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ジェネラリストのための内科診断キーフレーズ

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medicina』誌の好評連載「フレーズにピンときたら、このパターン! 鑑別診断に使えるカード」をアップデートして書籍化。内科臨床に役立つ「鑑別診断を絞り込むのに特異的、知っておくと役に立つProblem(=キーフレーズ)」から絞り込んでいく鑑別診断の考え方について、エビデンスに基づいて実践的に解説する。

シリーズ ジェネラリストのための
長野 広之
発行 2022年04月判型:A5頁:336
ISBN 978-4-260-04923-8
定価 3,850円 (本体3,500円+税)

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    2023.01.16

  • 序文
  • 目次
  • 書評
  • 付録・特典
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 「どう診断しているのか全くわからない……」

 それが2014年の年末に開かれた「桶狭間’n’Rollはいつだって大歓迎だカンファレンス(通称ONRC)2nd」での筆者の心境でした.ONRCは総合診療領域の医師が東軍,西軍に分かれ診断力を競う1年に1回のカンファレンスです.当時医師4年目で西軍の一員として出場させていただいた筆者でしたが,壇上で力不足を痛感していました.周りの医師が診断にたどり着いているなか,診断された疾患も知らなければ,診断に至るプロセスも全くわからなかったのです.打ちのめされたような感覚で会場から帰ったのを今でも覚えています.それ以降もケースカンファレンスがとても苦手でした.提示される数多ある情報をどう扱っていいかわかりませんでした.それは日常臨床でも同じです.自分が得た情報をどう整理し診断につなげるか.総合診療科として診断が難しい症例に出会うこともあります.救急外来や総合診療科外来で悩む日々が続きました.

 そんなケースカンファレンスが楽しめるようになってきたのは医師6年目くらいからのことです.疾患に着目するだけではなく,診断にたどり着いたプロセスを勉強することで日常診療に役立つポイントを得ることができます.臨床現場でも数多ある情報から診断につながるものをピックアップし,組み合わせてproblemを作るコツがわかってきました.

 本書はそんな経験から得た「鑑別診断を絞るのに特異的,知っておくと役に立つproblem」を「キーフレーズ」として扱ったものです.『medicina』誌で2020年1月~2021年6月まで連載した『鑑別診断に使えるカード フレーズにピンときたら,このパターン!』に加筆編集しています.本書が診断の勉強に悩む方の一助になれば幸いです.

 2022年4月
 長野 広之

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第1章 総論
 総論診断におけるキーフレーズとは

第2章 全身
 No.1 初期にfocusがわかりにくい発熱をきたす感染症
 No.2 CRP上昇に乏しい発熱
 No.3 脾機能低下患者の発熱
 No.4 環境要因の少ない低体温症
 No.5 食思不振を伴わない体重減少
 No.6 徐脈を伴うショック
 No.7 アルコール常用者のショック
 No.8 血圧低下のない乳酸アシドーシス
 No.9 肝機能低下のない高アンモニア血症
 No.10 血糖降下薬の関与しない低血糖
 No.11 脈拍の上昇に乏しい起立性低血圧
 No.12 遅発性アナフィラキシー(delayed anaphylaxis)

第3章 神経
 No.13 CT正常のthunderclap headache
 No.14 アルコール常用者の意識障害
 No.15 高齢発症の頭痛
 No.16 変動する/繰り返す意識障害
 No.17 原因不明の脳梗塞
 No.18 Polyneuropathy(多発神経炎)
 No.19 感覚性運動失調(sensory ataxia)
 No.20 両側性顔面神経麻痺
 No.21 反復性めまい

第4章 頭頸部
 No.22 急性発症の開口障害
 No.23 痛みを伴う単眼視力低下
 No.24 両側の急性視力障害
 No.25 耳鳴
 No.26 巨舌
 No.27 持続性/難治性吃逆
 No.28 片側性眼瞼下垂

第5章 胸部
 No.29 Ⅱ型呼吸不全
 No.30 治らない肺炎(nonresolving pneumonia)
 No.31 高拍出性心不全(high output heart failure)
 No.32 Platypnea orthodeoxia syndrome
 No.33 黒色胸水
 No.34 家族歴を認める気胸

第6章 腹部
 No.35 重篤感を伴う急性下痢
 No.36 慢性下痢
 No.37 全大腸炎(pancolitis)
 No.38 回腸末端炎,回盲部炎
 No.39 HBV,HCV感染を認めない肝硬変
 No.40 胃切除後の合併症
 No.41 無石性胆囊炎
 No.42 巨大脾腫

第7章 血液
 No.43 汎血球減少
 No.44 リンパ節腫脹,腫瘤が目立たない悪性リンパ腫
 No.45 血小板数,凝固能正常の出血傾向
 No.46 好酸球増加
 No.47 多クローン性ガンマグロブリン血症(polyclonal gammopathy)
 No.48 蛋白アルブミン逆解離
 No.49 M蛋白関連疾患

第8章 皮膚・四肢
 No.50 Palpable purpura(触知できる紫斑)
 No.51 動脈拍動正常のblue/purple toe
 No.52 Raynaud現象
 No.53 両側性ばち指
 No.54 難治性皮膚潰瘍
 No.55 手掌,足底の皮疹
 No.56 肢端紅痛症

索引

COLUMN
 学習の分類について
 筆者のJust in case learning
 書きたかった項目①:繰り返す腹痛
 書きたかった項目②:原因不明のAG開大性代謝性アシドーシス
 院外活動について
 書きたかった項目③:鉄欠乏性ではない小球性貧血
 文献の管理方法

付録 鑑別診断に使えるカード

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キーフレーズを上手に使う,「名医の王道」へと誘う良著
書評者:佐田 竜一(阪大大学院准教授・変革的感染制御システム開発学)

 臨床現場では,患者さんの問題を整理することが難しいことがしばしばある。特に昨今は,急激な超高齢社会の深化に伴い,他疾患併存が当たり前の世の中である。そのような環境における診断の複雑性を解決するためにさまざまな臨床推論に関連した良著が生まれている。本著もその系統の1つに並ぶであろう,診断方略のエッセンスを凝縮した書籍である。

 本著では,患者が持つ臨床問題のうち最も疾患特異性の高い問題点を「キーフレーズ」という言葉で表現し,そこから鑑別疾患を発想・整理することを目的としている。われわれは臨床推論を進める際,しばしば1, 2)のようなキーワードのタイプから整理を進めることが多い。

 著者が扱う「キーフレーズ」は,この中でも「Semantic qualifier」をメインに構成している。痒いところに手が届き(=臨床現場で困りやすく),かつ頻用するフレーズを抽出している点がとても秀逸である。これはひとえに,天理よろづ相談所病院,洛和会丸太町病院を経て真摯に臨床経験を積まれてきた著者の臨床能力に基づくものであると確信する(利益相反あり)。これを使えば,患者の問題点を速やかに整理できることは間違いない。いわばこの本は「名医の王道」へと誘う良著である。

 ただし,この本を使用する際には2点注意が必要である。

(1)読者のキーフレーズの診断そのものを間違えない!
 例えば本著にもあるが「ばち指」,「Raynaud症状」などの用語には「定義」がある。その定義に合わない状況を誤って診断してしまうと,臨床推論そのものを大きく踏み外すことがある。

(2)自分の経験に即したキーフレーズのカードを作ろう!
 本著の鑑別疾患は,あくまで著者が臨床的に重要だと判断した内容や,著者の臨床経験に即した記載であろう。そのため,頻度的に極めてまれなものや,逆に極めてコモンディジーズすぎるものは記載されていない。例えば「急性発症の開口障害」の第一鑑別は,僕にとっては顎関節症だ(=僕自身がそうだから)。だからこそ,読者は本に含まれている「Web付録」を使って,そこに自分なりの鑑別診断を付け加えるといいだろう。そうすれば,素晴らしい臨床経験を持つ医師の思考と,自分の実体験を合わせた自分なりの「キーフレーズ」が生まれるだろう。

●文献
1)N Engl J Med. 2006[PMID:17124019]
2)Pediatrics. 2012[PMID:23090337]


鑑別診断能力の向上に役立つジェネラリスト必携の書
書評者:原田 拓(練馬光が丘病院総合救急診療科総合診療部門科長)

 著者の長野広之先生は,現在,日本病院総合診療医学会若手医師部会副代表,日本プライマリ・ケア連合学会若手医師部門病院総合医チーム2代目代表を務められています。キャリアとしては上田剛士先生のいらっしゃる洛和会丸太町病院で研鑽を積まれた後,現在は在宅臨床をしつつ京大大学院医療経済学分野の博士課程で研究に邁進され,SNSでも積極的に情報を発信されているという,臨床も教育も研究も全てできる,まさにこれからの総合診療医を牽引される先生です。こうしたバックグラウンドから生み出される,アウトプット特集,腎盂腎炎特集,在宅医療×病院特集と,現場最前線で臨床に取り組む医師の琴線に触れる雑誌特集企画を連発されている長野先生の著書が面白くないわけがない,ということで読ませていただきました。

 本書は医学書院の総合臨床誌『medicina』で好評を博した鑑別診断の連載企画が基になっており,一言でいうと,「即日で鑑別診断能力の数も質も向上する」,そんな構成に思えました。さまざまな診断カンファレンスで無双の強さを示す長野先生が,その経験から導き出された「数多ある情報から診断につながる特異的な情報をピックアップする」という視点で執筆された,日常診療で役立つ内容になっています。

 例えば「CRP上昇に乏しい発熱」「遅発性アナフィラキシー」「リンパ節腫脹,腫瘤が目立たない悪性リンパ腫」「治らない肺炎」「原因不明の脳梗塞」……このキーワードだけでワクワクしませんか? どれも内科診療をすれば必ず出合い,そして症例によっては辛酸を舐めた方もいると思います。本書で挙げられている鑑別診断リストは,教科書には載っていないけれども実用的であり,非常に魅力的な内容になっています。

 本書の特徴は魅力的な鑑別診断リストだけではありません。わかりやすい病態ベースの説明,豊富な参考文献,使いやすい索引,鑑別診断リストをPDFで閲覧できるWeb付録もあり,書籍の内容を理解しやすい・使いやすいユーザー視点の仕様が盛りだくさんです。一周読むだけでも学びになり,二周読めばさらに学びが深まります。主だった症候の鑑別がわかってきたぐらいのフェーズの若手にも,若手を教育する立場の指導医にも,珠玉のパールがちりばめられた総論ともあわせてジェネラリスト必携の一冊です。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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