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ケースで学ぶ女性医療実践ガイド

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女性医学・医療を推進していく核となるべき日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医は1400名強と、まだまだ不足している現状において、専門医ならずとも女性医学・医療のマインドを持った医師が1人でも増えることは、多くの悩める日本女性の救世主にきっとなるはず。産婦人科医、総合内科医や一般内科医はもちろん、助産師、看護師、薬剤師などメディカルスタッフの方々にもおすすめ。

編集 甲賀 かをり / 小川 真里子
発行 2026年04月判型:B5頁:348
ISBN 978-4-260-06527-6
定価 6,820円 (本体6,200円+税)

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「ケースで学ぶ女性医療実践ガイド」発刊に寄せて/序

「ケースで学ぶ女性医療実践ガイド」発刊に寄せて

 日本女性医学学会の女性ヘルスケア専門医が日本産科婦人科学会における4つ目の産婦人科専門医サブスペシャルティ領域専門医として承認されたのは2014年のことでした。それから十余年,日本女性医学学会は会員数が5,000名を超える大きな学会に成長し,女性医学の認知と普及も進んできました。2024年には経済産業省より,女性特有の健康課題による社会全体の経済損失の試算が出され,月経随伴症は婦人科がんと同等,更年期症状は約3倍の損失という結果から,改めて女性医学・医療に注目が集まっています。さらに2025年10月には憲政史上初の女性首相として高市早苗氏が就任し,ご自身の体験から女性医学・医療の分野へもコミットする意向を示されたことにより,本分野がさらに脚光を浴びています。
 しかし,女性医学・医療は対応すべき範囲が広いだけに,学ぶには難しいという意見も伺います。我が身を振り返ってみても,いろいろと少しずつ学んできた30年来の積み重ねですし,いまだに実臨床ではさまざまな疑問も湧いてきます。学会としても『女性医学ガイドブック』を発刊していますが,なかなか改訂が追いついていません。このような状況下での本書の発刊は,時勢的にもベストタイミングであり,残念ながら「先を越された!」との思いです。
 編集をされた甲賀先生,小川先生はこれからの女性医学を牽引していく中核を担う方々であり,実臨床に即したテーマの選択,ケースの提示やポイントのまとめ,加えて「奥義」や「さらにもう一歩」など,まさに多くの臨床を経験してきた先生方の発想だと思います。また,執筆者の先生方もそれぞれの分野のエキスパートであることは言うまでもなく,基礎から最新の話題まで網羅した一冊になっていると感じました。
 高市首相は日本全国各所に女性医療のセンター的な施設を設置したいとの希望を持っているとも伝え聞きます。しかし,女性医学・医療を推進していく核となるべき日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医は1,400名強であり,全国レベルではまだまだ不足しています。専門医ならずとも,女性医学・医療のマインドを持った先生が1人でも増えることは悩める日本女性の救世主になることは言うまでもなく,多くの方々にこの分野を学んでいただきたいと思っています。その意味で本書の果たす役割は大きく,産婦人科医のみならず,総合内科医や一般内科医に加えて,研修医,さらに助産師さんや看護師さんなどのメディカルスタッフの皆さんにも役立つ一冊と言えます。ぜひ一度手に取ってみていただきたいと思います。

 一般社団法人 日本女性医学学会 理事長
 つくばみらい遠藤レディースクリニック 顧問
 髙松 潔


 『ケースで学ぶ女性医療実践ガイド』をお届けします。
 女性医学・女性医療は,産婦人科学の中でも,周産期学や腫瘍学と比べてエビデンスが少なく,またガイドラインや取扱い規約を逸脱したからといって,生死に直結するような場面も想定しにくい領域です。それゆえ長らく,医育機関や学会において系統だった教育が行われてきませんでした。「女性医学」が産婦人科学の第4の専門領域として承認され10年以上が経過した現在もなお,毎年次々と登場する各種ホルモン製剤の適切な使い分け,SRHR,プレコンセプションケア/インターコンセプションケア,性別違和といった新たな概念,さらにはHPVワクチンや緊急避妊薬など社会的・行政的側面を含む課題について,体系的かつわかりやすく学び,継続的にアップデートする機会は依然として十分とは言えません。
 本書は,そのタイトルが示す通り,女性医療に関して,日常診療で遭遇する判断に迷うような「ケース」を提示し,実際の「処方例」や先生方の「奥義」の紹介など,「実践」的な内容をふんだんに盛り込みました。さらに上述のような up to dateな話題についても幅広く網羅するという欲張りな企画のもとに作成されています。章立ては細かく,重要なポイントは簡潔にまとめ,写真・図表・フローチャートを多用するなど,随所に誰もが楽しく理解できる工夫を凝らしています。頭から律儀に通読いただいてももちろんよいですが,気になるトピックを拾い読みしたり,お手元に置いて辞書代わりに参照したりと,さまざまな方法でご活用いただきたいと思います。
 また,本書は産婦人科医のみならず,一般内科医・産業医・看護師・助産師・薬剤師など,女性の診療に関わるすべてのプロフェッショナルの方に手に取っていただけるよう,理解しやすい内容と構成を目指しました。女性医療の実践には,女性を取り巻くすべての医療従事者の正しい知識が不可欠です。女性に関するふとした疑問に直面したら「この本のどこかに答えがあるはず」と,思い出していただければ幸いです。
 最後に,本書の作成にあたり,すばらしい巻頭言をご執筆下さった髙松潔先生をはじめ,明快かつ質の高い原稿をお寄せ下さった執筆者の先生方,共同編集者として伴走下さった小川真里子先生,そして企画から刊行まで力強く支えて下さった医学書院の安藤恵氏,玉森政次氏に,心から御礼申し上げます。この一冊が,日本における女性のwell-being向上に少しでも寄与することを願っています。

 2026年春
 甲賀かをり

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「ケースで学ぶ女性医療実践ガイド」発刊に寄せて

第1章 SRHR(セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)
   1 学校性教育
   2 プレコンセプションケア
   3 インターコンセプションケア
   4 女性アスリートの健康管理
   5 OC・LEP
   6 OC以外の避妊法
   7 緊急避妊
   8 月経移動
   9 人工妊娠中絶
   10 DV・性暴力被害
   11 性機能不全
   12 性別不合

第2章 外来における婦人科疾患とその治療
 婦人科内分泌疾患
   13 原発性無月経・続発性無月経の鑑別診断
   14 性分化疾患──ターナー症候群などへのホルモン療法を中心に
   15 視床下部・下垂体性無月経──神経性やせ症を含む,アスリートは他項
   16 高プロラクチン血症
   17 多囊胞性卵巣症候群
   18 早発卵巣不全・早期閉経
 月経随伴症状を伴う疾患
   19 月経困難症の診断と治療
   20 過多月経の診断と治療
   21 PMS/PMDDの診断と治療
   22 月経随伴症状に対するホルモン製剤の使い分け

第3章 外来でみる婦人科腫瘍と関連疾患
   23 子宮がん検診とフォロー
   24 不正出血(異常子宮出血)への対応
   25 子宮内膜ポリープ
   26 子宮内膜症
   27 子宮腺筋症
   28 卵巣腫瘍
   29 子宮筋腫
   30 子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫の合併
   31 婦人科がん治療の副作用
   32 AYAがんとそのサバイバー
   33 婦人科がんサバイバー
   34 乳がん検診におけるちょっとした異常

第4章 知っておくべき感染症・外陰疾患
   35 バルトリン腺囊胞
   36 腟炎──細菌性腟炎・カンジダ外陰腟炎・腟トリコモナス症
   37 梅毒
   38 クラミジア・淋菌
   39 性器ヘルペス
   40 尖圭コンジローマ
   41 HIV感染症
   42 付属器炎・骨盤炎症性疾患
   43 非特異的外陰掻痒症
   44 慢性外陰痛・慢性骨盤痛
   45 ワクチン

第5章 更年期・老年期に特有の問題と対応
   46 更年期障害の診断とセルフケア
   47 更年期障害に対する漢方療法──婦人科に頻用される3処方とその使い分け
   48 ホルモン補充療法(HRT)──初学者が行うときの留意点と具体的処方
   49 更年期障害に対するその他の治療法
   50 閉経関連尿路性器症候群(GSM)
   51 骨盤臓器脱

第6章 よく遭遇するその他,様々な疾患
   52 乳がんサバイバー
   53 頭痛
   54 過活動膀胱・尿失禁
   55 脂質異常症
   56 骨粗鬆症の診断と治療
   57 うつ・不安,不眠症
   58 オフィスギネコロジーでの血圧管理

索引

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このケースで,どう考え,どう説明し,どう支えるか
書評者:北村 邦夫(一般社団法人日本家族計画協会会長)

 女性医療とは,単に女性特有の疾患を診ることではない。月経異常,更年期症状,避妊,性感染症,プレコンセプションケア,そして性と生殖に関する自己決定の支援まで,女性の一生に伴走する医療である。私はかねて,産婦人科医は女性のQOLを支える「パートナードクター」であるべきだと考えてきたが,本書『ケースで学ぶ女性医療実践ガイド』は,まさにその考えを日常診療のかたちに落とし込んだ一冊である。

 本書の最大の特色は,「女性医療は総論ではなく実践である」という当たり前の事実を,正面から引き受けている点にある。女性医療の必要性を語るだけなら,いまや誰にでもできる。しかし現場では,患者の訴えは教科書どおりには現れない。月経困難症ひとつをとっても,その背後には就労の問題があり,学業への影響があり,妊孕性への不安があり,ときにパートナーとの関係や,誰にも相談できない孤立が潜んでいる。本書は,その複雑な現実から目をそらさず,「このケースで,どう考え,どう説明し,どう支えるか」を具体的に示している。

 ケースを軸にし,処方例を示し,要点を簡潔に整理し,加えて「奥義」,「さらにもう一歩」で臨床の勘どころまで伝える構成は,極めて実戦的である。若い医師や研修医はもちろん,日々の診療で「これでよかったのか」と迷いを抱えながら女性を診ている臨床家にとって,これほど心強い本はない。女性医療は,知識があるだけでは足りない。相手の人生に触れる覚悟と,言葉を選ぶ感性と,必要なときに一歩踏み込む勇気がいる。本書には,そのための知恵が惜しみなく盛り込まれている。

 さらに本書が優れているのは,産婦人科医だけの専門書にとどまっていないことである。女性の健康問題は,最初から婦人科外来に持ち込まれるとは限らない。内科,総合診療,産業保健,看護,助産,薬剤指導の現場で,「これは女性医療の課題だ」と気付ける人が増えなければ,支援の入口は広がらない。本書が幅広い医療職を読者として想定しているのは,誠に正しい。女性医療を一部の専門家だけに任せていては,社会は変わらないからである。

 私は長年,意図しない妊娠を減らすこと,そして「生まれてくる子は皆待ち望まれて生まれてくる子」である社会をめざすことの大切さを訴えてきた。女性医療の根底には,常にその人の生き方を尊重する視点がなければならない。本書が扱うホルモン療法,SRHR,HPVワクチン,緊急避妊などのテーマは,まさにその核心に触れるものである。知識の更新だけではない。患者の自己決定をどう支えるかという,医療者の姿勢そのものが問われているのである。

 本書は,女性医療を「わかったつもり」にさせない。むしろ,もっと学ばなければならない,もっと寄り添わなければならない,と読む者の背筋を伸ばす。女性の体を診ることは,女性の人生を診ることでもある。その重みと希望を,これほど実地に即して伝える書は少ない。女性の診療にかかわる全ての医療者に,ぜひ座右に置いてほしい一冊である。


全ての疾患などが網羅され,診察時の手引きとしても活用できる一冊
書評者:大須賀 穣(帝京大臨床研究センター教授・センター長/東大名誉教授)

 昨今の女性の健康意識の向上により,さまざまな訴えで産婦人科ならびに女性医学を取り扱う他の診療科を受診する患者さんが増加している。今回発刊された『ケースで学ぶ女性医療実践ガイド』はこのような患者さんを適切に診療するために必携の書である。編者の甲賀かをり先生,小川真里子先生は女性医学の領域において日本の第一人者で知識,経験共に豊富であり,明快な数々の講演で多くの聴衆に支持されている。そして編者の選ばれた著者はそれぞれの領域の専門家として多くの患者さんを診察されており,専門家として啓発・教育においても有名である。このため,本書は従来の類書とは異なり要点が簡潔かつ十分にまとめられており,その背景も読みやすく整理されている。女性医療を行うものにとって必要な全ての疾患などが網羅されており,診察時の手引きとしても活用できる。

 また,各項目の最初にあるケーススタディは実際の診療の現場を想起させるので解説がとても頭に入りやすい。参考文献も必要性が高いものに絞られており,使いやすい。本書籍では各項に私の奥義として専門家ならではのノウハウが詰められておりとても貴重である。私の奥義だけを読んでも明日からの臨床が大きく発展することは間違いない。女性医学の領域では薬の開発が日進月歩であり,多くの新薬が登場しているが,本書の処方例には最新の薬剤の使用法もわかりやすく記載されており,最新の治療を患者さんに届けることができる。学会のガイドラインからは得られない情報がこれほど多く,かつ,コンパクトに詰まった書籍を私は見たことがない。ぜひとも診察室に常備して診療の合間や診療後の学習時間に活用していただきたい。

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