肝癌診療マニュアル 第4版
ガイドラインの推奨を実臨床に落とし込んだ、日本肝臓学会編集によるマニュアル
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肝癌診療の実臨床において必要となる情報のすべてを、最新のガイドラインの推奨に加え、エキスパートオピニオンも踏まえて解説した日本肝臓学会編集によるマニュアルの改訂第4版。今版では『肝癌診療ガイドライン2017年版補訂版』(2020年2月)の推奨に準拠し、最新の重要なエビデンスや臨床現場の動向を取り入れた。肝癌患者に最善の医療を提供するために、肝臓領域の実地医療に携わるすべての医師に有用な1冊。
編集 | 一般社団法人 日本肝臓学会 |
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発行 | 2020年04月判型:B5頁:308 |
ISBN | 978-4-260-04081-5 |
定価 | 3,740円 (本体3,400円+税) |
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第4版 刊行にあたって
わが国の肝癌は,その実態が変貌しています.直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antiviral;DAA)の進歩によって,C型肝炎ウイルスはほぼ全例で排除が可能になりました.B型肝炎ウイルスの排除は困難ですが,核酸アナログによって制御は可能であり,肝硬変に至る症例は大幅に減少しました.このため肝癌による死亡者数は年間3万人でしたが,2003年以降は減少に転じ,2018年は2万6千人以下になりました.悪性新生物の臓器別死亡者数でも2014年には第5位に後退し,2018年には男性が第5位,女性が第6位になっています.日本肝臓学会が厚生労働省,地方自治体および産業界と連携して実施している「肝癌撲滅運動」の成果と見なすことができます.しかし,最近は,脂肪性肝炎などメタボリック症候群に起因する非ウイルス性の肝癌が増加しています.また,B型,C型肝炎ともに,肝炎ウイルス制御下でも肝癌を発症する症例が少なからず存在し,肝癌患者の病態,臨床像は変化しています.一方,肝癌に対する治療法も変化しており,分子標的薬を用いた化学療法の位置づけが大きくなりました.免疫チェックポイント阻害薬との併用も,今後の治療法として期待されています.したがって,肝癌は今でも国を挙げて対策を講じるべき疾患であることは変わりありません.また,肝臓専門医が当該領域の進歩に即して,適切な診療を実施することの重要性が増しています.
肝癌の適正診療を定着させるために,厚生労働省診療ガイドライン支援事業によって,『科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン』が2005年に作成されました.日本肝臓学会はその改訂作業を引き継ぎ,2009年に第2版,2013年に第3版を刊行し,これが現在の『肝癌診療ガイドライン2017年版』(金原出版,2017)およびその補訂版(金原出版,2020)につながっています.ガイドラインはエビデンスレベルの高い原著論文を基に作成されています.このため専門医ないし臨床研究者が実施している新たな取り組みは,記述されることはあっても,推奨される対象になりません.臨床の現場では,ガイドラインの推奨とは若干異なる医療行為を,患者の同意のもとに診療に利用しているのが現状です.ガイドラインを若干超える診療内容であっても,肝臓病専門医の間で比較的定着してきている最近の進歩にも言及した刊行物として,日本肝臓学会が発刊しているのが『肝癌診療マニュアル』です.2007年に初版を発刊し,2010年と2015年にその改訂を行いました.このたび,その後の肝癌診療の進展に鑑みて,第4版を刊行することになりました.
本書『肝癌診療マニュアル第4版』は基本的に『肝癌診療ガイドライン2017年版』およびその補訂版に準拠して,各領域の専門家が執筆しました.しかし,上記の理念に従って,研究者間で比較的多く実施されている医療行為で,将来的にガイドラインに組み込まれる可能性が高いものは記述に加えております.この目的を達成するために,複数の別施設の共同執筆者を指名し,執筆者間で批判的吟味のうえ,原稿を完成していただきました.また,日本肝臓学会の理事と企画広報委員会の委員が査読を行って,内容を確認いたしました.なお,ガイドラインではまだ推奨されていない診療に関する記述部分は,「見出し」ないし「文章」にアステリスク(*)を付けることによって,読者が明確に判別できるようにしております.本マニュアルの作成に関与されたすべての先生に感謝いたしますが,とりわけ全工程を主導的に監修いただき,ガイドラインとの擦り合わせにご尽力いただいた,工藤正俊理事(近畿大学),長谷川潔評議員(東京大学),川村祐介評議員(虎の門病院)には心より御礼申し上げます.
わが国における「肝癌撲滅運動」は新たな局面を迎えています.本マニュアルが『肝癌診療ガイドライン』と両輪を成して,肝癌撲滅に貢献することを期待します.
2020年3月吉日
一般社団法人 日本肝臓学会 常務理事/企画広報委員会委員長
持田 智
わが国の肝癌は,その実態が変貌しています.直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antiviral;DAA)の進歩によって,C型肝炎ウイルスはほぼ全例で排除が可能になりました.B型肝炎ウイルスの排除は困難ですが,核酸アナログによって制御は可能であり,肝硬変に至る症例は大幅に減少しました.このため肝癌による死亡者数は年間3万人でしたが,2003年以降は減少に転じ,2018年は2万6千人以下になりました.悪性新生物の臓器別死亡者数でも2014年には第5位に後退し,2018年には男性が第5位,女性が第6位になっています.日本肝臓学会が厚生労働省,地方自治体および産業界と連携して実施している「肝癌撲滅運動」の成果と見なすことができます.しかし,最近は,脂肪性肝炎などメタボリック症候群に起因する非ウイルス性の肝癌が増加しています.また,B型,C型肝炎ともに,肝炎ウイルス制御下でも肝癌を発症する症例が少なからず存在し,肝癌患者の病態,臨床像は変化しています.一方,肝癌に対する治療法も変化しており,分子標的薬を用いた化学療法の位置づけが大きくなりました.免疫チェックポイント阻害薬との併用も,今後の治療法として期待されています.したがって,肝癌は今でも国を挙げて対策を講じるべき疾患であることは変わりありません.また,肝臓専門医が当該領域の進歩に即して,適切な診療を実施することの重要性が増しています.
肝癌の適正診療を定着させるために,厚生労働省診療ガイドライン支援事業によって,『科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン』が2005年に作成されました.日本肝臓学会はその改訂作業を引き継ぎ,2009年に第2版,2013年に第3版を刊行し,これが現在の『肝癌診療ガイドライン2017年版』(金原出版,2017)およびその補訂版(金原出版,2020)につながっています.ガイドラインはエビデンスレベルの高い原著論文を基に作成されています.このため専門医ないし臨床研究者が実施している新たな取り組みは,記述されることはあっても,推奨される対象になりません.臨床の現場では,ガイドラインの推奨とは若干異なる医療行為を,患者の同意のもとに診療に利用しているのが現状です.ガイドラインを若干超える診療内容であっても,肝臓病専門医の間で比較的定着してきている最近の進歩にも言及した刊行物として,日本肝臓学会が発刊しているのが『肝癌診療マニュアル』です.2007年に初版を発刊し,2010年と2015年にその改訂を行いました.このたび,その後の肝癌診療の進展に鑑みて,第4版を刊行することになりました.
本書『肝癌診療マニュアル第4版』は基本的に『肝癌診療ガイドライン2017年版』およびその補訂版に準拠して,各領域の専門家が執筆しました.しかし,上記の理念に従って,研究者間で比較的多く実施されている医療行為で,将来的にガイドラインに組み込まれる可能性が高いものは記述に加えております.この目的を達成するために,複数の別施設の共同執筆者を指名し,執筆者間で批判的吟味のうえ,原稿を完成していただきました.また,日本肝臓学会の理事と企画広報委員会の委員が査読を行って,内容を確認いたしました.なお,ガイドラインではまだ推奨されていない診療に関する記述部分は,「見出し」ないし「文章」にアステリスク(*)を付けることによって,読者が明確に判別できるようにしております.本マニュアルの作成に関与されたすべての先生に感謝いたしますが,とりわけ全工程を主導的に監修いただき,ガイドラインとの擦り合わせにご尽力いただいた,工藤正俊理事(近畿大学),長谷川潔評議員(東京大学),川村祐介評議員(虎の門病院)には心より御礼申し上げます.
わが国における「肝癌撲滅運動」は新たな局面を迎えています.本マニュアルが『肝癌診療ガイドライン』と両輪を成して,肝癌撲滅に貢献することを期待します.
2020年3月吉日
一般社団法人 日本肝臓学会 常務理事/企画広報委員会委員長
持田 智
目次
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Consensus Statement
第1章 肝癌発癌機序・疫学とハイリスク患者の設定
A B型肝炎からの発癌機序
B C型肝炎からの発癌機序
C NAFLD/NASHからの発癌機序
D 肝癌の疫学とハイリスク患者の設定
E DAA治療による持続的ウイルス陰性化(SVR)後の発癌リスク
第2章 肝癌診療に必要な病理学
第3章 肝発癌予防
第4章 肝癌早期発見のためのサーベイランス
第5章 肝癌の診断
A 腫瘍マーカー
B 画像診断
1.総論
2.CTとMRIの使い分け
3.どのようなときにGd-EOB-DTPA造影MRIを行うか
4.どのようなときにCTAP,CTHAを行うか
5.どのようなときに造影超音波を行うか
6.早期肝癌の画像的特徴
7.肝細胞癌とその類似疾患の分子病理学的分類と画像所見
C 肝癌診断のアルゴリズム
1.肝細胞癌の診断アルゴリズム
2.乏血性肝細胞性結節(異型結節,早期肝癌)の自然経過と治療適応
第6章 肝癌の治療
A 総論
B 肝癌診療のための肝予備能評価とステージングシステム
C 肝癌治療の実際
1.肝切除
a)総論
b)シミュレーション,ナビゲーション
c)腹腔鏡下肝切除術
d)高齢者に対する外科治療
2.穿刺局所療法
a)PEIT,PMCT
b)ラジオ波焼灼療法(RFA)
1)経皮的RFAとRFA治療の適応拡大(多発結節/大型結節)
2)腹腔鏡下RFA
3)人工胸水下RFA
4)人工腹水下RFA
5)造影超音波下RFA
6)バイポーラRFA
7)Fusion image下RFA
3.肝動脈化学塞栓療法(TACE)
a)Conventional TACE
b)バルーン閉塞下TACE(B-TACE)
c)Beads TACE/TAE
d)Beads TACEとconventional TACEをどう使い分けるか
e)TACEと分子標的薬併用の意義
4.肝動注化学療法
a)進行肝癌に対する肝動注化学療法(low dose FP)
b)インターフェロン併用5‒FU肝動注化学療法
c)New FP療法
d)動注と分子標的薬の併用は予後を延長するか?
5.肝移植
a)肝癌に対する肝移植の現状
b)肝癌の肝移植適応
c)肝癌に対する肝移植を考慮するタイミング―患者説明のタイミング
d)肝移植前後のウイルス肝炎治療
e)肝移植後の再発に対する治療戦略
6.放射線療法
7.分子標的薬と免疫療法の動向
8.脈管腫瘍栓に対する治療
a)外科治療
b)肝動注化学療法および分子標的治療
c)塞栓療法
d)放射線治療
9.肝外病変に対する治療
D 肝癌治療のアルゴリズム
1.肝癌に対する根治的治療をどう使い分けるか―切除 vs 局所療法
2.TACE不応の定義と不応後の治療指針
3.TACE不適の概念とTACE不適intermediate stage肝癌の治療方針
4.肝動注化学療法と分子標的治療をどう使い分けるか
5.肝癌全体の治療アルゴリズム
第7章 肝癌の治療効果判定
A RFAの治療効果判定
B TACEの治療効果判定
C 肝動注化学療法の治療効果判定
D 分子標的治療の治療効果判定
E 腫瘍マーカーによる治療効果判定
第8章 肝癌治療後のフォローアップ
A 肝癌切除後のフォローアップの要点
B 肝癌RFA後のフォローアップの要点
C 肝癌TACE後のフォローアップの要点
D 肝癌根治後の再発抑制治療(進行中の臨床試験も含めて)
E 再発癌に対する治療法の選択
F 肝癌に対する肝移植後のフォローアップの要点
第9章 肝癌診療における病診・病病連携
索引
第1章 肝癌発癌機序・疫学とハイリスク患者の設定
A B型肝炎からの発癌機序
B C型肝炎からの発癌機序
C NAFLD/NASHからの発癌機序
D 肝癌の疫学とハイリスク患者の設定
E DAA治療による持続的ウイルス陰性化(SVR)後の発癌リスク
第2章 肝癌診療に必要な病理学
第3章 肝発癌予防
第4章 肝癌早期発見のためのサーベイランス
第5章 肝癌の診断
A 腫瘍マーカー
B 画像診断
1.総論
2.CTとMRIの使い分け
3.どのようなときにGd-EOB-DTPA造影MRIを行うか
4.どのようなときにCTAP,CTHAを行うか
5.どのようなときに造影超音波を行うか
6.早期肝癌の画像的特徴
7.肝細胞癌とその類似疾患の分子病理学的分類と画像所見
C 肝癌診断のアルゴリズム
1.肝細胞癌の診断アルゴリズム
2.乏血性肝細胞性結節(異型結節,早期肝癌)の自然経過と治療適応
第6章 肝癌の治療
A 総論
B 肝癌診療のための肝予備能評価とステージングシステム
C 肝癌治療の実際
1.肝切除
a)総論
b)シミュレーション,ナビゲーション
c)腹腔鏡下肝切除術
d)高齢者に対する外科治療
2.穿刺局所療法
a)PEIT,PMCT
b)ラジオ波焼灼療法(RFA)
1)経皮的RFAとRFA治療の適応拡大(多発結節/大型結節)
2)腹腔鏡下RFA
3)人工胸水下RFA
4)人工腹水下RFA
5)造影超音波下RFA
6)バイポーラRFA
7)Fusion image下RFA
3.肝動脈化学塞栓療法(TACE)
a)Conventional TACE
b)バルーン閉塞下TACE(B-TACE)
c)Beads TACE/TAE
d)Beads TACEとconventional TACEをどう使い分けるか
e)TACEと分子標的薬併用の意義
4.肝動注化学療法
a)進行肝癌に対する肝動注化学療法(low dose FP)
b)インターフェロン併用5‒FU肝動注化学療法
c)New FP療法
d)動注と分子標的薬の併用は予後を延長するか?
5.肝移植
a)肝癌に対する肝移植の現状
b)肝癌の肝移植適応
c)肝癌に対する肝移植を考慮するタイミング―患者説明のタイミング
d)肝移植前後のウイルス肝炎治療
e)肝移植後の再発に対する治療戦略
6.放射線療法
7.分子標的薬と免疫療法の動向
8.脈管腫瘍栓に対する治療
a)外科治療
b)肝動注化学療法および分子標的治療
c)塞栓療法
d)放射線治療
9.肝外病変に対する治療
D 肝癌治療のアルゴリズム
1.肝癌に対する根治的治療をどう使い分けるか―切除 vs 局所療法
2.TACE不応の定義と不応後の治療指針
3.TACE不適の概念とTACE不適intermediate stage肝癌の治療方針
4.肝動注化学療法と分子標的治療をどう使い分けるか
5.肝癌全体の治療アルゴリズム
第7章 肝癌の治療効果判定
A RFAの治療効果判定
B TACEの治療効果判定
C 肝動注化学療法の治療効果判定
D 分子標的治療の治療効果判定
E 腫瘍マーカーによる治療効果判定
第8章 肝癌治療後のフォローアップ
A 肝癌切除後のフォローアップの要点
B 肝癌RFA後のフォローアップの要点
C 肝癌TACE後のフォローアップの要点
D 肝癌根治後の再発抑制治療(進行中の臨床試験も含めて)
E 再発癌に対する治療法の選択
F 肝癌に対する肝移植後のフォローアップの要点
第9章 肝癌診療における病診・病病連携
索引
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