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臨床医のための症例プレゼンテーションAtoZ[英語CD付]

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週刊医学界新聞で2004年~2005年に連載された「英語で発信!臨床症例提示――今こそ世界の潮流に乗ろう」がついに単行本化。留学・海外研修を志す人はもちろん、日常診療のプレゼンテーションに活かせる米国式症例プレゼンテーション技術を体系的に学べる初めてのテキスト(英語CD付)。
齋藤 中哉
編集協力 Alan T. Lefor
発行 2008年07月判型:B5頁:248
ISBN 978-4-260-00278-3
定価 4,180円 (本体3,800円+税)

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推薦の辞(高久史麿)/はじめに(齋藤中哉)

推薦の辞
 今回,医学書院から齋藤中哉教授の執筆による『臨床医のための症例プレゼンテーションA to Z(英語CD付)』が刊行されることとなった。この本は齋藤教授が2004年1月から2005年4月まで12回にわたって「週刊医学界新聞(医学生・研修医版)」に連載記事として書かれ,好評であった「英語で発信! 臨床症例呈示―今こそ世界の潮流に乗ろう―:Oral Case Presentation」を下敷きとし,大幅な加筆を行って1冊の本としてまとめたものである。
 齋藤教授は大阪大学医学部を卒業,東京医科大学八王子医療センター腎臓内科の助手を経て,ハワイ大学医学部で医学生の教育に従事し,医学教育フェローシップのプログラム・ディレクターを務める等,日米両国で医学教育の専門家として活躍されておられる方で,私が勤務している自治医科大学でも2005年から附属病院卒後臨床研修センターの客員教授として,医学生,研修医の教育にご尽力いただいている。私も齋藤教授のご講演を自治医科大学でお聞きする機会があったが,その際齋藤教授が強調されていたのは,日米間の医学生,医師の症例プレゼンテーションの技術の相違であった。米国では小学生の時からプレゼンテーションの方法の教育を受けているのに反して,日本では大学に入るまで,さらに大学に入った後もプレゼンテーションの方法の教育をほとんど受けていないということもその時話題になった。最近でこそ,各医科大学でも患者とのコミュニケーションの技術の教育を重視するようになったが,プレゼンテーションの仕方についての教育は,私が知る限りではまだまだ不十分である。齋藤教授の「週刊医学界新聞」の連載が医学生・研修医だけでなく,指導医の方々の間でも非常に好評であったのもそのためであろう。また,症例プレゼンテーションを主題にした単行本は国内外で本書が唯一ではないかと思う。
 臨床の現場で症例のプレゼンテーションがいかに重要であるかはここで改めて強調するまでもなく医療関係者すべてが認めるところである。特に日本人は一般にプレゼンテーションが苦手である。一方,多くの医科大学は医学生の海外での留学に積極的で,医学生の間でも海外の医科大学での短期間の臨床実習への参加を希望するものが多い。私が関係している医学教育振興財団でも毎年18~20名の全国の医学生を英国の5つの医科大学に短期留学生として送り込んでいる。財団の面接試験では彼・彼女等はいずれも極めて優秀であるが,実習における英語での症例プレゼンテーションの能力に不安を感じさせる医学生がいないでもない。本書では音声CDで英語での症例プレゼンテーションも練習できるようになっている。海外での臨床の勉強を目指す医学生,医師にとってこの章は特に有用であると考える。
 本書は画期的な医学教育のテキストブックである。医学生,研修医,卒前卒後の医学教育に関係する人達だけではなく,幅広い層の医療関係者の方々に本書をお勧めしたい。

 自治医科大学学長 高久史麿


はじめに
 本書は,医師・研修医・医学生が,臨床において症例をプレゼンテーションする際に必要な知識と技術を1冊にまとめたものです。2004年1月から2005年4月まで,12回にわたって「週刊医学界新聞【医学生・研修医版】」(医学書院)において連載され好評を博した「英語で発信! 臨床症例提示―今こそ世界の潮流に乗ろう―:Oral Case Presentation」を下敷きにし,大幅に加筆を施しました。症例プレゼンテーションを部分的に取り扱った書籍は多数存在しますが,症例プレゼンテーションのみを主題とした書籍は,2008年6月現在,和書・洋書を見渡しても本書以外には存在しません。

 連載期間中,全国の医学生,研修医の方々から,「連載を切り抜いて,プレゼンテーションのお守りにしている」といううれしいメッセージをいただきました。と同時に,「問診と診察で得た情報から,実際どのように症例提示を準備すればよいのか,教えてほしい」という悩みも多数お寄せいただきました。全国の指導医の方々からは,連載を研修医全員の必読文献にしているというありがたいメッセージをいただくと同時に,「症例提示の指導方法や症例検討会の運営方法を教えて欲しい」という指導医への指導に関するリクエストもいただきました。本書においては,これらのフィードバックに応えるべく,症例プレゼンテーションに関する諸技術を,連載当時には紙面の関係で割愛せざるを得なかった諸事象も可能な限り拾い上げ,単行本の形に整理しています。
 「人前で症例を発表し,議論する技術」(skills of presentation and discussion),あるいは,より一般化して「専門家どうしのコミュニケーション」(interprofessional communication)は,経験を重ねれば自然に身につくように思われていますが,その認識は必ずしも正しくありません。もちろん,どんな人でも,年数を経れば「なんとなく」できるようになります。しかしながら,「一目置かれる」プレゼンテーションを行うことができるようになるためには,卓越したお手本と,そのお手本を目標に据えたたゆまぬトレーニングが必須です。
 困難に思える道のりも,全行程を小さく分割し,一歩一歩,歩んでいけば,決して難しいことはありません。本書は,入門から実践そして発展へ,初心者から上級者へ,難易度の勾配に留意した構成を採っています。「死んだ魚」ではなく,「どんな状況においても生きた魚を捕まえ調理する方法」を提供したいと考えています。医師としての知性と情熱と責任感とがあいまって立ち現れる「プロのリズム」を獲得し,ともに後代に伝えていこうではありませんか。

 いつでも,どこでも,やる気さえあれば,私たちは学びの世界の中心にいます。いざ,入門です!

 2008年6月
 齋藤中哉

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推薦の辞
はじめに
本書の特徴と使い方
音声CDの利用法

第1章 入門:明日からできる! 症例プレゼンテーション
 1.プレゼンテーションに触れてみよう
 2.まずこれだけ覚えよう
 3.すぐできる5つの工夫
 4.検査所見を添える――最初の完成形

第2章 基礎:症例プレゼンテーションの理論
 1.Contents(内容)を理解しよう
 2.Delivery(伝え方)を身につけよう

第3章 実践:症例プレゼンテーションの技法
 1.症例プレゼンテーションを行う状況の分析
 2.症例プレゼンテーションの4つの基本フォーマット
 3.診療科別 プレゼンテーションのコツ

第4章 上級プレゼンターへの道
 1.五つの練習法
 2.症例プレゼンテーションを自由自在に操るコツ
 3.フォーマルプレゼンテーションに備える

第5章 症例プレゼンテーションの指導
 1.症例プレゼンテーション指導 7つのポイント

第6章 音声CD で学ぼう! 英語症例プレゼンテーションの実際
 1.Oral Case Presentation
 2.Components of Case
 3.Master the Pronunciation
 4.Sweep Up Fallen Leaves

おわりに
さらに学習を深めるための読み物
謝辞
索引

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臨床医学教育のあるべき姿を伝える教則本
書評者: 宮城 征四郎 (群星沖縄臨床研修センター長)
◆研修医の症例発表の内容を吟味

 医学書院からこのたび,自治医科大学客員教授・齋藤中哉先生による臨床医のための症例プレゼンテーション法を説いた教則本が出版された。

 齋藤教授は日本の医療界では数少ない,医学教育学を修めた臨床家である。臨床医学の指導医の立場から本書を出版し,日本の医学界に「臨床医学教育の基礎」を敷衍し,その普及に努めんとしているのである。

 したがって本書では,臨床医学教育に携わる人々にとって分かりやすく,症例プレゼンテーションの基礎となる情報が網羅されている。

 類書では,異なる病院で3回の1年次レジデントを経験した亀田総合病院リウマチ膠原病内科医長・岸本暢将先生による『米国式症例プレゼンテーションが劇的に上手くなる方法』(羊土社,2004)があるが,研修医の症例発表の内容を吟味し,その評価を下す指導医の立場から症例プレゼンテーションに必要な知識・技術を網羅的に紹介する本を上梓した例は,わが国では齋藤教授をもって嚆矢とするものであると理解している。

 その内容をざっと見渡してみると,問診,理学所見の取り方や問題点の整理法その他,患者を全人的に理解するための10か条や痛みに関する重点項目10か条などが詳述されており,それらが臨床医療のごく一部を表したものであり,すべての主訴についてこのような順序を踏まえた聴取項目が存在していることを示唆するものである。

 これらの内容は,著者自身が十分に臨床医学の何たるかを知り,臨床の実力が十分になければ到底書けないような内容ばかりである。

 臨床研修事業に従事する医療機関の指導医,あるいは屋根瓦方式の上級研修医は,少なくとも明日の日本の医療を担うことになる現在の下級研修医に対する臨床指導の基本的ノウハウを知るべきであり,この本を臨床指導者として参考にすべきである。また,英語によるプレゼンテーションの実例をいくつかCDを沿えて付録している点でも,この種の本では異例である。

◆患者を全人的に診る臨床医学教育の実現へ

 これまで臓器中心の臨床教育を実施してきたわが国の医療界に対し,患者を全人的に診る臨床医学教育を導入しようとする試みは,おおいにあずかって多とすべきである。

 日本の医療界では,基礎研究や論文発表が評価の対象とされ,ややもすると臨床医学教育自体がないがしろにされがちである。しかし,その姿勢は,日本の1億3千万国民の求める医療とは大きく乖離するものであり,医療自体が受療者たる国民のものであることを思えば,この本の著者のように臨床医学に力を注ぐ人々に,もっと大きな関心が集まってしかるべきである。

 願わくば,病棟にあっては主治医のその日の当直医に向けたsign out systemについても,ページを割いて言及してほしかったと思う。そうすれば,各研修医は今よりももっと安心して病院を離れることが可能になるし,各主治医が担当患者管理のために,当直でもないのに夜遅くまで病院に残る現在の臓器中心の臨床教育や研修のあり方にも,いくばくかの改善の糸口を与えることになったに違いないと思う。

 しかし,だからといってこの本の真価に影響はなく,わが国の医療界に属する医師たちが臨床医学教育のあるべき姿を考える上で大いに参考にすべき良書であり,自信をもって推薦する。
プレゼンテーションのノウハウを完全解説
書評者: 岸田 明博 (手稲渓仁会病院外科/臨床研修部部長)
 新医師臨床研究制度が発足して5年目を迎えています。マッチングをはじめその制度は定着し,また,その研修指導者を養成する講座や研修会が各地で盛んに開催されています。そのような講習会でよく出てくる質問のひとつに,「1か月や2か月ごとに回ってくる研修医に何を教えたらいいのか」というものがあります。医師の研修に無頓着であった日本医学界の実情からすれば,それは至極当然な質問だと思います。正直なところ,大学等での卒後研修の実情を知らなかった私自身も当初は明確な答えを持ち合わせていませんでした。

 しかしながら日本の医療現場の実情を知るにつけ,その答えは次第に明らかなものとなってきました。

◆研修医が最初に学ぶべきこと

 初期研修で何を教えたらいいのか?答えは“コミュニケーションスキル(Communication Skill;CS)の習得”です。ここでいうCommunicationとは医療に関係しているすべての職種の方々との意思疎通を意味していますが,とりわけ患者さんや医師,看護師が重要な対象となります。研修医の視点からすれば,なかでも医師,特に指導医とのCommunicationは厄介なことこの上ありません。卒前教育ではほとんど教えられていない分野であり,専門用語やその使い回しをはじめ,何をどのように組み立てて話していけばいいのか,戸惑うはずです。

 医師といっても,専門が異なるとそこで使用される専門用語やその用法,そして疾患へのアプローチや必要とされる情報に大きな違いがあります。われわれ医師はややもすれば手術や検査など,手技の習得に関心が向いてしまいますが,まず最初に覚えなければならないものはCSに他ならないと言っても過言ではありません。

◆プレゼンテーション技術を磨く

 それではどのようにしたらCSを身につけられるのか? CSは言い換えればプレゼンテーション(Presentation)のことであり,CSを習得するということは上手なプレゼンテーションをすることにほかなりません。聴いている人が容易に理解できる,的を射た簡潔なプレゼンテーションを,時間や場所,状況に応じて,かつ各科別の特性にも配慮しならが実行することは,指導医といえども決して簡単なことではありません。

 またプレゼンテーションは指導医の視点から見た,もう一つの効能を持ち合わせています。プレゼンテーションを聞くことによって,その発表者の技量が概ね評価できることです。最初はしどろもどろで話していた研修医が,いつのまにか威風堂々と的確にプレゼンテーションするように変身していきます。

 人前でしゃべることの苦手な日本人医師,そして医師にとって必須であるはずの英語が苦手な日本人医師にとっても,本書は大きな助けになるものと確信しています。

世界標準の症例プレゼンテーション技術を理論から学べるテキスト
書評者: 日野原 重明 (聖路加国際病院名誉院長・理事長)
 このたび,自治医科大学客員教授であり東京医科大学の総合臨床科教授でもある齋藤中哉教授の執筆と,自治医科大学教授のAlan T. Lefor教授の編集協力により,『臨床医のための症例プレゼンテーションA to Z』が医学書院から出版された。これには英語のCDが付いている。

 本書の内容は,2003年以来,ハワイ大学の医学教育フェローシップ・プログラム・ディレクターをされていた齋藤中哉氏が『週刊医学界新聞』誌上において2004年から1年間,12回にわたって連載した「英語で発信! 臨床症例提示――今こそ世界の潮流に乗ろう」に,大幅な加筆・修正を加えたものだ。連載は,カンファレンスにおける症例呈示(Case Presentation)の実例を分析し,テキストとして教育的,効率的な症例の提供の仕方を教えてくれる,読者にあたかも米国での症例検討会に出席しているような感を与える記事であった。

 私は,日米の臨床医学にあるレベル差の大きな原因のひとつは,米国でみるような効率的なカンファレンス進行の技が日本にないことにあると考えてきた。だから,本書が出版されたことの意義は大きいと思う。しかも,本書では症例呈示の日本語の例文の多くが英文に訳され,CDに収録されているため,これを聞くと,まるでアメリカの医学教育機関でカンファレンスに出席しているような臨場感を持つのである。

 章を追って内容を示すと,第1章は症例の提示の技に必要な基本的な点が取り上げられている。第2章には症例を提供する上での理論が述べられ,主訴の取り上げ方,次いで現病歴,既往歴,家族歴,生活歴をとる要領が示されている。次に診察の順序として,診察の技法,検査結果の取り上げ方,最後に要約の書き方が示されている。またPOSによるプロブレム・リストとそのアセスメントと治療検査のプランの書き方が示されている。

 続いて,病歴診察所見や検査成績を口述する速度や発音,音調の取り方,そのときの視線の向け方や姿勢や身振りについて,さらに差別用語を使わない注意が述べられている。

 以降の章は,より具体的な実践について述べている。例えば第3章には,症例提示の技やコツが分類して述べられており,第4章には症例提示の練習法やスライドの使い方が述べられている。第5章には症例提示の指導上の7つのポイントが述べられており,第6章には英語での口述の仕方や要領が述べられている。

 以上のように本書は,症例呈示の理論から実践までが万遍なく述べられているが,表現は平易で,指導医と会話しているようなムードで読むことができ,内容を納得して自己訓練すれば,症例呈示能力,ひいては臨床的実力が高くなる爽快感が体験されるのである。

 本書が生きたテキストとして医学生,研修医はもちろん,ナースやコメディカルにもよき学習書となることを信じて疑わないものである。

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