臨床倫理学入門
身近な臨床倫理に明確な見解
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本書は臨床医・看護師などが実際によく遭遇し,また誰もがジレンマを感じざるをえない医師患者関係,守秘義務,医療経済,終末期医療といった身近な臨床倫理の問題をケースで取り上げる。従来から解答を出すのが困難と言われていた課題についても,筆者らの立場からの見解がすべて明確に述べられているのが特徴。
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私の臨床倫理-序文に代えて
本書で考察するケースの一覧
第1章 臨床倫理学総論
第2章 ケースで考える臨床現場の基本的な倫理的問題
第3章 臨床倫理学を考えるための基礎事項
第4章 ケースで考える臨床現場の倫理的ジレンマ
第5章 エシックス・ケース・カンファレンス
資料 病名告知に関するアンケート
付録 推薦図書
本書で考察するケースの一覧
第1章 臨床倫理学総論
第2章 ケースで考える臨床現場の基本的な倫理的問題
第3章 臨床倫理学を考えるための基礎事項
第4章 ケースで考える臨床現場の倫理的ジレンマ
第5章 エシックス・ケース・カンファレンス
資料 病名告知に関するアンケート
付録 推薦図書
書評
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日々の倫理的課題に「見解」を出していくために
書評者: 小島 恭子 (北里大学病院看護部長)
◆実践のそばにある倫理学
「“倫理”を意識しないで病院業務を終える日はない」。医師である本書の編者の序文にまず“看護職者もしかり”と,同感の気持ちを持たされる。患者の最も身近にいる看護職者も,“倫理”に直面し,倫理を意識しつつ,看護業務を遂行している。
編者は,臨床倫理学を実際の臨床現場の問題を扱う実践的な応用倫理学として位置づけ,医療におけるよりよい倫理的意思決定を模索し,よりよい結果を出すための分野であり,実際に役立つものでなければならない,と述べている。
本書の基本的なスタイルは,冒頭にまず倫理的な判断を迫られるケースを取り上げ,どのような選択が最も好ましいかを検討し,その項目の著者らが倫理的に適切と考える決断や判断をその根拠とともに解説している。また,主要な論文や最新のデータ,他国の歴史的な症例や裁判の論点,判例等も紹介してあり,本書で取り上げられたような症例を検討するときの参考になる。
臨床現場では,このような場合は,どのようなふうに考えれば良いのだろうか? としばしば疑問に突き当たる。このような時,提示されている事例に近い場合,その見解が参考になる。示された見解の根拠をたどり,自らの事例と照らし合わせ,倫理的な考察を深めることができる。
◆倫理的課題に1つひとつ「見解」を示す
本書では,医師患者関係,守秘義務,インフォームドコンセント,臓器移植,遺伝子診断,医療資源の配分,終末期医療といった,日常よく遭遇するケースが提示されており,従来から解答を出すのが困難と言われている課題についても,筆者らの立場から見解が明確に述べられているのが最大の特徴である。“見解を明確に述べる”ことは,生命倫理学,医の倫理,および臨床の倫理的実践等の諸側面において造詣が深くなければ,なかなかたどりつけない苦しさがあり,勇気のいることだと体験している。その点において,本書の著者らの力量に敬服する次第である。
最終章では,エシックス・ケース・カンファレンスの実際が掲載されている。筆者の病院でも,看護倫理を検討するためのシステム化を実施し,多くの倫理事例の検討を行なってきているが,一回の検討では,結局見解が導き出されないまま終わる事例もある。あるいは引き続き,何らかの見解を再度探し求める課題が残る検討事例も少なくない。
そういった倫理事例の検討会の進め方においても,本書に掲載されたカンファレンスを読むと,それなりの見解を導き出しながら,進めていく様子がよくわかる。このことは読者が実際に検討を進める時の参考になるだろう。
臨床におけるよりよい倫理的実践を支えてくれる力強い一冊として,本書を推薦する次第である。
臨床の場における倫理的問題を解決するために
書評者: 服部 健司 (群馬大教授・医学哲学・医学倫理学)
◆ベテランが独学を求められる医療倫理学
医療倫理学が大きな関心を集めるようになってきている。けれども医療倫理学が,いわば刺身のツマでなく,儀礼や訓示としてでもなく,医系教育機関でしっかりと教えられるようになってきたのは,ごくごく最近のことにすぎない。そこで多くのベテラン医療者は,医療倫理学を独学する必要に迫られている。かつて心電図やCT,エコーがそうであったように。
今日,書店の棚には実にたくさんの医療倫理学書が並んでいる。それらの多くは,哲学・倫理学者の手になるものであって,知識や議論の蓄積を伝えることを主眼とした啓蒙教育書であるか,純粋に学問的研究を志向した専門書であるか,いずれかであるといってよい。著者の個人的な医療倫理観を開示しただけのものも散見される。そうした中で,本書の特性は明確である。
すなわち本書は,複数の医療者とひとりの倫理学者とによって著されており,そのねらいとするところは,医療者が臨床現場で「日常的にしばしば遭遇する倫理的問題」を同定,分析したうえで,著者らが適切と考えるその解決策を,根拠や倫理学的な思考の道筋とともに,具体的に示すことにある。ほとんどの章節がケース提示からはじまり,そのケースに内在する倫理問題を解くために必要な背景的な論点の整理や解説,歴史的症例への目配り,さまざまな論者の意見の紹介,といった具合に叙述がふくらみ,最後には著者らの見解が示される,という組立てになっている。抽象的な議論に終始して結論は玉虫色などということがない。その意味で,すぐれて実践的な書だということができる。
◆倫理的に考える能力に磨きをかける
1つひとつの章節はコンパクトで,一気に読むことができる。また図表がふんだんに盛られているため,とてもすっきりしていて,ポイントがよく見えてくる。
だが本書は,単なるマニュアル型の指南書におさまるものでは決してない。読者自身の「倫理的に考える能力」に磨きがかかるように,倫理委員会やガイドラインといった外的な規律規制とは独立に,また慣習の縛りをほどいて,「1人ひとりが自発的に倫理的に好ましい」判断と行動を行なえるように,そして個々の症例で最善の結果が得られるように,との著者らの希いが,そのための工夫のかたちを伴って随所に見てとれる。相当数の(英語圏のものを中心とした)文献が網羅されており,著者たちの勝手な倫理観を押しつけられるのではないか,というご心配は不要である。
「臨床倫理学の基礎理論」という節では,近現代の倫理学説の川の流れ,そして臨床倫理学という山へのいくつもの登山道が一望のもとに見渡せるし,実録「エシックス・ケース・カンファレンス」は最終章を飾るにふさわしい。読んでいてわくわくする。
白状すれば,私自身,本書のもととなった『病院』誌の連載が毎月楽しみで,パワーアップした本書の刊行を心待ちにしていたひとりである。ひとりで読んでも得るところが大きいが,教育現場でも十二分に活用できる有用な書として,本書を広くお薦めしたい。
書評者: 小島 恭子 (北里大学病院看護部長)
◆実践のそばにある倫理学
「“倫理”を意識しないで病院業務を終える日はない」。医師である本書の編者の序文にまず“看護職者もしかり”と,同感の気持ちを持たされる。患者の最も身近にいる看護職者も,“倫理”に直面し,倫理を意識しつつ,看護業務を遂行している。
編者は,臨床倫理学を実際の臨床現場の問題を扱う実践的な応用倫理学として位置づけ,医療におけるよりよい倫理的意思決定を模索し,よりよい結果を出すための分野であり,実際に役立つものでなければならない,と述べている。
本書の基本的なスタイルは,冒頭にまず倫理的な判断を迫られるケースを取り上げ,どのような選択が最も好ましいかを検討し,その項目の著者らが倫理的に適切と考える決断や判断をその根拠とともに解説している。また,主要な論文や最新のデータ,他国の歴史的な症例や裁判の論点,判例等も紹介してあり,本書で取り上げられたような症例を検討するときの参考になる。
臨床現場では,このような場合は,どのようなふうに考えれば良いのだろうか? としばしば疑問に突き当たる。このような時,提示されている事例に近い場合,その見解が参考になる。示された見解の根拠をたどり,自らの事例と照らし合わせ,倫理的な考察を深めることができる。
◆倫理的課題に1つひとつ「見解」を示す
本書では,医師患者関係,守秘義務,インフォームドコンセント,臓器移植,遺伝子診断,医療資源の配分,終末期医療といった,日常よく遭遇するケースが提示されており,従来から解答を出すのが困難と言われている課題についても,筆者らの立場から見解が明確に述べられているのが最大の特徴である。“見解を明確に述べる”ことは,生命倫理学,医の倫理,および臨床の倫理的実践等の諸側面において造詣が深くなければ,なかなかたどりつけない苦しさがあり,勇気のいることだと体験している。その点において,本書の著者らの力量に敬服する次第である。
最終章では,エシックス・ケース・カンファレンスの実際が掲載されている。筆者の病院でも,看護倫理を検討するためのシステム化を実施し,多くの倫理事例の検討を行なってきているが,一回の検討では,結局見解が導き出されないまま終わる事例もある。あるいは引き続き,何らかの見解を再度探し求める課題が残る検討事例も少なくない。
そういった倫理事例の検討会の進め方においても,本書に掲載されたカンファレンスを読むと,それなりの見解を導き出しながら,進めていく様子がよくわかる。このことは読者が実際に検討を進める時の参考になるだろう。
臨床におけるよりよい倫理的実践を支えてくれる力強い一冊として,本書を推薦する次第である。
臨床の場における倫理的問題を解決するために
書評者: 服部 健司 (群馬大教授・医学哲学・医学倫理学)
◆ベテランが独学を求められる医療倫理学
医療倫理学が大きな関心を集めるようになってきている。けれども医療倫理学が,いわば刺身のツマでなく,儀礼や訓示としてでもなく,医系教育機関でしっかりと教えられるようになってきたのは,ごくごく最近のことにすぎない。そこで多くのベテラン医療者は,医療倫理学を独学する必要に迫られている。かつて心電図やCT,エコーがそうであったように。
今日,書店の棚には実にたくさんの医療倫理学書が並んでいる。それらの多くは,哲学・倫理学者の手になるものであって,知識や議論の蓄積を伝えることを主眼とした啓蒙教育書であるか,純粋に学問的研究を志向した専門書であるか,いずれかであるといってよい。著者の個人的な医療倫理観を開示しただけのものも散見される。そうした中で,本書の特性は明確である。
すなわち本書は,複数の医療者とひとりの倫理学者とによって著されており,そのねらいとするところは,医療者が臨床現場で「日常的にしばしば遭遇する倫理的問題」を同定,分析したうえで,著者らが適切と考えるその解決策を,根拠や倫理学的な思考の道筋とともに,具体的に示すことにある。ほとんどの章節がケース提示からはじまり,そのケースに内在する倫理問題を解くために必要な背景的な論点の整理や解説,歴史的症例への目配り,さまざまな論者の意見の紹介,といった具合に叙述がふくらみ,最後には著者らの見解が示される,という組立てになっている。抽象的な議論に終始して結論は玉虫色などということがない。その意味で,すぐれて実践的な書だということができる。
◆倫理的に考える能力に磨きをかける
1つひとつの章節はコンパクトで,一気に読むことができる。また図表がふんだんに盛られているため,とてもすっきりしていて,ポイントがよく見えてくる。
だが本書は,単なるマニュアル型の指南書におさまるものでは決してない。読者自身の「倫理的に考える能力」に磨きがかかるように,倫理委員会やガイドラインといった外的な規律規制とは独立に,また慣習の縛りをほどいて,「1人ひとりが自発的に倫理的に好ましい」判断と行動を行なえるように,そして個々の症例で最善の結果が得られるように,との著者らの希いが,そのための工夫のかたちを伴って随所に見てとれる。相当数の(英語圏のものを中心とした)文献が網羅されており,著者たちの勝手な倫理観を押しつけられるのではないか,というご心配は不要である。
「臨床倫理学の基礎理論」という節では,近現代の倫理学説の川の流れ,そして臨床倫理学という山へのいくつもの登山道が一望のもとに見渡せるし,実録「エシックス・ケース・カンファレンス」は最終章を飾るにふさわしい。読んでいてわくわくする。
白状すれば,私自身,本書のもととなった『病院』誌の連載が毎月楽しみで,パワーアップした本書の刊行を心待ちにしていたひとりである。ひとりで読んでも得るところが大きいが,教育現場でも十二分に活用できる有用な書として,本書を広くお薦めしたい。
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