我々の足の外科
手術手技アトラス
匠の技を継承する──奈良医大式・足の外科の真髄
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奈良医大・足の外科診療班が長年にわたり築いてきた手術手技のエッセンスを余すことなく公開。前方アプローチによる前方移動骨移植術を用いた足関節固定術をはじめ、試行錯誤を重ねて磨き上げた術式について、豊富な写真とイラストで紹介。各々、手術適応や術式選択、手技のコツとピットフォールも漏れなく解説。「詳しい手術記録」のように参照しやすく、明日からの手術に活用できる、教科書を超えた、現場で本当に使える手技書。
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序文
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序
奈良県立医科大学の足の外科は,我々の師匠である高倉義典名誉教授により創始され,日本ではまだ系統だった足の外科の診療が行われていなかった時代に,未開の荒野を行くがごとく,北田力先生をはじめとした諸先輩方が試行錯誤のうえに積み上げ,後に続く我々足の外科診療班のメンバーが一緒になって肉付けして作り上げられてきたものです.今回,この書籍のお話をいただいたとき,私は16年間務めた奈良県立医科大学整形外科教室の教授の退官を控えていました.そこでこれを機に,我々が本当に良いと思い,日常的に行っている手術を手技書としてまとめることには意義があるのではないかと考えました.
その意味では本書は決して手術手技を網羅した教科書ではありません.世界で行われているそれぞれの疾患に対するスタンダードの手術法を解説したものではなく,我々のグループが行ってきた,足の外科における奈良医大・学派の標準手術書であります.ここに記載されているのは奈良医大における手術適応の考え方であり,具体的な手術手技です.もちろん足の外科の世界も日進月歩ですので,変えるべきは変え,守るべきは守り,残った手技のエッセンスを載せています.
皆様も困難な症例に出会ったときには,まず得意な術式を基本に考え,手術計画を組み立てようとすることがよくあると思います.奈良医大の足の外科診療班で得意な術式のひとつが,前方アプローチによる前方移動骨移植術を用いた足関節固定術です.脛骨前面から骨柱を採取して,距骨に開けたほぞ穴に突き刺し固定する方法で,関節鏡視下足関節固定術が一般的になる前には多く用いた術式です.得意な術式とは,その術式に関する長所と短所を熟知し,トラブルを起こさないように創意工夫を繰り返し,現在の形になった術式であるともいえます.私が研修医時代にこの術式を教えていただいたとき,宮大工のような匠の技に感動を覚え,前方をステープルで止めることによりこれがヒンジとなり,アキレス腱張力により足関節後方に圧着力が加わるために骨癒合しやすいと教わり,荷重関節に対する手術にはバイオメカニカルな視点が重要であることを学びました.本書ではそのような術式を網羅しています.
1975年に高倉名誉教授が,わが国で最初に人工足関節を開発されました.私は1984年入局で,2年目から足の外科を志して40年を超えます.もちろん当時医局長で講師をお務めになられていた高倉名誉教授のお人柄に惹かれて足の外科を選んだわけですが,入局当時の奈良医大では股関節は上野良三先生のPowells骨切り術,膝関節は藤澤義之先生の高位脛骨骨切り術が全盛を極め,人工関節は敗北の手術と考えられていました.足の外科診療班は人工関節に寛容であったことも足の外科を選んだ理由の一つであったように覚えています.日本足の外科学会は,設立当初は先天性内反足に代表される小児足を中心に議論されていましたが,それから成人の足疾患やスポーツ障害が増えていき,最近では関節リウマチや外傷を専門とされている先生方も加わり,各種デバイスの発展も相まって活況を呈しています.我々奈良医大の足の外科診療班は,これらすべての足の疾病・外傷に対応できるよう常に足のオールラウンダーを目指してきました.足の愁訴であればすべて診るという姿勢が重要で,そうすることにより安心して患者さんを紹介していただくことができると考えています.
高倉名誉教授が教授でいらっしゃった時代にもたくさんの先生方が足の外科の研修に参加されていましたが,このたび退官するにあたり振り返ってみると,教授を務めていた16年の間に,全国から足の外科の研修(3か月以上の期間)で奈良医大にいらっしゃった先生方は32名にものぼります.また,アジア各国を中心とした海外の国々から,2週間程度の短期から1年以上の長期にわたるまで,合計で104名のfellowの先生方が奈良医大で学んでいかれました.本書がこれから足の外科を目指そうとされている先生方の研修の一助になれば編者,執筆者一同,大変嬉しいかぎりです.また,本書を手に取っていただいたベテランの先生方にも,奈良医大における足の外科のエッセンスを感じとっていただき,ご自身の手術をよりよいものにしていただければ幸甚です.
本書がわが国の足の外科のさらなる発展の礎になることを心から祈念しています.
2025年10月
編集者を代表して
田中 康仁
目次
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編集・執筆者一覧
序
総論
足部・足関節への外科的アプローチ
1 足関節
1 前方アプローチ
2 後方アプローチ
3 側方アプローチ
2 足趾
1 背側アプローチ
2 背内側アプローチ
3 足関節鏡
1 前方アプローチ
2 後方アプローチ
各論
I 前足部に対する手術
1 外反母趾矯正術
1 Mitchell法
2 水平骨切り術
3 Lapidus法
2 中足部痛に対する中足骨短縮骨切り術──Weil法,Helal法
3 リスフラン関節固定術
4 関節リウマチ前足部変形に対するMTP関節温存手術(重症例を中心に)
5 強剛母趾に対する手術
1 Cheilectomy
2 MTP関節固定術
6 種子骨摘出術
7 屈趾症手術
1 PIP関節切除関節形成術
2 PIP関節固定術
3 屈筋腱背側移行術
4 長母趾屈筋腱腱切り術(Checkrein変形に対して)
8 Freiberg病に対する中足骨短縮術を併用した骨軟骨片固定術
9 Freiberg病に対する骨頭背側楔状骨切り術(Gauthier法)
10 中足骨短縮症に対する創外固定による仮骨延長術
11 内反小趾矯正術
II 後足部に対する手術
1 鏡視下足関節滑膜切除術
2 鏡視下足関節前方骨棘切除術
3 人工距骨置換術
4 人工足関節全置換術(TAA)
5 下位脛骨骨切り術
6 人工距骨併用人工足関節全置換術(Combined TAA)
7 鏡視下足関節固定術
8 観血的足関節固定術
9 観血的距骨下関節固定術
10 観血的後足部固定術(足関節・距骨下関節固定術,TTC fusion)
11 鏡視下後足部固定術(TTC fusion)
III 足変形に対する手術
1 進行性扁平足(PCFD)に対する手術
1 外側支柱延長術+ばね靱帯再建+Cotton骨切り術
2 踵骨内側移動骨切り術
2 凹足に対する手術──三関節固定術
3 内反尖足に対する手術
1 後脛骨筋腱前方移行術
2 前脛骨筋腱外側移行術
3 足部の変形矯正(尖足に対する Taylor Spatial Frameを用いた矯正)
4 アキレス腱延長術
1 アキレス腱実質部での延長術
2 腓腹筋腱の腱膜切離術(Gastrocnemius recession)
IV スポーツ障害に関連した手術
1 鏡視下三角骨切除術
2 足底腱膜切離術
3 アキレス腱付着部再建術
4 足関節外側靱帯に対する関節鏡を用いた修復術
1 鏡視下Broström法
2 鏡視下外側靱帯再建術
5 超音波ガイド下鏡視下外側靱帯修復術
6 観血的足関節外側靱帯縫合術
7 足関節外側靱帯再建術(直視下再建術)
8 遠位脛腓靱帯再建術
9 距骨滑車骨軟骨損傷(OLT)に対する手術
1 鏡視下骨髄刺激
2 骨軟骨接合術(骨釘固定法)
3 骨軟骨柱移植術(OATS)
10 足根洞郭清術
11 腓骨筋腱脱臼
1 腱鞘再建術(Das De変法)
2 骨制動術
12 第5中足骨疲労骨折に対する観血的手術
V 絞扼性神経障害に対する手術
1 足根管開放術
2 前足根管開放術
3 Morton病──神経剥離術,神経切断術
VI 小児に対する手術
1 多趾症手術
2 内反足に対する後内方解離術
3 足根骨癒合症切除術
1 距踵骨癒合症切除術
2 踵舟状骨癒合症切除術
3 舟状楔状骨癒合症切除術
4 外脛骨障害に対する手術
VII 外傷に対する手術
1 足部伸筋腱縫合術
2 屈筋腱縫合術
3 アキレス腱断裂
1 新鮮アキレス腱断裂に対するアキレス腱縫合術
2 陳旧性アキレス腱断裂に対するアキレス腱再建術
4 外果骨折に対する観血的整復固定術
5 内果,後果骨折に対する観血的整復固定術
6 ピロン骨折に対する観血的整復固定術
7 距骨骨折に対する観血的整復固定術
8 踵骨骨折に対する観血的整復固定術
9 舟状骨骨折に対する観血的整復固定術
10 リスフラン関節脱臼骨折に対する観血的整復固定術
11 陳旧性リスフラン靱帯損傷に対するサルベージ手術(関節固定術)
12 中足骨,足趾の骨折に対する観血的整復固定術
VIII 足部・足関節に対する切断術
1 糖尿病足病変に対する外科治療
2 Pirogoff足関節離断術
3 リスフラン関節離断術
4 中足骨切断
5 足趾切断術
索引
書評
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足の外科手術手技の選択肢の幅が格段に広がる良書
書評者:寺本 篤史(札幌医大教授・整形外科学)
奈良医大「足」のグループが,田中康仁先生の教授退官にあわせて執筆した『我々の足の外科―手術手技アトラス』を手にした。ページを開くと,まず編集・執筆者一覧が目に飛び込んでくる。その人数は実に29名に及び,全員が奈良医大「足」のグループの先生方である。高倉義典先生,北田力先生をはじめとするレジェンドから,現役バリバリの谷口晃先生,黒川紘章先生,そして若手の宮本拓馬先生まで,世代の幅広さが際立っている。
本書は手術手技アトラスであるが,世界的に行われているスタンダードな手術法を解説したものではない。田中先生が「序」に記しているとおり,足の外科における奈良医大・学派の標準手技書である。だからこそ価値が高く,奈良医大「足」のグループならではのオリジナリティに富んだ手術手技を学ぶことができる。
本編は,足部・足関節への外科的アプローチから始まり,前足部および後足部の変性疾患を中心とした手術手技,足変形に対する手術,スポーツ障害関連手術,さらに絞扼性神経障害に対する手術まで,足の外科手術手技の基本と応用が網羅された構成となっている。加えて,一般的な足の外科テキストでは内容が手薄になりがちな小児に対する手術,外傷手術,さらには足部・足関節に対する切断術についても多くのページが割かれ,手術手技の詳細が丁寧に紹介されている。
中でも,奈良医大オリジナルである人工距骨置換術,人工足関節全置換術(TAA),人工距骨併用人工足関節全置換術(Combined TAA)は,現在では日本全国で行われるようになった術式であるが,その基本とエッセンスを本書であらためて確認し,十分な準備を整えた上で執刀に臨みたいと感じさせられる。また,足関節外側靱帯に対する手術についても,直接縫合術,超音波ガイド下修復術,鏡視下修復術から鏡視下再建術,直視下再建術まで,最新手技を含む多彩な術式が紹介されており,読者の治療オプションを大きく広げてくれるであろう。さらに,足の外科医が敬遠しがちな糖尿病足病変に対する外科治療についても,包括的な治療戦略が解説されており,大いに参考になる。
本書は全体を通して,術野のカラー写真に加え,豊富なイラストによる解説が施されており,読者の理解を深めてくれる。それぞれの手術は非常にコンパクトかつ明快にまとめられているため,これから足の外科を志す先生方の研修の一助となることは間違いない。また,私たちのようにすでに足の外科に携わっている者にとっても,本書から奈良医大の足の外科のエッセンスを強く感じ取り,自身の手技の改良につなげることができる,まさにビッグチャンスを与えてくれる貴重な一冊である。
次世代に受け継ぐべき奈良医大足の外科の哲学と技
書評者:仁木 久照(府中恵仁会病院病院長・足の外科センター長/聖マリアンナ医大名誉教授)
「奈良医大足の外科診療班」は,わが国のみならずアジアにおける足の外科診療をけん引してきた中心的存在である。その礎は高倉義典名誉教授によって築かれ,北田力先生をはじめとする同門の先生方により,臨床と研究の両輪で体系化されてきた。そしてこの流れを大きく発展させ,今日の奈良医大足の外科の姿を完成させたのが,16年にわたり主任教授を務められた田中康仁先生である。本書は,2025年3月末日をもってご退官された田中先生の在任期間に培われた臨床哲学と手術手技を,奈良医大足の外科診療班総力でまとめ上げた,「田中康仁時代の足の外科」の集大成とも言うべき一冊である。
『我々の足の外科―手術手技アトラス』というタイトルと表紙を目にしたとき,私は津下健哉先生の名著『私の手の外科―手術アトラス』を思い起こした。一人の外科医の思想と技を後世に伝えた同書と同様に,本書もまた,奈良医大足の外科,そして田中先生の臨床哲学を次世代へと継承する書であると感じた。足の外科医が必ず遭遇する代表的手術について,手術適応,術式選択,手技の要点,ピットフォールまでが簡潔に整理されており,今後長く読み継がれる名著となるであろう。手術前に読み返し,注意点とコツを確認するのに適した分量であり,「明日からの手術にすぐ役立つ書」という評価がふさわしい。
本書は総論と各論から構成される。総論では,足関節,足趾,足関節鏡の各アプローチが原則2ページ以内に簡潔にまとめられ,体位への言及を含め,実際の手術室での判断を強く意識した記載が随所にみられる。皮切から深部展開に至るまでの要点に加え,「ここがPoint」では,術者が陥りやすいピットフォールとその回避法が具体的に示され,長年多くの症例と向き合ってきた臨床家の視点が色濃く反映されている。各論で特筆すべきは,全ての項目で「手術適応」と「保存療法の限界」が明確に示されている点である。これは田中先生が一貫して強調してこられた治療選択の核心であり,本書全体を貫く思想でもある。「いかに手術を行うか」だけでなく,「いつ,なぜ手術を選択するのか」を明確に示す姿勢は,若手のみならず中堅・ベテランの足の外科医にとっても大きな指針となる。
奈良医大足の外科診療班が長年にわたり培ってきた手術手技のエッセンスが,豊富な写真とイラストと共に凝縮された,極めて実践的な手術手技書である。本書は単なるアトラスにとどまらず,田中先生が築き上げてきた足の外科診療の哲学と技を,次世代へ確実に手渡すための記録でもある。手術に臨む前,誰もが一度は手に取りたくなる一冊となるであろう。
末尾ながら,同じ時代に整形外科医として歩み,足の外科に情熱を注いできた同級生の一人として,田中先生の長年にわたるご尽力とご業績に,心からの敬意と感謝を表したい。

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![誰も教えてくれなかった足の外科[Web動画付]](https://www.igaku-shoin.co.jp/application/files/9617/4658/5769/113741.jpg)

