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リウマチ病診療ビジュアルテキスト 第3版

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プライマリケアにおけるリウマチ性疾患診療のコツを、著者所蔵の世界的にも貴重な写真を多数掲載して解説し、圧倒的な支持を得たビジュアルテキストの改訂第3版。重要な疾患である関節リウマチ、変形性関節症、痛風などの項目を全面改稿、治療薬剤についてもup-to-dateした。掲載された写真の質と量は、今版でも他書の追随を許さない。

上野 征夫
発行 2022年10月判型:A4頁:516
ISBN 978-4-260-04169-0
定価 13,200円 (本体12,000円+税)

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    2023.03.07

  • 増補索引
  • 序文
  • 目次
  • 書評
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・本紙は書籍の欧文索引をより拡充させたものです.
・第1 版第1 刷(2022 年10 月15 日発行)をご購入いただいた方向けの資料です.

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第3版 序

 米国のリウマチ学は1920年代から30年代にメイヨークリニック,ハーバード,コロンビア,ニューヨーク,ペンシルバニア,ジョンズホプキンス,ミシガンらの各大学において萌芽してくる.関節炎外来(arthritis clinic)の開設にあたっては,リウマチ学を育まんとする整形外科医からのサポートがある.少数であるが欧州(イタリア,ドイツなど)で学んだ人達も帰任して役割をはたす.
 1928年にAmerican Committee for the Control of Rheumatismが5名の内科医,3名の整形外科医で発足する.10年ほどしてAmerican Rheumatism Association(現在の米国リウマチ学会;ACR)へと発展する.『セシルのテキストブック』として有名なCornell大学のRussell Cecilは,母親のシビアな関節リウマチが,研究対象を専門の肺炎からリウマチに向かわせた.1922年Cornellクリニックで関節炎外来を継ぎ,リウマチ病の回診を関連のBellevue hospitalで行っている.彼はAmerican Rheumatism Associationの第三代目プレジデントに就任している.
 もっともこれらの胎動以前に,William Oslerはジョンズホプキンス大学教授のとき,1895年から1903年にかけて3編の論文で全身性エリテマトーデスの重要な臨床所見を記載するといった貢献がある.
 こうして最初米国東海岸,あるいは中西部において始まったリウマチ学は,時を経て米国西海岸,あるいはサンベルト地帯に広まる.1976年に筆者がカリフォルニア大学ロスアンジェルス校(UCLA)でリウマチ学のフェローで入ったときは,そこは全米で最大のリウマチ科部門を開いていた.なにしろリウマチ科に教授4名,准教授4名,助教授5名.研究職教授(PhD)が1名と助教授が1名.その他に研究員を擁していた.
 米国のリウマチ学の専門医教育の年限は長くはない.3か年の一般内科レジデントのあとリウマチ科のフェローと呼ばれるsubspecialtyでの専門研修に入るがその期間は2年と短い.UCLAのような大手の大学では1年目の臨床研修のあと,2年目は臨床ないし基礎研究という研究体験をさせてから終える.最初1年の臨床教育は短いようだが,回診と各種カンファレンス,外来教育で十分なまでの知識と技術が授けられる.全体的に,耳学問が主体をなす.外来研修は2年目も続く.
 本書第1版は当時耳学問したことをベースとしてリウマチ学の入門書として執筆した.第2版では疾患の項目数を加えた.そしてこの第3版では,バイオ製剤をはじめ,新しい薬剤の出現が多くなり,改めて自分自身で治験段階の論文から入って調べ,執筆を行った.尿酸トランスポーターは日進月歩といってよく,骨粗鬆症研究の成果は年ごとに新しい.ここでも執筆に時間をかけた.
 この本を書いているとき,かつて卒後研修で名を成した舞鶴市民病院に来ておられたノースカロライナ大学リウマチ科Nortin Hadler教授が「Rheumatology is general medicine」と言っておられた言葉を何度も思い出した.
 最後に,第1版から続けてお世話になった医学書院編集部の大橋尚彦氏,このたび加わって頂いた松本 哲氏,見事なお仕事をして下さった制作部の多淵大樹氏,永安徹也氏に心から感謝を申し上げます.
〔参考;History of Rheumatology in the United States, Smyth CJ, et al (eds). Atlanta,Arthritis Foundation, 1985〕

 2022年8月
 上野征夫

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I リウマチ病の分類

II リウマチ病へのアプローチの仕方
 1 関節痛と関節炎──単関節炎,多発性関節炎からの鑑別
 2 リウマチ病の臨床検査──検査値の見方,考え方
 3 X線写真の読み方
 4 関節液の性状からの疾患の鑑別
 5 関節の見方
 6 問診の仕方と重要なシステムレビュー
 7 眼とリウマチ病
 8 皮膚とリウマチ病
 9 Raynaud現象
 10 筋肉痛,筋力低下をきたす疾患
 11 リウマチ病の手技──関節穿刺と局所注射

III リウマチ病の治療薬剤
 1 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の用い方と副作用
 2 副腎皮質ステロイドの用い方,副作用,手術時のステロイドカバーの仕方
 3 抗リウマチ薬と免疫抑制薬
 4 生物学的製剤
 5 コルヒチン──古くて新しい薬

IV 局所疼痛診断と治療
 1 首の痛み
 2 肩の痛み
 3 肘の痛み
 4 手と手首の痛み
 5 腰の痛み
 6 膝の痛み
 7 足の痛み
 8 股関節痛

V 関節リウマチと脊椎関節炎
 1 関節リウマチ
 2 脊椎関節炎

VI 全身性エリテマトーデスとその他の結合組織疾患
 1 全身性エリテマトーデス
 2 抗リン脂質抗体症候群
 3 強皮症
 4 炎症性筋疾患
 5 リウマチ性多発筋痛症と巨細胞性動脈炎
 6 Sjögren症候群
 7 混合性結合組織病,オーバーラップ症候群,未分化結合組織病
 8 リウマチ熱
 9 成人発症Still病
 10 回帰性リウマチ
 11 結節性紅斑
 12 網状皮斑

VII 血管炎
 1 血管炎
 2 血管炎の分類
 3 血管の組織
 4 大型血管,中型血管,小型血管
 5 大型血管炎症
 6 中型,小型血管の炎症
 7 小血管炎症
 8 その他の血管炎症

VIII 変形性関節症(骨関節炎)
 1 変形性関節症(骨関節炎)

IX 結晶誘発性関節症
 1 痛風
 2 偽痛風:ピロリン酸カルシウム結晶沈着症
 3 ハイドロキシアパタイト沈着症

X 骨粗鬆症

XI 感染性関節炎
 1 ウイルス性関節炎
 2 敗血症性関節炎
 3 結核性関節炎
 4 真菌性関節炎
 5 ライム病

XII その他のリウマチ病
 1 線維筋痛症
 2 手根管症候群
 3 反射性交感神経性ジストロフィー(複合性局所疼痛症候群)
 4 Charcot関節(神経障害性関節症)
 5 ばち指と肥大性骨関節症
 6 多中心性網状組織球症

XIII 随伴性のリウマチ
 1 血液疾患,悪性腫瘍のリウマチ症状
  A.血液疾患のリウマチ症状
  B.悪性腫瘍のリウマチ症状
 2 内分泌疾患のリウマチ症状

索引

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リウマチ病診療をゆっくりと基本から教えてくれる「語り」の書
書評者:藤田 芳郎(中部ろうさい病院リウマチ・膠原病科部長)

 すごい本である。師匠である上野征夫先生の著書の書評を出版社から依頼され大著に出合う前に気軽にお引き受けし,出合った途端その大きさと厚さに圧倒されリウマチ病診療の金字塔ともいうべき書を前にして私のような未熟者に書評とはおこがましいとすくんでしまった。しかし思い切って恐る恐る大著を読み始めてみると,幼少時に紙芝居で経験したような魅力とそのわかりやすい解説に引き込まれた。なぜこんなにわかりやすいのだろう。その理由の一つは略語が少なく,たとえあっても初心者にとって難解な用語や略語には必ず上野先生ご自身の言葉による解説があるから。さらに大きな理由は,生物学的製剤が日本で普及し始めた約20年前の1999年ごろにリウマチ診療を始めた初心者の私たちにリウマチ膠原病診療をゆっくりと基本から教えていただいたのであるがその当時とほとんど同じご教授の仕方で先生のお声が聞こえてくる「語り」の書となっているからだ。上野先生が1972年に渡米されて米国で受けた訓練は主に耳学問であったと記載されており,その耳学問さながらの日本語の名文と素晴らしい印象的な写真の数々と理解しやすい図は「百聞は一見に如かず」となり一層わかりやすくなっている。

 本書の特徴については上野先生ご自身が「セシルの教科書のレベル」で一般内科医,研修医,医学生を対象にしたとの記述があり「Rheumatology is general medicine」との先生の信念が満ち溢れている。強皮症における肺の身体所見(「parasternal heave」p.246),高齢者に比較的急速に発症した錯乱の原因としての低Na血症の原因に巨細胞性動脈炎があること(p.276),シェーグレン症候群の腎臓尿細管についての詳しい病態生理の記載(p.281),感染性関節炎(p.427)の微生物の解説などまさにgeneral medicineだ。また医師としての患者さんに対する姿勢をそれとなく示してくださった関節リウマチの項にある「患者への病気説明」(p.153)は感動的な記述である。リウマチ診療の領域は日々新たな治験と新薬であふれておりそれらについて「改めて自分自身で治験段階からの論文から入って調べ,執筆を行った」とありその熱意とエネルギーは先陣を切って渡米をなされた上野先生ならではと思われるが,さらに驚いたのは骨粗鬆症(p.404)の項である。その病態生理についての解説や図が第2版から一新されている。骨粗鬆症に関連するさまざまな分子の機能と名前の覚えにくさに混乱し苦手としている分野である不勉強な私にとっても非常にわかりやすく整理・記述され,「リガンド(ligand)とは受容体に結合する物質のことである」(p.407)と初心者にも非常にわかりやすく語りかけてくださる。

 このような「Rheumatology is general medicine」を体現された大著をお一人で執筆された上野先生の頭脳と熱意に感謝するとともに素晴らしく読みやすい本を作られた出版社の方々のご努力にも敬意を評したい。著者の上野先生ご自身が対象に挙げられた一般内科医,研修医,医学生だけでなくあらゆる分野の医師のみならず医療にかかわる方々全てにお薦めしたい。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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    2023.03.07