神経システムがわかれば脳卒中リハ戦略が決まる
神経システム+脳画像=リハ戦略 自ずとやるべきリハが見えてくる……そんな1冊です
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神経システムと脳画像は、脳卒中リハビリテーションの地図である。地図を正確によみとくために、本書冒頭に、障害部位と症状を掛け合わせたインデックスを収載。「いま知りたいこと」「自分が知るべき内容」へ的確にアクセスできる。まるで脳の内部を覗き込んでいるかのようなイラストで障害構造を提示。あわせて脳画像の見かたも解説する。症状の原因となる部位を把握することで、具体的で見通しをもったリハが実践できる!
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2023.03.10
- 序文
- 目次
- 書評
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序文
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発刊に添えて
「いつになったら良くなりますか?」
「どこまで動くようになりますか?」
数日前に突然,手足が動かなくなった患者さんが問いかけます.
「リハビリを頑張れば,今よりは必ず良くなりますよ.一緒に頑張りましょう」
理学療法士が答えます.
この理学療法士とは,20年前の私です.患者さんからの問いに対して明確に答えられず,お茶を濁すことしかできなかったのです.私自身,この練習内容で良いのか,本当に良くなるのか,迷いながらの毎日だったと記憶しています.患者さんにとって,脳卒中後のリハビリテーションは長く続き,決して楽なものではありません.いつまで続ければ良いのか,どこまで良くなるのか,見通しと目標なくして人が頑張り続けることは,難しいのではないでしょうか?
その答えを探すべく門を叩いたのが,吉尾雅春先生(現 千里リハビリテーション病院・副院長)の講座でした.そこで脳画像の見かたを学び,同じ程度の麻痺であっても,脳の損傷部位が異なると予後が異なることを知りました.そして私たちの脳は,1つの高次機能を成立させるために,複数の部位を結んだ神経システムが必要なことも.1例を挙げると,正常な遂行機能には,前頭前野だけでなく尾状核や淡蒼球,視床の背内側部,小脳の第一脚・第二脚などが関わっています.それらの部位やそれらをつなぐ連絡線維のどこか1カ所でも損傷を受ければ,遂行機能障害が出現します.またどの部分の損傷かによって,予後は異なり,アプローチ方法も変わってくるのです.
それから約20年間,学んだことを臨床に活かしつつ,さらに得られた知識と経験を,同じく吉尾雅春先生を師と仰ぎ研鑽を続けてこられた増田司氏とともに,本書にまとめることができました.
神経システムと脳画像は,脳卒中リハビリテーションの地図です.
いま,目の前の患者さんと脳卒中リハに取り組む読者の方々に本書が届くことで,症状の原因となる部位を把握し,どのようなアプローチをすることで,どれくらいの期間で,どこまで回復するのか,明確なビジョンをもってリハビリテーションを展開できるようになるでしょう.そして患者さんもセラピストも,迷うことなく1日1日のリハビリテーションに取り組み,新たな人生を楽しむことができるようになることを切に願います.
最後に本書の発刊まで,長きにわたり辛抱強く支えてくださった,医学書院編集部の金井真由子氏に心より感謝を申し上げます.
2021年4月
手塚 純一
目次
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本書の使い方
プロローグ 脳の基本構造と機能
COLUMN:脳画像の基礎知識
第1章 運動野が関わる神経システム
1.運動野が関わる神経システムの概要
2.運動野と関連領域の構造
3.運動野が関わるシステム
A.随意運動システム:錐体路系
B.高次運動制御システム:皮質・錐体外路系投射線維
C.随意運動システムと高位運動制御システムの連携
4.運動野の脳画像の見かた
5.症例でみるシステム障害とリハ戦略
第2章 脳幹が関わる神経システム
1.脳幹が関わる神経システムの概要
2.脳幹の構造
3.脳幹が関わるシステム
4.脳幹の脳画像の見かた
5.症例でみるシステム障害とリハ戦略
第3章 小脳が関わる神経システム
1.小脳が関わる神経システムの概要
2.小脳の構造
3.小脳の機能と神経システム
4.小脳の脳画像の見かた
5.症例でみるシステム障害とリハ戦略
第4章 視床が関わる神経システム
1.視床が関わる神経システムの概要
2.視床の構造
3.視床の機能と神経システム
4.視床に関連する脳画像の見かた
5.症例でみるシステム障害とリハ戦略
第5章 大脳基底核が関わる神経システム:運動系ループ
1.大脳基底核が関わる神経システムの概要
2.大脳基底核の構造
3.大脳基底核が関わる神経システム:運動系ループ
4.大脳基底核の脳画像の見かた
5.症例でみるシステム障害とリハ戦略
第6章 前頭前野・大脳辺縁系が関わる神経システム:認知系ループ
1.前頭前野・大脳辺縁系が関わる神経システムの概要
2.前頭前野と認知関連領域の構造
3.大脳辺縁系の構造
4.前頭前野・大脳辺縁系が関わる神経システム
5.前頭前野と大脳辺縁系の脳画像の見かた
6.症例でみるシステム障害とリハ戦略
第7章 頭頂連合野が関わる神経システム
1.頭頂連合野が関わる神経システムの概要
2.頭頂連合野の構造
3.頭頂連合野の機能と神経システム
4.頭頂連合野の脳画像の見かた
5.症例でみるシステム障害とリハ戦略
第8章 歩行関連領域が関わる神経システム
1.歩行関連領域が関わる神経システムの概要
2.歩行関連領域の構造
3.歩行関連領域の神経システム
4.歩行関連領域の脳画像の見かた
5.症例でみるシステム障害とリハ戦略
エピローグ 脳損傷後の回復理論
索引
COLUMN
リハ戦略とは?
「錐体路障害=痙縮」ではない!
皮質脊髄路と皮質網様体路,どちらの損傷が多いのか?
課題難易度の設定:運動要素
課題難易度の設定:姿勢レベル
主な中枢神経系の伝達物質
実用性の5大要素
サッケード(急速眼球運動)
量的評価と質的評価
Kinesie Paradoxale(矛盾運動)
ワーキングメモリー
恐怖は人を萎縮させる
情動と記憶の関係
行動制御の処理システム
運動学習における3つのアルゴリズム
やる気は運動機能の回復を促進させる?
注意ネットワーク説に基づく半側空間無視の発現メカニズム
歩行速度と伸張反射
歩行における力学的エネルギーの利用
脳卒中急性期の回復要因
書評
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「戦うことを略して勝つ」リハ戦略を知ることができる
書評者:吉尾 雅春(千里リハビリテーション病院副院長)
本書が出版されて半年が経ちました。本来ならば,出版後まもなく書評を書かせていただくべきところですが,ここまで延びてしまったことをお詫びしなければならないと思います。本書『神経システムがわかれば脳卒中リハ戦略が決まる』は,著者である手塚純一先生と増田司先生のこれまでの学びが臨床にどのように反映されているかが,見事に表現されている一冊です。甚だ失礼な言い方ではありますが,「〇〇大学教授」というような重々しい肩書きのないお二人の真摯な取り組みがここに集約されており,しかもこの後の展開が期待できるような一冊になっています。これに感動を覚えない,痺れないセラピストはいないでしょう。そのためにも早く皆様に紹介しなければならなかったのですが,本書の価格とは不釣り合いなほどその内容が重厚であり,一瞬,筆が止まってしまったことを覚えています。
2014年9月に理化学研究所を研究拠点に「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」が立ち上がりました。多くの皆さんは,脳を局所機能解剖的に学んでこられたのではないかと思います。それはそれで重要なことですが,現在では脳は局所的というよりもいろいろなネットワークを組みながら,システムとして機能していると受け止められています。その全容解明が世界的取り組みとして進められており,これまで多くのシステムが報告されてきました。
本書では,それらの中からリハビリテーション医療に即生かせそうなものを取り上げて解説しています。ただシステムを理解するだけではなく,その障害がみられたとき,どのような戦略が考えられるかを具体的に提案しています。「戦略」とは,「戦いに勝つための策略・企て」という意味をもちます。しかし,本書では「戦うことを略して勝つ」という意味の「戦略」を優先して考えていこうとしています。セラピストが無用な戦いを挑んでいる臨床場面をよくみかけます。そうしてしまう原因は,その病態が生じた理由,すなわち脳の中で何が起こっているのかということを理解せず,また活用できそうな残された部分に気付かないまま,患者に挑んでいるからだと思います。
脳のシステム障害に関して,これほどまでに多くの知識とリハ戦略のヒントをまとめた書籍はありません。日々の臨床の傍らに携えておきたい一冊です。
「難しいことをやさしく,やさしいことを深く」,臨床と脳画像の橋渡しとなる一冊
書評者:諸橋 勇(青森県立保健大教授・理学療法学)
難しいことをやさしく,やさしいことを深く
「難しいことをやさしく,やさしいことを深く,深いことを面白く」。
本書を手に取った瞬間,故人である作家の井上ひさし氏の言葉が頭に浮かびました。これは教育や学びの極意であり,本書はこれを満たすとともに,「こんな本が欲しかった」という私の希望をかなえる一冊です。CT,MRIやPETなど機器の発展に伴い,長らくBlack Boxといわれてきた脳の機能が次々に解明されてきました。脳画像診断や脳機能に関する本が多数出版され,多くのリハビリテーション専門職が学びを得ることができました。ただし,その執筆者の多くが脳を専門とする医師や研究者であったことも事実です。
臨床現場の専門職が書いた専門職のための本
例えば,多くの理学療法士は臨床や臨地で実践を重ねて,画像所見と現象を統合し,解釈しています。この統合・解釈の思考過程は,リハビリテーションの専門家にとって必要不可欠なスキルです。しかし,今まで脳画像を臨床で生かせない理由として,(1)脳の構造や機能が理解できていない,(2)画像が読影できない,(3)画像と臨床所見が結び付けられないという問題がありました。特に専門家として大切な部分は,3つ目の臨床所見と画像を結び付け,その知見を積み重ねることにあります。単なる画像読影や脳機能の解説書ではなく,臨床所見と結び付け,さらにリハビリテーションプログラムを検証している本書は,専門職が書いた専門職のための本です。
随所に見られる理解を助ける工夫
本書は,各神経システムの概要の解説,脳画像の診方,症例検討によるシステム障害とリハビリテーション戦略を,「第1章 運動野」,「第2章 脳幹」,「第3章 小脳」,「第4章 視床」,「第5章 大脳基底核」,「第6章 前頭前野・大脳辺縁系」,「第7章 頭頂連合野」,「第8章 歩行関連領域」と部位別に詳細に書かれています。
脳の立体的でオリジナルなイラストが多く,実際のCT画像と脳のイラストを比較して説明しており,視覚的に理解でき,見るだけでは難解な脳画像と実際の脳の部位と機能をマッチングさせやすく,学習意欲が続くような工夫が随所に見られます。
本書のメインコンテンツの一つである各章の「症例でみるシステム障害とリハ戦略」を理解するだけで,多面的な思考が可能となり,結果的に臨床能力が向上することは間違いありません。
社会がリハビリテーション専門職に求めるものは何か?
著者の一人である手塚純一先生は,冒頭で「神経システムと脳画像は,脳卒中リハビリテーションの地図です」と述べています。症例検討にほんの少しの画像解釈を加えただけのクリニカルリーズニングではなく,脳の機能を十分に説明した上で,それに関連した症例を提示し,それをリーズニングする姿勢こそ,社会がリハ専門職に求めている姿勢です。
ぜひ,「こんな本が欲しかった」という感覚を,本書にある地図を手にして味わってください。きっと皆さんの頭の中のジグソーパズルが,次々に組み合わさっていくことでしょう。
脳画像と臨床症状,その複雑に絡まった関係をシステマティックにひもとく一冊
書評者:松田 雅弘(順大先任准教授・理学療法学)
脳は「ブラックボックス」でいまだ解明されていない点が多い。学生時代にこう教わってから20年近くが経過した。1990年代よりCTやMRIによる画像診断が普及し,非侵襲的に脳内の変化を確認できるようになった。また,1996年にはNudoらの発見によって,脳の可塑性が明らかになった。脳を中心とした神経システムに障害が生じると,神経の再組織化が起きるという事実から,ニューロリハビリテーションの考え方が急速に広まった。
一方,私たちが提供するリハビリテーション戦略に,大きな変化はあったのであろうか? 脳の神経システムに関する知見は,神経科学の発展とともに急増している。それは,私たちセラピストも脳画像を確認し,そこから得られた情報をもとにリハ戦略を再考し,より効果的なアプローチを提供することが可能になったと言える。
しかし,養成校で教育に携わっていると,脳の構造や機能が複雑であること,いまだ解明されていないことがあるために,苦手意識を抱く学生が少なくない。脳は確かに複雑な組織であるが,脳画像によって得られる視覚的情報から,多くの機能的な状況を推論できる。苦手意識を生じさせる要因は,脳画像は理解できても,そこからどのように将来の予測を立て,効果のあるリハビリテーションを選択するかがわからないからである。複雑な事象が絡み合っているために,それをひもといて(解釈して),プログラムを決定するプロセスが難しいのである。
本書では,単純な脳画像の見方だけでなく,そこから類推される障害構造や患者の状態から,リハ戦略を組み立てる過程が明確に述べられている。さらに手塚純一先生と増田司先生ならではの工夫として,システマティックなガイドとして読み進める工夫がなされている。それだけではない。Columnの質の高さと,3Dとして脳画像を捉えるためのイラストは秀逸である。これは,本書の裏の特徴とも言える。
21世紀は「脳の世紀」と言われる。私たちはその真っただ中で,目の前の患者のリハビリテーションに携わっている。私たちが見ているのは,「動作」という現象だけでなく,その動作を生じさせている「脳の機能」である。そのつながりをひもとくために,本書はある。私は脳画像を研究し,神経理学療法に携わっている。ここまでシステマティックに洗練された本書を著した先生方の脳は,いったいどんな神経システムを構築しているか,先生方の脳機能に興味を抱くのは私だけであろうか?
多くの専門家や学生の方々に,脳画像をみる際に本書を手元に置いて,自身の治療プログラムの立案に生かしていただきたい。
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。
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正誤表を掲載しました。
2023.03.10