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「21人の作業療法士」とひらく,私らしいキャリア

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選択と行動、その結果としての業績や肩書。それらはどのようにして積み重ねてこられたのか。キャリアとは果たして目に見えるものだけなのか。多様な領域で活躍する作業療法士たちは自身の転機をどうとらえ、どう動いたのか。本人自身もこれまで意識してこなかった行動の背景を深掘りすることで、「その人らしさ」の核心に迫る。「ありたい姿」に沿って生きるすべての人に届ける、21人の覚悟が詰まった渾身の書。

編集 元廣 惇 / 爲國 友梨香
発行 2024年11月判型:B5頁:304
ISBN 978-4-260-05752-3
定価 3,520円 (本体3,200円+税)

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  • 序文
  • 目次

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 本書『「21人の作業療法士」とひらく,私らしいキャリア』を手に取っていただいたことを大変嬉しく思います.
 皆さんは「キャリア」という言葉を聞くとどういったイメージが湧きますか?
 私たちが今までお会いしたセラピストの方々からしばしば聞かれる意見に「キャリアは一部のエリートだけが考えるものだ」「キャリアの成功のためには役職や業績が欠かせない」というものがあります.つまりキャリアの成功は,「実績の積み重ね」や「誰かに認めてもらう」ことによってつかみ取るものだという考えになりやすいのです.
 これまでは時代背景から,業界や職場によってキャリアの成功が定義され,そこに進んでいくことこそがよいキャリアであるといった「組織資本のキャリア」の考え方が主流でした.
 しかしながら終身雇用も崩壊し,目まぐるしい速度で常識が変化していく今の時代においては,組織に依存しない「個人資本のキャリア」について,誰しもが考える必要があります.
 「個人資本のキャリア」とは,組織内の役職や社会的立場といった客観的な指標でなく,自身の価値観に合致するか,心理的成功を得られているかといった主観的な指標を大切にする考え方です.
 個人資本のキャリアにおいては「私らしい」という価値観が重要だと私たちは考えています.どんなに外から見て立派なキャリアでも,自分自身が納得して受け入れられるものでなければ,豊かな人生には繋がらないでしょう.
 そうした意味では,誰もが「私らしい」キャリアの形を探していかなければならない時代になったといえるのかもしれません.自分以外の誰かと比較して相対的にキャリアを捉えるのでなく,自分自身に絶対的な軸をもつ必要があります.よいキャリアの持ち主は,なにも経済的,社会的な「成功者」である必要はありません.きっと,1人ひとり異なった「私らしい」キャリアの成功の形があるべきでしょう.
 また,世界におけるキャリアの潮流を読み解くに,「キャリア」は決して仕事だけに用いられる考え方ではありません.日々の生活を営む,学ぶ,結婚する,子どもを育てる,親を介護する,そうした生きていくうえでのさまざまな出来事が織り込まれていき,人のキャリアは構築されていきます.
 本書は,年齢や性別,バックグラウンドの異なる2名の編者にて,世界中のキャリアの知見をセラピスト向けにまとめて概説したうえで,国内外のさまざまな立場のキャリア開発の先駆者21名に,それぞれのストーリーをもとに「私らしいキャリア」を描いて完成した,これまでにないコンセプトの一冊です.
 きっとページをめくるたびに,あなたのキャリアとの共通点を見出したり,著者の想いやストーリーに共感したり,思いもよらなかった新しい視点を得ることができ,まさに「私らしいキャリアがひらいていく」感覚を抱いてくださることでしょう.
 これから時代の変化とともにセラピストの「キャリア」のあり方はより複雑で多様になっていきます.そんな時にこの本が「あなたらしい」キャリアを見つめる助けになることを心から願っています.
 また,本書を形にするまでには実に多くの方の協力が必要でした.このチャレンジングなテーマにご共感いただき,ご多忙のなか,お力をお貸しいただいた21名の著者の皆様,今,業界にとってこのテーマが必要であるという想いにご共感いただき,ともにこの書籍を創り上げてくださった小段様をはじめとした医学書院の皆様,これまでご一緒してきたクライエントの皆様,私たちのキャリアを支えてくださった家族,友人などすべての方に心からの敬意と感謝をお伝えします.

 元廣  惇
 爲國 友梨香

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総論
 THEME 1 「ありたい姿」を見つめる
 THEME 2 「これまで」と「これから」を繋ぐ
 THEME 3 「仕事の意味」を問う
 THEME 4 「変化する時代」を生きる
 THEME 5 「小さなアクション」を起こす
 THEME 6 「偶然の出来事」が未来をひらく
 THEME 7 「人生の転機」を乗り越える
 THEME 8 「働く」を人生全体に織り込む

各論
 EPISODE 1 リスクをとった若手の越境──ヘルスケアベンチャーへの転職と社会人大学院生の両立
 EPISODE 2 『何を仕事にしたいのか』で決めた社内の環境調整を行う企業内作業療法士
 EPISODE 3 研究活動をとおして見えてきた作業療法のおもしろさ
 EPISODE 4 日本と世界を繋げる架け橋へとなるために挑戦を続けるグローバル作業療法士
 EPISODE 5 育児も学びもともに楽しむ作業療法士夫婦
 EPISODE 6 医療機関に軸足をおきながら身近な地域への貢献に挑戦する田舎の作業療法士
 EPISODE 7 外的キャリア弱者であることをバネにして自己実現を図る臨床家
 EPISODE 8 超高齢社会のリハビリテーション・ケアに挑戦する臨床研究者
 EPISODE 9 社会に役立つ精神科作業療法士を追い求めて
 EPISODE 10 自己決定が加速させるキャリアの充実感
 EPISODE 11 挑戦と継続で輝く──作業療法士としての自己実現
 EPISODE 12 “おもしろそう”に導かれるまま経験からしか学べない不器用な自由人
 EPISODE 13 回り道は無駄じゃない,偶然の幸運な出会いを信じて歩み続ける
 EPISODE 14 作業療法の価値を活かして「越境」する社会起業家
 EPISODE 15 同じ職場で長年働き続けながらも新しいを追求する臨床家
 EPISODE 16 はみだし系作業療法士の消去法的「起業」──王道ではいられない
 EPISODE 17 作業療法の曖昧さに向き合い続ける大学教員
 EPISODE 18 うまくいかない生き方から就労支援という活きる場所をみつけて
 EPISODE 19 学校作業療法からまちの作業療法へ
 EPISODE 20 作業の力と暗黙知の言語化に魅せられた大学教員

索引