• HOME
  • 書籍
  • 脳神経外科手術アトラス 下巻


脳神経外科手術アトラス 下巻

もっと見る

◇術前支援(手術構想・戦略構築)・術中参照に役立つ内容:バリエーションまでカバーできる基本イメージを提供。 ◇統一感ある美しいシェーマ:文字による記載では伝えきれない理念をも表現。 ◇手術の考え方,流れを重視した解説:手術の名手による簡潔な記載。Dos & Don’tsや注を多用し手術のコツも満載。 ◇下巻は各論(脳血管障害,頭部外傷ほか)で構成。
編集 山浦 晶
発行 2005年03月判型:A4頁:512
ISBN 978-4-260-12265-8
定価 46,200円 (本体42,000円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 目次
  • 書評

開く

I. 脳血管障害
 1. 脳動脈瘤
 2. 高血圧性脳内出血
 3. 脳動脈再建術
 4. 血管奇形
II. 頭部外傷
 1. 頭皮損傷
 2. 頭蓋骨骨折
 3. 脳実質損傷
 4. 硬膜外血腫
 5. 急性硬膜下血腫
 6. 小児頭部外傷
III. 先天奇形
 1. 二分脊椎
 2. 先天性皮膚洞
 3. 腰仙部脂肪腫
 4. 二分頭蓋
 5. ダンディ・ウォーカー症候群
 6. くも膜嚢胞
 7. 頭蓋骨縫合早期癒合症
 8. 顔面奇形を含む頭蓋奇形
 9. 頭蓋頸椎移行部奇形
IV. 炎症性疾患
 1. 脳膿瘍
 2. 硬膜外膿瘍,硬膜下膿瘍
 3. 頭蓋骨骨髄炎
 4. 良性頭蓋内圧亢進症(偽脳腫瘍)
V. 脊椎・脊髄疾患
 1. 脊髄腫瘍
 2. 脊髄動静脈奇形
 3. 歯状突起の脱臼骨折
 4. 歯突起骨,環軸椎脱臼,ジェファーソン骨折,ハングマン骨折
 5. 頸椎外傷
 6. 胸腰椎外傷
 7. 頸椎椎間板ヘルニア
 8. 変形性頸椎症, 脊柱管狭窄症,頸部脊柱管狭窄
 9. 胸椎部ヘルニア
 10. 腰椎椎間板ヘルニア
 11. 靱帯骨化症(頸椎,胸・腰椎)
 12. 黄色靱帯肥厚
 13. 脊髄空洞症
VI. 末梢神経の外科
 1. 絞扼性末梢神経障害・外傷・腫瘍
 2. 顔面神経吻合術
VII. 微小血管減圧術
 1. 片側顔面痙攣
 2. 三叉神経痛
 3. めまい・耳鳴り
VIII. てんかん
 1. 切除手術
 2. 遮断手術
 3. 侵襲的脳波モニタリング
IX. 血管内手術
 1. 動脈瘤
 2. 虚血病変
 3. 頸動脈-海綿静脈洞瘻
 4. 腫瘍
和文索引
欧文索引

開く

最後まで読ませる手術書の最高峰
書評者: 宝金 清博 (札幌医大教授・脳神経外科学)
 「手術書」というのは,大変に難しい出版物であると思う。私自身もこの仕事に関与したことがあり,多少なりともその困難さが理解できる。DVDのような動画情報メディアが大量に生産され,安価で供給できる時代である。本来動的なものである手術を伝える媒体としては,DVDなどの動画メディアは優れており,実際,最近では動画による手術解説が増えている。情報の受け手側としても,確かに手術を学ぶ手段としては,大変に便利なものである。

 そのような強力なメディアが普及した今日,手術のような「アート,技」の領域の知識を「文章」と「絵」という昔ながらの情報伝達手段で伝えることの意味を再認識させてくれた力作が,この『脳神経外科手術アトラス』である。こうした優れた「手術書」は,10年に一度くらいしか出ないように思う。本書は,こうした動画全盛の時代にも,conventionalな手法による「アート」の伝達が,DVDを上回るものであることをもう一度証明してくれている。

 偉そうなことを言ったが,このDVDの時代にあっても,「手術」の本質は,正確な「文章」と手術の本質を捉えた「絵」でしか伝わらないものがあるというのは,ある程度の外科医であれば,読者も書き手も百も承知のはずである。これは飽きっぽい私の性格によるバイアスが大きいかもしれないが,私はDVDを二度も三度も繰り返し見ることはほとんどなく(せいぜい古畑任三郎シリーズくらいである),その印象の色褪せる速さは,ある意味,恐ろしいものがある。もちろん,マスコミが言うように現代は20世紀以来「映像の世紀」であり,優れた映像情報は,時代を超えて伝えられるであろう。ただ,それは時代の香りをremindさせてくれるarchiveのみであり,そうした名作はほんの一握りであろうと想像される。

 本書は,これまでの日本から出版された脳神経外科の手術書の中では,最高峰のものである。一貫した編集方針,質と量,そして,執筆に加わった脳外科医のレベルを考えると,おそらく,和書として,初めて,YasargilやSpetzlerの手術書のレベルに達したものである。しかも,こうした洋書と異なり,上下巻併せると,脳神経外科の主要な手術のすべてが網羅される点は,驚くべきものがある。「絵」は,DVDや写真と違い,一本の線,一つのタッチがすべて,筆者の「意図」を伝えている「作り物」である。「作り物」というと語弊があるかもしれないが,手術の本質は,実は,ある程度のデフォルメがなければ伝えられないものである。さらに,デフォルメという言い方がまずければ「無駄なものを取り除き本質だけをハイライトする」という言い方に変えてもいい。本書では,この「絵」が一貫して描かれており,そこには,全体を読ませたいという編者の山浦教授の深い意図が感じられる。

 小説家は途中でその本が読まれなくなることを想定していないし,それは,書き手にとって最も悲しむべき敗北である。これに比べると,医学書を含めた実用書は,一部だけが読まれることを前提にしているものが多い。手術書の多くは,それを危惧して,最初からある領域に特化して絞り込んだものが多い。これに対して,この『脳神経外科手術アトラス』は,全体を読んでもらうことを最初から意識して書かれたようにさえ思われる。

 本書の完成に至るまでの困難さは,多少は理解できるが,おそらく,小生の想像を超えたものであろう。一枚の「絵」に込められた外科医と編集者,イラストレーターの熱意を考えると,この本には,その熱意×「絵」の枚数の情熱と時間が注がれたことになると思う。その量は膨大なものであり,決して誇張ではないと思う。

 「脳神経外科アトラス」が出てしまった。冒頭に言ったように,手術書の出版は,元より困難な仕事である。本書の出現は,今後「手術書」を出版するハードルをますます高いものにしてしまった。罪なことである。しかし,日本の手術書が本書を目標にすることになったとすれば,歓迎すべきことに違いない。

脳神経外科手術書のスタンダード
書評者: 峯浦 一喜 (京府医大教授・脳神経外科学)
 このたび,山浦晶先生編集『脳神経外科手術アトラス 下巻』が上梓された。山浦先生は,ご自身すぐれた脳神経外科医であると同時に,長年にわたって日本脳神経外科学会機関誌『Neurologia Medico―Chirurgica』の編集長を務められ,脳神経外科に関する数々の著書,編著があり,いずれも時代を見据えた出版物として高い評価を得ている。本書も,その例にもれず,手術の「匠」を伝えようという,山浦先生の脳神経外科指導者としての「やさしさ」と心意気に満ち溢れた好著である。

 本書の特徴を一言で表すならば「簡潔にして十分」ということだろう。

 『脳神経外科手術アトラス 下巻』の取り扱う手術は,脳血管障害,頭部外傷,先天奇形,炎症性疾患,脊椎・脊髄疾患,末梢神経の外科,微小血管減圧術,てんかん,血管内手術の多岐にわたっている。近年,進歩の著しい血管内手術も収載され,いずれも最新の情報が含まれ,「上巻」と併せて脳神経外科手術を網羅している。

 執筆者は各手術の第一人者であり,前世紀から今世紀に入り,劇的に進歩している脳神経外科手術において,手術技法を支える概念,適応,術前検査および準備,術中モニタリング,さらに,手術法の詳細,術後管理の項目に分けて,戦略戦術という外科治療の本質に触れる記述がなされており,まさに最新の脳神経外科手術書のスタンダードと言える。

 本書は各手術にわたって,わかりやすく,しかも要所をおさえた図が配されており,重要な事項が具体的に指摘され,かつ,記銘しやすい。さらに,特に留意すべき事項は「DO’s & DON’Ts」のなかでポイントをおさえた解説がなされ,読み物としても興味深い。あれもこれもとつめこんだ百科事典的な平板な記述ではなく,臨床医のニーズを知りつくした,細かな配慮が心にくい。

 最近,とみに社会における医療の役割がクローズアップされているが,「社会から求められる脳神経外科」は外科治療が核であり,良い手術を提供することで社会に貢献することが肝要であり,その観点からも上質の指南書の登場は大いに歓迎すべきものである。本書は,発行までに長い年月を経たとのことであるが,編集者が完璧を期し,推敲に推敲を重ね,その結果,「簡潔」でありながら,「十分」な手術書となっている。スタンダードな知識から最新の情報まで網羅した本書は,研修修練医にも,経験豊かな脳神経外科医にも,末長く活用される座右の書となることであろう。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。