発達段階からみた
小児看護過程+病態関連図

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発達段階別(乳児期、幼児期、学童期、思春期)に各期の特徴とケアのポイントを冒頭にまとめ、各期に特徴的な疾患をもった患児に対する看護過程の展開を、発達・成長の側面を意識しながら記載。取り上げた疾患は、実際に実習施設で学生が遭遇する機会の多いものを優先している。小児に特徴的な症状についても、症状別の看護過程を記載。さらに特殊治療における看護過程も掲載。母親・家族を含めたケアを意識した。
シリーズ からみた看護過程
編集 石黒 彩子 / 浅野 みどり
編集協力 蒲池 吉朗 / 夏目 淳
発行 2008年08月判型:A5頁:816
ISBN 978-4-260-00624-8
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
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はじめに

 少子高齢社会の到来とともに,次世代育成支援対策等が精力的に推し進められているが,子どもが健全に育つための環境は万全とは言いがたい状況である.特に病いをもつ子どもたちは,医療の高度化に伴って先進医療を受けることができる一方で,急性期を脱すると比較的早期に退院して外来通院治療や在宅療養に移行する.小児病棟が閉鎖されることも稀ではなく,子どもの入院環境も最善のものではなくなりつつある.しかし,そんななかでも子どもと家族を中心にすえて,多様なニーズに応える看護を実践しようとする努力がなされているのも事実である.そのためのひとつの方策として,特に子どもと接する経験が浅い看護学生諸子を時代が求める看護実践能力を備えた看護師に育てていくことが急務である.基礎教育において実習時間の減少や施設の確保が難しくなってきている昨今,小児看護に特化した看護過程についてのサブテキストが待望されているといえよう.本書は,小児看護を学ぶ看護学生のみならず,小児のケアに携わる臨床の看護師や小児看護学の教員を対象に企画されたものである.
 第1章「疾患からみた小児看護過程の展開」では,乳児期・幼児期・学童期~思春期の各期にわけて,それぞれの冒頭で「各期の特徴とケアのポイント」を述べてから,各期に代表的な疾患の医学的な解説に続けて看護過程の展開を詳細に解説した.第2章「症状からみた小児看護過程の展開」では,小児によくみられる主な症状を取り上げた.症状出現のメカニズムとアセスメントのポイントなどは第1章の疾患についての学習をさらに効果的なものにするだろう.また,本書に該当の疾患がない場合は,第2章を参考にしてアセスメントと看護ケアを考えることができる.第3章ではよくある特殊治療における小児看護過程について解説した.それらの治療を受けるさまざまな疾患をもった子どもの看護に応用できるであろう.
 各項目の前半部分は疾患や症状の医学的な解説に当てられている.カラー刷りの「目で見る疾患」と「疾患(症状)の知識」は非常にわかりやすく,効果的に学習できるだろう.
 後半部分の看護過程では,はじめに「看護過程フローチャート」で思考過程の概要を紹介した.臨床看護では瞬時のうちにアセスメントからケアプランへ進んでいくことが多いが,この思考過程を順次言語化し,誰にでもわかるように記録して伝えていくことで,看護ケアの質が保証される.そこで「情報収集」「アセスメント視点と根拠」「起こりうる看護問題」「看護問題リスト」「看護問題の優先度の指針」,次いでどんな患児に出会っても応用できるよう,想定しうる極力多くの「看護問題・看護診断」を取り上げ,それぞれの「看護目標」と「看護計画」を解説した.さらにケアプランに役立つように「病期・病態・重症度に応じたケアのポイント」「看護活動(看護介入)のポイント」「退院指導・療養指導」「評価のポイント」をあげ,最後に全体像を把握できるよう「病態関連図と看護問題」を図式化した.
 上記のような看護過程における思考過程を養うために,本書は強力なナビゲーターになってくれることであろう.もちろん,皆さんが接する子どもたちには個性があり,同じ疾患をもつ子どもであっても発達段階や置かれた環境,過去の経験等によってケアもさまざまである.あくまでも対象となる子どもと家族に合わせた看護を考えていただきたい.
 本書に書かれた内容をナビゲーターとして,いかに人としての尊厳を大切にした看護を子どもと家族に対して提供できるかは,皆さんの真摯な学習態度と熱意にかかっている.小児看護の質が高まれば,21世紀を担う子どもたちが健全に育ち,未来は明るい.本書がそのための一助となれば望外の幸せである.
 最後に,本書の趣旨にご賛同いただき,それぞれにご多忙ななか,本書の執筆に多くの時間を割いていただきました諸先生方に,この場を借りてお礼申しあげます.

2008 年7月 夏空に子どもの歓声がひびくころ

著者を代表して 石黒彩子・浅野みどり

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 はじめに
 本書の構成と使い方

第1章 疾患からみた小児看護過程の展開
 1.乳児期
  1 乳児期の特徴とケアのポイント
  2 口唇口蓋裂
  3 鎖肛
  4 ヒルシュスプルング病
  5 胆道閉鎖症
  6 先天性股関節脱臼
  7 乳幼児嘔吐下痢症
  8 細気管支炎(RSウイルス感染症)
  9 クループ症候群
  10 麻疹
 2.幼児期
  11 幼児期の特徴とケアのポイント
  12 水頭症
  13 ファロー四徴症
  14 心室中隔欠損症
  15 脳腫瘍
  16 神経芽〔細胞〕腫
  17 ウィルムス腫瘍
  18 白血病(急性リンパ性白血病・急性骨髄性白血病)
  19 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
  20 1型糖尿病
  21 ネフローゼ症候群
  22 痙攣性疾患
  23 髄膜炎
  24 尿路感染症
  25 川崎病
  26 アトピー性皮膚炎
  27 熱傷
 3.学童期~思春期
  28 学童期~思春期の特徴とケアのポイント
  29 肺炎(マイコプラズマ感染症)
  30 気管支喘息
  31 再生不良性貧血
  32 急性糸球体腎炎(急性腎炎症候群)
  33 脳性麻痺
  34 若年性特発性関節炎(若年性関節リウマチ)
  35 骨折
  36 大腿骨頭すべり症

第2章 症状からみた小児看護過程の展開
  37 痛み
  38 発熱
  39 ショック
  40 発疹
  41 呼吸困難・鼻閉
  42 嘔吐
  43 脱水
  44 不安

第3章 特殊治療における小児看護過程の展開
  45 気管切開
  46 中心静脈カテーテル
  47 骨髄移植・造血幹細胞移植

 索引

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小児看護ならではの要点がわかりやすいサブテキスト (雑誌『看護教育』より)
書評者: 廣井 寿美 (渋川看護専門学校)
◆見るのも楽しい全ページカラー版

 ページを開くと,全体がきれいなカラーで興味をひかれる。『目で見る疾患』は,疾患の特徴や症状が,図や写真入りで解説され,ひとめで病態がイメージできる。よく使用される薬剤一覧が載っているのも嬉しい。

 また,事例は用いず,疾患や症状の特徴をベースに思考を導くアドバイスをしている。ときおり,事例展開をそのまま転用してしまう学生がいるが,この本を参考にすれば写し取るような学習にはならず,個々のケースで応用していけるだろう。

 教員としても,学生の気づきがどのような点で不足しているか,どのようなところでつまずいているかを確認するために活用できる。

◆実習に適したサイズと内容

 臨地実習では,関連図や薬剤,ケアプランなどさまざまなテキストを持参していたが,これからはこの一冊で足りてしまう。小児分野でよく遭遇する疾患と症状を網羅し,病態理解から看護計画までおさえている。多少厚みはあるが,B5サイズで現場にも持ち込みやすい。また,国家試験によく出題される疾患が取り上げられているのも,学生にとっては頼もしいのではないだろうか。

◆チャートが思考をガイドする

 小児の疾患では,病期や症状だけでなく,発達段階によっても治療や手術方法が異なるケースがある。これが『治療フローチャート』によってひとめで確認できる。
各章の前半にある『看護過程フローチャート』で看護過程の概要をとらえ,最後に『病態関連図』で,病態から看護までの思考を整理できる。

◆小児看護の特徴をしっかりとらえた解説

 看護過程の内容は,小児看護の特徴がしっかりと解説されている。例えば『情報収集』では,発達段階をふまえた観察の要点や,母親の理解状況,心理的・社会的側面についてアドバイスがある。『介入のポイント』では,事故予防,発達への援助,療養生活をふまえた育児指導など,成長・発達に関連した内容をしっかりおさえている。また,このようなサブテキストには珍しく,介入後の『評価のポイント』が整理されていて,思考のフィードバックに役立つ。ここでも「患児が好きな遊びを選択でき,一日一回は楽しいと言えたか」「親として養育していく自信を促進できたか」などが挙がっている。このように,全体を通して子どもの看護ならではの視点が随所に浸透している。

 この本は,小児看護の特徴をとらえながら,学生の思考過程を整理,発展していけるようにガイドしている。個々の学生が実践の場に応じて活用するのはもちろんのこと,教員が学生の思考を把握し,アドバイスするためにも大いに活用できる1冊である。

(『看護教育』2009年3月号掲載)

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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