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内視鏡所見のよみ方と鑑別診断-上部消化管  第2版

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待望の改訂第2版。緊急内視鏡施行の際に見られる「出血性病変」「咽頭・喉頭」そして「食道癌、胃癌の深達度診断」の項目を新設。初版同様、所見から診断への道筋を確実に読者に提示している。より使いやすく、読みやすく、全体にわたって整理し簡潔な記載になった。厚みも増してさらに内容充実。ますます内視鏡医必携の1冊に!
編集 芳野 純治 / 浜田 勉 / 川口 実
発行 2007年06月判型:B5頁:432
ISBN 978-4-260-00313-1
定価 13,200円 (本体12,000円+税)
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第2版 序

 診断学はその時代の科学技術の影響を受けながら少しずつ進歩している.初版を2001年に上梓してからすでに6年を経た.この間にも上部消化管の内視鏡診断学は拡大内視鏡,NBI(narrow band imaging),蛍光内視鏡などの分野において先駆的な手技が加わり,より正確な診断学が模索されてきている.形態学を志す者としてその画像は魅力的であり,今後の展開を期待している.しかし,これらの新たなる診断法は通常の内視鏡診断学の上に積み上げられていくものである.臨床の場における通常内視鏡による診断の重要性については言うまでもない.内視鏡診断の過程はまず,病変の特徴的な所見を捉え,その所見を呈する疾患を挙げ,それらを解析するとともに,他の所見を組み合わせて鑑別診断が行われる.当然,病変は複数の所見を有するため,診断の切り口も複数となる.初版の序にて述べたため敢えて繰り返さないが,この通常内視鏡にて行われている診断の道筋を,読者自身が辿りながら学べるものにするべく本書は企画された.初版に対して,これまでさまざまなご意見をいただき,編者一同,大変勇気づけられてきた.それにより,さらに充実した内容にしたい,より良い内視鏡写真に変更したい,足りない写真も加えたいなどの改訂への願望も生まれた.そして,ここに新たに第2版をまとめることができた.
 第2版の企画の意図は初版と同様である.それに加え,症例をできるだけ集め,まれな疾患でも掲載すべく努力を重ねた.内視鏡写真は可能な限り変更し,さらに精選し,特徴が捉えられたきれいなものへと変えた.項目については,「胃癌の深達度診断」,「食道癌の深達度診断」,「出血性病変―緊急内視鏡検査にあたって」,また耳鼻咽喉科医師の協力もいただき「咽頭・喉頭」の項目を新たに加えた.さらに,本書を読みやすく,そして使いやすくするために一部を箇条書き調にするとともに,記載の統一をも図った.結果として,ページ数が約1.3倍に増加し,初版とは大きく変化している.両者を見比べていただければその差は明らかである.
 本書が,まさに内視鏡医にとっての座右の書として,検査時には常に本書を手元に置き,使っていただけるようなものになって欲しいと期待している.

 実は本書を作成するにあたって,多数の症例の収集,そして編集における一貫性を保つことが可能であったのは「50の会」のメンバーの協力のお陰であることをここに記しておきたい.この会は,昭和50年卒で消化管の診療に携わる者によって構成されている.大所帯ではないが,それだけにかえって,気心知れる仲間同士で日頃抱く疑問や意見を率直にぶつけ合い,お互い内視鏡学の研鑽を積みつつ,親交を深めてきた.初版作成時から本書には参画していただき,第2版においても絶大なる協力をいただいた.本書はまさに「50の会」の総力を結集して作成されたと言っても過言ではない.このような事情から,編集の3名とともに,編集協力者として6名の名前を冒頭に挙げた.
 さらに,それでも持ち合わせていない症例をも広く求めた結果,お互いの担当した執筆項目の中に「50の会」の枠を越えて,仲間の症例が多数入ることになった.多くの画像提供者の先生方が編集の意図に全面的に協力していただいたことによって,内容の統一を図ることができた.その惜しみない協力に感謝の意を表したい.
 最後に,筆を擱くにあたり,本書の改訂にあたりひとかたならぬ努力をいただいた医学書院の阿野慎吾氏に対して心より感謝したい.

 2007年5月
 芳野純治・浜田 勉・川口 実

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第2版 序
第1版 序
本書の読み方・使い方

第1章 内視鏡検査のために必要な局所解剖,正常内視鏡像
第2章 内視鏡検査のための基本事項
第3章 内視鏡の挿入法と観察法
第4章 所見からみた診断へのアプローチ
 咽頭・喉頭
 食道
 胃
 十二指腸
 出血性病変
第5章 生検組織診断の基本的知識と考え方
 I. 生検組織診断総論
 II. 食道の生検
 III. 胃の生検
 IV. 十二指腸の生検
第6章 内視鏡診断と治療に必要な基本的知識

疾患名索引
事項索引

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一般的な症例から稀な症例まで 内視鏡診断の必須知識が1冊に
書評者: 飯田 三雄 (九州大学大学院病態機能内科学教授)
 芳野純治,浜田勉,川口実の3氏によって編集された『内視鏡所見のよみ方と鑑別診断――上部消化管 第2版』がこのたび出版された。破格の売れ行きを示した初版の上梓から早くも6年が経ち,企画の意図は初版のまま,内視鏡写真の変更・追加,新しい項目や症例の追加など内容の充実が図られている。その結果,初版より頁数が約1.3倍に増加したそうであるが,日常臨床の現場で常に手元に置いておくのに適したサイズは維持されており,初版以上に好評を博することは間違いないと考える。

 消化管の形態診断学は,内視鏡,X線,病理,それぞれの所見を厳密に対比検討することによって進歩してきた。毎月第3水曜日の夜に東京で開催される早期胃癌研究会は,毎回5例の消化管疾患症例が提示され,1例1例のX線・内視鏡所見と病理所見との対比が徹底的に討論されており,消化管形態診断学の原点とも言える研究会である。この研究会の運営委員およびその機関誌である雑誌『胃と腸』の編集委員を兼務している本書の編集者3氏は,いずれもわが国を代表する消化管診断学のエキスパートである。本書は,“消化管の形態診断学を実証主義の立場から徹底的に追求していく”という『胃と腸』誌の基本方針に準じて編集されているため,掲載された内視鏡写真はいずれも良質なものが厳選されている。また,内視鏡所見の成り立ちを説明すべく適宜加えられたX線写真や病理写真も美麗かつシャープなものばかりである。

 本書では,第1章から第3章までが「消化管内視鏡検査の基本的事項」,第4章が「所見からみた診断へのアプローチ」,第5章が「生検組織診断の基本的知識と考え方」,第6章が「内視鏡診断と治療に必要な基本的知識」によって構成されており,これから内視鏡検査を始めようとする初学者から,かなりの経験を積んだベテランの内視鏡医まで幅広く役立つ内容となっている。

 特に,全体の約75%の頁数を占める第4章は本書の根幹部分と言える。この章では,咽頭・喉頭,食道,胃,十二指腸の部位別に,各所見ごとに鑑別すべき疾患の頻度,所見のよみ方,基本病変における鑑別診断のポイント,典型写真・シェーマなどが示されており,個々の所見についての全体像がまず把握できるようになっている。そして,次頁からの見開きの左頁は内視鏡写真2―8枚とその右端に所見が記載されている。見開きの右頁には,内視鏡写真のシェーマと,X線,超音波内視鏡,病理肉眼・組織写真など診断の参考・根拠となる写真とともに,診断名,疾患の解説,治療方針が簡潔に記載されている。したがって,最初に左頁の内視鏡写真のみを見て所見のよみ方や診断の正否を確かめることができ,消化器内視鏡学会の認定医試験の受験にも役立つように配慮されている。掲載された症例は,ポピュラーな疾患から比較的まれな疾患まで多種類に及んでおり,日常臨床で診断困難な症例に遭遇した際などにも本書は大変有用であろうと思われる。

 近年,食道癌と胃癌に対する内視鏡的治療が普及するのに伴い,正確な深達度診断の重要性が求められている。そこで,本書では,新たに食道癌と胃癌の深達度診断の項目が加えられた。肉眼型別に内視鏡写真を呈示しつつ,X線所見や病理所見との対比という視点から解説されており,形態診断学の真髄にも触れることができる内容となっている。
 このように,本書はすべての消化器内視鏡医にとって,大変参考になる必携の書と考える。
内視鏡に携わるすべての人教科書・辞書となる必携の書
書評者: 上西 紀夫 (東大大学院教授・消化管外科学)
 もう30年以上前になりますが,教室の前身である東大分院外科で研修していたとき,毎週木曜日に諸先輩や内視鏡診断に意欲のある先生方が症例を持ち寄って内視鏡の読影についての勉強会があり,わからないながらも参加していました。そしてあるとき,当時の順天堂大学教授でおられた城所仂先生から,「内視鏡でいちばん重要なのはGedankengangだ」と教えていただき,この考え方が内視鏡診断の原点となっています。

 つまり,内視鏡像を読み取って疾患を診断し,その病変の範囲や病態を頭に描き,そのうえで1枚1枚の内視鏡写真が見る人へのメッセージとなるよう,その疾患がわかりやすいように提示することが大事であるということです。その意味で,内視鏡写真はまさに芸術でありアートです。しかしながら,最近ではコンピュータ上で何枚でも撮影でき,また,消去できるためか,よく考えもせずにやみくもに写真を撮り,その後でゆっくりと見て診断しようという傾向があるように思えます。また,色素内視鏡や拡大内視鏡,NBI(Narrow Band Imaging)などさまざまな方法が開発され,より病変が見やすくなっていることもこの傾向を助長しているように思われます。すなわち内視鏡診断の基本であるGedankengangが少し疎かになっているのでは,と老婆心ながら危惧しています。

 さて,このGedankengangをしっかりとし,そして表現するために必要なことは,数多くの内視鏡像を見ること,また数多くの疾患を経験することです。しかしながら,実際に1人で経験できる症例やその数には限りがあります。その点において,本書は,305例の症例提示という数はもちろんのこと,通常よく経験する症例のみならず比較的少ないが鑑別診断として知っておくべき症例が数多く提示されており,大変参考になります。

 本書の構成としては6つの章から成っており,まず第1章から第3章までは,咽頭から十二指腸までの上部消化管内視鏡における基本的事項が書かれています。続いて第4章で咽頭・喉頭と食道,胃・十二指腸の疾患について,豊富な内視鏡像や病理組織像が提示されています。第5章では,内視鏡医にとって決して疎かにしてはならない生検組織診断についてわかりやすく解説がなされています。そして最後の第6章では,内視鏡診断や治療において知っておくべき各種の分類や規約,用語などが掲載されています。まさに内視鏡診断と治療に関する辞書と言えます。

 特に本書の中心となるのが第4章の「所見からみた診断へのアプローチ」です。その最大の特徴は疾患名,病名を列挙してそれに関する画像を提示しているよくあるパターンではなく,実際の内視鏡検査をしている立場から記載されていることです。すなわち病変が盛り上がっているのか,陥凹しているのか,また狭窄病変であるのか出血している病変であるのか,といった観点から豊富な症例が提示されています。そして何よりも,その所見の説明や解説においてGedankengangが簡潔に記載されており,内視鏡診断の原点が示されていることが特色です。

 もうひとつ本書の目玉としては,食道癌,胃癌の深達度診断について詳しく記載されていることです。この深達度診断はGedankengangが基礎であり,治療をするうえできわめて大事であることは言うまでもありませんが,最近ではEMRやESDが比較的容易,かつ安全にできるようになったこともあり,診断的治療としてやや安易に行われていることが問題です。その意味でも,深達度診断について内視鏡像のみならずX線造影写真,そして切除標本も示しながら解説されており,教科書としても価値の高い内容となっています。

 したがって,これまでに経験しなかったような内視鏡所見に遭遇した場合,内視鏡検査の合間に本書を手に取りページをめくっていくだけで大変勉強になり,また診断の向上にもつながります。このようなすばらしい内容にするためには,編集や執筆に当たられた先生方の大変なご努力があったものと思います。心より敬意を表します。

 以上より,本書は初心者から超ベテランまで,内視鏡に携わるすべての人にとって教科書であり,辞書でもあり,必携の書として強く推薦いたします。

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