看護サービス管理 第3版

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看護をサービスとしてとらえて、その看護サービスをどのようにマネジメントするのかを、理論・教育・研究、さらに医療経済学的視点から論じる。今回の改訂では、キャリア開発や看護サービスの質の保証、看護政策といった領域が充実し、内容がより豊富になっている。看護管理を担う看護師だけでなく、看護という専門領域に携わるすべての人に、さらに看護を学ぶ学生にとっても一度は読んでおきたい1冊。
編集 中西 睦子
発行 2007年08月判型:B5頁:296
ISBN 978-4-260-00438-1
定価 3,080円 (本体2,800円+税)
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第3版の序
中西睦子

 「著者たちには1つの野心があった」と,いささか胸を張ってお届けした本書初版の発行から約9 年が経った.その粗削りな野心をいくらか磨いて第2版としたのが,2002年2月だったので,それから数えるだけでも,5年あまりが経過したことになる.
 この間の保健医療福祉分野の変化は,予想どおり大きく,2005年12月には,「医療制度改革大綱」が公示され,著者流にまとめると,以下の3つの重要施策といえるものが打ち出された.
(1)予防重視
(2)医療費適正化の推進
(3)超高齢社会に見合った保険制度体系の構築
 このうち,(1)については,具体的な構想が次々と示され,準備の大詰めを迎えようとしている.(2)についてはすでに病床の再編成が進み,在院日数のさらなる短縮化が進行している.また,(3)については,目下進行中ながら少なからぬ専門家が大いに議論を巻き起こしてもいる.いずれも保健医療福祉分野に大きなうねりを生じさせるものである.
 また,2006年4月に行われた診療報酬改定により,看護要員配置基準の表示法が実態に即して変更されたのみならず,患者数対看護要員数7対1という「手厚い看護」をうたう新基準が設けられた.これによって,医療機関には看護職員確保の旋風が巻き起こり,たとえば訪問看護ステーションの看護師が病院側に吸収されるなどという現状も,一部に生じている.日本看護協会が,“We need you”をスローガンに潜在看護師を発掘する「看護職確保定着推進事業」を盛大に展開しているのをご存じの読者も多いことだろう.
 このような情勢の変化は,当然,看護管理者の思考と行動に影響するはずであり,結果として看護サービス管理の方針にも影響するはずである.実際,それは看護部に新企画を創出させ,業務の再編成,あるいは重点の一部シフトなどの形で現れはじめている.

 さて,第3版では,上記のような変化を多かれ少なかれ予測し,それに見合った知識が提供できるよう大幅に加筆し,従来の8章立てから11章立てへといっそうの内容充実をはかった.具体的な変更点は,以下のとおりである.
・第5章「看護行政の仕組みと看護政策」は,第2版までは,「日本の医療と看護サービス提供システム」という章の中の1節に位置づけられていたが,章として独立させ,看護政策にも重点をおく内容とした.
・第6章「看護サービスの質保証」を,新たな章として設けた.
・第8章「看護と情報管理のシステム」は,第2版までの「看護サービス管理と情報システム」をいくらか組み替えた.
・第9章「看護キャリア開発」の章を新たに設け,実践現場の課題に肉薄し,問題提起を含む充実した内容とした.これは第2版では,「看護サービス管理の要素とプロセス」という章の1節として位置づけられていたものである.
・第11章「看護サービス管理における研究と教育」の「研究」の項は,昨今,看護管理学研究が精力的に生み出されている現状に鑑み,従来の記述を一新し,IT化時代の到来を想定した内容としたこと,さらに,看護管理者の行う研究の事例をあげたことが新しい.

 実践現場の問題が解決されないうちに,次々と仕組みや趨勢が変わっていくという構図が,最近とみに目立っているように思う.これはなにも看護界に限らないようだ.「格差社会」が取りざたされる産業界や教育界でも,関係者は同じような問題に苦しんでいる.実践現場はまさに終わりなき挑戦を求めている.看護界は,これまでも果敢に挑戦してきたが,これからは,さらに戦略的な取り組みが必要となる.
 「看護をよくしていくためには,看護ケアの技術と知識を磨けばよいと思っていたが,ケアのシステムもよくしなければならず,そのためには結局,政策を変える必要があり,政治につながることがよくわかった」「看護ケアの質は,ケアする人の視野の広さだと思った」.看護管理学を学んでいる大学4年生の感想である.このような発見または認識にいたる看護職が増えていくことで,実践現場の問題はより建設的に解決されていくものと思う.

 本書は,もともと大学で看護管理学を学ぶ学生たちの教材として構想された.しかし,現場で看護管理に従事する方たちや看護管理者たるべく研修中の方たちにも利用していただけるだろうと,当初はいくらか控え目に考え,そのように記してきた.その後,改版を重ねたことによって,看護実践の経験豊富な方たちやすでに看護管理の経験をお持ちの方たちにも積極的にお勧めできる水準に達したと自賛している.そのような方たちから,忌憚のないご意見がいただければ幸いである.
 2007年 8月 1日

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第1章 看護サービス管理とは何か
 看護サービス管理とは
 看護をサービスとしてとらえることの意味
 医療費と看護サービス
 生産性の高い看護提供システムの構築
第2章 看護サービス管理の基礎
 リーダーシップ・マネジメント
 モチベーション(動機づけ)
 組織論の仕組みと機能
 管理論(さまざまな管理モデル)
 創造と変革の基礎
第3章 看護サービス管理の要素とプロセス
 看護サービス管理の諸要素
 看護サービス管理のプロセス
第4章 日本の医療と看護サービス提供システム
 医療経済の仕組み
 看護市場(マーケティング)
 看護サービス提供システムの現状と課題
 介護保険と看護サービス提供の展望
第5章 看護行政の仕組みと看護政策
 看護行政の仕組み
 政策決定過程と看護職の参画
第6章 看護サービスの質保証
 病院機能評価の考え方と仕組み
 病院機能評価の現状
 看護部門の自己評価
 患者満足度に影響する要因
第7章 看護サービス管理におけるリスクマネジメント
 医療現場のリスクマネジメント
 看護事故の防止のために
 ヒヤリ・ハット報告の活用
 看護部のリスクマネジメント構築と看護管理者の役割
第8章 看護と情報管理のシステム
 看護サービスの提供と情報管理
 看護を支援する情報システムの実際
 看護情報システムの課題と展望
第9章 看護キャリア開発
 専門職としての展望
 キャリア開発の方策
 プリセプター制度再考
 現任教育におけるキャリア開発
第10章 看護倫理と看護サービス管理
 看護職の体験する倫理的ジレンマ
 看護サービス管理の場に生じる倫理的問題
 看護サービス管理の倫理原則と看護管理者の役割
 看護倫理を実現するシステムづくりと組織文化の創造
第11章 看護サービス管理における研究と教育
 看護サービス管理における研究
 看護サービス管理の基礎教育
索引

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