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脳神経外科手術アトラス 上巻

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脳神経外科手術をめぐる術前戦略や術中参照に役立つ手術の考え方,流れをシェーマ中心に解説。標準術式を設定し,限定された効果的な画を用いてバリエーションまでカバーする基本イメージを提供。統一感あるシェーマと解説に,手術のコツも盛り込んだ実践書。本邦初の本格的手術アトラス。上巻は総論と腫瘍,機能的外科等で構成。
編集 山浦 晶
発行 2004年03月判型:A4頁:448
ISBN 978-4-260-12257-3
定価 41,800円 (本体38,000円+税)

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  • 目次
  • 書評

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I. 脳神経外科麻酔
II. 術中モニタリング
III. ポジショニング
IV. 脳神経外科手術基本手技
V. 手術機器総論
VI. ガンマナイフ
VII. 腫瘍
VIII. 神経内視鏡
IX. 機能的外科
和文索引
欧文索引

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脳神経外科手術の奥義が読み取れる
書評者: 齋藤 勇 (杏林大名誉教授/富士脳障害研究所付属病院院長)
 「20世紀の脳神経外科手術の総まとめであり,脳神経外科が誕生しそして世界に普及し,やがて急速に成長した20世紀に,脳神経外科医の技術はどこまで達したかをアトラスで示すことが本書の目的」と,序で編集者の山浦教授が述べている。

 A4版の大きめの本書をまず手にとってみると,そのずっしりとした感触に心が躍る。開いてみると,その鮮明に描かれた術野のスケッチがすばらしい。極めて精緻で繊細で,実写的である。手術のステップが手順に従って並べられ,それの解説にマッチしたシェーマがわかりやすい。

 この上巻では,麻酔,モニタリング,ポジショニング,脳神経外科の基本手技,手術機器総論,ガンマナイフ,腫瘍,神経内視鏡,機能的外科が含まれている。

◆手術上達のためのエッセンスが凝縮

 手術の上達のためには,経験することが重要であることは言うまでもない。しかし,上達の秘訣は,手術記録を仕上げた時に,その症例でやるべきだったこと,やってはいけなかったことの反省を書き加えておくことであろう。本書では,このDOs & DONTsが各手術ごとに赤い囲みで書かれている。各筆者がその経験から学んだエッセンスがそこに凝縮されている。「静脈洞からの出血はバイポーラで凝固してはいけない。硬膜が収縮して裂け目がかえって広がる」というDONTsなどである。

 どんなに優れた手術アトラスでもそれを見れば手術ができる,というものではない。若手は本書を見ながらcadaverで手順を学んで欲しい。そして,先輩の手術に参加する前に本書を見ておくこと,実際の手術で本書と違ってよいと思ったことはこれに書き加えておくとよい。

 ベテランは自分の手術と本書のスケッチと手順を対比してほしい。「果敢に攻め,潔く退く」という手術の奥義が読み取れるし,必ず得るところが少なくないはずである。

 すばらしい手術書がやっとできたと思う。もし注文を付けるなら,STA―MCA anastomosis,CEAが基本手技として扱われているので,血管障害を含む下巻では,総目次としてこれらの手術法は上巻にあることがわかるように配慮していただきたい。

20世紀に発展した脳神経外科手術の総まとめ
書評者: 福井 仁士 (九大名誉教授/佐世保共済病院長)
◆術前に一読するのに最適

 本書は,20世紀に発展した脳神経外科手術の総まとめの,実現可能な技術を示すものとして刊行された。本書には,脳神経外科手術の方法や手技を中心として,それに付随する検査法,麻酔法,手術機器などが要領よく行き届いて示されている。各項に画伯による見事な図が網羅されており,読者の理解が得られやすいように配慮されているのが本書の特徴であろう。編集者の山浦教授が本書の「序」で述べられているように,すぐれた図は多くのことを語るものである。写真では表すことの難しい手術の真実を,すぐれた図が総合的に表してくれる。

 また,DOs & DONTsとして,やるべきこと,してはならないことが各項につけられて注意を喚起している。読者が症例にあたり,方針を考えたり,術前に一読するに最適なアトラスとして推薦したい。

◆症例によっては積極手術を行う勇気を

 20世紀の終わり頃から,わが国でも患者さんの医療に対する意識が大きく変わり,とくに21世紀になって医療訴訟が急増してきた。その結果,手術を行う場合患者さんのQOLの低下を避けるため,消極手術になってくる傾向がある。しかし,症例によっては患者さんの予後を大局的に考える場合,積極手術が望ましいことがあるだろう。このような場合,患者さんに十分に説明して承諾を得た上で,積極手術を行う勇気を術者は持ってほしいと思う。積極手術を行う時,術者は手術目的を達成し,手術合併症を避けるべく最大の努力をしなければならない。本書は,そのような目的の指針としても役立つであろう。

 本書は,日本で活躍している68名の脳神経外科および関連領域の医師の分担執筆によるものであるが,欧米の医学書に劣らぬすぐれた内容となっている。第2次世界大戦後に日本脳神経外科学会が創立された頃,日本の脳神経外科は欧米に比べて大きく遅れをとっていたが,先輩および現役の各位の努力によりここまで発展してきたことを慶びたい。また,編集者の山浦教授はこれまで多くの脳神経外科の医学書を刊行してこられたが,大学生活の終わりに近くなってこれまでのノウハウを注ぎ込んで立派な本書を刊行されたことに敬意を表したい。

急速に進歩した脳神経外科手術の「秘伝書」
書評者: 吉峰 俊樹 (阪大教授・脳神経外科)
 山浦 晶教授の編集による「脳神経外科手術アトラス」は単なる「手術アトラス」ではない。単なる「手術書」でもない。

 上巻には「脳神経外科麻酔」,「術中モニタリング」,「ポジショニング」,「脳神経外科手術基本手技」から個々の「脳腫瘍の手術」のほか「機能的外科」まで,すべての重要な知識,技術が記されている。20世紀に急速に進歩した脳神経外科手術の総まとめである。

◆大局をつかみながら学べる

 それぞれについては直ちに各論が述べられるのではなく,最初に全体の中での位置付けが明らかにされている。例えば,このような記述がある。

   「硬膜下液貯留」
    小児の,主として乳幼児の硬膜下腔に慢性的に貯留する液は,成因や液の性状に関係なく硬膜下
   液貯留subdural fluid collectionと呼ばれるが,外科治療が必要なのは・・・

   「脊椎・脊髄」
    故都留美都雄教授などごく少数の先駆者を除くと,わが国の脳神経外科医が脊椎・脊髄の疾患に
   興味をもち,積極的に手術を始めたのは1970年代の中頃で,・・・

 書物による独学であっても容易に大局をつかめるよう配慮されている。
 
 次にそれぞれの手技の「適応」が簡潔に述べられる。

   「大脳鎌髄膜腫」適応
    片麻痺,てんかん発作などがあれば手術を行う。脳ドックなどで発見された症例,とくに高齢者では
   約1年経過観察してからでも遅くない。

 外科医を「大工」に例える向きがある。大工は工作の腕だけではつとまらない。良い大工は仕事のたびに住む人,使う人を考え,それぞれに合った最良の空間と物を作り上げるという。外科医も手術技量だけではつとまらない。病と人を知り尽くし,それぞれの患者ごとに最良の方策をとらねばならない。その第一歩が「適応」の判断である。

◆「手術の極意」がていねいに伝えられる

 個々の手術については,「術前検査」,「術前準備」,「麻酔と術中モニタリング」,「体位」,「手術法」,「術後管理」,関連した「微小外科解剖」がていねいに解説され,最後に手術のエッセンスが一言で「まとめ」られ,その全貌を把握することができる。

 さらに後輩に対する親身な助言が「すべきこと」,「してはならないこと」として随所に挿入されている。

   「DOs & DONTs」 止血法および剥離法
    術野からの大出血では,綿片を出血源の方向に盲目的に挿入して圧迫止血を試みてはいけない。
   オーバーパッキングされた綿片はその後の手術操作を妨害するだけでなく・・・

   「DOs & DONTs」 斜台・錐体部腫瘍
    腫瘍の剥離は一カ所にとどまらず,腫瘍周囲を万遍なく渦巻状に行う。したがって・・・

 簡潔,明解である。 

 本書の圧巻は「アトラス」として揃えられた手術図である。検討に検討を重ねられた図面はいかなる術中写真よりも雄弁に手術を解説し,「手術の極意」を伝えてくれる。

 本書は山浦 晶教授の指導者としての愛情と教育者としての創意に満ちている。編者の意をくみ取った執筆者,画家の先生方も見事である。手術にまつわる勘どころがあたかも口伝されるように伝受される。

 「脳神経外科手術アトラス」は山浦 晶教授の「手術秘伝書」である。

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