臨床研修の現在
全国25病院 医師研修の実際

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「よその研修医は,一体どんな研修をしているんだろう?」この本は,そんな研修医なら誰しも一度は抱くだろう思いから生まれた。全国25の研修病院の研修医に密着取材し,研修医の視点からその特徴と問題点を鋭く描く「衝撃の」研修病院レポート。全国の医学生,研修医,そして指導医必読の書!
市村 公一
発行 2004年04月判型:四六頁:368
ISBN 978-4-260-12716-5
定価 2,090円 (本体1,900円+税)
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  • 目次
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序-ある指導医の話
01 聖路加国際病院
02 東葛病院
03 聖マリア病院
04 福岡徳洲会病院
05 天理よろづ相談所病院
06 市立堺病院
07 神戸市立中央市民病院
08 土谷総合病院
09 山口県立中央病院
10 大垣市民病院
11 勤医協中央病院
12 沖縄県立中部病院
13 岡崎市民病院
14 新潟市民病院
15 洛和会音羽病院
16 中部労災病院
17 佐久総合病院
18 熊本市立熊本市民病院
19 麻生飯塚病院
20 手稲渓仁会病院
21 亀田総合病院
22 武蔵野赤十字病院
23 筑波メディカルセンター病院
24 虎の門病院
25 国立国際医療センター
取材を終えて-臨床研修の現在
あとがき

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優れた卒後臨床研修を実現していくための「道しるべ」
書評者: 赤津 晴子 (ピッツバーグ大学医学部助教授・内科、ピッツバーグ・ジャパン・プログラム・ディレクター)
 市村公一先生著「臨床研修の現在―全国25病院医師研修の実際」(医学書院)を拝読させていただいた。紹介されている各病院の研修の様子がまるで手にとるように具体的にわかりやすく紹介されており、それぞれの病院のレジデントに自分がなった思いで、楽しく一気に読ませていただいた。ちょうど映画を観ていて、気がついていたら自分も映画の場面に入りこんでしまっていた感覚であった。

◆新しい研修システムの実質をサポート

 本著の大変すばらしい点をいくつか紹介させていただきたい。まず第一に、本著は今年度からはじまったマッチングシステムの実質をサポートするものである。マッチングシステム導入は、医学部卒業生が全国規模で交じり合うことを奨励する。人が混じることは、そのグループに多様性を生み出す。多様性は新鮮な風、新しい光となる。新鮮な風と新しい光は自身を省み、切磋琢磨、自己研鑽を行なうエネルギーとなる。しかし、このマッチングシステムを本当に成功させるためには、マッチング参加者がそれぞれの研修病院の研修内容に関する正確な情報を持っていることが重要である。人が混じらない時代には、よその研修内容など知らなくてもかまわなかった。どちみち、自分の今いる世界にそのまま居残ることになるのであるから。しかし、人が混じりはじめた今、本著のような具体的な情報は不可欠である。

 第二に、本著は研修を受ける側のみではなく、研修指導医側にも大変貴重な情報を与えてくれる。人が混じらない体制でこれまで研修が行われてきた日本では、他病院の研修システムがどうなっているのかを、一番知りたくとも知りにくい立場に置かれていたのが指導医ではなかったであろうか。本著は、市村先生のご足労により、自らが日本中を飛びまわる手間なしに、他病院の具体的な指導体制を知り、そこから学ぶことができる。

◆日本の卒後医学教育に何が必要かが浮き彫りに

 第三に、よりすぐれた医師を社会に輩出し続けるために現在、卒後教育では何が必要であるのかを、本著は具体的に浮き彫りにしてくれる。一般国民は、自分が、そして自分の大切な家族が病気になった時に安心して命をまかせられる良い医師の存在を今日も、来年も50年後も願う。この国民の要望に応えることは医療界の社会的責務である。見回すと、現在名医の医師もおられれば、駆け出しの研修医もいる。将来医者になりたいと目を輝かせ、希望に燃える小学生もいる。すぐれた医師の養成、という社会的責任を今日も、来年も、50年後も果たすために必要なことは、他ならぬ優れた医学教育である。現在の小学生が50年後の名医になるのであるから。医学教育の両輪は卒前医学部教育と卒後研修である。この両者のあり方を真剣に見直そうとする、ここ何年ものさまざまな取り組みの一つとして、本著は日本の卒後医学教育に今、何が必要なのかを、あらためて具体的に浮き彫りにしてくれる。

 市村先生という優秀な医師が1年間という時間を全国25病院の取材のために使い、本著を世に送り出してくださったことは、本当に貴重なことであり、大変ありがたいことである。本著が多くの方の目に触れ、医学教育をさらに高いレベルに向上させていくための具体的な道しるべとなればと願う。と同時に、日々120%頑張っておられる、多くのレジデントの先生と指導医の先生方に心からの敬意を表すると同時に盛大なエールを送らせていただきたい。

研修医の視点から見た「病院探検」ルポルタージュ
書評者: 宮城 征四郎 (臨床研修病院群「群星沖縄」研修センター長)
 COML(Consumer Organization for Medicine & Law:医療と法の消費者組織-代表:辻本好子氏)に「病院探検隊」という、患者の視点から見た病院の在り方を糺す社会活動がある。多くの場合、患者本位に改善を望む心ある病院からの要請に応ずる形で隈なく病院全体を探検するのであるが、その目は厳しく、病院にとっては痛い所を鋭く指摘される。しかし、その病院が提供している医療の質の改善という観点からは、大いに参考になる立派な活動である。

◆研修医に密着取材

 市村公一氏著『臨床研修の現在』は研修医の視点から見た「病院探検」ルポルタージュである。同氏は東京大学美術史学科卒業後、銀行などの勤務を経て東海大学医学部を再受験し、2002年に卒業したばかりの新人医師である。1年の初期研修の後、故あってある医療情報誌を刊行する会社に就職し、臨床研修必修化元年にふさわしく、研修医の立場に立って医療情報を発信するユニークなお仕事に従事された。

 本書はその仕事の1部である。

 新人研修医達が常々心につぶやき、著者自らもまた疑問に思っている「他の研修医は一体、どんな研修をしているのだろう?」に答えるべく、全国25病院を精力的に訪問し、各病院それぞれ3日間程の日程を費やして研修医に密着取材し、約1年の歳月を要して書き上げた決算書である。

 取材する研修病院の選択には特別な基準を設けた訳でもなく、ある意味では著者の自由気ままな意思に基づいているとはいえ、新人研修医たちが心のどこかでいつも気になっている病院群が選ばれたであろうことは疑う余地はない。

◆各病院の教育・研修の現状を鋭くレポート

 現在の本邦における臨床医学教育の最大の欠陥は、大学、学外を問わず、どの臨床研修病院においても指導医層に「What and how to teach」を学ぶ機会も関心も無く、また、研修医の間にも「What and how to learn」を意識して学ぶ姿勢が欠けている点である。

 本書の瞠目すべき点は、この両方の視点から各病院の研修の現状を事細かに視察、探険していることである。

 病院の規模や年間入院患者数、平均入院日数、年間救急受診件数、年間救急車搬送件数、研修医受け入れ人数、大学医局ローテーションとの関わりに始まり、マンツーマン指導方法、屋根瓦方式、各科任せー個人任せ等の研修システムの比較、総合診療部の役割、各科の病棟回診や教育回診の在り方、病棟における受け持ち患者数、外来、救急室、ICU, CCUでの研修医の関わり、集合教育の時間帯の選択方法、当直時のスタッフとの関わり方、カルテの内容や記載方法、労働環境や教育環境(研修医室整備状況、図書室、ITその他の整備等)などを指標として詳細に比較検討している。

 「臨床研修とはこう在りたい」という著者自身の明確な視点から、各病院の指導医や研修医、管理者なども自らはほとんど気がつかないであろう数々の難点が鋭く指摘されており、驚かされるに違いない。 もちろん、ここに取り上げられていない研修病院にとっても、自らの研修システムの現状に照らして反省を強いられることが多いであろう。

◆研修必修化元年にふさわしい好著

 望むらくは各病院における研修委員会活動の実態も取材に加えてほしかったし、研修医の健康管理に関する各病院の取り組みについても言及してほしかったと思う。さらに付け加えるならば、折角これだけの病院を密着取材して得た情報なのだから、著者が組み込んだ取材項目ごとに、末尾に一覧表にして表示頂ければ、即座に各病院の特徴的な取り組み方が理解できたのではないかと思うし、次回の探検旅行にはぜひ、大いに気になる大学病院での研修実態の情報をも公にしてほしいと思う。
 しかし、だからといって、本書の価値がそのために損なわれるということはまったくない。

 研修必修化元年に最もふさわしい、すばらしい好著であり、研修指定病院を抱える国立、公立の行政官、各研修病院の管理者、研修に携わる研修委員会のメンバー、研修指導医、研修医、学生並びに研修医と深く交わるコメディカルの方たちにとって必読の良書であると思う。

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