内科診断学[CD-ROM付]  第2版

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医師の診断能力は、備わった医学的基本知識とその応用力で決定される。医学的基本知識の暗記も必要だが、それだけでは限界がある。病態生理学的なメカニズムに則った論理の理解が診断能力の基礎を固め、かつ診断の応用力を高める基となる。主要疾患の診断データも掲載し、1冊で双方向(“症候”と“疾患”)からのアプローチに対応。付録CD-ROMには全文情報にとどまらず、便利な鑑別表作成機能や音声・動画情報を収載。
編集 福井 次矢 / 奈良 信雄
発行 2008年03月判型:B5頁:1328
ISBN 978-4-260-00287-5
定価 10,450円 (本体9,500円+税)
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第2版 序
福井次矢

 早いもので,内科診断学の構想から約10年,初版が世に出てすでに7年が経過した.診断学の分野では以前から数え切れないほど多くの教科書があるなかで,初版が大変多くの医学生,研修医に読まれ,かつ好評を博したとのことで,編集者としては望外の喜びである.そのように広く受け入れられた理由は,多くの優れた執筆者によるわかりやすい内容であることに加えて,「診断の考え方」「診察の進め方」「症候編」「疾患編」という構成,斬新な図表,電子媒体の活用などによって,診断学の全体像が把握できることにあったのではないかと思われる.
 初版の成功をふまえ,ここに第2版を出版する運びとなった.共同編者の奈良信雄先生ともども,以下のような方針で改訂にあたったので,初版に比べて第2版の利便性はさらに高まったことと思われる.
(1)読者から寄せられた貴重な意見や指摘は,できるかぎり取り入れる.
(2)「症候編」の項目掲載順をより系統的な配列とする.
(3)画像に関する情報を追加する.
 ・「診察の進め方」では,頭部・胸部・腹部の画像所見とその読影方法を解説する.
 ・「症候編」「疾患編」とも,診断に有用で,特徴的な所見のある画像を掲載する.
(4)「症候編」で好評であった,疾患の頻度と臨床的重要度を示す図を増やす.
 ・「症候編」のすべての項目だけでなく,可能なら,「診察の進め方」の項目についても本図を作成・掲載する.
 ・疫学データに基づいて作成されるのが望ましいが,そのようなデータのない場合には,各執筆者の経験に基づいて作成する.
(5)読者から高く評価された初版の記述部分を参考に供するよう,各執筆者に紹介する.
(6)CD-ROMをより使い勝手のよいものにする.

 自らの五感を用いた診察(医療面接と身体診察)で,診断に至る最初の手がかりを得た患者をどれだけ多く経験できるかが,優れた臨床医になるための最重要要件である.残念なことに,CTやMRI,超音波検査,内視鏡検査などの画像検査が世界一普及しているわが国では,ややもすると,医師の五感を用いた診断能力は軽視され,その結果として,能力を高めたり発揮したりする機会が設けられず,最終的には退化しやすい.しかし一方で,2004年から必修化された卒後臨床研修のプログラムでは,身体診察の到達目標が改めて明示され,2005年以降,医学部における臨床実習開始前のOSCE(Objective Structured Clinical Examination)が実質的に必須となるなど,診察法重視の動きも進んでいる.卒前・卒後のあらゆる学習場面で,本書を紐解き,活用していただければ幸甚である.
 私の構想がすこぶる曖昧模糊としていた時期から,本書初版を形あるものにし,育み,第2版の出版を可能にされた青戸竜也氏に心から感謝申し上げる次第である.
 2008年2月
 東京・明石町にて

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I 診断の考え方
 診断の意義/診断の論理/医療情報の有用性/新しい診断学の考え方/誤診に至る心理
II 診察の進め方
 診察の進め方/医療面接/身体診察の進め方と方法/部位別の身体診察:バイタルサイン、全身状態、頭頸部、胸部、腹部、四肢、神経所見/検査/診療録の記載法
III 症候編
 発熱/全身倦怠感/肥満/るいそう/成長障害/甲状腺機能亢進症/意識障害/失神/皮膚の異常/黄疸/出血傾向/貧血/頭痛/めまい,耳鳴り/視覚障害/眼球突出/眼瞼下垂/瞳孔異常/眼底異常/眼球振盪(眼振)・他
IV 疾患編
 A. 呼吸器
 B. 循環器
 C. 消化管
 D. 肝胆膵
 E. 代謝・栄養
 F. 内分泌
 G. 血液・造血器
 H. 腎・尿路・電解質
 I. 神経
 J. 感染症・寄生虫
 K. 免疫・アレルギー・リウマチ
 L. 中毒
主要検査の基準値
略語一覧
CD-ROM操作ガイド
和文索引
数字・欧文索引

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内科学を動的座標からみる内科診断学
書評者: 永井 良三 (東大大学院教授・循環器内科学)
 内科診断学は臨床実習の最初の段階で学ぶ重要なコースである。多くの臨床医にとって,内科診断学が始まったときの緊張感は,一生の思い出となるものであり,それだけに優れた教科書との出会いは重要である。

 内科学が専門分化するなかで,患者の全体像を把握して,個別に対応することは決して容易ではない。特に大学病院をはじめとして大規模な病院では臓器別診療体制がとられた結果,内科学全体を俯瞰した指導が困難になりつつある。

 近年,患者中心の医療が叫ばれ,EBMが大きなインパクトをもたらしたことを考慮すると,新しいスタイルの内科診断学のテキストが求められてきた。内科診断学の教育の在り方は,個々の学生だけでなく,指導者にとっても内科学における分化と統合をどのように進めるかという重要な課題である。

 本書は福井次矢聖路加国際病院長と奈良信雄東京医科歯科大学教授の編集によるもので,2000年に初版が刊行され,大変好評であった。豊富な臨床と教育の経験をもつ執筆陣によることもその理由と思われる。今回,読者からの意見や指摘を取り入れて改訂された。改訂版では記載をより系統的にするとともに,画像診断に関する情報が追加された。全体は4章から構成され,それぞれ「I診断の考え方」「II診察の進め方」「III症候編」「IV疾患編」に分けられている。1200ページと大部であるが,患者と対面した状態を想定し,臨床現場のロジックで記載されているために,どこからでも読むことができ,退屈しない。

 内科学の教科書は病因論から始まり疾患の体系を記述する,いわば静止座標系からみた内科学である。一方,内科診断学は動的座標系からの内科学である。疾患の考え方や内科学の在り方だけでなく,患者との関係も大きく変化する。新しい時代の教科書として,学生だけでなくベテランの臨床医や医学教育者に推薦したい好著である。
医学の道を歩むうえで必読の書
書評者: 北原 光夫 (慶大病院・病院経営業務担当執行役員)
 40数年前に初めて,診断学の本を手にした時にはいよいよ臨床教育が始まるのだという戦慄を覚えたことを思い出す。

 医学のどの分野にゆくにせよ,医師になるための通過点の一つが内科診断学である。

 したがって,臨場感にあふれる内容であり,合理的に理解されるべき必要がある。本書の特色に挙げられているように,病態生理学的メカニズムを理解することにより,丸暗記からの脱却を図っている。このような努力を著者らが払うことにより,内科診断学へ入りやすくしている。

 目次を見ると,初版に比較するとページ数が増加しており,第2版の充実さがうかがわれる。

 まず,症候編を見ると,一つのフォーマットによって構成されていて,解説が明解になっている。各症候ごとに疾患の頻度と臨床的重要度が挙げられていることは,症候を経験する医師にとってはとても有意義である。

 また,診断の進め方として,フローチャートが添えられており,一層診断学の本としての役割を果たしている。症候編に対しては約490ページが費やされていて,内科診断学の充実性を意味している。

 疾患編のセクションも同様に400ページ以上が割り当てられている。臓器系統別に各章が分けられており,診断学を学ぶ者にとっては各疾患のエッセンスを把握できる便利さが備わっている。しかし,これらの中には,わが国では遭遇することの少ない疾患,例えばウイルソン病,ヘモクロマトーシス,異常ヘモグロビン症,サラセミアなどが含まれているが,これらを内科診断学の性格上,含めるのか,今後の編集方針によるだろう。

 本診断学の最初の2章は診断の考え方と診断の進め方となっているが,まさにここを十分に理解することが医師としてのトレイニングの第一歩である。このセクションも図が十分に取り入れられており,理解しやすさに配慮がなされている。さらに聴診音を習得するために,CDを添えてあるのは大変うれしい。最後に主要検査の基準値と汎用される略語一覧が載せられてあるのも便利である。

 医師としての道を進む者にとっては,一回は読むべき成書の中の一冊である。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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