理学療法ジャーナル Vol.59 No.7
2025年 07月号
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- EOI : essences of the issue
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EOI : essences of the issue
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特集 血流と理学療法
運動療法はもとより,温熱・寒冷,圧迫,伸張,収縮などさまざまな物理刺激により血流は変化する.脳血管疾患,心血管疾患,不動,交感神経亢進などの血流不全を原因として起こるさまざまな症状が日常生活を制限することから,普段は意識されにくいが,理学療法と血流は切っても切れない関係といえる.本特集では,脳血流,筋血流,微小循環,肺循環,静脈還流,循環障害など理学療法に関係する血流(循環)に焦点を絞り,その影響と理学療法の効果について解説していただく.
総論──血流調節の基礎知識 椿 淳裕,他
運動時には,有限である体内の血液を効率的に分配する調節機構が働き,分配の割合は安静時とは大きく異なる.脳の血流も含め,血流の再配分には運動強度や運動習慣が関与し,この背景には交感神経の活動がある.加えて,活動筋と呼吸筋との間でも,運動時には筋代謝受容器反射を介した血流の奪い合いが生じる.疾病による変化も含めた血流調節の基礎を概説する.
骨格筋の微小循環の制御と理学療法の影響 堀田一樹
骨格筋の微小循環は,血流と血管透過性の調節を通じて酸素・栄養供給や老廃物除去を担う.加齢は細動脈の拡張能低下を引き起こし,運動時の血流調節を阻害する.糖尿病は慢性的に筋毛細血管の透過性の亢進を引き起こす.長期的な有酸素トレーニングやストレッチングは,細動脈機能の改善を促し,運動時の血流調節を回復させる可能性がある.本稿では,微小循環の生理と病態,ならびに理学療法による介入の意義について概説する.
筋血流と理学療法──ストレッチングや筋収縮,マッサージの影響 大和洋輔
加齢に伴い血管内皮機能は低下するが,運動や身体活動量の増加は血管内皮機能を改善させる.近年ではストレッチングにおいても血流が増加し,血管内皮機能を改善させることが示唆されている.本稿では,スタティック(静的)ストレッチングを中心に,骨格筋の収縮やマッサージが骨格筋やその周囲の動脈(筋型動脈)の血流に及ぼす影響について紹介する.
脳血流と理学療法──脳卒中急性期の臨床から 前川侑宏,他
脳卒中は死亡や寝たきりの主要因であるが,それに対抗するための早期リハビリテーションの有効性が報告されている.早期離床は機能予後を改善させる一方で,神経学的所見や機能予後の悪化のリスクも報告されている.この神経学的所見の増悪を予防するうえで,脳血流管理の重要性が示されている.本稿では,脳卒中急性期で生じる種々の問題を脳血流の観点から整理し,その点を踏まえた理学療法の進め方について概説する.
筋血流制限下の運動療法 沖田孝一
運動に筋血流制限を併用することで筋負荷が高まり,低強度運動でも筋肥大効果が得られやすくなる.この手法はレジスタンス運動のみならず有酸素運動との併用においても有効性が示され,さらに神経筋電気刺激との併用,神経疾患や運動器疾患への応用など,リハビリテーション領域における可能性が広がっている.本稿では筋血流制限のみ行う手技も含めて理学療法現場における筋血流制限の潜在的活用について解説する.
血流低下から生じる痛みやだるさに対する理学療法の効果 大住倫弘,他
筋の血流低下に起因する疼痛やだるさのメカニズムを明らかにし,その改善に向けた理学療法の可能性を検討した.慢性腰痛者では誤った運動制御により脊柱起立筋の血流低下が生じやすく,疼痛誘発物質の蓄積や筋疲労が引き起こされる.加えて,本稿では,ストレッチや有酸素運動による血流改善について紹介するとともに,運動制御異常を詳細に観察することの重要性を論じた.
血流と集中治療理学療法 高橋哲也
集中治療が必要な患者は長時間の安静臥床を強いられることで,重力の影響による換気血流比の不均衡分布が生じ,下側肺障害などの二次的合併症を引き起こすリスクがある.また,敗血症などの病態や不動による低灌流/微小循環障害が骨格筋を含む多臓器に影響することが知られている.血流の観点から集中治療理学療法における注意すべきこと,理学療法の効果について解説した.
静脈還流からみる理学療法のリスク管理 笠井健一
安全で効果的な理学療法の実施には,血行動態の理解と評価が不可欠である.われわれは静脈還流の変化を捉える簡便な方法として,座位で鎖骨上に右内頸静脈の拍動を視覚的に評価する「座位頸静脈評価」の有用性を検討してきた.安静時だけでなく,運動や吸気といった負荷と座位頸静脈評価を組み合わせることが血行動態の評価やリスク管理に有用である.本稿では,その具体的な活用方法についても論じる.
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特集 血流と理学療法
総論──血流調節の基礎知識
椿 淳裕,他
骨格筋の微小循環の制御と理学療法の影響
堀田一樹
筋血流と理学療法──ストレッチングや筋収縮,マッサージの影響
大和洋輔
脳血流と理学療法──脳卒中急性期の臨床から
前川侑宏,他
筋血流制限下の運動療法
沖田孝一
血流低下から生じる痛みやだるさに対する理学療法の効果
大住倫弘,他
血流と集中治療理学療法
高橋哲也
静脈還流からみる理学療法のリスク管理
笠井健一
■Close-up 切断断端の管理──下肢切断術後の断端管理~慢性的な断端変化
切断術後の断端管理
加藤弘明
義足歩行獲得までの段階的プロセス
只津美紀
慢性的な断端変化と義足製作の選択肢
三ツ本敦子
●とびら
キャリアは,人との出会いで育まれる
西浦健蔵
●運動器疾患に対する超音波画像評価とエコーガイド下運動療法──EBPTに活かす!③
肘関節外側上顆炎に対する超音波画像評価とエコーガイド下運動療法
工藤慎太郎,他
●車椅子・歩行補助具の選び方[新連載]
補装具費支給制度
徳井亜加根
●薬剤と理学療法⑦
吸入薬
阿部誠也,他
●文献収集と管理⑦
CiNii Research
森山英樹
●それ,現場で実際どうしてます?──現場で働く多様な理学療法士による座談会②
臨床実習指導ってどうしていますか? どうあるべきですか?
野添匡史,他
●臨床実習サブノート 効果的かつ安全な起居動作へのアプローチ④
胸・腰髄損傷
須堯敦史
●紹介
脳卒中患者に対するオーダーメイド治療用長下肢装具作製に向けた組織体制構築──装具療法後進組織における執念の“現状打破”
五月女宗史,他
●ひろば
刷り込まれた文化の功罪 その2──理学療法士養成校における授業科目名の是非
奈良 勲
●私のターニングポイント
ターニングポイントは人とのつながりから必然的に引き寄せる
藤野孝太
●学会印象記
第10回日本ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法研究会学術大会──理学療法士の価値の創造で自分ができること
佐々木佳奈子
第7回日本理学療法管理学会学術大会──学会を通じて考える理学療法管理の未来──メンタルモデルの構築
久保田勝徳
●My Current Favorite
臨床から研究 研究から臨床──臨床現場での課題解決に向けて
田中 創
●臨床のコツ・私の裏ワザ
重度視覚障害者への動作誘導のコツ
井上裕貴
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