感染対策マニュアル

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手洗いや消毒の基本手順が一目でわかる! 感染症対策のポイントが見える! 楽しく読める感染対策の本ができました。ナースも、医師も、スタッフも、病院ではみんなが忙しい。だからこそ、確実な感染対策が必要です。
監修 大野 義一朗
発行 2007年04月判型:B5頁:132
ISBN 978-4-260-00253-0
定価 2,530円 (本体2,300円+税)
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はじめに
大野義一朗

 「すべてを知り尽くしている天才が一人いてもだめなんだよ」。
 それが院内感染対策です。
 無数の人間が入り乱れる医療の現場では,最も低いレベルの部分から防御壁が破れ,院内感染が発生します。どうしたら一人の漏れなく全員のレベルを底上げできるかが,感染対策の大事なポイントになります。
 私たちの『院内感染対策マニュアル』は,その発想から作成されました。
 感染対策は,医師,看護師はもちろん,すべての職員が,自分の病院で確実にできることでなければなりません。そのためには誰が見てもよくわかるマニュアルが必要です。
 また医療スタッフは大変忙しいので,すべてを読み通すことはできないかもしれません。ましてやすべての項目を暗記することはとても無理。ですから,とっさのときに必要なことが一目でわかることを大切にしました。
 現場の声が作り上げた点も特徴です。院内のマニュアルはクリアファイル形式で各項目1~2ページにまとめられていました。各職場の感染対策委員は使った人の意見を集めて書き直し,そのつどページを差し換えて作り上げました。ですから現場での使い勝手のよさについては,ちょっと自信があります。
 こうしてマニュアルは,私たちの病院と同じようなごく普通の規模の,ごく普通の病院がちょうど欲しかったものになったと思います。

 この院内のマニュアルがよくできていて,役に立つものであるらしいと思ったのは,感染対策学習会を行ったとき,全国の病院の状況を知っている講師から高い評価を得たことと,環境感染学会で紹介した際に好評を得たからでした。
 そこで院内のマニュアルに若干の加筆をして書籍にすることにしましたが,でき上がってみると全く新しいものに仕上がりました。
 現場のアイデアを寄せてくれた多くの職員・感染対策委員のみなさん,それを巧みにまとめあげた吉田美智子さん,藤井基博さん,そしていつも的確なアドバイスを与えていただいた医学書院の品田暁子さんの協力があってできたことでした。監修者が彼らにこの場を借りて感謝し労をねぎらう場違いさを,読者のみなさんには大目に見ていただければと思います。

 最後にお願いがあります。使ったら必ず感想を教えてください。特に,
 「耐えるのが得意の私も,この本には耐えられません」(MRSA)
 「最後の虫の息すら止めるような冷酷な本」(疥癬)
 「生存権をかけた出版差し止め請求決議」(院内感染細菌団)
そんな,出版に反対する声,酷評をお待ちしています。

 2007年3月

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第1章 見直そう! 感染対策の基本
 1. スタンダードプレコーション
 2. 手洗い
 3. 手指消毒
 4. 手袋の着脱
 5. マスクの着脱
 6. ガウンテクニック
 7. 洗浄・消毒・滅菌
第2章 確認しよう! 滅菌操作時の感染予防
 1. 滅菌手袋の装着
 2. 滅菌ガウンの着脱
 3. 尿道留置カテーテルの感染管理
 4. 血管内留置カテーテルの感染管理
 5. 人工呼吸器の感染管理
 6. 手術部位の感染管理
第3章 知っておきたい! 感染症別感染対策
 1. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
 2. B型肝炎・C型肝炎(HBV/HCV)
 3. 後天性免疫不全症候群(AIDS)
 4. 腸管出血性大腸菌感染症
 5. 疥癬
 6. 結核(TB)
 7. 重症急性呼吸器症候群(SARS)
 8. 麻疹・風疹・水痘
 9. インフルエンザ
 10. 針刺し損傷,血液曝露
資料
 感染性廃棄物分類表
 届出感染症の分類と対応一覧

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本当に大切な部分に目を向け,現場で使える感染対策書
書評者: 大曲 貴夫 (静岡県立静岡がんセンター・感染症科)
◆「プロ向けのマニュアル」は使えない!

 「院内感染対策を病院の職員に教育する」。これは実際にやってみると結構大変です。実際の医療現場では,感染対策の手引きとして院内マニュアルや,すでに出ている成書・教科書などがありますが,残念ながら,これらの評判はあまりよろしくありません。感染対策に関わっている方であれば,現場から以下のような不満の声を何度となく聞いたことがあるはずです。

 「接触感染対策に使ったエプロンとか手袋って,どうやって脱ぐのですか? 着るのは簡単ですけど……」

 「N95マスクってどうやって使うんですか? 病棟に置いてはありますけど,使い方がわかりません」

 「うちのマニュアルは分厚すぎて,どこに何が書いてあるかさっぱりわかりません」

 「感染対策で疑問点があって教科書で調べたけど,書いてあるのは難しいことばかり。結局具体的にどうすればいいか,さっぱりわかりません」

 感染対策を皆に浸透させるにはマニュアルを整備すればいい,マニュアルを作れば何とかなる,そう思っている人は多いはずです。でもそう簡単にはいきません。マニュアルを読んだだけで,内容をきちんと理解して,正確に実行できる人なんて,まずいないでしょう。

 なぜでしょうか? 答えは簡単です。マニュアルが理解しにくいからです。実は,多くのマニュアルは「感染対策のプロがプロ向けに書いた」ものになってしまっています。マニュアルを作ったはいいけれど,現場ですぐ引けて使える手引きの形にまでこなれていないのです。これでは実際現場で感染対策を行う人には難しすぎて理解してもらえないし,活用してもらえないのです。

◆「使えない!」から,「現場で使える!」マニュアルへ

 例えば最近の電化製品では,薄くて写真の多い,わかりやすい導入用パンフレットがついていて,これを見ればすぐにその製品が使えるように工夫してあります。これは便利です。分厚いマニュアルは別に用意してあって,必要に応じてその都度読めばいいわけです。これを感染対策にも応用できないでしょうか。

 そこで手にしたのが,この『感染対策マニュアル』です。感想をひと言で言えば,「これは,現場で使える!」マニュアルです。

 この本のいいところは,二つあります。

 一つめは,現場で疑問が生じたときにどうすべきかが,写真付きできわめてわかりやすく書いてあるという点です。これだけわかりやすく書いてあれば,現場でさっと眺めるだけで,今自分がどうすべきかのイメージがすぐにつかめます。

 二つめは,取り上げてある項目が現場で行う頻度の高い,重要な感染対策の手技・方法に絞り込まれているという点です。微生物ごとの感染対策も,すべてべったりと記載するのではなく,実際の医療現場で遭遇する頻度の高い微生物に対する感染対策に絞って記載してあります。これならば圧倒されないし,マスターできる気もしてくるというものです。

 院内感染対策において本当に必要なことは,行う頻度が高くて,しかも効果が高いことを,皆が確実に行えるということ。手指衛生がその代表的なものです。

 感染対策に関するあまりに多くの情報(しかも中には根拠の怪しいモノもある!)に目をくらまされて,本当に重要なことに目がいかないようでは,まったく意味がありません。本テキストは感染対策の「本当に大切な部分」に目を向けて「誰でもできるようにする」ために書かれているという点で,これまでのマニュアル類とは一線を画する,画期的な内容に仕上がっています。

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