• HOME
  • 書籍
  • 6ステップで組み立てる理学療法臨床実習ガイド


6ステップで組み立てる理学療法臨床実習ガイド
臨床推論から症例報告の書き方まで

もっと見る

クリニカルクラークシップによる理学療法臨床実習が奨励されるなかで、理学療法臨床をどのように学生は学べばよいのか?……本書は、理学療法を6つのステップに分け、段階的に理学療法の実際を身に着けられるように懇切丁寧に解説する。臨床実習指導者も、理学療法の6ステップを知ることで、具体的な指導ポイントがよくわかる。激変する理学療法教育のなかで、変わらず求められる臨床能力を育むための臨床実習ガイド。実習先で使える症例レポート、三角ロジックなどのダウンロード権つき。
●読者の皆様へ web付録のご案内
本書記載のIDとパスワードをご用意のうえ、下のボタンからweb付録ページにお入りください。
>> web付録ページへ
編集 木村 大輔
発行 2020年01月判型:B5頁:272
ISBN 978-4-260-04134-8
定価 3,960円 (本体3,600円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 本書のポイントを編者の木村先生に動画で解説 いただきました。

    2021.04.08

  • 正誤表を追加しました。

    2021.03.04

  • ポイント解説動画
  • 序文
  • 目次
  • 書評
  • 正誤表

開く

〇理解を助けるポイント解説動画

三角ロジック、6ステップなど本書のポイントをご編集の木村先生に動画でレクチャーいただきました。本書の内容理解にご活用ください。

解説動画その1 三角ロジックとは

論理的に他者に説明することを手助けしてくれる「三角ロジック」についての解説と、理学療法場面での活用について解説しました。

解説動画その2 6ステップとは?

 

複雑な理学療法プロセスに対応するための6つのステップ。臨床実習の際に地図の役割を果たします。

解説動画その3 事前準備をしよう

 

患者さんに接する前の事前準備を万全にするためにはコツがあります。カルテと処方箋の読み方を学びましょう。

解説動画その4 目標を抽出しよう

 

理学療法の目標を設定するための評価計画はどのように立てるのでしょうか。

解説動画その5 目標を抽出しよう2

 

評価結果をもとにした疾患の予後予測の導き方と、三角ロジックに基づいた具体的な目標の設定方法を解説します。

解説動画その6 動作障害に対して仮説を立てよう

 

なぜ患者さんは異常な動き方をしていのか、それを知るための動作分析の基本的な考え方と、動作障害を理解するための情報収集のコツを解説します。

解説動画その7 問題点を抽出し優先順位を決めよう

 

障害構造図を使った問題点の抽出方法と、これまでの評価結果、問題点をもとにした「統合と解釈」のまとめ方を解説します。

解説動画その8 治療プログラムを立案しよう

 

動作障害を改善するための治療プログラムを立て方と初期評価レポートについて解説します。

解説動画その9 効果判定をしよう

 

治療の結果を評価判定し、今後の方針を立てる流れを解説しています。

解説動画その10 リフレクション

 

臨床のつまづきの原因がよくわかる三角ロジックを利用した振り返りの方法を解説します。

開く

推薦の序(椿原 彰夫)/はじめに(木村 大輔)


推薦の序

 理学療法士作業療法士養成施設指定規則は,この度,大幅に改正され,2020年4月1日から施行されます.その骨子は,臨床実習の時間を増やし,内容的にも見学実習ではなく,実技を主体とする実習を増加することにあります.指導者にも教育に関する研修が課せられ,有意義な実習が学生に与えられることを目指しています.理学療法士や作業療法士を目指す学生は,卒業後,国家資格を取得直後から患者や障害者に医療や介護のサービスを提供することが許されています.その行為に対して,リハビリテーション料として診療報酬や介護報酬を請求することができます.したがって,学生は臨床実習期間中に,療法士として一定以上の技術を習得しなければなりません.残念ながら,これまでの教育方法では,すべての学生が報酬を請求できるだけの技量に到達できたという現状にはありませんでした.そこで,今回,指定規則の改正が行われたというわけです.
 しかし,実習施設と教育者が整っていたとしても,理学療法の現場を初めて見学した理学療法学科の学生にとっては,目の前で行われている機能訓練の意義や内容を理解することは必ずしも容易ではありません.そんな状況下で,学生に対して,たとえば「大腿四頭筋の漸増抵抗運動を行ってください」と命じたとしても,何の目的で行うのか,なぜ筋力は増大するのか,次に行うべき治療計画が何であるのかは,脳裏には浮かんでこないことでしょう.治療経験が皆無である学生にとっては,臨床実習が開始される前に,予め,機能予後や問題点の抽出方法,治療計画の立て方について学習しておく必要があります.それを可能にしたのが,本書『6ステップで組み立てる理学療法臨床実習ガイド─臨床推論から症例報告の書き方まで』です.これまでは,学生に対して口頭で伝えられることはあっても,体系づけられていなかったため,実施されている理学療法を理解しがたい場合が少なくありませんでした.本書は,指定規則改正の時期に的を得た出版と言っても過言ではありません.
 本書では臨床実習の学習目標として,①事前準備,②目標の抽出,③仮説の立案,④目標と優先順位の決定,⑤治療プログラム立案・実施,⑥効果判定と今後の方針,の6つのステップに分けて解説しています.疾患単位で理学療法のプロセスをステップごとに理解させる教育法は,これまでの教科書に類を見ない斬新なものであると言えます.これから臨床実習を開始しようとする理学療法学科の学生諸君には,ぜひ一読してほしいと思います.また,指導に当たる予定の教員にも読んでほしい卓越した書物です.長年にわたって教育に取り組んでこられた著者の先生方の熱い思いに敬意を表するとともに,本書を多くの方々に強く推薦申し上げる次第です.

 2019年11月
 川崎医療福祉大学・川崎医療短期大学 学長
 椿原 彰夫


はじめに

 本書は,理学療法における臨床推論が身につくように構成された「臨床実習の進め方」と「症例報告書の書き方」がわかるhow to本であり,実習生,臨床実習指導者,養成校教員が「読めばわかる」内容を目指して執筆されました.
 診療参加型実習(クリニカルクラークシップ型実習)において,医師の処方箋を受け取ってから,具体的に実習生はどういう行動をとるべきかを理学療法の各ステップに分けて段階的に記載しています.「理学療法の流れ」に対応させることで,学生の行動を「6つのステップ」に分割し,一連の流れの中で理学療法全体のつながりが理解できるように構成しました.
 各ステップは,①診療参加型実習の現場で指導者の監視下で実習生が実施すること(技術),②実習生が自身の責任のもと学習しなければならない項目(自己学習),③指導者の指導のもとで理解しなければならない項目(思考)に分けて記載しています.これにより,学生は指導を仰ぐ必要があることか,自分が調べないといけないことかを識別することができるようになります.つまり,本書は実習生にとって,今自分が何をしていて,次に何をしなければいけないかが把握できる,理学療法士へと成長していくための「道標」の役割を果たします.さらに,理学療法士になった後,論理的思考ができるように三角ロジックの概念を取り入れ,学生が「人に説明できる理学療法」を意識できるように各ステップが構成されています.また臨床実習指導者にとっても,理学療法のどの段階で実習生がつまずいているか,どこを指導すればよいのかが具体的にわかるよう,指導のビジュアル化を目指しました.
 昔と比べて臨床実習のスタイルは大きく変化しています.その1つが症例レポート作成を実習中の必須課題としなくなったことです.症例レポートは臨床推論や臨床思考過程を整理し,指導しやすくする優れたツールとして活用されてきました.そのレポートを用いず,どのように効果的に臨床推論や臨床思考過程を学生に教えるのか,われわれはいまだ明確な答えを持っていません.本書では,臨床推論の過程をできるだけ行間を飛ばさずに記載するだけではなく,指導者は学生にどのような問いを与え,また実習生はその問いにどのように思考をめぐらせればよいのかをわかりやすく表現しました.レポートを介さずとも,これらのガイドによって指導者と実習生が相互的かつ能動的に学修(インタラクティブ・アンド・アクティブ・ラーニング)することができます.他方,そのメリットから,実習中および実習後に臨床推論の過程をレポート(A4用紙2~4枚程度の分量)にまとめることもあります.このような場合を想定し,本文で紹介した臨床推論をレポートにまとめるとどうなるのか,それぞれ例示しました.
 本書は,理学療法教育の現状を踏まえて,診療参加型実習(クリニカルクラークシップ型実習)とアクティブラーニングを意識し,どのように理学療法教育を進めていくか,臨床思考過程とは何か,論理的な説明とは何かについて,具体的かつ実践的に説明しました.ぜひ本書を活用され,情報過多の状況下でも知識の運用能力を高め,しなやかな思考力をもって理学療法を進めていただければと思います.

 2019年12月
 木村 大輔

開く

プロローグ
 1 症例報告で身につく3つの力
  理学療法の流れを理解する力
  情報を整理する力
  他人に説明する力
 2 臨床実習と臨床推論に役立つ2つの道具
  三角ロジック
   a.三角ロジックとは
   b.理学療法場面での三角ロジックの使い方
  臨床実習のすすめ方:6ステップ
   a.理学療法のプロセス
   b.6ステップ

I 基礎編―6ステップで理学療法を組み立てる
 1 脳卒中
  1)ステップ1 事前準備をしよう
   a.医師の処方を確認しよう
   b.医学的情報を収集しよう
   c.疾患の基礎知識を確認しよう
  2)ステップ2 目標を抽出しよう
   a.疾患に基づいた一般的評価をしよう
    ・評価項目をあげる
    ・評価の意味を理解する
    ・評価の実施
   b.主訴や社会的背景を聴取し,チームの方針を確認しよう
    ・主訴や社会的背景の聴取
    ・チームの方針の確認
   c.疾患や障害の予後予測をしよう
   d.目標を立てよう
    ・目標をより具体的にしよう
  3)ステップ3 動作障害に対して仮説を立てよう
   a.目標に即した詳細な評価をしよう(動作分析)
   b.動作障害を理解するための情報収集をしよう
   c.仮説を立てよう
   d.目標と動作障害のつながりを考えよう
  4)ステップ4 問題点を抽出し優先順位を決めよう
   a.問題点をICFに基づいて分類してみよう
    ・障害のICF分類って何?
   b.障害構造図を作成してみよう
   c.問題点の優先順位と目標の優先順位を決めよう
   d.統合と解釈を書いてみよう
  5)ステップ5 治療プログラムを立案しよう
    ・治療って何?
   a.治療対象の整理をしよう
   b.治療の根拠となる情報を収集しよう
   c.治療プログラムを書いてみよう
   d.治療プログラム立案の理由を説明してみよう
   e.症例報告書を書いてみよう
  6)ステップ6 効果判定をしよう
    ・治療の実施について
   a.初期評価時に行った評価項目を再評価しよう
   b.治療結果を考察するための情報を収集しよう
   c.今後の方針を立てよう
   d.考察を書いてみよう
   症例報告
 2 変形性股関節症(人工股関節全置換術:THA後)
  1)ステップ1 事前準備をしよう
   a.医師の処方を確認しよう
   b.医学的情報を収集しよう
   c.疾患の基礎知識を確認しよう
  2)ステップ2 目標を抽出しよう
   a.疾患に基づいた一般的評価をしよう
    ・評価項目をあげる
    ・評価の意味を理解する
    ・評価の実施
   b.主訴や社会的背景を聴取し,チームの方針を確認しよう
    ・主訴や社会的背景の聴取
    ・チームの方針の確認
   c.疾患や障害の予後予測をしよう
   d.目標を立てよう
    ・文献による情報のアップデート
    ・目標をより具体的にしよう
  3)ステップ3 動作障害に対して仮説を立てよう
   a.目標に即した詳細な評価をしよう(動作分析)
   b.動作障害を理解するための情報収集をしよう
   c.仮説を立てよう
   d.目標と動作障害のつながりを考えよう
  4)ステップ4 問題点を抽出し優先順位を決めよう
   a.問題点をICFに基づいて分類してみよう
   b.障害構造図を作成してみよう
   c.問題点の優先順位と目標の優先順位を決めよう
   d.統合と解釈を書いてみよう
  5)ステップ5 治療プログラムを立案しよう
   a.治療対象の整理をしよう
   b.治療の根拠となる情報を収集しよう
   c.治療プログラムを書いてみよう
   d.治療プログラム立案の理由を説明してみよう
   e.症例報告書を書いてみよう
  6)ステップ6 効果判定をしよう
   a.初期評価時に行った評価項目を再評価しよう
   b.治療効果を考察するための情報を収集しよう
   c.今後の方針を立てよう
   d.考察を書いてみよう
   症例報告

II 応用編―6ステップを活用した症例報告の書き方
 1 脊椎椎体骨折(脊椎圧迫骨折)
 2 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)
 3 急性心筋梗塞
 4 脊髄小脳変性症
 5 パーキンソン病
 6 変形性膝関節症

エピローグ

コラム
 OSCEについて
 6ステップを利用した指導について
 臨床と研究/情報の検索について
 臨床推論について
 Shared Decision Making(SDM)について

索引

開く

実習の形態が変わる今タイムリーな良書
書評者: 高橋 哲也 (順天堂大教授・理学療法学)
 理学療法士作業療法士養成施設指定規則が約20年ぶりに改正され,2020年4月の入学生から適用されるようになりました。特に実習に係る単位が理学療法では18単位から20単位へと増えたことが大きな特徴です。これまで理学療法士養成課程での臨床実習では,実習生にとって過剰な負荷となる課題が課されるなど,教育学を正式に学んだことのない指導者による理不尽な指導がたびたび問題となっていました。そのため,今回の指定規則改正は臨床実習の在り方に関する改正といっても過言ではありません。

 理学療法士養成課程の臨床実習は,見学実習,評価実習,総合臨床実習で構成されており,このうち評価実習と総合臨床実習については「診療参加型臨床実習が望ましい」と明記されましたが,「診療参加型実習で一人前の理学療法士になれるのか」との不安の声は根強いものがあります。これまでの方法は,「患者担当型実習」であり,じっくりと一人の患者と向き合う時間がありました。

 そんな中,『6ステップで組み立てる理学療法臨床実習ガイド』が川崎医療福祉大の木村大輔氏を編著者として刊行されました。臨床実習の形態が変わる今だからこそタイムリーな刊行で,読み進めるうちに,著者らの学生教育への熱い思いと指定規則改定後の臨床実習の在り方への提言に共感することができました。

 ベテラン理学療法士が抱く症例レポートや症例報告を課さない「診療参加型実習」への不安は,頭を抱えながらでも自ら症例報告を書いて身につく「理学療法の流れを理解する力」,「情報を整理する力」,「他人に説明する力」が「診療参加型実習」では身につき難いということに根幹があります。本書で著者らが示す三角ロジックは学生のつまずきや問題点を的確に把握するツールであり,6ステップは,ベテラン理学療法士が繰り返し経験することで身につける「パターン学習」の範を示しています。私も新人理学療法士のころ,何例も何例も脳血管障害を担当しました。まぶたを閉じれば,今でも評価パターンが浮かんできます。理学療法士の中にはパターンにはめることを嫌う人もいますが,まずは「習うより慣れろ」です。この6ステップを踏み,繰り返し患者さんへの理学療法を経験することで,臨床実習の形態変化などの不安はすぐ払拭できると思います。

 テンポのいい対話形式の挿入や,「ヒント」欄や「サプリ」欄がその都度,理解を補い,著者らから教育的指導を受けているような錯覚にも陥ります。気づけば,本書は学生向けでありながら,臨床実習指導者用の指南書であることがわかります。

 「診療参加型実習」は,一見楽なように思いますが,明確な山頂を示し,確かな登り方を教える方法ですので,場合によっては「患者担当型実習」より臨床実習指導者にとって難しいかもしれません。その難しさを知っている著者らならではの工夫がちりばめられた本書は,学生向けの本というよりも,これからの時代に求められている臨床実習指導者向けの本,加えて「診療参加型実習」を経て理学療法士となった新人を指導する新人教育担当者の本ともいえるでしょう。患者経験の少ない学生(「患者担当型実習」を経験してこなかった新人)が最も苦手とするロジカルシンキングを導く良書として,全ての施設にお薦めします。
学生はもちろん,教員や指導者のための臨床実習の教科書
書評者: 高橋 仁美 (国際医療福祉大教授・理学療法学)
 私は臨床現場で理学療法士として働いて37年になります。この間,臨床実習生の指導はもちろん,新人理学療法士を育成する経験を積ませていただきました。学生や新人の指導・育成では,若い頃は悪戦苦闘していたというのが正直なところです。しかし,診療参加型臨床実習が導入されてからは,現場での思考法となる臨床推論法,理学療法の実践,理学療法士としての態度などを総合的に指導・教育ができるようになってきたと感じています。

 現在,診療参加型臨床実習は一般的になってきていますが,大学などの授業だけでは,臨床現場に即した内容をしっかり学び,また実際の臨床実習ではどのように考え行動すればよいのかを習得するのは,なかなか難しいと思います。本書は,臨床推論法などを6つのステップに分け,実習現場での段階的な学び方について具体的にそして丁寧に提示しています。本書を臨床実習の教科書とすることで,現場における適切な理学療法を理解し,実践できるようになると信じます。また,臨床実習指導者においても理学療法の6ステップを通じて,臨床実習生や新人理学療法士への具体的な指導方法が理解できると思います。

 編集の木村大輔先生は,川崎医療福祉大の教員ではありますが,大学病院で直接に学内臨床実習を行っている立場にあるとお聞きしております。本書を拝読させていただき,木村先生のこれまでの経験を踏まえた臨床実習への確固たる思いが込められているのが伝わってきました。きっと本書は,職場の方や学生の意見も取り入れ,時間をかけて試行錯誤を繰り返して誕生したのだと思います。また,理学療法士作業療法士養成施設指定規則が大幅に改正され2020年4月1日から施行されますが,本改正により臨床実習の時間が増えることになります。このような意味で木村先生にとっては,まさにベストタイミングとなった入魂の一冊であると思います。

 私は,学生や新人の教育においては,自己実現を図るために,まずは自分自身で資質を向上させていくという姿勢が大切であると考えています。そして,教育者や指導者は,学生や理学療法士が「自らが成長していく」という姿勢を支援していくことが重要であると思っています。本書は,本文の中で解説している三角ロジックや症例報告サンプルのダウンロード権付きとなっております。こうした工夫は実習に臨む学生が自らの力で理学療法を論理的に組み立てるための手助けとなったり,みんなの前で発表したりするためには有効に働くと思います。本書は,教員や実習指導者はもちろんですが,臨床現場における人材育成や指導者自身の資質向上のためにも活用できます。「若い時に出合うことができたらよかったなぁ」と思った一冊です。強く推薦させていただきます。
学生だけでなく臨床実習指導に携わる関係者に薦める一冊
書評者: 内山 靖 (名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学理学療法学講座・教授)
 このたび,『6ステップで組み立てる理学療法臨床実習ガイド―臨床推論から症例報告の書き方まで』が,木村大輔氏を編著者として刊行されました。

 本書は,臨床実習を学ぶ際の(1)理学療法技術,(2)自己学習,(3)思考の3つの視点から,臨床実践での理学療法の流れに沿って,学生の行動を6つのステップに分割して整理されたものです。論理的に他者へ説明する手段として,三角ロジックを適用しながら極めて身近な話題を取り上げ,対話形式を交えて,事前準備,目標の抽出,仮説の立案,問題点の抽出と優先順位の決定,治療プログラム立案・実践,効果判定・今後の方針からなる理学療法の流れを解説しています。

 2020年4月から理学療法士の養成課程に適用される指定規則は101単位となりますが,そのうちの20単位が臨床実習に配当されていることからもその重要性はゆるぎないところです。臨床実習は,その過程でいくばくかの困難や自己への課題と向き合ったとしても,病める対象者の思いと臨床における理学療法士の真剣な眼差しは,学生にとって学内教育では経験できない自己を振り返る機会ともなってきました。多くの学生が,臨床実習を通して見違えるような知識の統合と職業意識ならびに自発的な学習意欲を身につけ,一段と成長した上で卒業していく様子を目の当たりにしています。

 臨床実習では,対人関係,これまでの知識の不足を一気に挽回しようとする過剰な学習,有病者に適用できる基本的技能,実践レベルでのコミュニケーション能力,周囲のペースやニーズに合わせながらの臨機応変な行動など,新たな学習課題が複合的に関連するために学生や指導者は相応のストレスにさらされています。この解決のために多くの努力が払われていますが,根幹的な課題の一つとして,既存の知識・技術・態度を統合する思考の整理について臨床の流れの中で学習することが重要になります。著者らは,早い段階でこの本質的な課題に気付き,正面から真摯(しんし)に向き合ってきた成果の一端が本書に凝縮されています。完成度の高い内容もさることながら,理学療法に対する熱い思いと学生に対する暖かい眼差しをこれほど強く感じさせる書籍は珍しいと思います。著者らは,ロジカルシンキングに関心を持って同じ研究会に所属しているようで,日々の熱い討議が紙面を通じて伝わってきます。

 このような書籍に共通したジレンマとして,一定の理解や関心がある人はさらによくわかるようになり,そのための工夫の余地も大きいのですが,一定のレディネスに到達していない人には難解で,何を学ぶかがよくわからない点をいかに乗り越えるのかの課題が横たわります。その点からは,本書は学生ととともに,臨床実習指導に携わる関係者にお薦めするものです。また,学生が考えていることや,何がわからないかがわからなくなりつつあるシニアの臨床家や教員にぜひとも推薦したい一冊です。

開く

本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

正誤表はこちら

タグキーワード

  • 本書のポイントを編者の木村先生に動画で解説 いただきました。

    2021.04.08

  • 正誤表を追加しました。

    2021.03.04