つまずき立ち上がる看護職たち
臨床の知を劈く看護職生涯発達学
看護職として生きていくとはどういうことか。佐藤紀子「看護職生涯発達学」の集大成
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「看護職生涯発達学」は、さまざまな壁にぶつかり、つまずき、悩みながらも成長し続ける1人ひとりの看護職を見つめてきた。本書は、看護職としてそれぞれのキャリアで生じる悩み、そして「臨床の知」を探求したいという思いに溢れた、当領域の修了生たち37名の切実な生きた言葉が綴られている。看護職として生きていく力を得られる1冊。
編著 | 佐藤 紀子 |
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発行 | 2019年10月判型:A5頁:372 |
ISBN | 978-4-260-03925-3 |
定価 | 2,970円 (本体2,700円+税) |
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目次
開く
第1章 看護職生涯発達学とは
看護職が仕事を継続していくことの意義と価値を問うこと
「看護職生涯発達学」とはどのような学問か
第2章 看護職の働き続ける力
1.働き始めてぶつかる壁に戸惑う(学生~キャリア初期)
自らつかみ取る未来,浸透する看護
卒業後2年目の男性看護師のキャリアデザインを研究した意味
非日常の手術室で看護を見いだしていく新人をみつめて
なぜ,看護師は夜勤を続けられるのか
看護職にとっての,死の悼みかた
看護職としてのキャリアを立ち止まって探究する
[解説]壁として現われるものの実相を探る
2.戸惑いながら乗り越えていく(キャリア中期)
小児病棟の中堅看護師が仕事を続けてきた原動力
大学病院の30代後半の看護師が抱える葛藤
3人の患者さんの死から,夜間の看護実践の追究へ
子どもをもつ女性看護師の経験をみつめる
40代看護師にとっての仕事の意味
[解説]現場で格闘しながらたくましく乗り越えていく看護職たち
3.多様な場で活躍し続ける看護職(キャリアの分岐点)
病院を変わった看護師の経験
介護分野の看護師として働いて気づいたこと
非正規雇用看護師として働いたことと向き合って
キャリア中期にある看護師長が抱える葛藤
認定看護師教育課程の教員であるということ
定年後も働きつづける看護職から語られたこと
[解説]キャリアの分岐点で葛藤しつつも前に進む
第3章 教えること,ともに学ぶこと
看護職の成長を支える
「教える」ことに疲弊したキャリア初期の看護職へ
現任教育担当の中堅看護師がイキイキと看護師教育を行うために
――任されたときの戸惑いや不安を前向きに
教育に責任をもつ管理者たちの実践知
途上感を抱え続ける看護教員
[解説]教えること,ともに学ぶこと
第4章 「臨床の知」を劈く
1.「科学の知」と「臨床の知」
1人ひとりが看護そのものに魅力を感じながら働き続けるために
認定看護師の熟達した看護実践をともに働く看護師たちに示すということ
印象に残る看護場面にみられる臨床判断と看護管理
[解説]看護実践のなかの2つの「知」を編み直す
2.1人ひとりの看護師のもつ個人的知識
手術看護をさがし求めて
1人ひとりの看護師の「知」を分かち合う
言葉にできない看護師の個人的知識を探求する
看護実践に埋め込まれた知の探究から考える
筋ジストロフィーの人の暮らす病棟の看護師たち
[解説]異なる場における「臨床の『知』」
3.哲学に依拠するということ
「看護職としての『私』」を看護職生涯発達学の視座から記述するための方法
「看護師の臨床における痛みを伴う経験の意味」の探求
看護職生涯発達学における『方法の問題』
[解説]看護師である「私」と劈かれる「臨床の『知』」
終章 看護職生涯発達学から看護職のあなたへ
[座談会]看護職生涯発達学を学んで――2017年度修了生たちの語り
それぞれが生きた「ものがたり」
看護職が仕事を継続していくことの意義と価値を問うこと
「看護職生涯発達学」とはどのような学問か
第2章 看護職の働き続ける力
1.働き始めてぶつかる壁に戸惑う(学生~キャリア初期)
自らつかみ取る未来,浸透する看護
卒業後2年目の男性看護師のキャリアデザインを研究した意味
非日常の手術室で看護を見いだしていく新人をみつめて
なぜ,看護師は夜勤を続けられるのか
看護職にとっての,死の悼みかた
看護職としてのキャリアを立ち止まって探究する
[解説]壁として現われるものの実相を探る
2.戸惑いながら乗り越えていく(キャリア中期)
小児病棟の中堅看護師が仕事を続けてきた原動力
大学病院の30代後半の看護師が抱える葛藤
3人の患者さんの死から,夜間の看護実践の追究へ
子どもをもつ女性看護師の経験をみつめる
40代看護師にとっての仕事の意味
[解説]現場で格闘しながらたくましく乗り越えていく看護職たち
3.多様な場で活躍し続ける看護職(キャリアの分岐点)
病院を変わった看護師の経験
介護分野の看護師として働いて気づいたこと
非正規雇用看護師として働いたことと向き合って
キャリア中期にある看護師長が抱える葛藤
認定看護師教育課程の教員であるということ
定年後も働きつづける看護職から語られたこと
[解説]キャリアの分岐点で葛藤しつつも前に進む
第3章 教えること,ともに学ぶこと
看護職の成長を支える
「教える」ことに疲弊したキャリア初期の看護職へ
現任教育担当の中堅看護師がイキイキと看護師教育を行うために
――任されたときの戸惑いや不安を前向きに
教育に責任をもつ管理者たちの実践知
途上感を抱え続ける看護教員
[解説]教えること,ともに学ぶこと
第4章 「臨床の知」を劈く
1.「科学の知」と「臨床の知」
1人ひとりが看護そのものに魅力を感じながら働き続けるために
認定看護師の熟達した看護実践をともに働く看護師たちに示すということ
印象に残る看護場面にみられる臨床判断と看護管理
[解説]看護実践のなかの2つの「知」を編み直す
2.1人ひとりの看護師のもつ個人的知識
手術看護をさがし求めて
1人ひとりの看護師の「知」を分かち合う
言葉にできない看護師の個人的知識を探求する
看護実践に埋め込まれた知の探究から考える
筋ジストロフィーの人の暮らす病棟の看護師たち
[解説]異なる場における「臨床の『知』」
3.哲学に依拠するということ
「看護職としての『私』」を看護職生涯発達学の視座から記述するための方法
「看護師の臨床における痛みを伴う経験の意味」の探求
看護職生涯発達学における『方法の問題』
[解説]看護師である「私」と劈かれる「臨床の『知』」
終章 看護職生涯発達学から看護職のあなたへ
[座談会]看護職生涯発達学を学んで――2017年度修了生たちの語り
それぞれが生きた「ものがたり」
書評
開く
すべての大学院生と教員に薦める――看護系大学院のゼミの神髄と価値(雑誌『看護教育』より)
書評者: 遠藤 俊子 (関西国際大学保健医療学部看護学科 教授)
編著者である佐藤紀子さんとは、初めての出会いからかれこれ50年になろうとする年月がたっていることに感動を覚えながら読んだ。1970年代の安保闘争や沖縄返還の時代に、私たちは看護基礎教育を受け、看護師人生が始まった。そして、定年までの14年間に佐藤紀子さんは「看護生涯発達学」領域を創設し、多くの看護職と出会い、まさに劈くに至った看護のフィロソフィーをここに表現したといえる。本書は、彼女の生きられた体験の蓄積であり、経験化された証しであろう。43人の大学院生を輩出した佐藤ゼミが醸成した「臨床の知」をこのように具体的に書くことで、看護実践や教育の神髄を読み手に波及できていることを心から尊敬する。
看護師が大学院で学ぼうとする動機はそれぞれであるが、その多くが現実の看護に悩み、もがき、もっと良い看護を実践したいと思ったとき、研究という手法で何とか切り拓きたいと進学してくる。ところが、いざ研究課題の絞り込みになると、自分が何をしたかったのか怪しくなる。研究を仕上げるには、この問いを避けては通れない。先行研究、自問自答、仲間や指導教員の助言……多くのプロセスを経て、自分の扉を開いていく。
このプロセスこそが大学院修士課程の入り口では重要であり、ゼミで教員や院生との対話を重ね、深め、納得していく、自分の研究課題への取り込みこそが肝になるであろう。佐藤ゼミで修士論文、博士論文を仕上げた多くの修了生が、苦しかったけれど、大きな収穫を得たことを本書で具体的に記している。
本書の構成は、佐藤ゼミで論文を書き上げた修了生による学位論文のテーマ・内容から構成されており、指導教授である佐藤紀子さんが編著者として、キーコンセプトを熟考している。第2章に【看護護職の働き続ける力】として、キャリア初期である新人期から定年後までの看護職の課題に取り組んだ研究をつなぎ、第3章で【看護職の成長を支える】教育担当者・管理者・教員の研究課題を紹介している。第4章では【臨床の知を劈く】として、看護実践における「科学の知」と「臨床の知」の連関を語っている。終章では、【それぞれが生きた「ものがたり」】として博士前期課程(修士)34名と博士後期課程9名の論文のなかに、看護職が仕事を継続していくことの意義と価値を問うことが描かれている。彼・彼女らとの出会いが、佐藤紀子さんの看護師人生に大きな力となったことは言うまでもない。看護生涯発達学がどのような学問であるのか、その構築を彼らとともに成しえた軌跡が見えた。
臨床と教育に携わる看護職がこのように共通認識をもち、言語化することのできる場として看護系大学院の価値をあらためて認識した。
(『看護教育』2020年2月号掲載)
書評者: 遠藤 俊子 (関西国際大学保健医療学部看護学科 教授)
編著者である佐藤紀子さんとは、初めての出会いからかれこれ50年になろうとする年月がたっていることに感動を覚えながら読んだ。1970年代の安保闘争や沖縄返還の時代に、私たちは看護基礎教育を受け、看護師人生が始まった。そして、定年までの14年間に佐藤紀子さんは「看護生涯発達学」領域を創設し、多くの看護職と出会い、まさに劈くに至った看護のフィロソフィーをここに表現したといえる。本書は、彼女の生きられた体験の蓄積であり、経験化された証しであろう。43人の大学院生を輩出した佐藤ゼミが醸成した「臨床の知」をこのように具体的に書くことで、看護実践や教育の神髄を読み手に波及できていることを心から尊敬する。
看護師が大学院で学ぼうとする動機はそれぞれであるが、その多くが現実の看護に悩み、もがき、もっと良い看護を実践したいと思ったとき、研究という手法で何とか切り拓きたいと進学してくる。ところが、いざ研究課題の絞り込みになると、自分が何をしたかったのか怪しくなる。研究を仕上げるには、この問いを避けては通れない。先行研究、自問自答、仲間や指導教員の助言……多くのプロセスを経て、自分の扉を開いていく。
このプロセスこそが大学院修士課程の入り口では重要であり、ゼミで教員や院生との対話を重ね、深め、納得していく、自分の研究課題への取り込みこそが肝になるであろう。佐藤ゼミで修士論文、博士論文を仕上げた多くの修了生が、苦しかったけれど、大きな収穫を得たことを本書で具体的に記している。
本書の構成は、佐藤ゼミで論文を書き上げた修了生による学位論文のテーマ・内容から構成されており、指導教授である佐藤紀子さんが編著者として、キーコンセプトを熟考している。第2章に【看護護職の働き続ける力】として、キャリア初期である新人期から定年後までの看護職の課題に取り組んだ研究をつなぎ、第3章で【看護職の成長を支える】教育担当者・管理者・教員の研究課題を紹介している。第4章では【臨床の知を劈く】として、看護実践における「科学の知」と「臨床の知」の連関を語っている。終章では、【それぞれが生きた「ものがたり」】として博士前期課程(修士)34名と博士後期課程9名の論文のなかに、看護職が仕事を継続していくことの意義と価値を問うことが描かれている。彼・彼女らとの出会いが、佐藤紀子さんの看護師人生に大きな力となったことは言うまでもない。看護生涯発達学がどのような学問であるのか、その構築を彼らとともに成しえた軌跡が見えた。
臨床と教育に携わる看護職がこのように共通認識をもち、言語化することのできる場として看護系大学院の価値をあらためて認識した。
(『看護教育』2020年2月号掲載)
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