臨床薬理学 第2版

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学会の責任編集によるわが国初の本格的教科書の第2版。臨床薬理学の概念・定義から薬物作用のメカニズム,内科各領域における薬物治療,さらには医事紛争・行政に至るまで,初版の内容を踏襲しつつ,臨床薬理学のさらなる進歩に伴い,新GCP(臨床試験実施基準)やICH(国際的ハーモナイゼーション)に準拠するなど,最新の知見を盛り込んだ意欲作。学生のみならず一般臨床医も必携の一冊。
日本臨床薬理学会
編集委員 中野 重行 / 安原 一 / 中野 眞汎
発行 2003年04月判型:B5頁:600
ISBN 978-4-260-10539-2
定価 10,230円 (本体9,300円+税)
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  • 目次
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第1章 臨床薬理学の概念と定義
第2章 薬物治療学総論
第3章 薬物治療学各論
第4章 その他の重要な事項
索引

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教科書にも辞書にも使える,臨床薬理学領域のすべてを網羅した書
書評者: 杉山 雄一 (東大教授・分子薬物動態学)
◆臨床薬理学と薬物治療学を支える3本柱

 臨床薬理学の最も標準的な教科書として定着している『臨床薬理学』の待望の第2版が出版された。臨床薬理学とは合理的薬物治療を行なうための基本となる学問領域である。その実現のためには,編者の中野重行先生が書いておられるように,サイエンスとしての(1)医薬品の臨床評価のための臨床試験と,(2)合理的薬物投与計画法とそのために必要な臨床薬物動態学,さらにこのサイエンスを生かすために,アーティストとしての(3)患者と医療者との間のよき「治療のパートナーシップ」が重要である。この3つが臨床薬理学と薬物治療学を支える3本柱である。すでに得られた医薬品を有効に使用することとともに,優れた医薬品を開発して世界中へ届けることは国家的事業であるが,後者では倫理的,科学的手順を踏んで,治験を効率よく実施することが求められている。そのような背景がある一方,臨床薬理学が比較的新しい学問分野であるため,今まで適当な教科書がなく,日本臨床薬理学会認定医試験の準備学習のための臨床薬理学テキストをめざし,日本臨床薬理学会の認定医制度委員会が編集委員となって1996年に初版が出版された。

 本書は,この3本柱を十分に解説,説明するために,(1)臨床薬理学の概念と定義,(2)薬物治療学総論,(3)薬物治療学各論,(4)その他の重要な事項,の4つの章より成っている。(1)では医薬品開発と臨床試験,作用・有害作用のメカニズム,薬物動態学,作用・動態の個体差,薬物間相互作用などを中心に,(2)ではTDM,薬物投与計画の作成のための薬物動態学理論,また各種の病態生理学的な変動時における薬物投与計画,遺伝子情報を利用した薬物投与計画について,(3)では,疾患別に治療薬を15に分類し,各論が詳細に解説されるとともに,時間薬理学,添付文書の活用についても記述がなされ,(4)では,新薬開発,開発業務受託機関(CRO),治験施設支援機関(SMO),治験コーディネーター(CRC),医薬品の乱用と誤用,医事紛争,薬事行政,健康保険,薬剤疫学,などの項目の解説がなされている。

◆時代を反映し,重要な話題を追加

 第2版では認定医・認定薬剤師試験の準備学習のためのテキストとして,認定薬剤師制度委員長も編集委員に加わり,ここ数年間に重要性を増したトピックスが追加されている。その中には,臨床試験関連のトピックスとして,大規模臨床試験のほかに,上述のCRO,SMO,CRCがある。その他に治療法選択上,重要なエビデンスに基づく医療(EBM),個別治療をめざした投与計画設定時に参考にすべき知識として,有害反応予防,薬理ゲノミクスも追加された。また,薬物治療学各論に虚血性心疾患,高脂血症,消化器病,呼吸器疾患,てんかん,リウマチ,骨粗鬆症,耐性菌感染症,鎮痛薬,外科領域が追加された。

 2003年から治験コーディネーターの認定も開始されることを考えると,臨床薬理学領域に関わる全ての情報が網羅されている本書は,薬物治療に関与してきた医師,薬剤師に加えて,臨床試験の支援を担う薬剤師,看護師,臨床検査技師から成る新しい職種としての治験コーディネーターのための参考書ともなり得る。医師,薬剤師,医療関係の大学における研究者,学部学生,大学院生や,製薬会社において医薬品の探索・開発,臨床開発およびマーケティングに関わる方が教科書として勉強するために,また座右に置いて詳細な辞書として使うために最適の書といえる。

さらに充実した臨床薬理学テキストの決定版
書評者: 高久 史麿 (自治医大学長)
◆わが国最初の臨床薬理学の本

 1996年に日本臨床薬理学会の編集によって『臨床薬理学』が医学書院から刊行された。本書は臨床薬理学の概念,歴史,臨床試験の倫理性,臨床試験と医薬品開発から,薬物動態,薬物相互作用,有害反応,薬物治療学の総論,各論に及ぶ臨床薬理学の全ての分野をカバーした,わが国で刊行された最初の本格的な臨床薬理学のテキストであった。

 わが国では臨床薬理学の重要性が以前から指摘されていたにもかかわらず,優れた教科書がなかったことを考えると,本書の刊行がわが国の臨床薬理学の発展に大きく寄与してきたと言って間違いないであろう。

 この度,その第2版が刊行された。第2版では初版の内容に臨床試験関連のトピックスとして,大規模臨床試験,開発業務受託機関(CRO),治験施設支援機関(SMO),治験コーディネーター(CRC)などの項目が追加されている。

 初版が刊行された1996年に日米欧の協調を目指した新しい『医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)』が薬事法の改正によって法制化された。新しいGCPの導入に伴う臨床試験体制の整備が遅れたため,その後わが国における治験の遅れが目立つようになった。その結果,わが国の製薬企業が外国と治験を行なうという治験の空洞化が目立つようになった。このことがわが国における臨床試験の展開にとって,また製薬企業全体の発展にとって極めて大きな問題であったことは自明である。このようなわが国の治験体制の遅れを取り戻すため,現在様々な取り組みがなされているが,今回第2版で新しく取り上げている上述の大規模臨床試験,CROやSMO整備,さらにCRCの育成などもそのような取り組みの例である。特にCRCに関しては,日本臨床薬理学会が本年から認定制度を開始している。したがって,この第2版はCRC認定を受けようとする人たちにとって特に有用なテキストになるであろう。

 第2版では上述した新規項目のほか,薬物有害反応予防,薬理ゲノミクスの項も新しく追加されており,薬物治療学各論の章での幾つかの重要な疾患が追加されていることと併せて,初版よりも一層充実した内容となっていることは間違いない。

 2003年4月にヒトの遺伝子における塩基配列の解析の終了が宣言された。ヒトの遺伝子解析の結果を利用したpharmacogenicsに基づく新しい形の薬剤の開発が今後一層加速されることが十分に期待される。そのような新しい時代を迎え,臨床医学における臨床薬理学教育の重要性が今後さらに強調されるようになることを疑うものはいないであろう。第2版の刊行によって,わが国の臨床薬理学教育の分野における本書の役割の大きさがさらに広く認識されるようになるものと信じている。

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