健康支援と社会保障制度[2]
公衆衛生 第12版

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授業展開にそった章立てに構成されています。 健康格差の問題、世界経済の公衆衛生・社会保障制度への影響など、公衆衛生の最新トピックスについても関連のある章にまとめてあります。 授業時間に合わせて内容を厳選し、スリム化してあります。 公衆衛生に関連する主要な法令の改正・制定に伴う内容の改訂を行っています。 最新データに基づいて作成された図表は、法・制度や統計データの理解に役だつよう厳選しました。 社会福祉領域の内容・法令については、必要な記述を簡潔にまとめてあります。 国家試験出題基準で求められている水準を考慮し、準拠する方針で編集されています。 *2011年版より表紙が新しくなりました。
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はしがき
第12版の序──みんなで新しい公衆衛生を推進させよう

今日の食事と公衆衛生
 今日の昼ご飯はおいしく食べただろうか? 「昼食のおかずのなかにブドウ球菌やO157大腸菌が含まれている?」などとは思いもしなかったはずだ。食中毒がおきない背景には,食事をつくる調理人たちの役割がきわめて大きいことはもちろんのこと,保健所衛生課の職員による衛生監視活動がある。また,食品会社(食品メーカー)に対しては製品表示など,法令の遵守を促すしくみがある。こうして,食品に対する“安心”が保障されている。
 上記のような食品衛生に限らず,すべての人の健康の維持を目ざす組織的な取り組みが公衆衛生である。しかし,人の一生に注目すると,個人の力だけでは健康に生活することはむずかしい。個々の人がセルフケア能力を高めていくとともに,「水道水や食品の安全性」を高める「環境衛生の改善」が公衆衛生の本質であり,社会的な支援体制が公衆衛生には重要なのである。
 公衆衛生学とは,疾病を予防し,人々の健康を保持・増進させていくために活用される科学的な手法であり,アートでもある。本書の読者には,公衆衛生学の幅広い学問体系および,個人や家族から地域・国レベルまでのさまざまな健康支援のあり方を本書から学び,それを日々の生活にいかしてほしい。

健康を規定する要因
 生を受けた誰もが死する運命にあるが,みなさんの知り合いのなかには,高齢期を迎えないままに“早死に”してしまう事例がなかっただろうか。
 1974年に,カナダの厚生大臣ラロンドは健康を規定する要因として,医療の役割よりも日々の生活習慣を好ましいものにすることや,環境を改善することが重要であることを,ラロンドレポートとして示した。ラロンドレポートの重要性と意義を評価したアメリカの厚生省は,1979年に「Healthy People」を発表した。このなかでラロンドレポートが示した健康を規定する4つの要因を実際に“早死に”をした群にあてはめ,各要因の寄与割合を示した(本文6ページ参照)。
 この試算結果は,健康づくりにおける人々の生活習慣および環境整備の重要性を科学的に裏づけた。「Healthy People」は,アメリカにおける健康政策の重点課題を,医療中心から生活習慣を含めた一次予防を重要視する方向へと変換させた総合戦略書になった。ラロンドレポートや「Healthy People」が示す方向は,WHOが進めているプライマリ―ヘルスケアやヘルスプロモーションとも連動している。
 上記したように,“早死に”には多くの要因が関わっている。本書では保健医療のしくみづくり,生活習慣を重視した健康支援活動,各種の環境整備などについても学習する。また,健康を規定する要因を幅広くとらえ,自然環境だけではなく,ジェンダーを含む社会環境の大切さについても,この分野の第一人者に執筆していただいた。

新しい公衆衛生としてのヘルスプロモーション
 WHOは1986年に「オタワ憲章」で,ヘルスプロモーションを提案し,5つの活動領域:(1)健康的な公共政策づくり,(2)支援的な環境づくり,(3)地域活動の強化,(4)個人技術の開発,(5)健康サービスの方向転換を示した。
 さらにWHOは1991年にサンドバ-ル宣言で「Supportive Environment」のタイトルのもとに,健康づくりにとっての環境整備の重要性と,女性の社会参画の意義を強調している。また2005年に,「バンコク憲章」では,ヘルスプロモーションの定義に「健康決定要因」を制御する意義を追加している。

日本におけるヘルスプロモーションの推進
 日本においては近年,地域保健法および健康増進法が成立・施行となり,保健所や市町村による公衆衛生活動が一層強化されることが期待された。さらに世界的にみて新しい健康政策であるヘルスプロモーション活動が展開されるようになった。具体的には,地方分権法の成立であり,「健やか親子」や「健康日本21」計画の推進である。本書では,ヘルスプロモーションに基づくさまざまな公衆衛生活動について解説した。

第12版の特長
 2002年に本書は大幅な改訂を行い,第10版を発行した。2004年の第11版への改訂を経て,今回の第12版改訂では,世界の動向を含む時代背景を考慮し,すぐれた専門家であるとともに,実際の現場教育や実践的な活動に携わっている方々に執筆をしていただいた。総合的にみると,新しい実践的な公衆衛生が展望できる教科書になったのではないかと思う。多忙ななか,ていねいに執筆いただいた執筆者の皆様には,全体の編集にかかわった星と松田そして神馬から,深く感謝を申し上げたい。

学んでほしいこと
 本書を用いて学習する読者のみなさんには,新しい公衆衛生としてのヘルスプロモーションを学び,早死にしない自分自身の健康とともに,家族や職場の健康をつくり,そして自分たちの地域での総合的な健康づくりを推進する方法論を学び,それを実践に活用していただきたい。そして本書から学んだことを,実践に活用した読者が,数年後には自分の実践をふまえて,執筆者の1人になっていただけることを期待する。
 2009年10月
 著者を代表して
 星旦二・松田正己・神馬征峰

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第1部 公衆衛生の基礎
 第1章 公衆衛生の理念と看護の倫理 (星旦二・松田正己・太田勝正・大林雅之)
  A 公衆衛生とは
  B プライマリ-ヘルスケア(PHC)─健康の権利と社会的公正
  C 情報公開と生命倫理
 第2章 健康と環境 (内山巌雄)
  A 環境とは
  B 生活環境の保全
 第3章 公衆衛生の技術 (牧本清子・星旦二・福本久美子)
  A 疫学と健康指標
  B 新しい健康概念の提案と健康づくりを支援する方法
  C 地域コミュニティを対象としたヘルスプロモーション活動
  D 健康づくり計画と実践評価のプロセス

第2部 公衆衛生と現代社会
 第4章 日本における社会保障制度および医療制度の改革 (吉田裕人)
  A 日本の社会保障制度および医療制度をめぐる動向
  B 社会保障制度および医療制度の改革
 第5章 グローバル化する世界と公衆衛生 (神馬征峰・奥野ひろみ・芦野由利子)
  A 公衆衛生とグローバル化
  B 国際協力(JICA・青年海外協力隊などの活動)
  C リプロダクティブ・ヘルス/ライツ

第3部 公衆衛生の実践
 第6章 地域保健 (藤原佳典)
  A 健康づくりと地域
  B 地域保健とは
  C 地域保健の展開
 第7章 対象別公衆衛生の実践 (大木幸子・藤原佳典・三徳和子・松田正己・小林典子)
  A 母子保健
  B 成人保健・老人保健
  C 精神保健
  D 難病保健
  E 感染症対策
 第8章 場面別公衆衛生の実践 (櫻井尚子・武藤孝司・錦戸典子・稲垣智一・太田勝正)
  A 学校保健
  B 産業保健
  C 災害保健
  D 健康危機管理

 資料 日本における近代公衆衛生の歩み (小野尚香)
 索引

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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