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かゆいところに手が届く!まるわかり糖尿病塾

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プレ初診(潜在患者のスクリーニング)から内服薬・注射薬の使い分け、対応の難しい患者への接し方まで、糖尿病診療を行うプライマリ・ケア医が求める知識を厳選。インスリンの打ち方、紹介状の書き方など、“かゆいところに手が届く”情報も盛りだくさん。最新のエビデンスに基づきつつ「臨床現場で明日から使える知識」を知りたい、というニーズに応える一冊!
*「ジェネラリストBOOKS」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ ジェネラリストBOOKS
編集 三澤 美和 / 岡崎 研太郎
発行 2020年11月判型:A5頁:402
ISBN 978-4-260-03928-4
定価 4,950円 (本体4,500円+税)

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まえがき

 2020年夏,日本は56年ぶりの自国でのオリンピック開催に大いに沸いているはずでした.海やプールには子供たちの声が響き,夏の夜空に大輪の花火が咲き誇り,私たちはいつも通りの暑い夏を迎えていたはずでした.しかし,2019年冬から世界中が新型コロナウイルス感染症という未曾有のパンデミックに襲われ,私たちは当たり前だった日常が当たり前でなくなる瞬間を経験しました.勉強会や学会にみんなが集まって「学ぶ」ということが,どんなにありがたく,貴重なことだったかを痛感する一方で,新しい医療のあり方,新しい学びのあり方も広がっています.
 糖尿病という病気は,一度発症すると一生のお付き合いで,患者さん自身の日常の中にいつもあります.何かの治療を一定期間頑張れば治るということはなく,生涯ブレーキとアクセルを踏み間違えないように,安全運転をしていかなければならない病気です.今や世界中で糖尿病患者数は増え続け,私たち医療者は糖尿病診療を避けては通れません.日常の中にいつもある病気だからこそ,糖尿病の患者さんと向き合うにはその心理社会的背景や家族背景を知りながら適切に,気長に,よりよい診療を提供する必要があります.
 私自身が専門とする家庭医療は元来その理論体系からも,患者中心の医療の方法や家族志向,行動変容やヘルスプロモーションといった糖尿病診療にも欠かせない要素をたくさん持っています.一方で糖尿病専門医としては,専門医ならではのノウハウや,知恵やコツなどを診療を通して身につけてきました.そんな2つの領域で培ったものをぜひ,患者さんの「日常」の前線にいるプライマリ・ケアの現場につなげ,第一線で働く実地医家・病院の先生方やスタッフの皆さん,糖尿病に不慣れでも日々奮闘されている医療者の皆さんに届けたいと思い,この本の編集をさせていただきました.

 この本で目指したのは,次のような内容です.
・明日から現場で使える情報,ツールにこだわった実践的な内容
・患者さんや家族の心理社会的背景を知るためのノウハウがつまった内容
・糖尿病専門医とプライマリ・ケア医をつなぐ,架け橋になるような内容
・糖尿病と生きる患者さん,そのご家族が手にとってくださることがあっても理解
が深まるような内容

 編集には数年の月日がかかってしまいましたが,何度にもわたる校正作業にお付き合いくださり,素敵な原稿を書いていただいた執筆者の皆様,より面白いものを,より充実したものをと一緒に編者を務めてくださった岡崎研太郎先生,こんな私に声をかけていただき,長い間めげずに根気よく書籍の完成まで付き合ってくださった医学書院の井上岬さんに深謝いたします.医学書院さんとのメールのやりとりは300通を超えました.こんな編者に本当にあきらめずお付き合いいただいたと思います.また私にたくさんのことを教えてくださった,これまで出会った患者さんたちに心から感謝したいと思います.今でもそれぞれの方の顔が浮かびます.

 また,この場をお借りして初期研修医1年目から糖尿病専門医を取得するまで長きにわたってご指導いただいた,長浜赤十字病院の江川克哉先生,児玉憲一先生に心からお礼をお伝えしたいと思います.糖尿病患者さんと向き合うお2人の姿勢は,私にとって今もずっとお手本です.当時,育児休暇明けの私の仕事を糖尿病内科の同僚としてカバーし,支えてくださった福家智也先生,西村公宏先生にも心から感謝しています.

 本当なら従来通り,糖尿病についての勉強会を開催したり,多職種で意見を交えながらワイワイとディスカッションできる場があったことと思います.
 今はこの書籍にのせて,この本のページを開いてくださった方々の日常に少しでも役立つ情報をお届けできればこんな幸せなことはありません.そしてそのことが,終わりのない糖尿病との日常を続ける患者さんたちのよりよい人生や癒やしにつながることを,心から願っています.

 2020年8月
 真夏の日差しのもと,暑さにも負けず公園で遊ぶ息子たちを眺めながら
 三澤美和

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まえがき
編者紹介

イントロダクション
 診療の心構え―治療法を考える,その前に

第1章 診療のその前に:患者との出会い
 糖尿病を抱える患者の心理を理解しよう
 “健診で引っかかった”を上手に診よう! プレ初診~初診時の対応

第2章 継続外来“必ず押さえる”基本編(1):治療と管理
 フォローアップの基本
 薬の使い方・使い分け(内服編)
 薬の使い方・使い分け(注射編)
 薬剤師が伝えたい 薬剤選択・服薬指導のコツ
 やってみれば難しくない 注射手技・血糖測定指導のコツ
 これだけは押さえておきたい 低血糖の管理と指導
 鉄則:慢性合併症管理① 糖尿病腎症・神経障害など
 鉄則:慢性合併症管理② 糖尿病性眼合併症
 併存疾患にも目を向けよう 血圧・脂質・歯周病
 こんなときは専門医へ! 緊急時の現場でできること,ツボを押さえた紹介のワザ
 治療薬・機器開発・再生医療の最新トピックス 近未来の糖尿病治療

第3章 継続外来“必ず押さえる”基本編(2):患者サポートと生活指導
 3分でできる運動指導
 3分でできる栄養指導
 プライマリ・ケアの現場でできる フットケアとセルフケア指導
 こんなときどうする? 嗜好品(アルコール,タバコ)について聞かれたら
 こんなときどうする? 旅行や海外渡航時の対応を聞かれたら
 こんなときどうする? 災害への備え・対応を聞かれたら
 こんなときどうする? サプリメントや健康食品について聞かれたら
 あなたの患者も使えるかもしれない 知っておきたい社会保障制度

第4章 継続外来“覚えておきたい”応用編:プライマリ・ケアでここまでできる
 こんなときどうする? 挙児希望の女性患者
 こんなときどうする? 小児・思春期の患者の管理
 こんなときどうする? 高齢の患者への糖尿病治療
 こんなときどうする? ポリファーマシーに陥りそうな患者,
   どう見分け,対応する?
 こんなときどうする? 精神疾患を抱えた患者―患者のやる気を引き出す
   動機づけ面接法
 こんなときどうする? がん治療中/がんサバイバーの患者への糖尿病治療

▶ケースカンファレンス①
 在宅で患者を診るときのポイントは?
 在宅医の立場から
 訪問看護師の立場から
 薬剤師の立場から

▶ケースカンファレンス②
 治療に前向きでない患者に,どうアプローチするか?
 糖尿病専門医の立場から
 総合診療+コーチングの立場から
 糖尿病看護認定看護師の立場から
 就業時間が不規則な人やお酒が大好きな人をどう診る?
   ―決定共有アプローチによる協力関係づくり

第5章 診療のその先へ:スタッフ教育と地域連携
 多職種協働と施設レベル・多施設間でのスタッフ教育
 患者が紹介に応じてくれない! そんなときどうする?
   地域医療連携の推進と啓発活動

索引

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糖尿病診療で「大事なこと」を余すことなく網羅した本
書評者:片岡 仁美(岡山大病院教授・総合内科・総合診療科)

 素晴らしい本である。

 こんなに糖尿病診療で「大事なこと」の全てを余すことなく網羅した本が今まであっただろうか。「かゆいところに手が届く」とはまさにその通りである。私がまず感動したのはイントロダクションである。「診療の心構え―治療法を考える,その前に」の一節はこの本の姿勢を表していると同時に,糖尿病診療の真髄だと思う。「糖尿病患者を診る際に大切な3つのこと」は,「最新の正しい医学的知識を持っていること」「患者やスタッフと協働して問題に向き合えること」「コミュニケーションをとる力」という簡潔な表現であるが,まさにその通りである。

 糖尿病診療は知識や技術も必要である。マニュアル的にそれを学ぶことは難しくない。しかし,マニュアル通りに行ったとしても患者さんの状態は必ずしも良くならない。なぜだ? そんな話はよく聞く。しかし,その時に「治療薬のチョイスや,マニュアル的なことは糖尿病診療のごく一部でしかないから」と心の中では思っても,では,どうすれば包括的にその方を良い状態にする助けになれるか,ということはなかなか言語化しにくいという思いもあった。しかし,この本は「言語化しにくいけれど大切なこと」を誠実に言語化し,さまざまな角度からそれを見える化してくれている。私は,糖尿病診療における担当医の役割は,マラソンランナー(患者さん)の伴走者であると思っている。そして,伴走者も一人ではなくチームである。あくまでもランナーである患者さんの走りを支えるとき,考えなければならないことは,その方の一部分だけでは済まないことは明白である。

 また,治療と管理の章の前に,第1章として「診療のその前に:患者との出会い」という章があるのが素晴らしい。糖尿病が他の疾患と何が違うのか。「糖尿病は人生を問う」ものであるということ。そのことを明確に示している「糖尿病を抱える患者の心理を理解しよう」はじっくりと読みたい大切な項である。また次の,初診がいかに大事か,という「“健診で引っかかった”を上手に診よう! プレ初診~初診時の対応」も本当に秀逸で,糖尿病診療にかかわる誰もが知っておきたい重要ポイントである。継続外来についても,よくぞここまでと思うくらいに丁寧に,重要な点をわかりやすく伝えてくれている。どの章を読んでも必ずすぐに疑問点が明らかになり,今日からの診療に反映できることばかりである。本書を自身の伴走者として携え,患者さんに向き合うことができたら,糖尿病診療の質が変わると思うし,自身の糖尿病診療から得られる喜びや学びも格段に深くなると確信する。


深い感銘と少々の嫉妬すら覚える,タイトル通りの良書
書評者:岩岡 秀明(船橋市立医療センター代謝内科部長)

 正直に書きます。この本を読み終わった私は,深い感銘とともに,糖尿病に関する本も出版させていただいている末席の一人として少々嫉妬も覚えました。

 本書は,編著者のお一人三澤美和先生が「まえがき」に書かれている通り,以下の4つを全て満たした本です。

・明日から現場で使える情報,ツールにこだわった実践的な内容
・患者さんや家族の心理社会的背景を知るためのノウハウが詰まった内容
・糖尿病専門医とプライマリ・ケア医をつなぐ,架け橋になるような内容
・糖尿病と生きる患者さん,そのご家族が手にとってくださることがあっても理解が深まるような内容

 糖尿病に関する本は,医学専門書店にも一般書店にも数多く並んでいますが,これら4つ全てを満たしている本は,今までなかったように思います。

 これは,家庭医療専門医と糖尿病専門医の両方を取得されている三澤先生と地域医療教育学の専門家岡崎研太郎先生のお二人が編著者だからこそ可能だった本といえるでしょう。執筆陣も,糖尿病専門医と家庭医療専門医がバランスよく分担して書かれていますし,もちろん薬剤師・訪問看護師・管理栄養士の方々も執筆されています。

 目次を見ていただければわかりますが,本書は「診療の心構え―治療法を考える,その前に」,「診療のその前に:患者との出会い」から始まっています。この2項目はとても重要です。

 「継続外来“必ず押さえる”基本編」では,症例も提示しながら,具体的なポイントを明記しています。生活療法,薬物療法,慢性合併症,糖尿病の救急,フットケアはもちろん,嗜好品,海外渡航時の対応,災害への備え,サプリメント・健康食品,社会保障制度についても記載されています。本当に素晴らしいと思います。

 また「継続外来“覚えておきたい”応用編」として,挙児希望の女性,小児・思春期の患者,高齢の患者,ポリファーマシー対策,精神疾患を抱えた患者,がん治療中・がんサバイバーの患者にまで内容が及んでいます。

 さらに「ケースカンファレンス」として,在宅で患者を診るときのポイント,治療に前向きでない患者へのアプローチについて,さまざまな職種の立場から書かれているので大変参考になりました。

 そして最後に,多職種協働と多施設間でのスタッフ教育,地域医療連携の推進という,今後ますます重要となる項目についても書かれています。

 本書は,まさにタイトル通りの『かゆいところに手が届く,まるわかり糖尿病塾』です。プライマリ・ケア医や研修医はもちろん,糖尿病専門医,各種メディカル・スタッフの方々,さらには患者さんとそのご家族にも,幅広くお薦めできる一冊です。


糖尿病診療にかかわる全ての人に読んでほしい一冊
書評者:横林 賢一(ほーむけあクリニック院長)

 これまでの糖尿病関連の書籍とは一線を画す,素晴らしい書籍を手にすることができた。『かゆいところに手が届く! まるわかり糖尿病塾』の名前の通り,かゆいところに手が届いた。

 例えば薬の使い方。よくある書籍では,ガイドラインに準じた薬の紹介をしておしまい。本書では一般的な内容を過不足なく学べることに加え,薬価(患者さんの負担)も併記されているあたりが憎い。また,「高齢者のメトホルミンどうしよう」「そろそろインスリンに切り替えた方が良さそうだけど,どういう手順で進めようか」など,日常診療で困るポイントが症例ベースで解説されているため,明日からの診療に即役立つ。

 例えば運動指導。「適度な運動をしましょうね」で終わってしまうこともしばしばだが,本書では「3分でできる」具体的な運動をわかりやすく紹介してくれている。コピーして渡せる配布資料も掲載されているのもうれしい。

 例えば栄養指導。行動変容のステージに沿って解説されているのだが,患者の発言内容がどのステージに当たるのか例を挙げて示してくれているためわかりやすい。ステージごとに私たち医師がどのような声掛けをすると有効かについても具体例を複数挙げてくれており,私自身,本書を読んだ後はスムーズかつ双方の納得感のある診療に変化したと実感している。

 以上のように,それぞれの項目につき,知りたい内容がわかりやすく書かれていることで,「かゆいところ」がなくなっていくのが本書の醍醐味である。加えて興味深いのが「そうそう,そこ,かゆいところだった!」と気付かされる項目設定。挙児希望の女性患者,精神疾患を抱えた患者,がん治療中/がんサバイバー患者の糖尿病治療など,言われてみれば気になる項目についても書かれている。総合病院に勤務している時は糖尿病内科に紹介して後はお任せだったような方々だが,地域の一診療所医師となった今ではぜひとも知っておきたい内容ばかりだ。

 本書は30名を超える執筆者によって書かれている。編者のお二人が最適な方を選ばれたことがよくわかる,どの項目も極めて質が高く過不足のない内容である。一方で,執筆者が多いと読者としては読みにくく感じることがしばしばあるが,本書は極めて読みやすい。編者と執筆者で何度もやりとり,すり合わせを行ったのであろう。まるで一人の執筆者が全てを書いたのかと錯覚するほど統一感がある。

 本書の編者は,糖尿病専門医であり家庭医療専門医でもある三澤美和氏と,「医療×アート×教育」をテーマに活動する岡崎研太郎氏である。このお二人だからこそ,質が高く,現実的で,やわらかくて,面白い書籍になったのだと思われる。糖尿病診療にかかわる全ての人に読んでもらいたい一冊である。

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