肩 第3版
その機能と臨床
40年にわたる臨床経験と研究をまとめた肩に関する独創的な臨床書
もっと見る
本書は肩についての40年にわたる著者の臨床経験と研究をまとめた独創的な臨床書である。先人の業績を縦横に博引しながら、自らの見解をユニークな表現と実証的な数値で明快に示している。今版は前版より10数年間の膨大な資料を整理して取り入れた全面改訂版で、カラー写真・色図も大幅に増やしてあり、まさに著者畢生の名著である。
著 | 信原 克哉 |
---|---|
発行 | 2001年04月判型:B5頁:560 |
ISBN | 978-4-260-12586-4 |
定価 | 19,800円 (本体18,000円+税) |
- 販売終了
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 目次
- 書評
目次
開く
第1章 肩とは
第2章 肩の歴史
第3章 肩のつくり
第4章 肩の仕組み
第5章 肩のバイオメカニクス
第6章 肩の診察
第7章 肩の疾患
第8章 肩の骨傷
第9章 肩とスポーツ
第10章 肩の治療
第11章 肩の理学療法
第2章 肩の歴史
第3章 肩のつくり
第4章 肩の仕組み
第5章 肩のバイオメカニクス
第6章 肩の診察
第7章 肩の疾患
第8章 肩の骨傷
第9章 肩とスポーツ
第10章 肩の治療
第11章 肩の理学療法
書評
開く
世界的評価を得る大作『肩』の第3版
書評者: 越智 隆弘 (阪大大学院教授・応用医工学)
◆仕上がった巨匠の第3作
1人の巨匠が白いキャンバスに『肩』を描いていく。1979年に完成した第1作の後,さらなる精進で1987年に第2作を仕上げた。巨匠,信原克哉先生は,引き続き徹底した実証主義でエビデンスを蓄積し続けた。バイオメカ研究所を病院内に併設し,先端研究を続けた。当時,日本に希少のオープンMRIを入手して肩の構造の秘密を覗き続けた。投球に伴う肩関連の動きを検証するためにブルペンを造り,数台の高速ビデオで記録しコンピュータ解析を続けた。おそろしいほどの強い意志と執念で真実に迫り,この度,さらなる蓄積をもとに第3作を仕上げた。
この書は,『肩』を描いた大作である。描出は極力わかりやすい表現で貫かれている。どのようにすればわかってもらえるかとの気配りが随所に表われている。肩に関連する諸項目ごとに,まず確立された事実をわかりやすく説明する。そして世界的な論点の流れを整理して紹介している。多くの文献の中から主だったものを引用しながら,議論の推移を説明している。どのような学説の相違があり,どのような主張がなされてきたか。次の時代の医学者に「ここまでの途は確かだ」と道標を立てている。若い研修医をも,先端サイエンスの土俵の上に導いてくれる。そしてその上で,現在未解決の問題点を整理していくつかの学説を示しながら解説してくれる。その中に並べて,ご自分の知見と学説を述べておられる。これをドグマとは言わない。まさにサイエンスである。
◆世界に紹介したい著書
今までの日本の医学界にも世界的なオリジナリティを持った先人は,何人もおられたと思う。しかし日本には,オリジナルなサイエンスを育て,正当に評価し世界に紹介する素地はなかった。日本では細部の議論に終始して,いたずらに時が過ぎていった。海外で評価されて,初めて日本国内で見直したという歴史の繰り返しがあった。日本人には「日本で作られたサイエンスを,世界をリードするものだと自分たちで評価する」という自信がなかったのだと思う。
時代が変わった。すでに長年にわたる欧米との交流の実績を持つ医学界は自信を持って,日本人が日本で作り上げたサイエンスを高く評価し,海外へと送り出すべきと思う。この書はまさに,その先駆けではないか。願わくば英文版も作っていただきたい。日本で作られた医学の作品に対して,海外の学者は高く評価するに違いない。そして21世紀を迎えた今,信原先生が若き日に夢見た日本のMayo clinicが名実ともにでき上がっていることが実証されたわけでもある。
この一連の大作が自力で自筆で描きあげられたことに,筆者自身は同じ途を歩いている後輩として,驚きと深い敬意を感じながら,本書の書評を書かせていただいた光栄に大きな感激を覚えている。
おもしろく,感動し,そして肩関節の深淵が理解できる
書評者: 玉井 和哉 (獨協医大助教授・整形外科学)
◆30年余にわたり日本の肩関節外科をリード
30年余にわたって日本の肩関節外科をリードしてこられた信原先生の本が,14年ぶりに改訂された。一読しておもしろく,感動し,そして肩関節とはそういうものかと妙に納得する本である。
それは1つには読者に親しく話しかけるような,ウィットに富んだ語り口のためかもしれない。それに加えて,たとえば反復性脱臼に対するPutti-Platt法の説明の中で,Plattが熱情的なクラシック歌手であったこと,Puttiがムッソリーニを説得してイタリアにリハビリ施設を建設させたことなどが紹介されている。手術の開発者としてしか知らない先達を生身の人間として想像できる楽しさが,本書には散りばめられているのである。
◆バイオメカニクスを通じて肩の本質を追求
本書はウィットだけでなく,先生自ら序に記されているように,ドグマにも富んでいる。しかし,それはただのドグマではない。今まで同様,この第3版においても基調をなすのはバイオメカニクスの目であり,ドグマ(のように見えるもの)は実は,バイオメカニクスを通じて肩の本質を追究する姿勢そのものである。その姿勢の強さが感動を呼び起こすのではないかと思う。
関節が運動器官である以上,バイオメカニクスなしに語ることができないのは当然であるが,本書では,肩のバイオメカニクスの記述に58頁(総頁数の11.5%)を割いている。他のテキストブックと比べてみても,『肩関節の外科』(山本龍二・他編,南江堂,2000)4.0%,『The Shoulder』(Rowe,Churchill-Livingstone, 1988)5.2%,『The Shoulder』(Rockwood and Matsen, Saunders, 1998)6.3%,『Disorders of the Shoulder』(Ianotti and Williams, Lippincott Williams & Wilkins, 1999)10%であるから,本書がいかにバイオメカニクスを重視しているかがわかる。それだけではない。あらゆる疾患や外傷の記載の中に,バイオメカニクスからみた病態の解釈,バイオメカニクスに基づいた合理的な治療指針が息づいているのである。
◆不思議に満ちた肩の深淵
信原病院およびバイオメカニクス研究所には,開設以来の膨大な臨床的,基礎的データが蓄積されている。この比類を見ない資料が,おそらくは数多くの共同研究者の努力によって整理され,この第3版に掲載された。信原先生の提唱する腱板疎部損傷の手術成績,これまた先生の独壇場である臼蓋骨切り術の成績はもちろん,三次元解析システムを用いた投球動作の分析や,投球障害についての新しい概念もわかりやすく紹介されていて,流れのよい快適な本になっている。
頁が2段組になったこと,読みやすい字体が採用されたことも,本書の快適さを増していると思う。表紙の色は初版はサックスブルー,第2版はグラスグリーンであったが,今度はアイボリーブラックである。海は遠くから見ると青く,近づくと緑に見え,深く潜るほど黒くなる。信原先生が今なお不思議に満ちた肩の深淵に潜っていかれたような気がするのは私だけだろうか。
書評者: 越智 隆弘 (阪大大学院教授・応用医工学)
◆仕上がった巨匠の第3作
1人の巨匠が白いキャンバスに『肩』を描いていく。1979年に完成した第1作の後,さらなる精進で1987年に第2作を仕上げた。巨匠,信原克哉先生は,引き続き徹底した実証主義でエビデンスを蓄積し続けた。バイオメカ研究所を病院内に併設し,先端研究を続けた。当時,日本に希少のオープンMRIを入手して肩の構造の秘密を覗き続けた。投球に伴う肩関連の動きを検証するためにブルペンを造り,数台の高速ビデオで記録しコンピュータ解析を続けた。おそろしいほどの強い意志と執念で真実に迫り,この度,さらなる蓄積をもとに第3作を仕上げた。
この書は,『肩』を描いた大作である。描出は極力わかりやすい表現で貫かれている。どのようにすればわかってもらえるかとの気配りが随所に表われている。肩に関連する諸項目ごとに,まず確立された事実をわかりやすく説明する。そして世界的な論点の流れを整理して紹介している。多くの文献の中から主だったものを引用しながら,議論の推移を説明している。どのような学説の相違があり,どのような主張がなされてきたか。次の時代の医学者に「ここまでの途は確かだ」と道標を立てている。若い研修医をも,先端サイエンスの土俵の上に導いてくれる。そしてその上で,現在未解決の問題点を整理していくつかの学説を示しながら解説してくれる。その中に並べて,ご自分の知見と学説を述べておられる。これをドグマとは言わない。まさにサイエンスである。
◆世界に紹介したい著書
今までの日本の医学界にも世界的なオリジナリティを持った先人は,何人もおられたと思う。しかし日本には,オリジナルなサイエンスを育て,正当に評価し世界に紹介する素地はなかった。日本では細部の議論に終始して,いたずらに時が過ぎていった。海外で評価されて,初めて日本国内で見直したという歴史の繰り返しがあった。日本人には「日本で作られたサイエンスを,世界をリードするものだと自分たちで評価する」という自信がなかったのだと思う。
時代が変わった。すでに長年にわたる欧米との交流の実績を持つ医学界は自信を持って,日本人が日本で作り上げたサイエンスを高く評価し,海外へと送り出すべきと思う。この書はまさに,その先駆けではないか。願わくば英文版も作っていただきたい。日本で作られた医学の作品に対して,海外の学者は高く評価するに違いない。そして21世紀を迎えた今,信原先生が若き日に夢見た日本のMayo clinicが名実ともにでき上がっていることが実証されたわけでもある。
この一連の大作が自力で自筆で描きあげられたことに,筆者自身は同じ途を歩いている後輩として,驚きと深い敬意を感じながら,本書の書評を書かせていただいた光栄に大きな感激を覚えている。
おもしろく,感動し,そして肩関節の深淵が理解できる
書評者: 玉井 和哉 (獨協医大助教授・整形外科学)
◆30年余にわたり日本の肩関節外科をリード
30年余にわたって日本の肩関節外科をリードしてこられた信原先生の本が,14年ぶりに改訂された。一読しておもしろく,感動し,そして肩関節とはそういうものかと妙に納得する本である。
それは1つには読者に親しく話しかけるような,ウィットに富んだ語り口のためかもしれない。それに加えて,たとえば反復性脱臼に対するPutti-Platt法の説明の中で,Plattが熱情的なクラシック歌手であったこと,Puttiがムッソリーニを説得してイタリアにリハビリ施設を建設させたことなどが紹介されている。手術の開発者としてしか知らない先達を生身の人間として想像できる楽しさが,本書には散りばめられているのである。
◆バイオメカニクスを通じて肩の本質を追求
本書はウィットだけでなく,先生自ら序に記されているように,ドグマにも富んでいる。しかし,それはただのドグマではない。今まで同様,この第3版においても基調をなすのはバイオメカニクスの目であり,ドグマ(のように見えるもの)は実は,バイオメカニクスを通じて肩の本質を追究する姿勢そのものである。その姿勢の強さが感動を呼び起こすのではないかと思う。
関節が運動器官である以上,バイオメカニクスなしに語ることができないのは当然であるが,本書では,肩のバイオメカニクスの記述に58頁(総頁数の11.5%)を割いている。他のテキストブックと比べてみても,『肩関節の外科』(山本龍二・他編,南江堂,2000)4.0%,『The Shoulder』(Rowe,Churchill-Livingstone, 1988)5.2%,『The Shoulder』(Rockwood and Matsen, Saunders, 1998)6.3%,『Disorders of the Shoulder』(Ianotti and Williams, Lippincott Williams & Wilkins, 1999)10%であるから,本書がいかにバイオメカニクスを重視しているかがわかる。それだけではない。あらゆる疾患や外傷の記載の中に,バイオメカニクスからみた病態の解釈,バイオメカニクスに基づいた合理的な治療指針が息づいているのである。
◆不思議に満ちた肩の深淵
信原病院およびバイオメカニクス研究所には,開設以来の膨大な臨床的,基礎的データが蓄積されている。この比類を見ない資料が,おそらくは数多くの共同研究者の努力によって整理され,この第3版に掲載された。信原先生の提唱する腱板疎部損傷の手術成績,これまた先生の独壇場である臼蓋骨切り術の成績はもちろん,三次元解析システムを用いた投球動作の分析や,投球障害についての新しい概念もわかりやすく紹介されていて,流れのよい快適な本になっている。
頁が2段組になったこと,読みやすい字体が採用されたことも,本書の快適さを増していると思う。表紙の色は初版はサックスブルー,第2版はグラスグリーンであったが,今度はアイボリーブラックである。海は遠くから見ると青く,近づくと緑に見え,深く潜るほど黒くなる。信原先生が今なお不思議に満ちた肩の深淵に潜っていかれたような気がするのは私だけだろうか。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。