片麻痺回復のための運動療法
川平法と神経路強化的促通療法の理論

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これまで治療が困難とされていた片麻痺上肢、ことに手指の麻痺の改善促進を目指して著者の創意工夫によって開発された促通手技を数多くの写真と丁寧な解説文を用いてわかりやすく説明している。すぐに活かせる促通手技が満載で、治療のレベルアップには欠くことができない1冊。
川平 和美
発行 2006年03月判型:B5頁:192
ISBN 978-4-260-00062-8
定価 4,620円 (本体4,200円+税)
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I. 初めに
II. 促通反復療法の理論的背景
 1. 機能局在
 2. 随意運動
 3. 運動学習
 4. その他の片麻痺の治療法とその理論
III. 可塑性と促通手技
 1. 可塑性の証明
 2. 機能回復のメカニズムと可塑性
 3. 可塑性のメカニズム
 4. 促通手技の問題点
 5. 片麻痺回復促進のための4つの視点
 6. 促通反復療法の原則と基本手技
 7. 促通反復療法の治療成績
IV. 上肢への促通反復療法
 1. 上肢の運動療法の原則
 2. 基本的治療手技と肩の痛みの予防
 3. 上肢の運動療法の進め方
 4. 肩の促通法
 5. 上肢全体の促通法
 6. 肘の促通法
 7. 手関節の促通法
 8. 手指の促通法
 9. 治療の目標
V. 片麻痺下肢への促通反復療法
 1. 片麻痺下肢の運動療法の原則
 2. 基本的治療手技
 3. 下肢の運動療法の進め方
 4. 股関節の促通法
 5. 下肢全体の促通法
 6. 膝の促通法
 7. 足関節の促通法
 8. 合理的な基本動作
VI. 麻痺肢の機能をいかす歩行訓練
 1. 立位バランスの訓練
 2. 歩行訓練
 3. 下肢装具と杖
VII. 運動開始困難・外眼筋麻痺への促通法
 1. 運動開始困難を合併する例への促通法
 2. 外眼筋麻痺への「迷路性眼球反射」促通法
VIII. 治療プログラムの立案
 1. 促通反復療法を含む治療プログラム作成上の留意点
 2. 患者の集中力を維持するための工夫
IX. 促通手技への課題と未来
 1. 促通手技の課題
 2. 促通手技の未来
X. 終わりに
索引

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神経回路の再建・強化を促進 川平法の技術体系を網羅
書評者: 前田 真治 (国際医療福祉大大学院教授・リハビリテーション学)
 本書は,長年の著者の研ぎ澄まされた感性と,最先端の研究への情熱,患者の詳細な観察から生まれた結晶ともいえる書物である。めざましく進歩した最近のニューロサイエンスの観点から現代のリハビリテーション技術を見直し,中枢神経の改善を科学的な根拠をもった技術体系で「川平法」として集大成したものである。リハビリテーションで用いられる神経促通法に注目し,患者が意図した動作を選択的に強化する方法により,損傷された神経の可塑性を最大限に発揮させ,麻痺を可能な限り改善させる手技が詳解されている。従来の促通手技を再評価し,「川平法」という思いの込められた治療手技をあらわし,リハビリテーションの技術として最も情熱を注ぐべき手技について熱意を込めて詳細に解説している。麻痺の改善に対するリハビリテーションの基本的手技に関して,一石を投じるものと思われる。

 本書に書かれた神経筋の促通反復療法は,従来のブルンストローム法,PNF(固有神経筋促通法)などにおける問題点を整理し,独自の観点で,神経筋の可塑性のメカニズムを最先端の科学的な根拠と結びつけている。そして,神経筋の回復には,その使用法と頻度によって可塑性が促通されるとし,促通反復法を取り入れた画期的な手法が,豊富な写真とその手技のポイントが誰にでもわかりやすい表現で,要を得て書かれている。

 最初に,この療法の基盤ともなるべき機能局在,随意運動,可塑性などの説明が,医師のみならずリハビリテーションを行う誰にでもわかりやすく図説解説されていることより,後に続く実際の促通手技が非常に理解しやすくなっている。そして,まったく促通手技を行ったことがない人にとっても,容易に習得できるように,実際の手技が実に多くの写真とともに詳細に説明されている。注目すべきは,単に理論だけの手法を示すのではなく,客観的な改善のデータを示しながら科学的な立証をしていることで,この点でも本書は十分に読むに値するものと思われる。

 本書で,特に力を入れて解説しているのが上肢についてである。肩・肘の促通はもとより,特に手指に関して,懇切丁寧な解説を入れているのに目を見張るところがある。人の生活にとって上肢の機能改善は必須であり,まさに的を射たものとなっている。

 下肢に関しても,その機能改善の具体的な手法が股・膝・足の順に上肢同様わかりやすく解説され,立位,歩行の促通法へとつながっている。歩行の促通に関しても手すり,平行棒の使い方などをはじめとし具体的に記載されており,臨床や生活の場で役に立つ知識が豊富に凝縮されている。また,運動開始困難症,外眼筋麻痺に対して触れられているのは,特記すべきである。

 実際に役立つように治療プログラムの作成の仕方,留意点がまとめられており,患者のかたわらで見ながらでも使えるようにと配慮されている。そして,促通反復手技を紹介するだけにとどまらず,再評価,有効性の実証につなげたいとする筆者の誠実な思いは,この手技に込められた期待を感じずにはおれない。

 「川平法」が,新たな神経回路を再建強化するために最も力を注ぐべきリハビリテーション治療技術として普及し,患者・障害者の方々の治療に実践されることを願い,リハビリテーションに関わる方々にぜひお薦めしたい。

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