地域・在宅看護論[1]
地域・在宅看護の基盤 第6版
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- 第5次カリキュラム改正により新たに誕生した「地域・在宅看護論」に対応した、新しいテキストです。
- 看護学を学びはじめたばかりの低学年からご使用いただける内容となっています。
- 地域・在宅看護の対象は、健康レベルやライフステージなどがさまざまな「あらゆる人々」であり、医療施設のみでなく地域の「あらゆる場所」で行われる看護であることを学びます。また、看護の対象であるあらゆる人々が営む「暮らし」を理解することに重点をおいています。
- 授業中のグループワークや実習にご活用いただける「演習」など、ご授業の一助となる教材を掲載しています。
- 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | 系統看護学講座-専門分野 |
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著者代表 | 河原 加代子 |
発行 | 2022年02月判型:B5頁:232 |
ISBN | 978-4-260-04689-3 |
定価 | 2,200円 (本体2,000円+税) |
- 増刷中
- 改訂情報
更新情報
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正誤表を更新しました。
2024.07.04
-
正誤表を掲載しました。
2024.05.10
- 授業のヒント
- 序文
- 目次
- 付録・特典
- 正誤表
授業のヒント
開く
◎新カリキュラムにおける「地域・在宅看護論」のねらいと本書について,山田雅子先生にお話をうかがいました。
◎「地域・在宅看護論」の授業をつくるにあたっての考え方について,河原加代子先生にお話をうかがいました。
◎本書を利用した授業計画例をご紹介します。
◎『系統看護学講座 地域・在宅看護論1 地域・在宅看護の基盤』『系統看護学講座 地域・在宅看護論2 地域・在宅看護の実践』それぞれに,各章のねらいと学習目標をまとめました。
序文
開く
はしがき
改訂の背景
「地域・在宅看護論」は,看護基礎教育の内容と方法を検討し,教育カリキュラムの改正案を示すことを目的に,2018(平成30)年4 月から2019(令和元)年9月まで全10回にわたって開催された「看護基礎教育検討会」の議論により設定された教育内容である。
厚生労働省は,第1回「看護基礎教育検討会」の「開催要項」において「少子高齢化が一層進む中で,地域医療構想の実現や地域包括ケアシステム構築の推進に向け,人口及び疾病構造の変化に応じた適切な医療提供体制の整備が必要」であり,「これらの変化に合わせて,患者のケアを中心的に担う看護職員の就業場所は,医療機関に限らず在宅や施設等へ拡がっており,多様な場において,医師など多職種と連携して適切な保健・医療・福祉を提供することが期待されており,患者の多様性・複雑性に対応した看護を創造する能力が求められている」と,看護基礎教育の内容を見直す趣旨を述べている。
「看護基礎教育検討会」での議論を受け,在宅で療養生活を送る人々と家族をその対象としてきた従来の「在宅看護論」は,地域で暮らすすべての人々を対象とする「地域・在宅看護論」に変更され,内容も大きく拡充されることとなった。また,応用的な教育内容であることを示した統合分野という区分が廃止され,それに伴い統合分野であった「在宅看護論」は,「基礎看護学」の次に位置づけられる専門分野「地域・在宅看護論」として,地域に暮らす人々の理解とそこでの看護の教育内容が強化されたのである。
「地域・在宅看護論」のとらえ方
看護の対象である人間は,周囲の環境から影響を受け,環境との相互作用のなかでたえず変化をしながら生活を営む存在である。そのうえで,外部からの刺激に巧みに対応し,患者の生命力の消耗を最少にするように環境を整え,健康の回復に寄与することが看護学の根底をなす考え方である。「地域・在宅看護論」の学習の目的は,人々が暮らす地域という環境において,対象者の「生きること」を支えるという,看護の基本となるものを理解することである。
地域・在宅における看護は,人々が地域において,自分なりの健康で,自分の望む暮らしを送ることができ,また病気になっても住み慣れた地域で暮らすことができ,そして,その人の人生の最終段階にあたっては,自分の望む最期を,自分が望む場所で遂げることができるという,対象者や家族の望みや願いの実現を支えるものである。このような,対象者の,そして家族の「生きること」を支えるためには,1人ひとりの生き方に応じた医療とケアを,卓越した技能をもって提供する専門性が必要となる。日々の暮らしを支えるという,一見簡単にみえる地域・在宅における看護は,対象者の個別性に応じると同時に,医療とケアの提供にあたっては看護師の独創性も要求される。
地域でのケアが進められるなかで,看護には,①対象者を全人的にとらえてその暮らしを重視する,②暮らしの場を熟知する,③対象者を取り巻く環境やシステム,人的・物的資源の活用に能力を発揮する,という専門性が明確化され,求められてきた。たとえば,在宅で療養をしている医療依存度の高い対象者のケアでは,在宅での日々の健康状態を的確に判断・評価するとともに,緊急時には医療施設も含めた地域での対応を,看護師の臨床判断・実践能力をもって適切に行わなければならい。さらに,地域での暮らしの継続を支援するためには,地域のさまざまな人的・物的資源を巻き込み,効果的に活用することが必要である。
そのほか,地域の社会資源の活用や地域ネットワークの構築に向けても,看護師が専門性を発揮して独自の役割を担うことが,今後ますます求められる。たとえば,看護師が対象者の暮らしのなかからデータを収集し,その結果に基づいて行政などに新しいサービスの提案を行う,対象者の「生きること」を支えるために必要な社会資源を新たに創造するなどである。さらに,個別の看護実践にとどまらず,経験や技術を共有することで,エビデンスに基づいた地域における看護実践の向上に寄与することも求められている。
このように地域では,社会情勢の変化や医療の発展に伴う医療・介護に対する人々のニーズの変化に対応するため,実に多様な看護が行われている。地域・在宅における看護は,これからさらに発展する看護領域であり,「地域・在宅看護論」は看護師にますます期待される看護を学ぶ教育内容である。
改訂の趣旨
本書は,「看護基礎教育検討会」の議論をふまえ,『系統看護学講座 在宅看護論』を大幅に改訂したものである。看護の対象が「在宅の療養者とその家族」から「地域で暮らすすべての人々」に変更されたことに伴い,対象論や看護の役割などの概論,看護過程や看護技術,取り上げる事例,在宅も含めた地域におけるマネジメントなど,すべての内容を根本的に見直した。たとえば「食生活の援助」1つをとっても,在宅の療養者とその家族以外を対象とした医療保険・介護保険の制度外の予防的介入や,医療・介護・福祉の専門職だけに限らない幅広い連携・協働の視点を盛り込む必要があった。
また,人々の暮らし,人々が暮らす地域,ライフステージや健康レベル,多様な看護の場,従来の枠をこえた多職種連携・協働,看護の創造についての内容を盛り込むため,これまで1巻構成だった『系統看護学講座 在宅看護論』を,2巻構成に変更した。1巻目にあたる『系統看護学講座 地域・在宅看護論[1]地域・在宅看護の基盤』は,地域における人々の暮らしと健康,暮らしの基盤としての地域,看護の対象者,人々の暮らしを支える看護,看護の実践の場と連携,法制度などを内容とし,看護学を学びはじめたばかりの低学年から使用できるテキストとなっている。2巻目にあたる『系統看護学講座 地域・在宅看護論[2]地域・在宅看護の実践』は,看護過程,看護技術,時期別の看護,事例,多職種連携・協働,マネジメントなどを内容とし,看護学の学習がある程度進んで,地域・在宅看護実習を控えた段階に対応するテキストとなっている。
今回の改訂によって,地域において,人々の暮らしのなかで看護を提供することの意義やおもしろさに気づいてもらえることを願う。「看護基礎教育検討会」の求める「将来を担う看護師」の育成に資する内容を目ざしたが,まだ十分でない点もあるかと思う。ぜひ忌憚のないご意見をいただければ幸いである。
2022年2月
著者を代表して
河原加代子
目次
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序章 地域のなかでの暮らしと健康・看護
A 働くこと・学ぶことと暮らし
B 高齢者のいる暮らし
C 出産・育児と暮らし
第1章 人々の暮らしと地域・在宅看護
A 人々の暮らしの理解
1 暮らしとは
2 暮らしと健康の関係
3 暮らしのなかで健康をとらえる
B 地域・在宅看護の役割
1 地域・在宅看護の基盤となる考え方
2 地域・在宅看護に求められる役割
第2章 暮らしの基盤としての地域の理解
A 暮らしと地域
1 地域の定義
2 人々の暮らす地域の多様性
B 暮らしと地域を理解するための考え方
1 システム理論
2 システム思考
C 地域包括ケアシステムと地域共生社会
1 地域包括ケアシステム
2 地域共生社会
第3章 地域・在宅看護の対象
A 地域・在宅看護の対象者
1 地域による多様性
2 ライフステージによる多様性
3 健康レベルの多様性
B 家族の理解
1 わが国における家族の現状
2 わが国における家族とその変遷
3 地域・在宅看護の対象としての家族
C 地域に暮らす対象者の理解と看護
1 地域の特性の理解と看護
2 家族のライフステージの理解と看護
3 対象者の理解からつながりをつくる看護
第4章 地域における暮らしを支える看護
A 暮らしを支える地域・在宅看護
1 「暮らしを支える看護」とは
2 「暮らしを支える看護」の実践
B 暮らしの環境を整える看護
1 暮らしに関連する環境
2 暮らしの環境を整える看護とは
3 看護師に求められる態度・知識・姿勢
4 環境を整える看護の意義
C 広がる看護の対象と提供方法
1 健康に対する人々のニーズ
2 看護の実践方法の広がり
3 人々の健康ニーズにこたえる看護
4 健康ニーズを支える看護の実践例
D 地域における家族への看護
1 地域における家族への看護とは
2 家族を支援する看護師の基本的な姿勢
E 地域におけるライフステージに応じた看護
1 ライフステージと人々の暮らし
2 ライフステージによる健康課題と予防
3 疾病とライフステージ
4 家族とライフステージ
F 地域での暮らしにおけるリスクの理解
1 暮らしにおけるリスク
2 暮らしにおけるリスクの種類
3 できる限り安全に暮らしつづけるための援助
G 地域での暮らしにおける災害対策
1 暮らしと災害
2 地域・在宅看護と災害対策
第5章 地域・在宅看護実践の場と連携
A さまざまな場,さまざまな職種で支える地域での暮らし
B おもな地域・在宅看護実践の場
1 住まいで提供される看護
2 通所サービスの場で提供される看護
3 短期入所サービスの場で提供される看護
4 通所・短期入所・訪問サービスの場で提供される看護
5 施設サービスの場で提供される看護
6 医療機関で提供される看護
7 地域のなかで提供される看護
C 地域・在宅看護における多職種連携
1 医療専門職との連携
2 福祉専門職との連携
3 介護支援専門員(ケアマネジャー)との連携
4 多職種連携からのネットワークづくり
第6章 地域・在宅看護にかかわる制度とその活用
A 介護保険・医療保険制度
1 介護保険制度
2 医療保険制度
B 地域・在宅看護にかかわる医療提供体制
C 訪問看護の制度
1 訪問看護制度の歩み
2 訪問看護の対象者の特徴
3 訪問看護の利用者と訪問回数
4 訪問看護ステーションに関する規程
5 訪問看護の利用までの手順
6 訪問看護の費用
7 訪問看護サービスの提供
8 ケアマネジメントと社会資源の活用
D 地域保健にかかわる法制度
E 高齢者に関する法制度
F 障害者・難病に関する法制度
G 公費負担医療に関する法制度
H 権利保障に関連する制度
巻末資料訪問看護に関する参考資料
索引
付録・特典
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正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。
更新情報
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正誤表を更新しました。
2024.07.04
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正誤表を掲載しました。
2024.05.10