様の参考になり,学校経営や管理の改善につながることになれば,執筆者一同望外の喜びである。
発刊に際し,今まで,校長会プロジェクトチームの活動を見守り,支援してくださった歴代の東京都福祉保健局医療政策部長,医療人材課長,学校担当係員の皆様,プロジェクトチームに尽力され退職された校長の皆様方,現職の校長をはじめ職員の皆様に対して厚くお礼を申し上げます。実習を通して学校運営に関与してくださった都立病院の院長や看護部長,看護部の皆様にもお礼を申し上げたいと思います。また,連載の企画者であった『看護教育』前編集者の河田由紀子さん,また現編集者である大野学さんに心より感謝いたします。
2008年11月15日
執筆者を代表して 網野寛子
近年の医療水準や医学の高度化,隣接科学の進展,高学歴化,グローバル化など,社会の様相の激変は,以前にも増して看護職に対して,高い判断力や技術力を要求するようになっている。看護系大学の急増,国立大学の法人化が,看護教育のシステムとパラダイムの転換を促し,これまでの主な職業教育の場であった看護学校に,いっそうのレベルアップと自律を求めるようになった。
東京都の看護師養成は,戦前に病院付属の養成所として出発したが,戦後は病院から独立した一事業所として位置づき,今日まで継承されてきた。1977年には専修学校となった。1989年には,高度医療に対応できる人材を育成する必要性から都立医療技術短期大学が設立され,保健科学大学から首都大学東京へと発展しつつ現在に至っている。
一方,都内の看護の質を均衡のとれた適切なものにするために,2000(平成12)年の“衛生局アクションプラン”で,都立看護専門学校(以下,都立看学)の再編整備計画が実行に移され,都立の看護学校のうち3年課程校のみを存続させ,11校が7校に,養成総数4桁から3桁の560人定数へと大幅な縮小を図った。
2001(平成13)年には,都立看学を所管する保健福祉局医療政策部看護課が医療人材課へと組織が再編され,医療政策部長が医師から事務職に交替した。このときを境に都立看学校長会は学校経営責任者として,本庁と一体的にかかわるという共通認識が定着した。
量的な再編整備が着実に進行する中で,質的課題は未検討であることに強い危機感を抱き,それを解決するために,当時豊島看護専門学校長であった松原定雄校長会幹事のリーダーシップによって編み出されたのが,校長会プロジェクトチームである。東京都全体の直近の課題であるIT導入を都立看学でも円滑に行うために,同年9月から「IT化推進」と,開始して間もなかった社会人入試の課題を整理する「社会人入試中間評価」の2つのプロジェクトチームを発足させた。
その後,「看護学校のあり方」「看護学校評価全体会」
「看護教員の資質向上」「障がいをもつ学生指導」の各プロジェクトチームが生まれた。IT化,社会人入試など「医療安全教育」役割を終えたものもあるが,さらに国のカリキュラム改正を見越して,「看護教育内容標準化」プロジェクトチームを発足させた。法律の制定や改正の影響,近未来に必然性が高まると予測される課題や,顕在化もしくは潜在化している都立看学の問題点を分析し,その形や意味を洗い直し,考え方や思想を問いながら,新たな時代にふさわしい都立看学を創り直す作業を繰り返してきた。
校長会は毎月1回,医療人材課長が召集して都庁で開催される。校長会プロジェクトチームは,校長会幹事が,年度当初に存廃を決定し,事案ごとに事務職の校長もしくは看護職の校長がリーダーとなり,学校を横断して副校長や教務係長(教務主任)や係長クラスのベテラン教員,もしくは相談担当係長の代表者,本庁医療人材課看護担当副参事や学校係職員など,10名程度で構成した。ディスカッションを通して叡智を集め,各種調査を行い,法的解釈や文献収集などを重ね,科学的,客観的な検証をもとに新しい方法論を提案し合意を得るという形態で行った。結論が得られたものは,本庁で要綱などの行政上の手続きをとって機能していく。年度末には年間活動結果の報告書を必ず作成し,医療政策部長に説明することが慣例となっている。
これらの組織的な活動により,都立看学の運営の透明性,健全性,遵法性を高め,本庁はもとより医療機関,学生や保護者に対して説明責任を果たし,情報開示を積極的に行うことで,内部統制の確立および校長の管理者責任の明確化が図られた。と同時に,教育の結果平等に資することともなった。これこそ学校統治(ガバナンス)の思想と合致し,総合的な都立看学の学校力の向上をもたらしたと思料される。
しかし,組織も生き物である。アクティビティの高い良質な組織を維持するためには,校長以下,教職員の情熱とさらなる切磋琢磨が必須である。
この間,教員の研究成果は,学会発表を義務づけているものは当然であるが,それ以外についても積極的に公表することを推奨してきた。
本書は,看護学校の経営・管理論に関する本が今まで刊行されなかったことから,その視点を切り口として雑誌『看護教育』の2008年4月号より7回にわたって連載した内容に大幅な加筆修正を加えたものである。網野は現役を退いたものの,後輩の3名の看護職の校長(遠藤由美子,林慶子,齊藤茂子)とともにこれまでの成果を著すことができた。異動で看護学校を離れ少子社会対策部にいた前述の松原定雄は,幸い今年の7月に北多摩看護専門学校長に異動し,執筆に加わった。
ここで紹介している図表や資料などは東京都立看護専門学校校長会を中心に作成したものである。適切におおいに活用していただけることを望んでいる。本書が少しでも全国の看護専門学校の管理者や教員の皆様の参考になり,学校経営や管理の改善につながることになれば,執筆者一同望外の喜びである。
発刊に際し,今まで,校長会プロジェクトチームの活動を見守り,支援してくださった歴代の東京都福祉保健局医療政策部長,医療人材課長,学校担当係員の皆様,プロジェクトチームに尽力され退職された校長の皆様方,現職の校長をはじめ職員の皆様に対して厚くお礼を申し上げます。実習を通して学校運営に関与してくださった都立病院の院長や看護部長,看護部の皆様にもお礼を申し上げたいと思います。また,連載の企画者であった『看護教育』前編集者の河田由紀子さん,また現編集者である大野学さんに心より感謝いたします。
2008年11月15日
執筆者を代表して 網野寛子
目次
開く
序文
1 看護学校の経営と管理
看護学校をめぐる環境の変化
看護学校に経営・管理が必要な理由
入学生の動向を見極める
看護学校の優位性(アドバンテージ)
2 看護学校の統治(ガバナンス)とは 学校教育における契約のもつ意味
学校ガバナンスの構造
大学ガバナンス
看護師養成へのガバナンスの概念の適用
看護学校のガバナンス
看護学校のガバナンスの具体化に向けて
3 看護学校経営の過程 リサーチからフィードバックまで
看護学校経営の構造
看護学校経営の過程
学校経営改善のための方略
説明責任(アカウンタビリティ)
4 カリキュラム編成
今日的職業教育の理想と限界
学校経営とカリキュラム
基礎的能力・生涯学習能力を付与するカリキュラム編成
カリキュラム編成のプロセス
学則および修了認定と学籍管理
実習施設確保と環境整備
講師の選択と依頼
学校組織における教員の守備範囲
教科外活動と潜在カリキュラム
5 医療安全教育
安全教育のシステム化
実習におけるインシデントの把握と対策
「安全教育」標準プログラム
「診療の補助技術における安全」の授業計画
実習における転倒・転落防止への取り組み
機材の整備のための予算化
事故等発生時の学生支援
6 倫理教育
専任教員に求められる倫理
倫理教育の実際
役割モデルとしての教員
7 専任教員の資質向上に向けた取り組み
専任教員に求められる能力
教育実践能力
看護実践能力
研究能力
マネジメント能力
授業評価を中心とした学習権の保証
教員の人間的魅力と情熱
8 結果平等─国家試験対策を例にした学習権の保証
結果平等とは
国家試験合格率のもつ意義
成績のふるわない学生への対応
就職活動に対する指導
国家試験対策のもう一つの効用
9 危機(リスク)管理 事故防止の視点から
「今そこにある危機」への備え
学生の事故防止
急性アルコール中毒への対応
10 情報管理
情報セキュリティ
学生の実習記録の管理
緊急連絡体制
都立看学危機管理マニュアル
11 資料
資料・表一覧
索引
執筆者略歴
1 看護学校の経営と管理
看護学校をめぐる環境の変化
看護学校に経営・管理が必要な理由
入学生の動向を見極める
看護学校の優位性(アドバンテージ)
2 看護学校の統治(ガバナンス)とは 学校教育における契約のもつ意味
学校ガバナンスの構造
大学ガバナンス
看護師養成へのガバナンスの概念の適用
看護学校のガバナンス
看護学校のガバナンスの具体化に向けて
3 看護学校経営の過程 リサーチからフィードバックまで
看護学校経営の構造
看護学校経営の過程
学校経営改善のための方略
説明責任(アカウンタビリティ)
4 カリキュラム編成
今日的職業教育の理想と限界
学校経営とカリキュラム
基礎的能力・生涯学習能力を付与するカリキュラム編成
カリキュラム編成のプロセス
学則および修了認定と学籍管理
実習施設確保と環境整備
講師の選択と依頼
学校組織における教員の守備範囲
教科外活動と潜在カリキュラム
5 医療安全教育
安全教育のシステム化
実習におけるインシデントの把握と対策
「安全教育」標準プログラム
「診療の補助技術における安全」の授業計画
実習における転倒・転落防止への取り組み
機材の整備のための予算化
事故等発生時の学生支援
6 倫理教育
専任教員に求められる倫理
倫理教育の実際
役割モデルとしての教員
7 専任教員の資質向上に向けた取り組み
専任教員に求められる能力
教育実践能力
看護実践能力
研究能力
マネジメント能力
授業評価を中心とした学習権の保証
教員の人間的魅力と情熱
8 結果平等─国家試験対策を例にした学習権の保証
結果平等とは
国家試験合格率のもつ意義
成績のふるわない学生への対応
就職活動に対する指導
国家試験対策のもう一つの効用
9 危機(リスク)管理 事故防止の視点から
「今そこにある危機」への備え
学生の事故防止
急性アルコール中毒への対応
10 情報管理
情報セキュリティ
学生の実習記録の管理
緊急連絡体制
都立看学危機管理マニュアル
11 資料
資料・表一覧
索引
執筆者略歴
書評
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看護教員の資質を高め,看護学生の成長に影響を与える心強い味方 (雑誌『看護教育』より)
書評者: 齋藤 郁子 (財団法人三友堂病院看護専門学校教務主任)
2008年4月,本書のタイトルに携わる職位になった。本書は看護教員に求められる「学校経営と管理」についてシステマチックにまとめられており,管理者の初学者となった私には心強いテキストである。3年前からは実習調整者(教務主任補佐)を担当していたが,その役割を明らかにするために,医中誌Webで検索をしたものの,先行研究が少なかったことを記憶している。しかし,ヒットした先行研究を参考に,当校での役割についてまとめたことを思い出した。
◆看護教育と成果主義はなじまない
さて,昨年の春,私の職位に関する仕事は目標管理の評価面接をすることから始まった。考課者を体験してみて,「看護管理過程と目標管理」について学びたいと考えていた頃,県看護協会主催の認定看護管理者制度セカンドレベル教育課程の科目選択を聴講できる機会を得た。そこでは経営管理論の変遷のなかで現在主流の動機づけ理論の説明を聞き,紹介図書を読むことで発見もあり学ぶことが多くあった。その結果,看護学校における人事管理についても同様であろうと思いつつ,「看護教育と成果主義」については,著者と同様,なじまないのではないかと考えた。
2009(平成21)年改正のカリキュラムでは,教員の資質向上を図ることの課題の文言が明記された。では,その指標になるものは何かと考えると,本書に示されている[専任教員のキャリア別達成目標]こそが,それであろうと思われる。看護教員に必要とされる[看護能力][教育能力][研究能力]を3つに規定しており,その能力の段階別能力達成目標が具現化されている。そのことで教員は何をめざすのか明確になっているのでわかりやすい。そして,看護教員の資質が高まることで,看護学生の成長にさらに大きな影響を与えるのではないだろうか。
◆カリキュラム編成の普遍的な考え方を記載
また,昨年は,改正カリキュラムの申請準備に直面した時期でもあった。カリキュラム編成に向けての年間計画立案のもと,教務会で自校のカリキュラムを評価しつつ,カリキュラムデザインの検討を進めてきた。カリキュラムデザインに求められることは,学校の内外の環境を見据えつつ,創造的知性を持って柔軟にカリキュラム編成にあたることだろうと振り返っている。しかし,カリキュラム編成を進めるにあたって普遍的なことがあると思う。それは,本書に示されている[カリキュラム編成]の考え方である。
まもなく,4月,改正カリキュラムをスタートさせる時期を迎える。さらに,本書は心強い味方となるであろう。
(『看護教育』2009年4月号掲載)
書評者: 齋藤 郁子 (財団法人三友堂病院看護専門学校教務主任)
2008年4月,本書のタイトルに携わる職位になった。本書は看護教員に求められる「学校経営と管理」についてシステマチックにまとめられており,管理者の初学者となった私には心強いテキストである。3年前からは実習調整者(教務主任補佐)を担当していたが,その役割を明らかにするために,医中誌Webで検索をしたものの,先行研究が少なかったことを記憶している。しかし,ヒットした先行研究を参考に,当校での役割についてまとめたことを思い出した。
◆看護教育と成果主義はなじまない
さて,昨年の春,私の職位に関する仕事は目標管理の評価面接をすることから始まった。考課者を体験してみて,「看護管理過程と目標管理」について学びたいと考えていた頃,県看護協会主催の認定看護管理者制度セカンドレベル教育課程の科目選択を聴講できる機会を得た。そこでは経営管理論の変遷のなかで現在主流の動機づけ理論の説明を聞き,紹介図書を読むことで発見もあり学ぶことが多くあった。その結果,看護学校における人事管理についても同様であろうと思いつつ,「看護教育と成果主義」については,著者と同様,なじまないのではないかと考えた。
2009(平成21)年改正のカリキュラムでは,教員の資質向上を図ることの課題の文言が明記された。では,その指標になるものは何かと考えると,本書に示されている[専任教員のキャリア別達成目標]こそが,それであろうと思われる。看護教員に必要とされる[看護能力][教育能力][研究能力]を3つに規定しており,その能力の段階別能力達成目標が具現化されている。そのことで教員は何をめざすのか明確になっているのでわかりやすい。そして,看護教員の資質が高まることで,看護学生の成長にさらに大きな影響を与えるのではないだろうか。
◆カリキュラム編成の普遍的な考え方を記載
また,昨年は,改正カリキュラムの申請準備に直面した時期でもあった。カリキュラム編成に向けての年間計画立案のもと,教務会で自校のカリキュラムを評価しつつ,カリキュラムデザインの検討を進めてきた。カリキュラムデザインに求められることは,学校の内外の環境を見据えつつ,創造的知性を持って柔軟にカリキュラム編成にあたることだろうと振り返っている。しかし,カリキュラム編成を進めるにあたって普遍的なことがあると思う。それは,本書に示されている[カリキュラム編成]の考え方である。
まもなく,4月,改正カリキュラムをスタートさせる時期を迎える。さらに,本書は心強い味方となるであろう。
(『看護教育』2009年4月号掲載)
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。