高齢期作業療法学 第4版

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高齢期の対象理解をコンパクトに学ぶことができるテキスト。第1章では、高齢期の特徴や代表的な疾患を整理してまとめた。認知症については、特に重点的に解説がされている。第3章では、ストーリーに沿った様々な実践事例でより具体的なイメージをもちながら高齢期の作業療法を学べる。今版では、看取り(ACP、グリーフケアなど)の考え方も新たな要素として加わった。

*「標準作業療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準作業療法学 専門分野
監修 松房 利憲
編集 新井 健五 / 勝山 しおり
編集協力 山口 智晴
発行 2024年01月判型:B5頁:272
ISBN 978-4-260-05327-3
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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第4版 序

 2004年に初版を発刊してから,20年が経った.その間,高齢者をめぐる環境は大きく変わり,初版当時のわが国の高齢化率は約20%程度であったものが,今や65歳以上の割合は過去最高の29%というまさに超高齢社会になった.高齢化率は今後も上昇し続けると見込まれ,高齢者および高齢者をかかえる人々に対する支援は重要さを増すばかりである.
 長い人生を歩んできた高齢者が,これからも人生を豊かに過ごすために作業療法が援助できることは多い.健康な人は,できるだけ健康状態を保ち,はからずも障害をかかえた人は,障害の影響を最小限に抑えて,意義ある人生を送れることが高齢期のあるべき姿と考える.その意味からも,本書では障害をもった高齢者のみでなく,健康高齢者にも焦点を当ててある.これからの高齢期作業療法は,疾患や障害へのアプローチはもちろんのこと,障害予防を重要視しなければならない.
 また,人が長生きするようになった現在,認知症は避けては通れない領域である.認知症に関する情報は以前に比べて飛躍的に多くなり,社会的にも認知されてきたが,同時に,増加する認知症高齢者およびその家族を,社会でどう支えるかという問題もクローズアップされている.ここに本書において認知症を大きな節として取り上げている理由がある.
 高齢者ケアの現場で出会う要介護や認知症の高齢者は,決して自分と違う特別な存在ではない.誰しも,いずれはそうなるのである.今後,臨床でそうした対象者を目の前にしたときに,その人のことを数十年後の自分の姿ととらえ,その人がかかえる問題を自分ごとのように向き合えることが,作業療法士としての基本姿勢となってくる.
 人生は“死”で完結する.個人の人生を肯定できることが,その人にとって最高の人生であろう.人が自分の人生を肯定できるように,言い換えれば,その人の人権や尊厳を尊重し,「よき生き方」を援助することができるのが作業療法である.
 「初版の序」よりこれまで述べてきたように,この巻の編集にあたっては,「高齢者は若中年者をそのまま延長したものではなく,また,高齢者という1つのグループにまとめられるものではない」ところに重点をおいてある.また,本書の対象が,主として作業療法士を目指す学生であるという観点から,できるだけわかりやすく編集するという姿勢を貫いてきたつもりである.高齢者に対する作業療法はまだ確立されたものではない.社会制度が大きく変化するなか,その作業療法も,今後形を変えていくものと思われる.
 本書が,作業療法に携わる人の勉学に役立ち,さらにわが国の高齢期作業療法の発展に役立つことを願って止まない.

 2023年11月
 執筆者を代表して
 松房 利憲
 新井 健五
 勝山 しおり
 山口 智晴

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I 高齢期作業療法学の基礎
 GIO,SBO,修得チェックリスト
 1 高齢期作業療法学を学ぶ皆さんへ
   A 高齢期と老年期
   B 高齢期と作業療法
   C 本書で学ぶこと
 2 高齢社会
   A 高齢化の進展
   B 社会施策の変遷
 3 高齢期の課題
   A 高齢期とは
   B 高齢者と生きがい
   C 高齢期の社会活動
   D 高齢期の家族関係
   E 現代社会と高齢者
 4 社会制度
   A 社会保障制度と高齢者保健医療福祉
   B 高齢者を守る法律や制度
   C 制度の変化
 5 高齢期の作業療法
   A さまざまな高齢者像
   B 介護保険制度と作業療法
   C 高齢期作業療法の役割と機能
   D 高齢期作業療法の目的
 6 高齢期の一般的特徴
   A 老化とは
   B 高齢期の生理的・身体的特徴
   C 老年症候群
   D 高齢期の精神的・心理的特徴
 7 高齢期に多い疾患
   A 循環器疾患
   B 呼吸器疾患
   C 神経疾患
   D 運動器(骨・骨格筋)疾患
   E 内分泌代謝疾患
   F 精神疾患
   G 皮膚疾患
   H 眼疾患
 8 認知症
   A 認知症とは
   B 認知症の分類と治療
   C 認知症の症状
   D 代表的な認知症病型

II 高齢期作業療法の実践
 GIO,SBO,修得チェックリスト
 1 作業療法士が理解しておくべき人権と尊厳
   A 高齢者の人権
   B 高齢者の人権を擁護する
   C 高齢期作業療法の実践における人権と尊厳
 2 高齢期作業療法の実践過程
   A 高齢期作業療法実践における生活のとらえ方
   B 高齢期作業療法の実践過程
 3 病期に応じた治療・援助内容の違い
   A 急性期
   B 回復期
   C 生活期(維持期)
   D 終末期──人生の最終段階
 4 実施場所に応じた治療・援助内容の違い
   A 高齢者の療養場所の移り変わり
   B 医療保険による施設
   C 介護保険による施設
   D 在宅
 5 介護予防の作業療法
   A 介護予防とは
   B 社会の変化と地域包括ケアシステム
   C 介護予防の変遷
   D 健康増進と介護予防
   E 介護予防における作業療法士の役割
   【COLUMN】 地域リハビリテーション活動支援事業
 6 認知症高齢者の作業療法
   A 認知症に対する作業療法の位置づけ
   B 作業療法における評価の目的とアセスメントツール
   C 疾患別の作業療法の視点
   D 支援場所による作業療法の実践
   E 介護家族への支援
   F 地域資源の活用
   【COLUMN】 訪問における認知症の作業療法

III 高齢期作業療法の実践事例
 1 健康高齢者のケース
 GIO,SBO,修得チェックリスト
   A 不活発な生活から活動的な生活へ
   B 作業療法初期評価
   C 作業療法士としてのかかわり,支援
   D 考察・まとめ
 2 要支援者のケース──通所リハで生活行為向上マネジメント(MTDLP)を活用したケース
 GIO,SBO,修得チェックリスト
   A 「やりたい」を引き出すきっかけづくり
   B 作業療法評価
   C 治療・指導・援助
   D 考察・まとめ
 3 要介護者のケース──医療から在宅まで
 GIO,SBO,修得チェックリスト
  ① 回復期リハビリテーション病棟
   A 在宅復帰を目指して回復期リハ病棟でできること
   B 作業療法評価・実施計画
   C 治療・指導・援助
   D 考察
  ② 介護老人保健施設
   A 医療との連携
   B 作業療法評価と計画の立案
   C 治療・指導・援助
   D 考察
  ③ 通所リハビリテーション
   A 集団での活動から役割獲得へ
   B 作業療法評価と計画の立案
   C 治療・指導・援助
   D 考察
  ④ 訪問リハビリテーション
   A 在宅から地域へ
   B 作業療法評価と計画の立案
   C 治療・指導・援助
   D 考察
  ⑤ まとめ
 4 軽度の認知症高齢者のケース
 GIO,SBO,修得チェックリスト
   A 大切な生活行為を継続するための視点
   B 作業療法評価・実施計画
   C 作業療法士としてのかかわり,支援
   D 考察・まとめ
   【COLUMN】 認知症初期集中支援チーム
 5 中等度の認知症高齢者のケース
 GIO,SBO,修得チェックリスト
   A 「その人らしさ」を引き出すアプローチ
   B 作業療法評価・実施計画
   C 治療・指導・援助
   D 考察・まとめ
 6 重度の認知症から寝たきりに移行したケース
 GIO,SBO,修得チェックリスト
   A 残存能力を見つけ活用するアプローチ
   B 作業療法評価・実施計画
   C 治療・指導・援助
   D 考察・まとめ
   【COLUMN】 認知症の人の地域生活支援
 7 介護老人保健施設においてエンド・オブ・ライフ・ケアを実施したケース
 GIO,SBO,修得チェックリスト
   A 思いを知り寄り添う
   B 作業療法評価
   C 治療・指導・援助
   D 考察・まとめ
 さらに深く学ぶために

巻末資料
 【資料1】 法制度関連資料
 【資料2】 年表

索引

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