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看護診断にもとづく精神看護ケアプラン 第2版

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個々の患者の抱えるニーズや問題、状況にかなったケアプランを立てるための実践的ガイドブック。54のケアプランを収載。診断基準にはDSM-IV-TR、看護診断にはNANDAを使用。アセスメント、期待される成果を明らかにし、看護の実施については看護介入とその理論的根拠を細部にわたって記述。第2部「基本概念」は、コンパクトながら精神看護概論に匹敵する充実した内容となっている。
ジュディス M. シュルツ / シェイラ L. ヴィデベック
監訳 田崎 博一 / 阿保 順子 / 佐久間 えりか
発行 2007年03月判型:B5頁:544
ISBN 978-4-260-00248-6
定価 5,500円 (本体5,000円+税)

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第2版 監訳者序

執筆者/田崎博一(訳者を代表して)



 今回訳出したのは,Schultzらによって2002年に出版された『Lippincott’s Manual of Psychiatric Nursing Care Plans,第6版』である。われわれが,原著第2版を『看護診断に基づく精神科看護ケアプラン』として訳出したのが1990年,原著第4版を『看護診断に基づく精神看護ケアプラン』として訳出したのが1997年で,それから数えても10年が過ぎようとしている。拙い翻訳にもかかわらず,ありがたいことに多くの読者を得た。まさにロングセラーと言ってもよいだろう。このシリーズが日本の精神科看護における実践マニュアルとして多くの貢献をしてきたものと確信している。このように3度目の翻訳を行う機会を与えられたが,原著書は版を重ねるごとに充実し,これまでと同様に何人かの仲間で取り組んだものの質,量ともになかなかの強敵であった。ところで,1990年版(原著第2版)の訳者序を繙いてみるとこんなことが書いてある(私が書いたらしいがすでに忘却の彼方であった)。

 「わが国の精神医療をめぐる潮流はこの数年一つの転換期を迎えている。1988年の精神保健法改正はその流れの結果でもあろうし,今後の源流としても捉えられよう。精神医療の場は病院という枠を超えた展開が求められ,外来への比重は日増しに高まっている。そして同時にリハビリテーション活動や社会復帰施設の充実へとその歩を進めようとしている。また,高齢化社会に向けての対応として,関連分野のネットワークづくりが急務となっている。これらは,精神医療にかかわる職種が今後さらに拡大し,精神を病む人間と彼らを生み出す社会の双方への理解に基づいた柔軟な役割分担が必要になることを示している。」

 この潮流は十数年を経た今も精神科医療のなかに確かに存在する。潮流はあるが,この間にいったい何が変わり,その流れはどこに向かっているのだろうか。諸外国に比較して圧倒的に長い平均在院日数,圧倒的に多い人口対精神科病床数はいまだにわれわれの抱える大きな課題である。その一方で,精神科救急や急性期医療,重度療養,認知症高齢者,児童青年期,ストレスケア,リハビリテーション,在宅支援など精神科医療の機能分化は進展し,必然的に精神科看護ケアにおいてもより専門性を求められるようになった。精神科訪問看護は多くの精神科医療機関やステーションで展開され,医療的支援ツールとしてすっかり定着した。看護師が在宅生活を直接支援する活動の積み重ねは入院における看護にもフィードバックされ,より現実的なケアの提供につながっていると考える。行政機関や福祉領域専門職者など,他職種との連携も明らかに進展している。しかし,精神科医療従事者でこの現状に満足している者はきわめて少数であろう。国の精神保健福祉政策は「入院医療中心から地域生活中心へ」と方向づけられ,約7万床を目標に精神科病床削減が進められている。障害者自立支援法は障害者施策の3障害一元化と利用者本位のサービスへの再編を謳っている。医療・保健・福祉はこのような法的,制度的な枠組みのなかで展開せざるを得ないが,われわれ専門職者自身がその枠組みへの適応で右往左往しているようにもみえる。関連領域に従事する専門職のなかで看護師は最も多数を占め,膨大な実践の蓄積もある。それにもかかわらず,この領域の進む方向を導くだけのパワーがない。もし,持てる能力を最大限に発揮できたならばというもどかしさと,可能性への期待がある。そのためには理論が必要であり,実践を言語化し,経験知を共有する作業が求められる。本書が,このような可能性を実現する礎になることを望んでいる。

 本書の内容はこれまでの版と同様に簡潔明瞭であり,「患者をひとりの人間として尊重する」という理念が貫徹されている。また,患者の病気や障害,症状や問題となる行動に焦点を当てることにとどまらず,患者のもつ適応能力や対処能力を認識し,それらが最大限発揮される可能性を探り,看護師として支援するという立場をとっていることが特徴である。「第2部 基本概念」には,精神科看護実践の根拠として重要ないくつかの概念について論じているが,前版での記載に加え「訪問看護」「文化」「孤独」「ホームレス」「地域での暴力」「危機介入」「多職種からなるチーム」などの項目が追加された。追加された項目を見ると,「地域において多職種連携を図りながら精神科看護の専門性を発揮する」という,最近日本においても課題となっている問題を論じており,国や地域を越えた精神科看護の共時代性を見て取れる。「第3部 ケアプラン」は54のケアプランから構成される。各ケアプランはDSM-IV-TR(APA, 2000)の診断,分類,情報を反映し,最新のものに改訂されている。本書は看護実践や教育のさまざまな場面で活用されるものと思う。実際には,担当になった患者のケアプランを作成する際に該当する頁を読んで参考にするという使いかたが多くなるのであろうが,少し時間があり,かつ知的活動の内的要求が高まっているときには是非とも「第2部 基本概念」を読んでいただきたい。これから精神科看護を学ぼうとする若い人はここから読み始めるのも悪くないかもしれない。

 先にも述べたように,精神科医療,あるいは精神保健医療福祉の効果的展開と質的向上という課題において,看護師に期待される役割は大きい。精神科看護実践のリソースとして本書が活用されることを願っている。

 遅々として進まぬ作業を根気強く待ち,かつ励まし続けていただいた医学書院の横川明夫氏と筒井進氏に,この場を借りて深く御礼申し上げる。

 2007年 睦月

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第2版監訳者序
第1版訳者序
原著序

第1部 本マニュアルの使用にあたって
第2部 基本概念
第3部 ケアプラン
 第1章 基礎的ケアプラン
 第2章 地域を基盤としたケア
 第3章 幼児期や青年期に診断された障害
 第4章 せん妄と認知症
 第5章 物質関連障害
 第6章 統合失調症と精神病性障害/症状
 第7章 気分障害とそれに関連する諸行動
 第8章 不安障害
 第9章 身体化障害と解離性障害
 第10章 摂食障害
 第11章 睡眠障害と適応障害
 第12章 パーソナリティ障害
 第13章 行動や問題に関するケアプラン

文献
用語集
付録A DSM-IV-TRの分類/DSM-IV-TR機能の全体的評価(GAF)尺度
付録B NANDA分類法II 領域・類・診断概念・看護診断
付録C 心理社会的アセスメント用紙(例)
付録D コミュニケーション技法
付録E 防衛機制
付録F 精神科治療薬
付録G Mini-Mental State(MMS)
索引

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現場で働く玄人にも役立つ精神看護の実践書
書評者: 田中 美恵子 (東女医大教授・看護学部)
 本書は,精神看護に携わるあらゆる人々に役立つ良書である。つまり,学部生・大学院生から,実践家,教育研究者までという意味である。きわめて実践的な書であるという意味からは,本書が第一にターゲットとする読者層は,臨床・地域を問わず実践家であろう。実践家であれば折に触れ,本書の「第3部 ケアプラン」のページをめくり,患者ケアの根拠をそこに求めることであろう。特に,現場では始終お目にかかる難しいケースに出会い,ありきたりの精神看護の本ではその答えが見出せずケアプランに行き詰った時にこそ,本書のありがたみが身に沁みることであろう。そのくらい,本書は現場の玄人に役立つ実践書なのである。

 原書でも第6版と版を重ねていることからも,米国においても好評を博している本であることがわかるが,このたびの翻訳は,1990年の翻訳『看護診断に基づく精神科看護ケアプラン』,1997年の翻訳『看護診断に基づく精神看護ケアプラン』に続く,3回目の翻訳であり,1997年の翻訳版の第2版という位置づけになる。17年という長きにわたり,たゆまず翻訳の労を取り続けてきた訳者らの努力にひたすら敬服するばかりであるが,しかし一面では,訳者らをそうした行為に導くだけの魅力が本書にあるとも言えるであろう。
 筆者も1990年の翻訳本のときから,折に付け本書に学んできたのであるが,このたびの第2版は1997年の版と比べても,10年の時を経て時代の変化を反映し,より内容の濃いものとなっている。

 具体的には,「第2部 基本概念」に,「訪問看護」「ホームレス」「地域での暴力」「危機介入」「多職種からなる治療チーム」などの項目が追加され,地域における多職種連携のもとでの精神看護ケアという,今まさに日本において課題となっていることが論じられている。先に述べた「第3部 ケアプラン」では,DSM―Ⅳ―TRに基づき診断・分類がなされ,病因・疫学・経過などの情報が盛り込まれている点で,臨床で使いやすいものとなっている。また何よりも,看護診断に基づき,具体的な看護介入の例がその理論的根拠とともに詳細に記載されている点は,初版から一貫して健在であり,本書の最大の強みとなっている。

 以上,主に実践家を意識して本書の内容とその魅力を紹介したが,このような本書は,教育者にとっても役立つことは言うまでもない。殊に大学院教育など,より高度で専門的な教育が期待される現場では,格好のテキストとなろう。また本書の基本的信念として繰り返し述べられている「患者を一人の自立した人間として尊重する」姿勢は,本書の隅々にまで行渡っており,実践家としても教育者としても,そこから学ぶことは測り知れないのである。

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