母性看護学[1]
母性看護学概論 第15版
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- 本書では、女性のライフサイクルを対象とし、生涯にわたった女性の健康や健康問題、その看護を取り上げています。
- 母性看護の基盤となる「母性」「セクシュアリティ」「セクシュアルリプロダクティブヘルス/ライツ」などの概念をていねいに解説しています。
- 「プレコンセプションケア」の目的や対象、その内容についてわかりやすく解説し、母性看護の視点から課題や取り組みについて初学者にも理解できるように整理しました。
- 母子保健に関する統計データについて、各種の公的資料からわかりやすく整理しました。母性看護の基盤となる政策の動向や制度、解剖生理についても、グラフやイラストで理解しやすくしています。
- 母性看護における看護過程・アセスメント技術・看護技術の特徴について、イラストでイメージをしながら学習できるようにしています。
- 人工妊娠中絶、ドメスティックバイオレンス、性暴力、児童虐待に関する記述を一新しました。
- 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
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序文
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はしがき
母性看護学は,看護基礎教育のカリキュラムとして誕生して以来,妊産褥婦および新生児への看護活動に加え,次世代の健全育成を目ざし,母性の一生を通じた健康の維持・増進,疾病予防を目的とした看護活動を支える実践科学として発展してきました。現在,母性看護の対象は,妊産褥婦とその子ども,将来子どもを産み育てるべき女性,および過去においてその役目を果たした女性のみならず,生涯を通じての性と生殖に関する健康と権利(セクシュアルリプロダクティブヘルス/ライツ)をまもるという観点から,女性と生殖や育児のパートナーとしての男性,子どもが生まれるあるいは乳幼児を育てる家族,その家族が生活する地域社会をも含むようになりました。このことは,次世代が健康に生まれ育つことが普遍的な人類の願いであるとともに,時代の変遷により,子どもをより健康な状態で産み育てるための母性への支援が,質的・量的に変化していることを示しています。これは同時に,女性の生涯や役割の多様化,医学の進歩・発展,晩産化と少子高齢化,母子をめぐる生活環境の著しい変化,国際結婚・外国人家族の増加などによって,母性看護の役割がますます拡大していることを意味します。
本書では,このような母性看護の役割拡大をふまえ,母性看護の基盤となる概念を,母性看護を実践するうえでの考え方や方向性と関連づけて示し,実践活動に活用できるように解説しました。これに加え,女性の一生を通じた母性の健康の保持・増進を目ざした看護を基盤として,次世代の健全育成を目ざす看護を述べています。また,社会的弱者である子どもや母親,女性,家族,患者の立場にたった個別性の高い看護実践が可能となるように,統合体としての母性や親となる家族を理解するための身体的および心理・社会的知識,看護過程の展開方法,看護実践時の安全管理と倫理について充実をはかりました。そして,これらを系統的に述べることで,かぎられた時間でも重要な内容が効率的かつ漸進的に自己学習できるような構成としています。
『母性看護学[1]母性看護学概論』では,第1章において母性看護の基礎となる概念を,母性看護を必要とする対象の特徴および母性看護独自の特徴から解説したほか,近年,注目される事項についても概説しました。第2章では,母性看護の対象を取り巻く社会の変遷と現状について理解を深めるだけでなく,母性看護の課題や役割を考えるために,各種統計資料から幅広く把握して考える方法を整理し,提示しました。第3章では,母性看護の対象を①受精から女性の成熟期・更年期までの形態・機能の特性とその変化,②女性・家族のライフサイクルの変化,③母性としての発達・成熟・継承における特性とその変化の視点からまとめました。第4章では,第2章や第3章で述べた母性看護の特性をふまえたうえで,母性看護実践に必要な技術として対象者のアセスメントと看護実践の提供の方向性を示しました。第5章では,女性のライフステージ各期における看護に共通して必要になるプレコンセプションケアなどの概念を学習したうえで,各期の女性の特徴や健康問題について改めて項目・内容を整理し,セクシュアルリプロダクティブヘルス/ライツとの関係から看護を論じました。第6章では,女性の生涯を通じた健康の保持・増進の観点から,リプロダクティブヘルスケアとして,家族計画,およびリプロダクティブヘルスに関する主要な健康問題と看護を解説しました。
『母性看護学[2]母性看護学各論』では,第1章で,前述の『母性看護学概論』をふまえて母性看護学の役割拡大について述べ,不妊治療を経て妊娠・出産にいたる女性について,具体的な事例を示しています。第2章では,妊娠前からの女性・家族への支援として,プレコンセプションケアや遺伝相談,不妊治療などを,必要となる医療とともに解説しました。第3章~第6章では,正常経過にある妊産褥婦と新生児の看護について,第7章では異常経過にある対象者への看護について,それぞれ身体的特性と心理・社会的特性,アセスメントおよび看護という構成で示しています。これにより,対象者の経過にそって系統的に母性看護の学習ができるようになっています。第7章の周産期の異常経過にある対象者への看護については,第3章~第6章で述べた正常経過の基礎知識や看護を確認しながら学習することで,より理解が深まるでしょう。
付章には,看護を展開する例として,「事例による看護過程の展開」をまとめています。これらは対象者を統合体として理解するための学習のほか,実習や国家試験の状況設定問題への対策として活用していただけると幸いです。巻末には,妊産婦・新生児における各種検査値を付録として掲載し,また,各種援助技術や新生児のアセスメントに役だつ動画へのリンクを,本文中の該当する図に付し,視覚的理解がスムーズにできるように工夫しました。巻末の「動画一覧」とあわせ,昨今急速に普及の進んだICT機器を用いた学習や,遠隔授業などで積極的に活用していただけたらと思います。
母性看護学を学ぶ方に,本書が講義の理解を深め実習にも活用できる教材として広く使用いただけること,また,すでに母性看護を実践されている看護職者の方にも,基本的な知識の確認や自己の看護実践のふり返りなどに活用いただけることを願います。女性に寄り添う看護,家族中心の看護 family centered careがさらに活発になることを心から願います。
2025年11月
著者ら
目次
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第1章 母性看護の基盤となる概念 (森恵美)
A 母性とは
1 親になることと母性
2 母性の身体的特性
3 母性の心理・社会的特性
4 母性看護における母性
B 親子関係と家族発達
1 愛着・母子相互作用と母子関係形成
2 母親となることへの看護
3 家族機能
4 家族の発達課題と看護
C セクシュアリティ(人間の性)
1 セクシュアリティに関する概念
2 セクシュアリティの特質
3 性的マイノリティ
D 性と生殖に関する健康と権利
1 セクシュアルリプロダクティブヘルス/ライツとその定義の変遷
2 女性とリプロダクティブヘルス/ライツの課題
3 女性のライフサイクルにおけるリプロダクティブヘルス/ライツ
E ヘルスプロモーション
1 ヘルスプロモーションの定義と方法
2 女性の生涯にわたる健康教育
3 ヘルスプロモーション活動における協働
F 母性看護のあり方
1 母性看護の理念
2 母性看護の課題と展望
G 母性看護における倫理
1 生命倫理と看護倫理
2 看護における倫理的意思決定
H 母性看護における安全管理と事故予防
1 リスクマネジメント
2 事故への対応
第2章 母性看護の対象を取り巻く社会の変遷と現状 (石井邦子)
A 母性看護の歴史的変遷と現状
1 日本における母性看護の変遷
2 母性看護にかかわる指標とその推移
3 母性看護にかかわる法律
4 母性看護にかかわる施策
B 母性看護の提供システム
1 母性看護にかかわる機関
2 母性看護に携わる職種
第3章 母性看護の対象理解 (堤治・香取洋子)
A 女性のライフサイクルにおける形態・機能の変化
1 生殖器の形態・機能
2 妊娠と胎児の性分化
B 女性のライフサイクルと家族
1 女性の一生をあらわす用語
2 現代女性のライフサイクル
3 家族の発達段階と家族看護
4 女性のライフサイクルと生涯発達
C 母性の発達・成熟・継承
1 女性性の発達
2 母性・父性・親性の発達
3 母子関係と愛着
4 母性の世代間伝達
第4章 母性看護に必要な看護技術 (森恵美)
A 母性看護における看護過程
1 母性看護におけるアセスメント(情報収集・分析)と全体像の把握
2 看護ニーズの明確化(看護診断)
3 看護計画の立案から評価までの展開
B アセスメント技術
1 女性のヘルスアセスメントの考え方
2 ヘルスアセスメントの方法
C 母性看護に使われる看護技術
1 基盤となる看護技術
2 女性の意思決定を支える看護技術
3 ヘルスプロモーションのための看護技術
4 親になる過程および家族適応を促す看護技術
5 ストレス・不快症状・苦痛を緩和する看護技術
6 次世代の成長・発達を促す看護技術
7 リプロダクティブヘルスの健康障害への対応
8 周産期の死に対する看護技術
第5章 女性のライフステージ各期における看護 (工藤美子)
A ライフサイクルにおける女性の健康と看護
1 社会の変化に伴う女性の身体および健康問題の変化
2 女性のライフサイクルに応じた身体機能の変化
3 ライフサイクル各期に共通する看護
B 思春期の健康と看護
1 思春期女性の特徴
2 健康問題と看護
3 思春期女性への看護の視点
C 性成熟期の健康と看護
1 性成熟期女性の特徴
2 健康問題と看護
D 更年期・老年期の健康と看護
1 更年期・老年期女性の特徴
2 健康問題と看護
第6章 リプロダクティブヘルスケア (堤治・工藤美子・齋藤明香・森恵美・立岡弓子・常田裕子・岩田裕子)
A 家族計画
1 家族計画の必要性
2 受胎調節法
3 受胎調節指導のあり方
B 性感染症とその予防
1 性感染症の医学的特徴
2 性感染症の罹患状況と予防
C 人工妊娠中絶と看護
1 人工妊娠中絶の定義と現状
2 人工妊娠中絶法の概要とその影響
3 人工妊娠中絶時の看護
D ドメスティックバイオレンスを受けた女性に対する看護
1 暴力の種類と過程
2 暴力の実態と影響
3 暴力の防止と被害者の保護
4 暴力被害に対する看護の役割
5 暴力のない社会のために
E 性暴力を受けた女性に対する看護
1 性暴力および不同意性交等の定義
2 性暴力の実態
3 性暴力を受けた女性への支援
F 児童虐待と看護
1 児童虐待の定義と種類
2 児童虐待の実態と背景
3 児童虐待への対策
4 妊娠中からの児童虐待の予防
G 国際化社会と看護
1 母子保健の国際化
2 在日外国人の母子保健
3 海外での日本人の妊娠・出産・育児
参考文献
巻末資料
索引
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