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緩和ケアレジデントマニュアル 第2版

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次々に起こる症状への対応、予後予測、ACP、家族のケア、リハビリテーション……、最期まで患者の望む時間を提供するために、何をするのか。エビデンスをアップデートしつつ、経験も重視して、より実践的に改訂。病棟でも外来でも在宅でも、がんでも非がん疾患でも、すべての患者の苦痛緩和をめざす医療スタッフに必携の書!

*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
監修 森田 達也 / 木澤 義之
編集 西 智弘 / 松本 禎久 / 森 雅紀 / 山口 崇
発行 2022年05月判型:B6変頁:536
ISBN 978-4-260-04907-8
定価 3,960円 (本体3,600円+税)

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第2版 監修の序

順調に改訂される──2022年

 順調に改訂された.
 医学の知識のターンオーバーは年々早くなっている.緩和医学は比較的スパンは長いほうだが,それでも,数年すると新規薬剤が登場し,新しく有効なことが示される治療が登場し,一方で,それまで有効だったはずの薬剤の有効性に疑問を投げかける比較試験が出る(この数年はこちらのほうが多かったかもしれない).初版発行の2016年から2022年にかけても,国内外での検証試験の報告とガイドラインの改訂がさかんに行われた.新規薬剤としては,ヒドロモルフォン,タペンタドール,ミロガバリン,アナモレリン,ナルデメジン,リナクロチドなどが国内では登場した.日本緩和医療学会や日本がんサポーティブケア学会からのガイドライン/手引きの発刊も相次いだ.本書の改訂はこれら知見を整理してupdateしたものである.エビデンス時代を反映して,初版で使用していたエビデンスレベルの☆について,☆が「根拠はないが一般的に行われている」から「観察研究」に変更され,☆☆が「質の低い比較試験か観察研究」から「1つ以上のランダム化試験」に変更された.WHOのがん疼痛ガイドラインにもメタ分析が採用されるなど,蓄積する科学的知見を臨床に生かすものである.
 内容としては,初版をおおむね引き継ぎながら改訂を行った.新しく消化管閉塞,食欲不振,咳嗽,悪性胸水,IVRの項目を追加している.
 執筆体制としては,編集4名(西,松本,森,山口)は変わりないが,50超の項目のうち半数で書き手が交代した.レジデントに向けて若手が書くという本書の構想に沿ったものである.本書がさらに,次の世代へと書き手が変わり,執筆者が編集者に,編集者が監修になることを願いたい.第3版の時には筆者の名前はなくなっていることが緩和医学が順調に進展しているということである.本書を読まれるレジデント,若手医師,若手でなくても新規に緩和医学に参入する医師が,いまだ未知のことの多いこの領域に明かりを灯すひとりになってくれることを期待したい.

 2022年3月
 森田達也


第2版 編集の序

 『緩和ケアレジデントマニュアル』の初版が発刊されて5年.多くの研修医たちのポケットに本書が入っているのを見かけ,また病棟でページを繰り,にらめっこしている若手医師の姿を見てきた.この5年の間に,少なくない医師たちの臨床の一助となれたとしたら,それは編集者として喜ばしいことであり,そしてその知識が生かされて多くの患者さんや家族の苦痛緩和に寄与したなら本望である.
 しかし,この5年の間に緩和ケアの領域はどんどん発展してきた.2013年の欧州緩和ケア学会にて「すべての,苦痛がある患者へ緩和ケアが提供されることは『基本的人権』である」と宣言したプラハ憲章が採択されて以来,各国が取り組む政策としての緩和ケアおよび研究,また公衆衛生分野の関与なども進み,緩和ケアが取り扱う領域は医療面にとどまらず地域社会との連携が求められるようになってきている.研究についても,ランダム化比較試験だけではなく,質の高い観察研究や質的研究も多数発表され,また「適切な対象に適切な時期に緩和ケアを効率よく届ける」ための緩和ケアシステムに関する研究や議論も成熟してきた.
 一方で,抗がん治療の急速な進歩に緩和ケアが対応していくことも求められてきた.ゲノム医療の発展や免疫チェックポイント阻害薬の登場により,がん治療がより個別化し,またperformance statusが多少低下していたり,高齢であったりしても,大きな有害事象なく治療が継続できるようになってきた.この時代に,昔ながらの「緩和ケアは抗がん治療をあきらめてから」を続けていては,「緩和ケアは本当に終末期だけ」の固定観念は払拭されず,苦痛にさいなまれる患者さん・家族へ適切な時期に緩和ケアを届けられない.よって,これからの時代は抗がん治療を継続しながらも,苦痛に対しては適切な緩和ケアが届くことを第一に考えるべきであり,その担い手が治療医か緩和ケア専門医であるべきかという議論はあるにしても,外来診療の現場の傍らで本書がお役に立てる場面は多いのではないかと考えている.
 また,がん以外の緩和ケアに関する研究も世界的に進み,日本においても非がん疾患の緩和ケアに対する政策的進展もあり,緩和ケアを専門とする若手はもとより循環器科や呼吸器科,腎臓内科などの各科で診療にあたる諸氏にとっても,基本的な緩和ケアの知識や技術を身につけることは必須といえるだろう.本書は,初版の編集方針を引き継ぎ,がんを中心にしながらも非がん疾患にも応用できることを念頭に置いた.
 病棟でも外来でも,すべての患者さんたちに対して,その苦痛の緩和に,本書が寄与できることを期待している.

 2022年3月
 編集者一同

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略語一覧

第1章 緩和ケアの基礎知識
  1 がん/非がんの緩和ケアの特徴
  2 Bad News Breaking
  3 予後の判定
  4 Advance Care Planning

第2章 症状の緩和
 【痛みの緩和】
  1 痛みの診断と評価
  2 痛みの治療総論
  3 NSAIDs・アセトアミノフェン
  4 オピオイド
  5 鎮痛補助薬
  6 神経ブロック
 【身体症状の緩和】
  7 体温上昇(発熱・高体温)
  8 悪心・嘔吐
  9 消化管閉塞
  10 食欲不振
  11 悪液質
  12 輸液
  13 吃逆
  14 便秘・下痢
  15 口腔に関する問題
  16 浮腫
  17 悪性腹水
  18 呼吸困難
  19 咳嗽
  20 悪性胸水
  21 死前喘鳴
  22 出血
  23 代謝の異常(進行悪性疾患に関連するもの)
  24 倦怠感
  25 骨転移・病的骨折・脊髄圧迫
  26 神経・筋の異常
  27 泌尿器科的症状
  28 皮膚の問題
  29 瘙痒感
  30 緩和的放射線療法
  31 Interventional Radiology(IVR)
 【精神症状の緩和】
  32 不眠
  33 不安
  34 せん妄
  35 抑うつ
 【鎮静】
  36 苦痛緩和のための鎮静

第3章 非がんの緩和ケア
  1 高齢者/認知症の緩和ケア
  2 心不全の緩和ケア
  3 肝不全の緩和ケア
  4 慢性腎臓病の緩和ケア
  5 神経難病の緩和ケア
  6 慢性呼吸器疾患の緩和ケア

第4章 様々な状況での緩和ケア
  1 小児の緩和ケア
  2 がんの親をもつ子どものサポート
  3 リハビリテーション
  4 スピリチュアルケア
  5 看取り
  6 ビリーブメント(死別)

付録
  1 palliative performance scale(PPS)
  2 palliative prognostic index(PPI)
  3 Karnofsky performane status
  4 palliative prognostic score(PaP score)
  5 痛みの強さの評価スケール
  6 STAS-J
  7 STAS-J症状版
  8 IPOS患者用3日間版
  9 エドモントン症状評価システム改訂版日本語版(ESAS-r-J)
  10 代表的なオピオイドとその特徴
  11 コルチコステロイドの比較

索引

コラム一覧
 ① 家族にがんの病状を伝える時
 ② 内科的治療をどこまで行うか?
 ③ 溢流性下痢
 ④ コンサルテーション
 ⑤ 漢方
 ⑥ 在宅医療
 ⑦ 代替療法についての考え方
 ⑧ AYA世代のがん患者

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比類なき網羅性を実現した第2版
書評者:柏木 秀行(飯塚病院連携医療・緩和ケア科部長)

 レジデントマニュアルシリーズと聞けば,「片手で持てて,ポケットに入るけど,ちょっと厚めのマニュアルね」と多くの人がイメージする。そのくらい,各領域に抜群の信頼性を備えた診療マニュアルとして位置付けられ,定番中の定番だろう。そんなレジデントマニュアルに,緩和ケアが仲間入りしたのが2016年であった。初版も緩和ケアにかかわる幅広い論点を網羅していたが,さらに充実したというのが第2版を手にとっての感想である。

 緩和ケアもここ数年で大きく変化した。心不全をはじめとした非がん疾患をも対象とし,今後の症状緩和のアプローチが変わっていくような薬剤も出てきた。こういったアップデートをふんだんに盛り込んだのが第2版である。緩和ケアに関するマニュアルも増えてきたが,網羅性という点において間違いなく最強であろう。そう考えると分厚さも,「これだけのことを網羅しておいて,よくこの厚さに抑えたものだ」と感じられる。

 もう少し具体的に本書の魅力について触れてみる。まず,エビデンスレベルの表記が相変わらず秀逸だ。自分の参考にしている情報やプラクティスが,何を根拠にしているかを理解することは重要である。これらの情報はただ単にマニュアルとしての価値ではなく,学習者を支援する一冊であることを物語っている。症状緩和に関しては,ここ数年で登場したヒドロモルフォンやアナモレリン,ミロガバリンといった薬剤についてカバーされている。こういった新たな薬物療法がどのように位置付けられているかに注目しつつ,安全に活用するためのガイダンスとしても活用できる。さらに,心不全や神経難病といった多様な非がん疾患に対する緩和ケアはもちろんのこと,「小児の緩和ケア」や「がんの親をもつ子どものサポート」といったさまざまな状況での緩和ケアについて扱われている。こういった点は,より緩和ケアのマニュアルらしい点として強化されている。

 以上を踏まえ,この『緩和ケアレジデントマニュアル 第2版』の使用シーンをイメージしてみる。まず文字通りのレジデント世代には,その都度確認するためのマニュアルとして活用してみよう。繰り返し手にすることで,あやふやな知識が確かなものになっていくはずだ。上級医はぜひ指導に活用してほしい。「あの本に書いてあるから見ておいてね」というには,網羅性の高いこの本がうってつけだろう。各パートはそれぞれの領域のエキスパートが手掛けている。いずれも指導医として信頼できる執筆者たちのメッセージが,あなたの目の前の学習者に直接指導してくれるのである。

 レジデント世代はもちろん,緩和ケアにかかわる幅広い医療者に活用していただきたい一冊である。


緩和ケアに携わる医療者にとって必携の書
書評者:勝俣 範之(日医大武蔵小杉病院教授・腫瘍内科)

 緩和ケアは,「診断された時からの緩和ケア」として,がんが診断された時から提供されるべきとしています(厚労省,2012年)。この『緩和ケアレジデントマニュアル 第2版』は,日本の緩和ケアの第一人者の先生方が中心になって,最新の情報をもとにつくられた実践的な教科書であり,マニュアルです。

 近年,緩和ケア研究は,治療研究にも劣らず,たくさんの臨床研究が行われ,多くのエビデンスが積み重ねられてきています。本書では,その得られた最新かつ最善のエビデンスをベースに,きちんとレビューされ,丁寧な記載がなされている点が素晴らしいと思います。また,文献にはPMIDを記載してくれているので,実際に参照する上でとても便利です。さらに,おのおのの治療やケアに対して★がつけられており,★は「観察研究などがある」,★★は「RCTが1つある」,★★★は「メタアナリスまたは複数のRCTがある」としていて,とてもわかりやすいです。

 本書は,がんの緩和ケアだけではなく,非がんの緩和ケアについても書かれています。今後は非がん患者にも緩和ケアが広がっていくと考えられますので,がん以外の医療従事者にとっても役に立つものと思われます。細かいところですが,表紙の裏側の見返しの部分にはオピオイドの換算表が載っているため,必要なときにはすぐ調べることができます。このように細かいところまで気を配られていますし,各項目の記述に関しては,きちんとレビューがなされているせいか,かなり細かいエビデンスに関しても,信頼できる記述となっています。私も数多くの書籍の編集作業をしてきましたが,この本のように多くの執筆者がいる場合,整合性の問題やエビデンスの考え方を統一させる点など,編集作業は並大抵ではなかったと思われますが,編集作業をされた監修,編集の先生方に敬意を表したいと思います。

 今後,がん診療で大切なことは,がん治療医と緩和ケア医との連携をどのようにうまくやっていくのか,という点であると考えています。本書では,早期緩和ケア(early palliative care)に関しては触れられていませんが,早期緩和ケアは,がん治療医と緩和ケア医が連携して行っていくべき大切なことですので,次回改訂時には,早期緩和ケアもぜひ紹介していただきたいと思います。

 この本は,将来緩和ケアをめざす若き医師だけではなく,緩和ケアにかかわる医師を含めた医療従事者は必携の本と思われます。また,がん治療医もぜひ手に取ってほしいと思います。そして,日本の緩和ケアの質が少しでも向上し,がん患者さんの助けになることができるように期待します。

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