医療倫理学の方法 第3版
原則・ナラティヴ・手順
看護学生および医療系学生全般に向けた医療倫理学のテキスト
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本書は、全体を総論(第Ⅰ部での「歴史」、第Ⅱ部での「方法」)と各論(第Ⅲ部~Ⅵ部での「テーマ別医療倫理問題」)に分けた上で、講義のテキストとして使いやすいように15講に区切って構成している。医療における倫理的問題について、歴史的背景および原則論・物語論・手順論に沿って考える方法を初めに解説し、その後、具体的問題をどう判断するか事例を交えて解説する。
著 | 宮坂 道夫 |
---|---|
発行 | 2016年11月判型:B5頁:264 |
ISBN | 978-4-260-02820-2 |
定価 | 3,080円 (本体2,800円+税) |
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- 目次
序文
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はじめに
■本書の立場
医療倫理の問題は,保健医療の全般にわたって生じている。しかもその多くが簡単に答えの出せるものではなく,人によって考え方が大きく異なっている。こうした問題について,本書では,方法 method を軸に据えた。そうすることで,異なった意見をもつ人同士が同じ円卓を囲んで,問題を議論し,考えるための基盤を提供できるのではないかと考えた。意見は異なっても,問題を考える方法そのものは共有できるはずだからである。
このような立場から,本書では,あらゆる保健医療従事者が共有できるような医療倫理学の方法の基礎を提供することを目標とした。今日では多種多様な保健医療の職種があるが,チーム医療という言葉が象徴するように,異なった職種が協力して保健医療サービスを提供することが求められている。医療倫理の問題は,特に職種間の対話が不可欠で,最低限の知識や方法を共有しておくべきである。
■本書の構成
全体を総論と各論に分け,講義のテキストとして使いやすいよう,15講に区切った。
◆ 総論
総論は,歴史と方法の二部構成である。第Ⅰ部 医療倫理の歴史については,従来の医療倫理学のテキストでは必ずしも十分に触れられてこなかった。特に,医療倫理学・生命倫理学の主だった概念が1970年代以降に米国などの英語圏の学説として紹介されてきた経緯があるために,医療倫理学はしばしば外来のものととらえられ,肝心な日本の医療史のなかで生じた様々な問題を視野に入れてこなかった。そこで,本書では,731部隊による人体実験やハンセン病問題,薬害エイズ問題といった日本の重要事例についても解説した。
第Ⅱ部 医療倫理学の方法は,本書の軸となる医療倫理学の方法についての解説である。欧米を中心に蓄積されてきた研究成果を基盤にしながら,医療倫理学の方法として特に有用と思われるものを,原則論・物語論・手順論の3つの系統に整理・分類した。3つの方法論を組み合わせて用いる点と,物語論の視点を大きく取り入れている点が,本書のオリジナルな特色である。
◆ 各論
各論では,歴史と方法の学習をふまえて,具体的な問題を考える。倫理的問題は医療のあらゆる領域に存在しているが,これらを第Ⅲ 部 死と喪失,第Ⅳ部 性と生殖,第Ⅴ部 患者の権利と公共の福祉,第Ⅵ部 医学研究と医療資源の4つのテーマに分類して,可能なかぎり広い問題を網羅した。セクシュアリティや動物実験など,これまでの日本の医療倫理の教科書ではあまり触れられてこなかった問題も取り上げた。
各部とも,レビューとケーススタディの2つの部分から成り立っている。レビューでは,それぞれのテーマに必要と思われる基礎的な情報について概説した。ケーススタディでは,特に重要な倫理的問題について,架空事例を提示し,総論で学習した方法を手がかりに,具体的に問題を考えていくための道筋を示した。
■本書の使い方
総論はすべての問題を学習するための基盤なので,各論の学習に入る前に必ず読むようにしてほしい。一方,各論は,各部が相互に独立して書かれており,関心のある部のみを学習することも可能である。教科書として利用する際には,こうした特色をふまえて適宜カリキュラムに合わせた利用を考えていただければ幸いである。また,医療倫理学のカリキュラムが必ずしも十分に整備されていない教育機関で学ぶ人,あるいは医療倫理学の系統的な教育を受けたことのない医療従事者にとっても,本書を1人で読んで自己学習ができるよう,初心者向けの記述を心がけ,図表もこの種の本としては多く用いた。いずれにしても,本書は入門書であり,学習者は自分の関心に沿って,より専門的・発展的な学習を心がけてほしい。必要に応じて講の末尾に参考文献を掲げた。
なお,本書のケーススタディは,あくまで架空の事例を用いた演習である。現実の事例を参考にしているが,いずれの事例も本書の目的である「方法の学習」の目的で作成されている。このため,医療従事者が本書を使って学習する場合には,本書のレビューやケーススタディを参考にしながら,実際の事例・症例に含まれる問題点を網羅・整理し,必要な情報を調べ,倫理的問題の焦点を掘り下げなければならない。
■臨床現場での使用について
本書を臨床現場での事例検討に用いる場合,必ずしも原則論・物語論・手順論の3つをすべて用いなければならない,というわけではない。本書の事例分析の多くがそうなっているように,まずは手順論を用いて問題点を整理するだけでも,臨床での意思決定や対話には有益なはずである。ただし,重大な倫理的問題を含んでいるとみなせるような事例においては,物語論や原則論による分析を行うことで,対話の糸口を見いだしたり,対外的な説明責任を果たしやすくなる利点がある。
いずれにせよ,倫理的課題の検討をきちんと行う機会をほとんどもってこなかった臨床現場では,それを行う「場」を設定することだけでも1つの前進といえるだろう。そのような「場」は,倫理委員会や症例検討会を発展させたりすることで設定することも可能なはずである。本書第3講でも論じているように,医療倫理の問題は,個々の医療従事者が単独で判断すべきものではなく,医療チームや院内のスタッフが協働し,患者や家族とよく話し合いながら結論を導いていく意思決定の問題とみなすべきである。
■第3版での変更について
2005年の初版刊行以来,本書は予想以上に多くの人に読んでいただくことができた。医療倫理においては方法論を多職種で共有することが最も重要であるという本書のスタンスが,それなりに受け入れていただけたものと喜んでいる。
本書は医療倫理の広い範囲をカバーしているため,各領域での最新事情に合わせた更新が必要である。実際に,法律やガイドラインが改訂されたり,医療分野で使われる用語が変わったりすることがたびたびあり,増刷のたびに少しずつ対応してきた。今回の第3版の刊行にあたっては,そういった細かいアップデートに加えて,医療倫理学そのものの深化に対応して記述を変更した。そのうち最大の変更が,原則論,物語論,手順論の位置づけである。初版,第2版では,原則論と手順論の2つがオーソドックスな方法で,物語論が新しく開発されつつある方法であると位置づけていた。しかし,最近の医療倫理学では,原則論と物語論とが2つの大きな柱をなしており,手順論はこの2つに基礎づけられた実際的な方法論と位置づけられている。このため,第3版ではそのような位置づけを採用した。第Ⅱ部での解説の順序を,原則論,物語論,手順論の順に変更し,本書の副題も,「原則・ナラティヴ・手順」と表記の順序を改めた。また,特に物語論の解説は,最新の知見に基づく内容に大きく変更した。手順論についても,ジョンセンらの4分割表を日本の医療現場に適する内容に修正したものを採用するとともに,欧米で用いられているいくつかの方法や,筆者が開発したナラティヴ検討シートを新たに導入した。こうした総論の変更に対応して,各論のケーススタディの解説においても,4分割表のほかにナラティヴ検討シートを用いる方式を採用した。各論のうち,第14講の「A.医学研究と研究倫理」については,昨今の研究不正への関心の高まりと,研究倫理教育の必須化の流れを受けて,やや大きく内容を変えた。その一方で,各論で用いている事例そのものは,ほとんど変更していない。これらは,医療倫理学の幅広い領域の問題を学ぶために,現時点でもよい題材になると判断したためである。今後も機会があればより読みやすいテキストに改善したいと考えているので,読者からの忌憚のないご意見をお寄せいただきたい。
2016年10月
宮坂道夫
■本書の立場
医療倫理の問題は,保健医療の全般にわたって生じている。しかもその多くが簡単に答えの出せるものではなく,人によって考え方が大きく異なっている。こうした問題について,本書では,方法 method を軸に据えた。そうすることで,異なった意見をもつ人同士が同じ円卓を囲んで,問題を議論し,考えるための基盤を提供できるのではないかと考えた。意見は異なっても,問題を考える方法そのものは共有できるはずだからである。
このような立場から,本書では,あらゆる保健医療従事者が共有できるような医療倫理学の方法の基礎を提供することを目標とした。今日では多種多様な保健医療の職種があるが,チーム医療という言葉が象徴するように,異なった職種が協力して保健医療サービスを提供することが求められている。医療倫理の問題は,特に職種間の対話が不可欠で,最低限の知識や方法を共有しておくべきである。
■本書の構成
全体を総論と各論に分け,講義のテキストとして使いやすいよう,15講に区切った。
◆ 総論
総論は,歴史と方法の二部構成である。第Ⅰ部 医療倫理の歴史については,従来の医療倫理学のテキストでは必ずしも十分に触れられてこなかった。特に,医療倫理学・生命倫理学の主だった概念が1970年代以降に米国などの英語圏の学説として紹介されてきた経緯があるために,医療倫理学はしばしば外来のものととらえられ,肝心な日本の医療史のなかで生じた様々な問題を視野に入れてこなかった。そこで,本書では,731部隊による人体実験やハンセン病問題,薬害エイズ問題といった日本の重要事例についても解説した。
第Ⅱ部 医療倫理学の方法は,本書の軸となる医療倫理学の方法についての解説である。欧米を中心に蓄積されてきた研究成果を基盤にしながら,医療倫理学の方法として特に有用と思われるものを,原則論・物語論・手順論の3つの系統に整理・分類した。3つの方法論を組み合わせて用いる点と,物語論の視点を大きく取り入れている点が,本書のオリジナルな特色である。
◆ 各論
各論では,歴史と方法の学習をふまえて,具体的な問題を考える。倫理的問題は医療のあらゆる領域に存在しているが,これらを第Ⅲ 部 死と喪失,第Ⅳ部 性と生殖,第Ⅴ部 患者の権利と公共の福祉,第Ⅵ部 医学研究と医療資源の4つのテーマに分類して,可能なかぎり広い問題を網羅した。セクシュアリティや動物実験など,これまでの日本の医療倫理の教科書ではあまり触れられてこなかった問題も取り上げた。
各部とも,レビューとケーススタディの2つの部分から成り立っている。レビューでは,それぞれのテーマに必要と思われる基礎的な情報について概説した。ケーススタディでは,特に重要な倫理的問題について,架空事例を提示し,総論で学習した方法を手がかりに,具体的に問題を考えていくための道筋を示した。
■本書の使い方
総論はすべての問題を学習するための基盤なので,各論の学習に入る前に必ず読むようにしてほしい。一方,各論は,各部が相互に独立して書かれており,関心のある部のみを学習することも可能である。教科書として利用する際には,こうした特色をふまえて適宜カリキュラムに合わせた利用を考えていただければ幸いである。また,医療倫理学のカリキュラムが必ずしも十分に整備されていない教育機関で学ぶ人,あるいは医療倫理学の系統的な教育を受けたことのない医療従事者にとっても,本書を1人で読んで自己学習ができるよう,初心者向けの記述を心がけ,図表もこの種の本としては多く用いた。いずれにしても,本書は入門書であり,学習者は自分の関心に沿って,より専門的・発展的な学習を心がけてほしい。必要に応じて講の末尾に参考文献を掲げた。
なお,本書のケーススタディは,あくまで架空の事例を用いた演習である。現実の事例を参考にしているが,いずれの事例も本書の目的である「方法の学習」の目的で作成されている。このため,医療従事者が本書を使って学習する場合には,本書のレビューやケーススタディを参考にしながら,実際の事例・症例に含まれる問題点を網羅・整理し,必要な情報を調べ,倫理的問題の焦点を掘り下げなければならない。
■臨床現場での使用について
本書を臨床現場での事例検討に用いる場合,必ずしも原則論・物語論・手順論の3つをすべて用いなければならない,というわけではない。本書の事例分析の多くがそうなっているように,まずは手順論を用いて問題点を整理するだけでも,臨床での意思決定や対話には有益なはずである。ただし,重大な倫理的問題を含んでいるとみなせるような事例においては,物語論や原則論による分析を行うことで,対話の糸口を見いだしたり,対外的な説明責任を果たしやすくなる利点がある。
いずれにせよ,倫理的課題の検討をきちんと行う機会をほとんどもってこなかった臨床現場では,それを行う「場」を設定することだけでも1つの前進といえるだろう。そのような「場」は,倫理委員会や症例検討会を発展させたりすることで設定することも可能なはずである。本書第3講でも論じているように,医療倫理の問題は,個々の医療従事者が単独で判断すべきものではなく,医療チームや院内のスタッフが協働し,患者や家族とよく話し合いながら結論を導いていく意思決定の問題とみなすべきである。
■第3版での変更について
2005年の初版刊行以来,本書は予想以上に多くの人に読んでいただくことができた。医療倫理においては方法論を多職種で共有することが最も重要であるという本書のスタンスが,それなりに受け入れていただけたものと喜んでいる。
本書は医療倫理の広い範囲をカバーしているため,各領域での最新事情に合わせた更新が必要である。実際に,法律やガイドラインが改訂されたり,医療分野で使われる用語が変わったりすることがたびたびあり,増刷のたびに少しずつ対応してきた。今回の第3版の刊行にあたっては,そういった細かいアップデートに加えて,医療倫理学そのものの深化に対応して記述を変更した。そのうち最大の変更が,原則論,物語論,手順論の位置づけである。初版,第2版では,原則論と手順論の2つがオーソドックスな方法で,物語論が新しく開発されつつある方法であると位置づけていた。しかし,最近の医療倫理学では,原則論と物語論とが2つの大きな柱をなしており,手順論はこの2つに基礎づけられた実際的な方法論と位置づけられている。このため,第3版ではそのような位置づけを採用した。第Ⅱ部での解説の順序を,原則論,物語論,手順論の順に変更し,本書の副題も,「原則・ナラティヴ・手順」と表記の順序を改めた。また,特に物語論の解説は,最新の知見に基づく内容に大きく変更した。手順論についても,ジョンセンらの4分割表を日本の医療現場に適する内容に修正したものを採用するとともに,欧米で用いられているいくつかの方法や,筆者が開発したナラティヴ検討シートを新たに導入した。こうした総論の変更に対応して,各論のケーススタディの解説においても,4分割表のほかにナラティヴ検討シートを用いる方式を採用した。各論のうち,第14講の「A.医学研究と研究倫理」については,昨今の研究不正への関心の高まりと,研究倫理教育の必須化の流れを受けて,やや大きく内容を変えた。その一方で,各論で用いている事例そのものは,ほとんど変更していない。これらは,医療倫理学の幅広い領域の問題を学ぶために,現時点でもよい題材になると判断したためである。今後も機会があればより読みやすいテキストに改善したいと考えているので,読者からの忌憚のないご意見をお寄せいただきたい。
2016年10月
宮坂道夫
目次
開く
第Ⅰ部 医療倫理の歴史
第1講 古代から近代の医療倫理の変遷
A 古代医療における医療倫理
1.倫理規範と倫理綱領
2.患者優位の関係
B 中世から近代にかけての医療倫理の変化
1.集約的医療施設の誕生
2.科学としての医学の誕生
3.優生学の誕生
4.近代医療の導入期における日本の医療倫理
第2講 現代:患者の権利の時代へ
A 医療従事者が人命を奪った悲劇とその断罪
1.ドイツ
2.日本
3.ドイツと日本の医師たちの戦時犯罪の処断
B 被験者の権利から患者の権利へ
1.米国から世界に波及した患者の権利
2.日本での患者の権利
第Ⅱ部 医療倫理学の方法
第3講 基本的な概念と構造
A 倫理問題を検討するためのルール
1.人物と議論の評価を区別する
2.根拠を明示する
3.事実と評価とを区別する
4.事実と評価を吟味する
B 医療従事者のおかれた社会的立場
1.医療従事者同士の関係-「臨床」内部の重層構造
2.医療従事者と社会の関係-「臨床」外部の重層構造
C ケーススタディ
[事例] 救急救命士による気管挿管
1.倫理問題を検討するためのルール
2.医療従事者のおかれた社会的立場
第4講 3つの方法論:原則論,物語論,手順論(1)
A 倫理理論
B 原則論
1.原則とは何か
2.原則の内容
3.原則の適用
C 物語論
1.医療従事者と患者がおかれた文脈の違い
2.物語理論
3.医療倫理での物語理論の応用(1)-異なるナラティヴの理解
4.医療倫理での物語理論の応用(2)-ナラティヴの調停
第5講 3つの方法論:原則論,物語論,手順論(2)
A 手順論
1.手順とは何か
2.臨床倫理の検討のための様々な手順
3.手順論の活用
4.原則論,物語論,手順論の関係
第Ⅲ部 死と喪失
第6講 死と喪失についてのレビュー
A 現代人の死生観
B 絶望と希望
C 死と自己決定
1.日本の自殺肯定の美意識
2.死を間近に見よ
3.死はみずから決するものではない
D 医療と死
E 倫理的問題はどこにあるか
第7講 告知:深刻な診断を知る,それを伝えるということ
A 「悪い知らせ」とは何か
B ケーススタディ:手順論による問題点の抽出と論点整理
[事例] がんの告知
1.4分割表による事実関係の整理
2.ナラティヴ検討シートによる対立点の整理
C 倫理的問題の焦点:原則論と物語論による掘り下げ
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
3.新しい手順-事前指示書
第8講 尊厳死:最後まで生きる,その人にかかわるということ
A 尊厳死とは何か
B ケーススタディ:手順論による問題点の抽出と論点整理
[事例] 人工呼吸器の取りはずしを望む患者
1.4分割表を用いた事実関係の把握
C 倫理的問題の焦点:原則論と物語論による掘り下げ
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
第Ⅳ部 性と生殖
第9講 性(セクシュアリティ)について
A 性についてのレビュー
1.性の重層性
2.セクシュアリティと倫理
3.セクシュアリティと医療
B ケーススタディ
[事例] 性的な介助を求められた理学療法士
1.手順論による分析-ナラティヴ検討シートを用いた分析
C 倫理的問題の焦点
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
第10講 生殖について
A 生殖についてのレビュー
1.生殖と「弱い立場の人」の権利
2.生殖をめぐる倫理的問題
B ケーススタディ:生殖補助医療
[事例] 妹からの卵子提供による体外受精を考えている事例
1.手順論による分析-4分割表を用いた分析
C 倫理的問題の焦点:生殖補助医療
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
第11講 障害児の出生を「防ぐ」ということ
A ケーススタディ
[事例] 障害をもつ子どもの中絶を考えている事例
1.手順論による分析-4分割表を用いた分析
B 倫理的問題の焦点
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
第Ⅴ部 患者の権利と公共の福祉
第12講 患者と第三者の利害の対立
A 感染症による他者危害
1.ペストとインフルエンザ
2.感染症の大流行と社会の混乱
3.ハンセン病と結核-感染症と差別
4.日本のハンセン病対策の過ち
5.現在の日本の感染症対策
B 精神障害による自己危害・他者危害
1.精神障害のとらえ方
2.中世キリスト教社会での迫害
3.「科学の時代」における解放と迫害
4.日本の精神障害対策
C 思想信条による自己危害
1.エホバの証人の輸血拒否
D 倫理的問題はどこにあるか
第13講 自己危害と他者危害
A ケーススタディ:感染症による他者危害の防止
[事例] 肺結核症患者への対応
1.手順論による分析
B 倫理的問題の焦点:他者危害の防止
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
C ケーススタディ:自己危害の防止
[事例] 認知症症状のある高齢者の身体拘束
1.手順論による分析
D 倫理的問題の焦点:自己危害の防止
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
第Ⅵ部 医学研究と医療資源
第14講 生体と医療資源
A 医学研究と研究倫理
1.研究者としての倫理
2.人間を対象とした研究の倫理
3.研究対象,研究方法についての議論-特に動物実験について
4.動物の道徳的地位についての基準
5.3つのR
B 医療資源
1.医療資源の種類
2.生体の資源化
3.医療資源の配分
第15講 医療資源の配分と医療情報
A ケーススタディ:資源化の是非
[事例] ES細胞を利用した再生医療の研究
1.手順論による分析
B 倫理的問題の焦点:資源化の是非
1.原則論からの分析:ガイドラインの背景にあるもの
2.物語論からの分析
C ケーススタディ:医療資源の配分
[事例] 家族介護の限界と介護支援の拡充
1.手順論による分析
2.原則論からの分析
3.物語論からの分析
あとがき
[資料]
WMAヘルシンキ宣言 人間を対象とする医学研究の倫理的原則
患者の権利に関するWMAリスボン宣言
日本医師会 医の倫理綱領
日本薬剤師会 薬剤師倫理規定
日本看護協会 看護者の倫理綱領
日本理学療法士協会 倫理規程
日本作業療法士協会 倫理綱領
日本視能訓練士協会 倫理規程
日本臨床衛生検査技師会 倫理綱領
日本歯科技工士会 歯科技工士の倫理綱領
索引
第1講 古代から近代の医療倫理の変遷
A 古代医療における医療倫理
1.倫理規範と倫理綱領
2.患者優位の関係
B 中世から近代にかけての医療倫理の変化
1.集約的医療施設の誕生
2.科学としての医学の誕生
3.優生学の誕生
4.近代医療の導入期における日本の医療倫理
第2講 現代:患者の権利の時代へ
A 医療従事者が人命を奪った悲劇とその断罪
1.ドイツ
2.日本
3.ドイツと日本の医師たちの戦時犯罪の処断
B 被験者の権利から患者の権利へ
1.米国から世界に波及した患者の権利
2.日本での患者の権利
第Ⅱ部 医療倫理学の方法
第3講 基本的な概念と構造
A 倫理問題を検討するためのルール
1.人物と議論の評価を区別する
2.根拠を明示する
3.事実と評価とを区別する
4.事実と評価を吟味する
B 医療従事者のおかれた社会的立場
1.医療従事者同士の関係-「臨床」内部の重層構造
2.医療従事者と社会の関係-「臨床」外部の重層構造
C ケーススタディ
[事例] 救急救命士による気管挿管
1.倫理問題を検討するためのルール
2.医療従事者のおかれた社会的立場
第4講 3つの方法論:原則論,物語論,手順論(1)
A 倫理理論
B 原則論
1.原則とは何か
2.原則の内容
3.原則の適用
C 物語論
1.医療従事者と患者がおかれた文脈の違い
2.物語理論
3.医療倫理での物語理論の応用(1)-異なるナラティヴの理解
4.医療倫理での物語理論の応用(2)-ナラティヴの調停
第5講 3つの方法論:原則論,物語論,手順論(2)
A 手順論
1.手順とは何か
2.臨床倫理の検討のための様々な手順
3.手順論の活用
4.原則論,物語論,手順論の関係
第Ⅲ部 死と喪失
第6講 死と喪失についてのレビュー
A 現代人の死生観
B 絶望と希望
C 死と自己決定
1.日本の自殺肯定の美意識
2.死を間近に見よ
3.死はみずから決するものではない
D 医療と死
E 倫理的問題はどこにあるか
第7講 告知:深刻な診断を知る,それを伝えるということ
A 「悪い知らせ」とは何か
B ケーススタディ:手順論による問題点の抽出と論点整理
[事例] がんの告知
1.4分割表による事実関係の整理
2.ナラティヴ検討シートによる対立点の整理
C 倫理的問題の焦点:原則論と物語論による掘り下げ
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
3.新しい手順-事前指示書
第8講 尊厳死:最後まで生きる,その人にかかわるということ
A 尊厳死とは何か
B ケーススタディ:手順論による問題点の抽出と論点整理
[事例] 人工呼吸器の取りはずしを望む患者
1.4分割表を用いた事実関係の把握
C 倫理的問題の焦点:原則論と物語論による掘り下げ
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
第Ⅳ部 性と生殖
第9講 性(セクシュアリティ)について
A 性についてのレビュー
1.性の重層性
2.セクシュアリティと倫理
3.セクシュアリティと医療
B ケーススタディ
[事例] 性的な介助を求められた理学療法士
1.手順論による分析-ナラティヴ検討シートを用いた分析
C 倫理的問題の焦点
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
第10講 生殖について
A 生殖についてのレビュー
1.生殖と「弱い立場の人」の権利
2.生殖をめぐる倫理的問題
B ケーススタディ:生殖補助医療
[事例] 妹からの卵子提供による体外受精を考えている事例
1.手順論による分析-4分割表を用いた分析
C 倫理的問題の焦点:生殖補助医療
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
第11講 障害児の出生を「防ぐ」ということ
A ケーススタディ
[事例] 障害をもつ子どもの中絶を考えている事例
1.手順論による分析-4分割表を用いた分析
B 倫理的問題の焦点
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
第Ⅴ部 患者の権利と公共の福祉
第12講 患者と第三者の利害の対立
A 感染症による他者危害
1.ペストとインフルエンザ
2.感染症の大流行と社会の混乱
3.ハンセン病と結核-感染症と差別
4.日本のハンセン病対策の過ち
5.現在の日本の感染症対策
B 精神障害による自己危害・他者危害
1.精神障害のとらえ方
2.中世キリスト教社会での迫害
3.「科学の時代」における解放と迫害
4.日本の精神障害対策
C 思想信条による自己危害
1.エホバの証人の輸血拒否
D 倫理的問題はどこにあるか
第13講 自己危害と他者危害
A ケーススタディ:感染症による他者危害の防止
[事例] 肺結核症患者への対応
1.手順論による分析
B 倫理的問題の焦点:他者危害の防止
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
C ケーススタディ:自己危害の防止
[事例] 認知症症状のある高齢者の身体拘束
1.手順論による分析
D 倫理的問題の焦点:自己危害の防止
1.原則論からの分析
2.物語論からの分析
第Ⅵ部 医学研究と医療資源
第14講 生体と医療資源
A 医学研究と研究倫理
1.研究者としての倫理
2.人間を対象とした研究の倫理
3.研究対象,研究方法についての議論-特に動物実験について
4.動物の道徳的地位についての基準
5.3つのR
B 医療資源
1.医療資源の種類
2.生体の資源化
3.医療資源の配分
第15講 医療資源の配分と医療情報
A ケーススタディ:資源化の是非
[事例] ES細胞を利用した再生医療の研究
1.手順論による分析
B 倫理的問題の焦点:資源化の是非
1.原則論からの分析:ガイドラインの背景にあるもの
2.物語論からの分析
C ケーススタディ:医療資源の配分
[事例] 家族介護の限界と介護支援の拡充
1.手順論による分析
2.原則論からの分析
3.物語論からの分析
あとがき
[資料]
WMAヘルシンキ宣言 人間を対象とする医学研究の倫理的原則
患者の権利に関するWMAリスボン宣言
日本医師会 医の倫理綱領
日本薬剤師会 薬剤師倫理規定
日本看護協会 看護者の倫理綱領
日本理学療法士協会 倫理規程
日本作業療法士協会 倫理綱領
日本視能訓練士協会 倫理規程
日本臨床衛生検査技師会 倫理綱領
日本歯科技工士会 歯科技工士の倫理綱領
索引