総合リハビリテーション Vol.51 No.2
2023年 02月号

ISSN 0386-9822
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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特集 脳卒中下肢機能の徹底改善

 脳卒中患者の下肢機能は歩行や日常生活動作(activities of daily living:ADL)を規定する重要な要素です.ADL評価においてもBarthel indexではその約60%を移乗や歩行などの移動項目が占め,Functional Independence Measure(FIM)では運動項目13項目のうち5項目が移乗・移動項目であり,下肢機能はADLに大きな影響を与えていることがわかります.脳卒中患者が退院時に歩行が自立できるかどうか,下肢機能はその後の在宅復帰や社会復帰に大きくかかわってきます.本特集では,脳卒中患者の下肢機能を徹底的に改善するために,どのような基礎的なリハビリテーション治療を用いるか,また,効率的かつ効果的に実施するにはどうすればよいか,について諸先生方に論じていただきました.

下肢機能評価とリハビリテーション治療プログラム 黒田 慶子 氏ら
 脳卒中患者の下肢機能および歩行の評価のポイント,その評価に基づいた下肢機能のリハビリテーション治療プログラムについて解説していただいた.脳卒中片麻痺患者の歩行は麻痺側への体重負荷の減少や時間的,空間的な非対称性を特徴とする.非麻痺側下肢は代償動作を行うため,健常者の下肢と同じ機能を担っているわけではなく,健側肢と考えるべきでない.麻痺だけでなく,感覚障害やバランス障害についても適切に評価を行い,早期からの座位訓練や起立訓練を開始することが重要である.

歩行練習の進め方 吉尾 雅春 氏
 脳内の可視化情報(脳画像)と臨床の病態を照らしてみると,片麻痺歩行と一括りにする表現が適切とはいえないことに気づく.歩行障害は各人各様で異なっており,脳のシステム障害の観点から歩行障害を捉え歩行練習に進めていくとよい.例えば,運動麻痺が生じたほとんどの脳卒中患者は大脳小脳神経回路の運動ループが障害され,姿勢制御が困難になっている.麻痺側下肢の支持性を長下肢装具に託すことによって理学療法士に相当の余裕を与え,骨盤を水平位に保持できることで姿勢制御の基盤を作ることができる.

脳卒中患者の歩行障害に対する練習支援ロボットの活用 井元 大介 氏ら
 本邦を含む諸外国の治療ガイドラインでは,歩行不能な脳卒中患者に対する練習支援ロボットの活用を推奨している.歩行練習支援ロボットを用いた際,運動量増加機器加算として診療報酬が算定できる.練習支援ロボットの利点は,ロボットの制御機構によって,患者の体重や動作を部分的あるいは全体的にサポートし,療法士の負担を少なく,高頻度に歩行を反復できることである.適切に練習支援ロボットを活用するには,各ロボットの機能特性を十分に理解し,症例の障害像に応じてロボット機器の適応を判断することである.

装具療法の適応 越智 光宏 氏ら
 脳卒中患者に対する装具療法は,片麻痺特有の下肢変形の予防,矯正だけでなく,歩行の自立度,速度,耐久性,歩容の向上など,さまざまな目標の達成に役立つ治療である.装具療法の特徴の1つは,現在の問題点から少し先の病態を予測し,病院内の試着用装具を利用し,必要な装具の適応を考え処方し,フォローアップを行うという点にある.装具の選択肢が多いことが装具療法の難易度を上げている.脳卒中片麻痺は股→膝→足の順にコントロールしやすくなることが多く,自立度→効率(速度,耐久性)→歩容の順に正常歩行をめざす.

下肢痙縮への対応 川手 信行 氏
 脳卒中の痙縮は,片麻痺の回復過程でみられる連合反応から共同運動,そして分離運動へ向かう運動機能の回復を阻害する.長期間の痙縮持続により,筋・腱・靱帯などの関節を構成する組織の短縮や弾性の低下を生じ,関節拘縮やそれに伴うさまざまな関節変形を生じる.特に下肢では伸展パターンが生じやすく,反張膝や内反尖足を来す.ボツリヌス療法などで痙縮を抑制・制御することで,分離運動を引き出し,装具療法を用いながら正常歩行に近い状態にすることが重要である.

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特集 脳卒中下肢機能の徹底改善

下肢機能評価とリハビリテーション治療プログラム
黒田 慶子,他

歩行練習の進め方
吉尾 雅春

脳卒中患者の歩行障害に対する練習支援ロボットの活用
井元 大介,他

装具療法の適応
越智 光宏,他

下肢痙縮への対応
川手 信行


●巻頭言
Next Stage──30年を振り返って次の時代を思う
中山 恭秀

●入門講座
リハビリテーションロボット ②
上肢訓練用ロボット
内山 侑紀,他

小児リハビリテーションに必要な評価法 ②
新版K式発達検査2020
大谷 多加志

●実践講座
神経発達症の診療 ⑦
神経発達症への薬物療法
米山 明

リハビリテーション治療に生かすエコー ②
肩関節疾患におけるエコーの活用
井上 彰

●症例報告
ボツリヌス治療により歩行能力と行動範囲改善が得られた脊髄上衣腫摘出術後症例
栗田 慎也,他

●調査
呼吸リハビリテーションを行った重症post COVID-19例の治療成績と後遺障害
冨士井 睦,他

●YouTubeの使えるコンテンツ/アプリの紹介 ⑦
コンピュータアプリケーションを用いた認知機能評価・訓練
高岡 哲也,他

●物理療法update ⑤
体外衝撃波治療──拡散型圧力波治療と集束型衝撃波治療
小林 佑介,他

●摂食嚥下機能障害のリハビリテーション治療の倫理的な葛藤 ①
臨床倫理委員会の運営と活用方法
金沢 英哲

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
太宰治の『右大臣実朝』──あばたの受容
高橋 正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「あの日の声を探して」──ロシアの普通の青年コーリャの変容から見えるもの
二通 諭

●私の3冊
田中 洋平

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