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はじめての漢方診療 ノート 第2版

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『はじめての漢方診療 十五話[WEB動画付] 第2版』を参照し学びながら、自作ノートが完成する、漢方を学ぶすべての人のための「ノート」第2版。

漢方医学のバイブルともいわれる『傷寒論』を中心に据え、漢方臨床の有効性と楽しさを感じながら、長く使える内容となっている。読者自身が書き込みできる余白を設けており、知識の整理にも役立つ。臨床写真も加わって、漢方診療の要点がまとめられているといっても過言ではない貴重な1冊。

三潴 忠道
発行 2021年08月判型:B5頁:160
ISBN 978-4-260-04774-6
定価 3,740円 (本体3,400円+税)

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  • 序文
  • 目次
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第2版 序

 本書と『はじめての漢方診療 十五話』の初版は,講演用に私が手入力した配布資料とその講演録に基づいています.講演録である『十五話』を発刊した約2年後,読者からのご要望を受けて配布資料を本書の初版として刊行しました.この2冊はいつしか「はじ漢」と呼ばれ,勉強会や講義などでも広くご使用いただけたようです.しかし,いずれも発刊後10年以上を経過し,内容の見直しが必要だと感じていました.
 新型コロナウイルス感染症拡大に伴い,多くの行事が中止あるいは延期,リモート開催などとなり,会頭を仰せつかった第71回日本東洋医学会学術総会も15か月延期になりました.そこで,姉妹本の両書を同時に改訂しようと思い立ちました.
 本書の初版には,私自身も図や表を追加して貼り付けるなどし私だけの「ノート」に作りあげてきました.積み重ねてきた臨床の実経験に基づく記載を心掛け,改訂作業を進めたつもりです.その内容は『十五話』の図表が中心ですが構成は異なり,初版同様に漢方理論順として読者の情報整理の便を考慮しています.
 本書は卒前から卒後の臨床現場に至るまで,読者が加筆修正するなどして長くお役立ていただきたい「ノート」です.各々の臨床経験を積み重ねながら,『傷寒論』を中心に据えた漢方臨床の有効性と楽しさを感じる一助になることを願っています.
 末筆ながら,共に過ごした飯塚病院漢方診療科時代,初版作成に多大なご尽力をいただいた木村豪雄先生に心から感謝いたします.改訂にあたっては,貴重なご意見や綿密な作業をご担当いただいた,医学書院の藤本さおり氏と高橋友海氏に御礼申し上げます.

 2021(令和3)年8月 会津にて
 三潴忠道

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本書をご利用の皆様へ

概説編
 I章 漢方診療の概要
 II章 六病位とその漢方治療
 III章 気血水の変調とその漢方治療
 IV章 証の変化と方剤の運用
 V章 四診の手順と診察の実際

症候編
 1 かぜ症候群に対する漢方
 2 神経痛・関節痛に対する漢方
 3 腹満と便秘に対する漢方
 4 腹痛と下痢に対する漢方
 5 女性のための漢方
 6 皮膚疾患に対する漢方
 7 高齢者のための漢方
 8 冷えに対する漢方

付録1 収載漢方方剤集・索引
付録2 健康調査表
付録3 証判定のポイントとチェックリスト

索引

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漢方の素晴らしい世界へ誘う指南書
書評者:貝沼 茂三郎(富山大学附属病院和漢診療科特命教授)

 私が三潴忠道先生から『はじめての漢方診療 十五話』に書かれている内容について直接講義を受けたのは25年前のことである。当時の資料は現在の『はじめての漢方診療ノート』に掲載されている図表の一部が印刷されたものであり,三潴先生の診療が終わってから連夜直接講義を受けたことを今でも懐かしく覚えている。そして現在,私が漢方に傾倒するための基礎をしっかりと築くことができたのはこの連日の講義のおかげである。そのため,その時の講義内容が『はじめての漢方診療 十五話』という形で書籍になってから私は自身が行う勉強会のテキストとして本書を使用し,自分一人で読んだ回数も含めると相当な回数,この書籍にはお世話になってきた。そこで今回第2版ではどのように改訂されたのかわくわくしながら第2版を拝読した。

 通読してみてまず感じたことは初版では文面になく,勉強会で三潴先生から教えていただいたことが第2版では随所によりわかりやすく解説として加筆されていた。さらにA5判からB5判への変更,小見出し,キーワード,まとめがつくなどのレイアウトの変更もあり,解説者がいなくても独学で内容をより深く理解できるようになったと感じる。また三潴先生は漢方を広めるために西洋医学的な診断ならびに客観的な評価を重視しているが,その点が第2版でも反映されている。具体的には時代の流れに合わせて,また各専門領域の医師が見ても漢方薬の有用性を客観的に評価することができるよう,症例をいくつか差し替えている。この改訂もまたこれから漢方を学ぶものにとってはその理解を深めるために重要なことであると考える。

 一方,陰陽から始まる漢方の基本的な考え方に対する柱の部分はまったく変更しておらず,三潴先生が故・藤平健先生や小倉重成先生から学んだ教えに対する確信,ブレのなさを感じた。また本書は初心者向けではあるが,三潴先生の頻用処方の中から第2版で追加されている方剤も多数あり,また新しく加わった“漢方診療こぼれ話”も非常に読み応えがあり,臨床経験が豊富な医師にとっても新たな発見ができ,きっと日常臨床に役立つ内容であると考える。

 三潴先生は「守・破・離」とよく言われる。これから漢方を学ぼうとする先生方は本書に記載されていることを倣い,何度も繰り返し実践し修め,そして新しい発見があれば『はじめての漢方診療ノート』に加筆し,まずは自分なりの漢方医学に対する土台をしっかりと固めてほしい。本書は読者の皆さんを漢方の素晴らしい世界へ誘う指南書と確信する。


三潴流漢方奥義の書第2版を推薦する
書評者:田原 英一(飯塚病院東洋医学センター漢方診療科部長)

 三潴忠道先生は2021年,コロナ禍で延期された日本東洋医学会の会頭も務められ,大変お忙しい最中,名著“十五話”註)の第2版を出版された。本書は漢方診療の基礎を学ぶのに最適もしくは最高の一冊である。その一つの理由は,三潴先生の臨床を余すところなく公開し,いわば三潴漢方という太い柱に沿って,漢方診療が語られている点にある。

 その基本はいわゆる古方に属しながら,一方で現代の疾病構造を見据えた柔軟な診療体系を公開している。一般に西洋医学のみを学んだ者にとって,漢方の概念,臨床は難解で,一冊の本を読んだくらいでは,なかなか身につかないであろう。漢方の手引き書として,多くの著者による,さまざまな意見や考え方が錯綜するものや,単一著者ではあるが,公開されている情報が簡素過ぎて物足りないものを手に取ったことがあるが,本書は簡単すぎず,難しすぎず,それでいて骨のあるブレない一冊である。

 本書は第2版となっており,それだけでその評価が高いことが既にわかるが,その一つの要因に,誤字脱字が非常に少なく,校正によほどの力が割かれているのではないかと想像する。第2版では初版より行の間隔が空いて文字の圧迫感から解放されている。初めて出てきた見慣れない漢字には振り仮名がふられ,漢字アレルギーを生まないような工夫がされている。

 本書の構成は十五話になっているが,陰陽,特に六病位の病態理解に重点を置き,中でも三潴漢方の真骨頂である,柴胡剤と駆血剤の解説では半端ない力が注がれている。また血,水という目に見えるものを先に解説し,目に見えない気を最後に解説している順は他書では見られない。さらに本書ではほどよいタイミングで前の記載の振り返りがある点が復習効果を高めている,特に診察法や問診などについては繰り返し記載され,診察法の習熟に重点が置かれている。では初心者向けの本かというと,意外とエキス剤にもないとんでもない処方が鑑別処方として挙げられ,診療の幅がエキス漢方にとどまらない。例えば茯苓四逆湯などは基本,煎じ薬しかないのに,人参湯と同じくらいのスペースが割かれている。第2版となって,新しい記載はないのか? 実は私は小半夏加茯苓湯のところで新しい記載を発見した。初版にはない追加記載が随所に見られ,初版をお持ちの方もぜひ第2版を手元に置いていただきたい。三潴先生の似顔絵も初版より年齢を加え,「仏のオーラが出ている」と隣の診察室の女医は言っているので,ぜひ見比べていただきたい。漢方診療こぼれ話は臨床家向けの味わい深い話の百味箪笥である。また所々で敬愛してやまない藤平健先生,小倉重成先生のエピソードが紹介され,脈々と受け継がれる漢方診療の学統のぬくもりを感じさせられる。

 同時出版の『はじめての漢方診療ノート 第2版』は診察法中の解説にカラー写真がふんだんに追加掲載され,私も一枚ご協力させていただいた。記入スペースが多いのも初版以来の本書の特徴であり,臨床家である三潴先生のセンスを感じる。本書を手に取った読者はぜひどこに何が書かれているか暗記するほどに読み込んで,三潴流漢方の使い手になって欲しい。なお,三潴漢方の実践を経験したい方はいつでも,会津か飯塚に来られたし。

註)『はじめての漢方診療 十五話』2005年,医学書院刊

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