化学 第8版

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  • 中学校・高等学校で学ぶ化学の体系(理論化学・無機化学・有機化学・高分子化学)をベースとしながら、医学・看護に必要な学習内容を重点的に記述しています。第8版では、中学校・高等学校の新学習指導要領に対応した改訂を行いました。また、巻末資料として、「物理学の基礎知識」を設け、看護に必要な物理学の知識をコンパクトにまとめました。
  • 「序:化学の基礎知識」では、中学校・高等学校で学んだ基礎的な化学用語を網羅的に復習できる構成としました。
  • 元素記号・原子・分子の書きあらわし方と読み方、pH、温度、%濃度の計算といった基本がおさらいできます。章末の穴埋め問題で知識の確認ができます。
  • 第1部では、気体の圧力や溶液の濃度など、医療に直結する内容について、実践的な例題を解きながら学ぶことができます。
  • 第2部では化学反応、酸化還元、反応速度、酸塩基平衡などについて、身のまわりの反応や生理学・生化学・臨床検査で扱われる反応を取り上げながら、実感をもって学べるようになっています。パルスオキシメータやMRI、血糖測定、透析など、医療機器の話題も多く取り上げています。
  • 第3部の無機化学では、生体元素や環境汚染、中毒、医薬品、生活用品に関係する物質を中心に取り上げ、興味をもって読み進められるようになっています。有機化学・高分子化学は、薬理学や栄養学、生化学で扱われる物質を積極的に取り上げ、専門基礎科目や専門科目につながる内容構成としました。
  • 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座-基礎分野
執筆 奈良 雅之
発行 2026年01月判型:B5頁:276
ISBN 978-4-260-06192-6
定価 2,970円 (本体2,700円+税)

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はしがき

発刊の趣旨
 看護師を目指すみなさんにとって,化学は自然科学のなかで重要な科目に位置づけられます。これから学んでいく生理学や薬理学,生化学,栄養学,公衆衛生といった専門基礎科目を理解するためには,化学の知識が欠かせません。そして,医療の現場で働くようになると,薬液を希釈したり,医薬品を投与したり,検査値を読み取ったり,医療機器を操作したりする様々な場面において,化学の知識に基づく技術が必要となります。
 たとえば,10%と1%は,数字の見かけ上は,「0」がついているかどうかの違いですが,濃度は10倍も異なります。物質は,濃度が異なることで,化学反応の方向や速度といった性質が異なってきます。医薬品の場合は,ゼロを1つ間違えることで,生体において目的とする効果が現れないばかりか,ときには致死的な作用をもたらすこともあります。溶液の濃度の調製は,理屈の上では理解していても,実際の物質を扱うとなると案外難しいものです。例えば実験において,「15mol/Lアンモニア水から6mol/Lアンモニア水100mLの溶液を作りなさい」と言われたとき,躊躇なくメスシリンダーでアンモニア40mLと蒸留水60mLをはかりとることができる学生は少ないものです。化学の学習を通して様々な物質の様々な濃度に触れることで,物質について十分に理解し,実際の医療現場において適切な対応ができる力を養っていく必要があります。

本書の構成
 小学生や中学生の頃は好きだった理科が,高等学校に入学してから苦手になったという経験は,程度の差こそあれ多くの学生が経験してきたことかもしれません。高等学校で化学を選択せずに,大学や専門学校へ進んだ学生もいることでしょう。
 本書では,まず,「序部」において,中学校・高等学校の化学の基本用語を復習しながら,化学との上手な付き合い方を伝授します。ここでは「水」をテーマに取り上げていますが,ほかにも身のまわりにあるものすべてが化学に関係しますので,そういう意識をもって周囲を眺めてみましょう。「水」のテーマは,筆者が新入生を対象として行うセミナー「水の科学」をベースにしています。このセミナーでは,看護学専攻の学生に限らず,医学科・歯学科・口腔保健学科の学生も一緒にグループを作って"水"について議論します。もともと化学が好きな学生だけではなく,「化学は好きではないが,"水"には興味がある」という学生も集まってきます。化学は,私たちの生活や医学・看護から切っても切り離せないものですから,まずは関心のあるものを手掛かりとして,化学に興味をもっていくことが大切です。また,周期表は,化学を勉強するためのいわば「地図」のようなものですので,身のまわりのものと関連付けて親しんでほしいと思います。
 「序部」のあとは,「第1部 物質の状態」「第2部 物質の変化」「第3部 物質の構成」の3部に分けて展開していますが,その順番は必ずしも絶対的なものではありません。理解しやすいところ,必要なところから学習しましょう。第1部と第2部は,高等学校の化学のカリキュラムをベースにして理論化学を展開し,医療で必要となる項目や話題,たとえば規定度や血液ガス値,体液の緩衝系についても適宜補足してあります。
 第3部の「第9章 原子の構造と化学結合」は化学の専門家が最も教えたくなるところではありますが,実際の医療の現場では,原子・分子という目に見えないミクロの化学よりも,物質の性質や取り扱いといったマクロの化学の優先度が高いと考えられますので,「第10章 無機化学」「第11章 有機化学」「第12章 高分子化学」の各論を先に学習しても全く問題ありません。各論では,実験的・工業的な知識は省き,生体物質や医薬品,中毒をおこす物質,環境汚染物質など,医療や生活・環境に関わりの深い物質を取り上げながら厳選してまとめてあります。

改訂の趣旨
 学習指導要領が改訂され,高等学校の化学では2022(令和4)年度から新しいカリキュラムでの学習が始まりました。新学習指導要領では,熱化学方程式を廃止し,エンタルピー変化であらわすという大きな変更が加えられています。本書では第7版より熱力学方程式とエンタルピー変化を併記していましたが,今回の改訂では高校と大学・専門学校の学びがよりスムーズに連続するよう,記述を見直しました。また,化学用語についても「希ガス」を「貴ガス」に改めるなど,新学習指導要領に準拠して修正しています。
 さらに,巻末資料として「物理学の基礎知識」を設け,高等学校で物理を履修していない場合でも,物理学の原理や法則の概要を理解できるようにまとめました。「第1部 物質の状態」「第2部 物質の変化」で扱う化学現象は,物理の原理や法則に基づいて成り立っています。そのため,物理学を学ぶことは化学現象の理解に大いに役立ちます。残念ながら,大学や専門学校の初年次カリキュラムでも物理学を学ぶ機会が設定されていない場合もありますので,本書を化学の教科書として活用するだけでなく,医療現場で「物理」を理解する際の参考書としても役立てていただければ幸いです。
 そのほか,第12章には「合成高分子化合物」の項目を新設し,医療現場でよく目にする医療素材にも焦点を当てました。また,各章においては,医療や日常生活に関連する化学の話題や写真を豊富に挿入し,化学現象を身近に感じられるよう工夫しました。

本書の学び方
 高等学校で化学を選択していなかった学生や,化学を苦手と感じている学生は,まずは「第1章 身のまわりの化学」をじっくり読んで,化学の基本用語をおさえてから授業に臨むとよいでしょう。一方で,化学についてもっと詳しく学びたいと感じている学生は,「第9章 原子の構造と化学結合」で扱うミクロの化学や,MRIやパルスオキシメーターなどの医療機器のしくみについてのコラムなどにチャレンジしてみてください。
 本書は,看護職を目指す学生のみならず,医学や歯学をはじめとする医療職を志す学生のための化学の入門書としても活用できるよう,化学の基本的な学問体系に則って執筆しました。本書を活用して,よりたくさんの学生が物質についての理解を深め,その知識を医療の現場で生かしていってくれることを願っています。

 2025年12月
 奈良 雅之

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序 化学の基礎知識──化学とのじょうずなつき合い方
 第1章 身のまわりの化学
  A コップ1杯の水
  B 食塩水・砂糖水・レモン水──水溶液
  C 身のまわりの物質と化学反応
 第2章 化学の単位と元素の周期表
  A 量と単位
   1 単位の重要性
   2 量
   3 SI(国際単位)
   4 医療で用いられる特別な単位
   5 有効数字
  B 元素の周期表
   1 元素と元素記号
   2 元素の周期表と周期律
   3 元素の分類

第1部 物質の状態
 第3章 物質の三態
  A 物質の三態(固体・液体・気体)
  B 状態の変化
  C 分子間力と沸点・融点
   1 分子間力
   2 沸点と融点
  D 圧力と大気圧
   1 気体の圧力
   2 蒸気圧
  E 状態図
 第4章 気体の性質
  A 気体の状態方程式──理想気体
   1 ボイル・シャルルの法則
   2 理想気体の状態方程式
  B 混合気体と分圧の法則
  C 気体の液体への溶解
  D 実在気体の状態方程式
 第5章 液体・溶液の性質
  A 溶液の濃度
   1 溶解度と溶解度曲線
   2 溶液の濃度
  B 溶液の性質
   1 蒸気圧降下に関するラウールの法則
   2 沸点上昇・凝固点降下の法則
   3 浸透圧に関するファントホッフの法則
   4 分配の法則
  C 表面張力と界面活性剤
  D コロイド
   1 コロイド粒子とコロイド
   2 コロイドの性質
   3 コロイド溶液の種類

第2部 物質の変化
 第6章 化学反応
  A 化学反応の基本法則と種類
  B 熱化学反応
   1 発熱と吸熱
   2 反応エンタルピーの種類
   3 ヘスの法則
  C 光化学反応と化学発光
  D 酸化還元反応
   1 酸化還元反応の定義
   2 酸化剤と還元剤の反応
   3 金属のイオン化傾向と標準電極電位
 第7章 反応速度
  A 反応速度のあらわし方
  B 反応次数
  C 活性化エネルギーと触媒
  D 反応機構
   1 素反応と複合反応
   2 複合反応の種類
 第8章 化学平衡
  I 化学平衡の基礎
  A 化学平衡と平衡定数
  B ルシャトリエの原理
  II 酸塩基平衡
  A 酸・塩基と中和反応
   1 電離と電解質
   2 酸と塩基の定義
   3 水素イオン濃度とpH
   4 中和反応と塩の生成
  B 電離平衡と電離定数
   1 弱酸の電離平衡
   2 弱塩基の電離平衡
  C 塩の水への溶解
   1 加水分解
   2 塩の水溶液のpH
   3 緩衝液
  D 中和滴定と滴定曲線
  E 難溶性塩の溶解平衡

第3部 物質の構成
 第9章 原子の構造と化学結合
  A 原子の構造
   1 原子を構成する粒子
   2 原子のモデル
   3 周期律
   4 イオン化エネルギーと電子親和力
  B 化学結合
   1 イオン結合
   2 共有結合
   3 配位結合
   4 金属結合
  C 原子・分子の結合と分子の形
  D 吸収スペクトル
   1 吸収スペクトルと補色
   2 ランベルト-ベールの法則
 第10章 無機化学
  A 無機物質
  B 非金属元素
   1 貴ガス
   2 水素
   3 ハロゲン
   4 炭素とケイ素
   5 窒素とリン
   6 酸素と硫黄
  C 典型金属元素
   1 第1族(アルカリ金属)
   2 第2族(アルカリ土類金属)
   3 アルミニウム
   4 スズと鉛
  D 遷移元素
   1 遷移元素の特徴
   2 配位化合物
  E 放射性元素
   1 原子核壊変
   2 放射能の単位
   3 医療への応用
 第11章 有機化学
  A 有機化合物の基礎
   1 有機化合物と無機物
   2 有機化合物の特徴と分類
  B 脂肪族炭化水素
   1 飽和脂肪族炭化水素(アルカン)
   2 不飽和脂肪族炭化水素
  C 芳香族炭化水素
   1 ベンゼンとその誘導体
   2 芳香族多環式化合物
   3 複素環化合物
  D 官能基と有機化合物
   1 官能基の種類
   2 ヒドロキシ基
   3 エーテル
   4 カルボニル基
   5 カルボキシ基
   6 エステル
   7 ニトロ基
   8 アミン
 第12章 高分子化学
  A 高分子化合物の特徴
  B 天然高分子化合物
   1 糖(炭水化物)
   2 アミノ酸,ペプチド,タンパク質
   3 脂質
   4 核酸
  C 合成高分子化合物
   1 合成高分子化合物の特徴
   2 合成繊維
   3 プラスチック(合成樹脂)
   4 ゴム
   5 機能性高分子化合物

巻末資料 物理学の基礎知識
 A 力のはたらきと重力・質量
 B 力のつりあいと合成・分解
 C 水圧と浮力
 D 物体の運動
 E 剛体の運動と力のモーメント
 F 剛体のつり合いと重心
 G 運動量の保存
 H 仕事とエネルギー
 I 音
 J 超音波とドップラー効果
 K 光
 L 凸レンズ
 M 熱
 N 熱の伝わり方
 O 電気
 P 電流・電圧と電気エネルギー
 Q 電流と磁場

復習と課題の解答例
索引

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