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センスのいい科学英語論文の書き方

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長年にわたり多くの大学でサイエンス・ライティングを教えてきた著者が、満を持してまとめる科学英語論文の極意。一流誌に採用された論文は、ライティングも一流である。センスの良い英文は、実験結果に高い説得力と魅力を与えてくれる。本書には、英語の文章構成論、場面に合う単語選び、シグナルワードやフックの活用など、論文の質を高めるコツが満載。エディターの目を引く論文で、ワンランク上のジャーナルへの掲載を目指せ!

ジャン・E・プレゲンズ
執筆協力 岩永 敏彦
発行 2022年01月判型:A5頁:160
ISBN 978-4-260-04625-1
定価 3,740円 (本体3,400円+税)

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はじめに

 『沈黙の春 Silent Spring』は,レイチェル・カーソンRachel Louise Carsonの革新的な本ですが,次のような文で結ばれています.

 It is our alarming misfortune that so primitive a science has armed itself with the most modern and terrible weapons, and that in turning them against the insects it has also turned them against the earth.
 原始的な科学そのものが,最も近代的で恐ろしい兵器になるとは,驚くべき不運である.昆虫を攻撃すべく考え出した科学は,われわれの住む地球自体も攻撃していたのである.

 私は環境学を専門にする大学院生に教え始めるまで,『沈黙の春』を読んだことはありませんでした.この本を読んだとき,私はカーソンが複雑な科学的問題を非常にエレガントな散文で述べていることに感動を覚えました.この最後の1文も「turn them against」の繰り返しが美しくも効果的に農薬の恐ろしさを伝えてくれています.
 もちろん彼女は一般大衆である読者に訴えるべく書いていました.彼女の非常に読みやすい語り口は,彼女が取り上げた問題に,より広範囲な注目さえ与えるものでした.しかしながら,読者の注目を集めたのは単に彼女の語り口のうまさだけではありません.カーソンは告げるべきストーリーをもち,それが読者を惹きつけたのです.

 科学的な文章であっても,そこにはストーリーがある――どの研究論文も発見の物語です――といっても,過言ではないでしょう.換言すれば,正確さを求めるばかりに,単調で退屈さを感じさせる文章にしなければならないはずはありません.この本を通して,科学者が読み手を惹きつける方法で,彼らの「ストーリー」を述べることのお手伝いができれば幸いです.

 2021年10月 John E. Plagens

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はじめに
著者・執筆協力者略歴

ステップI 英語のマインドをつくる
 1 まずセンテンスから始めよ Sentence Review
  1-1 文のタイプを使い分けるコツ Sentence Types
  1-2 能動態 vs. 受動態 Active vs. Passive
  1-3 Be動詞 “Be” verb
 2 パラグラフを制するものは論文を制する Paragraph
 3 文構成はパターンを意識すると楽になる Patterns of Organization in English Rhetoric
 4 定義が肝心 Definition
 5 よい論文はロジカルな英語を使う Logic

ステップII 科学英語論文の作法
 6 アウトラインのすすめ Outlining
 7 抄録 Abstract
 8 イントロダクション Introduction
 9 材料と方法 Materials and Methods
 10 結果 Results
 11 考察と結論 Discussion and Conclusion
 12 要約のコツ Summary
 13 謝辞 Acknowledgements

ステップIII センスがよくなるコツ
 14 フックをつくる Hooks
 15 上手に書くためには英語の「耳」を訓練すること Developing an English “Ear” for Writing
 16 センスを磨くあれこれ This and That

付録 シグナルワード一覧
おわりに
索引

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language barrierに苦しんだ,若き日の自分に贈りたい一冊
書評者:倉本 秋(高知医療再生機構理事長)

 本書の著者であるジャンさんとの出会いは,1980年代後半までさかのぼる。当時私が勤務していた東大病院分院の助教授から,ジャンさんを紹介された。知り合って10年間は,2週間に1回程度おしゃべりの機会を持ち,論文ができたら校閲してもらっていた。その後,私の職場は高知大,そして高知医療再生機構へと変わったが,投稿論文は全てジャンさんの手を経ており,今では機構が販売する学内委員会Web審査システムの英文マニュアルまで校正をお願いしている。

 今回,『トップジャーナルに学ぶ センスのいい科学英語論文の書き方』を読み進めながら,30年以上前にレトロな東大分院の建物で教えてもらっていたことは,ステップIの「英語のマインドをつくる」に述べられている内容であったと気付いた。確かに,科学論文を書こうとする日本人は皆,英作文はできる。しかし残念なことに,「(日本の)学校英文法」とは似て非なる,「英文」を構成する法則,コンセプトの理解は欠落している。native speaker(以下,native)が学ぶようなparagraph writingの概念を教える授業は,日本にはないからである。そこをすっ飛ばして中学から大学まで英語を学んだ若い研究者たちは,卒前,あるいは卒後しばらくして初めての論文を完成させる。「事実は現在形で」とか,「受動態は少なめがよい」とかいう先輩の指示だけを道標に。“paragraph”を日本語の「段落」に置き換えただけの頭では,「ミニエッセイ風」などの構成は思いも至らない。このような前提を知らないと,nativeのproofreadを受け取ったとき,その朱字を許容し難い場合がある。nativeも,日本人の文の順序や改行を怪訝に思いながら,校正と格闘する羽目になる。

 推奨したいのは本書の3つの使い方である。まず,将来科学論文を書く可能性のある人は,卒業した時点で本書を読んでおいてほしい。そしてステップIの英語のマインドだけはきちんと理解しておくことを勧めたい。以後,英語論文を読みながら,耳障りでない英語を嗅ぎ分け,自分の糧にするために有用である。次に論文を書くときには,Materials and MethodsなどのセクションごとにステップIIの該当する項目を一読してから,英語類語辞典を手許に置いて書く作業を積み上げていくとよい。最後に,論文を書く前はいつでもsignal wordsの分類とステップIIIを読み返す習慣をつけると,自身の論文の質を高めることと後輩の指導に生かせそうである。こうすれば,編集者から“There is a language barrier.”と言われない,研究に対する正当な評価が待っている。

 英文学術誌の編集者であり,本書の執筆に協力された岩永敏彦先生のコラムも参考にしてほしいし,もちろんnativeの英文校正が必須であることは変わらない。投稿誌の論文の傾向をつかむ,その雑誌に必要な字句の定義を考える,大文字ルールを知るなどの教えも,示唆に富んでいる。参考文献の年号巻頁の記載順だけをチェックして論文を書き始めた私の若かりし頃にも,この本があればと悔しくなる。本書の価値はAAAである。

 

 

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