援助者必携
はじめての精神科

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不安と怒りと無力感。やりきれなさに焦燥感――はじめて精神科に足を踏み入れたとき誰もが感じるこの感情の≪渦巻き≫に分け入り,解きほぐし,大逆転の対処策を提示。これならやっていけそうだと,きっと思える超実践的アドバイス集。「困る前」と「困った後」の二回効く。
春日 武彦
発行 2004年04月判型:B5頁:244
ISBN 978-4-260-33328-3
定価 1,980円 (本体1,800円+税)
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  • 目次
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I 手を出す前に考えておくこと
 I-1 基本の基本を検討する
 I-2 家族と地域に関するいくつかの事柄
 I-3 しんどくならないための2つのヒント
II かれらの苦しみ-病気は何をもたらすか
 II-1 統合失調症
 II-2 うつ病
 II-3 痴呆
 II-4 人格障害
 II-5 アルコール依存症
 II-6 ストレス・不安・怒り
III わたしたちの困難-だから精神科はむずかしい
 III-1 恨まれる、ということ
 III-2 我々自身の怒り、悔しさ、不快感
 III-3 責任感と義侠心
 III-4 「困っている」とは言うけれど
IV 電話相談-受話器を片手にして「できること」と「できないこと」
V Q&A-いざというとき役立つテクニック集
索引
あとがき

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なぜ「しんどい」のかがわかる本,だから元気になれる本
書評者: 荻原 美代子 (武蔵野市高齢者総合センター・看護師)
◆「燃焼系」の私はしんどくなってきた

 私は,在宅介護支援センターと居宅介護支援事業所の併設事業所に勤務している看護師である。本人,家族,近所の人といった人々から相談を受け,家庭訪問して対応することを仕事にしている。

 この仕事をしばらくやっていると,「普通の家庭って何だろう?」「外からは普通に見えても,家庭の中は何でもありなんだ」といった思いにとらわれずにはいられなくなる。と同時に,しんどくなっている自分にも気がつく。

 仕事を始めたばかりのころは,ただ楽しかった。いま思うと「措置時代」は,サービスをプレゼントして地域を回っていたような気がする。それだけであたかも問題が解決したかのような錯覚にとらわれた。要援助者から「ありがとう」と言われるだけで嬉しくて,ただただ調子づいて働いていたことを覚えている。でも,燃焼系の私はすぐにしんどくなってきたのだ。

◆言葉にできないから,つらいんだ

 いったい何がしんどいのだろう,なぜしんどいんだろう――それが言葉にできないからこそしんどいのだ。この本は,私たち援助者が感覚的にはわかっていても,曖昧で言葉にできていないことをすっきりと解説してくれている。そこが素晴らしいと思う。

 私には大きな課題がある。「待つ」ことである。「待つ」というとき,何もしないで放っておくような後ろめたさを感じた時期があった。しかし著者は,「周囲が腹をくくって待つ態勢へ入ったとき,その精神的ゆとりがプラスのかたちで患者サイドへも伝わるため,思ったより早く決着がつくことが多い」と述べ,さらに次のように続ける。

《援助者とは,決して部外者ではない。いくらでも巻き込まれる可能性がある。混乱もするし加害者にもなりうる。ときには事業所とか保健所,いや地域そのものが「巻き込まれた家族」と同様になっていることすらある。アプローチされなければならないのは自分たちかもしれないのである。》(32頁)

◆ラクになれる,不思議な教科書

 私はこの部分を読んで,「こういうことだったんだ!」と納得して,大いに安心できた。

 「待つ」ためには,いざというときアプローチできる準備を整えておかなければならない。そう,少なくとも援助者一人でおこなうのではなく,関係諸機関とのチームアプローチを考えたい。そこで支援方針を話し合い,態勢をつくっておくことができてこそ,「待つ」ことができるのだろう。

 本書は『はじめての精神科』というタイトルではあるが,精神科に限らず在宅支援に係わる関係者なら必ずぶつかる問題について,とてもやさしく,腑に落ちるように解説してくれている。不思議な“教科書”だ。著者の在宅支援に向けられた,誠実でやさしいまなざしに感謝したい。

 そして一人でも多くの援助者の方々に,読んでほしいと思う。本に巻かれた帯にあるとおり,まさしく,《「ラクになる言葉,役立つヒント」がてんこ盛り》の一冊だからだ。

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